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交通事故に遭って「むちうち」になったら「接骨院」に通院して治療を受ける方が多いです。
しかし接骨院に通院する際には、後に慰謝料などの賠償金を請求するときに争いの種になりやすいので注意が必要です。
以下では交通事故で接骨院に通院する際に請求できる慰謝料の相場や治療時における注意点をご紹介していきます。
【関連記事】損害賠償と慰謝料の違い|示談に役立つ損害賠償請求の知識
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交通事故に遭って接骨院に通院すると、以下の2種類の慰謝料を請求できる可能性があります。
通院慰謝料は、被害者が交通事故でけがをして通院治療を受けたときに請求できる慰謝料です。
事故に遭ってけがをすると、被害者は苦痛や恐怖によって強い精神的苦痛を受けます。その苦痛の程度は通院期間が長くなればなるほど高額になると考えられるので、通院慰謝料は通院期間に応じて高額になっていきます。
具体的な通院慰謝料の金額の相場は以下の通りです。
通院期間 |
自賠責基準※1 |
任意保険基準 |
弁護士基準※2 |
1ヶ月間 |
8万6,000円 (8万4,000円) |
12万6,000円 |
28(19)万円 |
2ヶ月間 |
17万2,000円 (16万8,000円) |
25万2,000円 |
52(36)万円 |
3ヶ月間 |
25万8,000円 (25万2,000円) |
37万8,000円 |
73(53)万円 |
4ヶ月間 |
34万4,000円 (33万6,000円) |
47万8,000円 |
90(67) 万円 |
5ヶ月間 |
43万円 (42万円) |
56万8,000円 |
105(79) 万円 |
6ヶ月間 |
51万6,000円 (50万4,000円) |
64万2,000円 |
116(89) 万円 |
※1:初診から治療終了日を21日とし実際の通入院は10日間だったと仮定し、2020年3月31日までは4,200円、2020年4月1日より後に発生した事故に関しては4,300円で計算しています。
※2:()内はむちうち等の他覚症状がない負傷の慰謝料
後遺障害慰謝料は、交通事故で被害者に辛い後遺障害が残ってしまったときに請求できる慰謝料です。残った後遺障害の程度が重いほど精神的苦痛も大きくなると考えられるので、認定された後遺障害等級が高くなればなるほど慰謝料の金額が上がります。
具体的な金額の相場は以下の通りです。
等級 |
自賠責基準 (2020年3月31日までに発生した事故) |
任意保険基準(推定) |
弁護士基準 |
1,150万円 (1,100万円) |
1,600万円程度 |
2,800万円 |
|
998万円 (958万円) |
1,300万円程度 |
2,370万円 |
|
861万円 (829万円) |
1,100万円程度 |
1,990万円 |
|
737万円 (712万円) |
900万円程度 |
1,670万円 |
|
618万円 (599万円) |
750万円程度 |
1,400万円 |
|
512万円 (498万円) |
600万円程度 |
1,180万円 |
|
419万円 (409万円) |
500万円程度 |
1,000万円 |
|
331万円 (324万円) |
400万円程度 |
830万円 |
|
249万円 (245万円) |
300万円程度 |
690万円 |
|
190万円 (187万円) |
200万円程度 |
550万円 |
|
136万円 (135万円) |
150万円程度 |
420万円 |
|
94万円 (93万円) |
100万円程度 |
290万円 |
|
57万円 |
60万円程度 |
180万円 |
|
32万円 |
40万円程度 |
110万円 |
接骨院は病院ではありません。病院には医師がいて治療や検査などを受けられますが、接骨院で受けられるのは柔道整復師による手技や施術のみです。そこで「接骨院に通うと、病院よりも慰謝料が安くなるのでは?」と心配される方がおられます。
しかし、接骨院だからといって、直ちに病院よりも慰謝料が低くなることはありません。病院に通院しても接骨院に通院しても、交通事故でけがしたことによる精神的苦痛は同じです。そのため、通院先が接骨院という理由だけで慰謝料を減らされることはありません。
ただ、接骨院に通院する場合、注意しないと保険会社から「通院の必要性」を否定されて慰謝料を減額されることがあります。また、接骨院ばかりに通い、病院に通院していないと最終的に後遺症が残ったという場合でも、医師の継続的診断がないことを理由に後遺障害診断書を作成できないということもあり得ます。この問題については後述します。
保険会社に慰謝料請求する際、保険会社による慰謝料の当初提示金額が非常に少ないということはあり得ます。
上記の表にも書きましたが、交通事故の慰謝料を請求するときには「複数の計算基準」があります。
交通事故の慰謝料計算基準には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3種類があり、弁護士基準がもっとも高額になります。任意保険会社が使用する任意保険基準の場合、弁護士基準の2分の1以下になってしまう例も珍しくありません。
被害者が自分で任意保険会社と示談交渉を進めていると、保険会社は任意保険会社で慰謝料を計算するので被害者に提示される慰謝料が少額になってしまうのです。高額な弁護士基準による慰謝料を獲得するには、弁護士に示談交渉を依頼する必要があります。
弁護士に示談交渉を依頼すると弁護士費用が発生するので、小さな事故で弁護士に依頼すると足が出てしまうおそれが高まります。
弁護士に依頼しても利益が出るのは、以下のような場合です。
上記のような状況であれば、一度弁護士に相談してアドバイスをもらうのが良いでしょう。
接骨院に通う際には、必ず事前に病院に行って医師による了解を得るべきです。仮に医師が「接骨院の治療は認めていないし、必要もない」という意見を述べた場合、保険会社がこれを理由に「接骨院における治療の必要性がない」として、治療費や慰謝料の支払を拒絶する可能性があります。
むちうちで後遺症が残ったら後遺障害認定を受けるべきですが、そのためには医師が作成した「後遺障害診断書」が必要です。しかし接骨院の先生は「柔道整復師」であり医師ではないので、後遺障害診断書を作成できません。
事故後に接骨院にしか通院していないと、誰も後遺障害診断書を書けないので後遺障害認定を受けられなくなってしまいます。基本は必ず整形外科に通い、必要があれば医師の了解のもとに補助的に接骨院を利用するのが正しい対処方法です。
接骨院と良く似た施設に「整体院」があります。しかし整体師は国家資格ではないので、整体院の利用は「治療」とは認められない可能性があります。したがって、整体院に通った分の治療費や慰謝料も請求できない可能性が高いです。交通事故後、むちうち治療のために整体院に通うのはNGです。
事故後、しばらく病院に通った後接骨院に通いたいと思ったとき、医師に相談すると「接骨院に行く必要はない」と言われるケースがあります。そんなとき、自己判断で勝手に接骨院に行くべきではありません。
上記のとおり、医師が明示に反対している場合に接骨院に通った場合、後々、通院の必要性が否定される可能性が高いです。そうすると、通院しても補償対象外とされてしまいます。
この場合、どうしても接骨院の治療をメインとしたいのであれば、転院して接骨院への通院を認めてくれる医師に変える方法もあります。医師を変えることが直ちに補償内容に影響することはありませんので、検討の価値はあるでしょう。
保険会社が接骨院への通院を補償対象外とした場合、以下のような対応があり得ます。
まずは病院の医師に相談して、「接骨院との併用は問題ない」という内容の診断書ないし意見書などを書いてもらえないか聞いてみましょう。無理であれば弁護士に相談をして、接骨院における治療費や慰謝料を請求できないかアドバイスを受けましょう。
示談交渉では接骨院通院期間の治療費や慰謝料を否認されるケースでも、訴訟を起こせば一部認められる事例はよくあるので、あきらめずに法律の専門家によるサポートを受けることをお勧めします。
交通事故後、病院に一切通わず接骨院だけに通院する方がおられます。このようなことも、可能と言えば可能です。
ただその場合、治療の必要性について疑義が生じやすく、治療費や慰謝料について保険会社との間で紛糾する可能性が高いです。
接骨院はあくまで症状緩和のための対処療法的な施術を行うのみで、負傷の内容や状態を判断する立場にないからです。この場合、治療はあくまで自己判断で行っているということになり、治療の必要があるのかどうか医学的判断ができません。
また当初から接骨院を利用すると後遺障害認定に有用なカルテなども残らず、治療の経過が全くわかりません。この点からも治療の必要性について疑問を持たれてしまうのはやむを得ないところです。
むちうちになったら接骨院だけにするのではなく、必ず整形外科に定期的に通院しつつ、医師の了解の下で接骨院に通院することをお勧めします。
交通事故後、むちうち治療に接骨院が役立つケースは多々ありますし、接骨院に通院した期間も慰謝料算定の根拠にしてもらえます。しかし医師の許可無く自己判断で接骨院に通院すると、治療費も慰謝料も支払ってもらえない可能性が高まります。
事故後、接骨院にしか通院しない対応は極めてリスキーです。交通事故後の接骨院治療期間における慰謝料や治療費のことで争いになったら、交通事故を取り扱っている弁護士に相談してみましょう。
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