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後遺障害等級12級の症状には、むちうちといった強い神経痛や手足のしびれ、痛み、関節がうまく曲げられないなど、レントゲン画像に写りにくいものが含まれる場合に認定される事が多い等級です。
日常的に強い痛みを感じながらも、不便な思いを強いられている方がほとんどで、被害者本人にしか分からない辛い日々を送っているかと思います。
今回お伝えする内容は、後遺障害等級12級に該当する症状と認定の方法、そして、後遺障害等級12級の適切な慰謝料を獲得する7つの知識をご紹介します。
まずは、後遺障害等級12級に認定されるものをご紹介します。
等級 |
後 遺 障 害 |
第12級 |
1号:1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
2号:1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
|
3号:7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
|
4号:1耳の耳殻の大部分を欠損したもの |
|
5号:鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの |
|
6号:1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
|
7号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
|
8号:長管骨に変形を残すもの |
|
9号:1手のこ指を失ったもの |
|
10号:1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの |
|
11号:1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの |
|
12号:1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの |
|
13号:局部に頑固な神経症状を残すもの |
|
14号:外貌に醜状を残すもの |
用語的に難しい部分もあると思いますので、それぞれ詳しく記載していきます。
「外貌」とは、顔に「醜状を残すもの」ととされており、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものをいいます。
というもので、このいずれかの障害が残れば第12級14号です。以前は男女で等級の認定が別れることが問題となっていましたが、改正後は男女とも同じ基準で判断されます。
残存した神経系統の障害が神経学的検査結果や画像所見などの他覚的所見により、医学的に証明できるものをいいます。よくあるのが、むちうち症による痛みや麻痺、しびれといった自覚症状ですが、医学的な証明が出来ない症例が珍しくなく、示談の際に大きな問題となります。
親指に当たる指の第1関節(末節骨)が2分の1の長さになった
親指以外の足指が根元から第一関節の間で切断された
親指は第1関節、それ以外の指は根元から第2関節にかけての可動域が2分の1以下になった
片足の指がいずれかに該当すれば第12級12号です。
具体的には中足指節関節から失ったものをいいます。
このいずれかにあたれば、第12級11号です。
具体的には、・・・
簡単に言うと左右どちらかの小指を失った場合に認定されるのが9号です。小指の有無は握力に大きな影響を与えるので、昔の等級では13級だったようですが、改定されてからは12級に上がっています。
「長管骨」とは腕や足の長い骨のことで、
「上腕骨」
「橈骨(とうこつ)」
「尺骨(しゃっこつ)」
などがあります。
6号とほぼ同じですが、
という腕と同じような障害があてはまります。
上肢の3大関節(腕の場合は「肩」・「肘」・「手首」、足の場合は「股関節」・「膝」・「足首」)のうち、1つの関節において、関節の可動域角度の3/4以下になってしまったものをいいます。
ただ、手のひらを上に向けたり、下に向けたりする運動(回内・回外運動)に限っては、動かせる範囲が2分の1以下になってしまったものをいい、ときどき補装器具が必要なもの、すぐ脱臼してしまうようになってしまったもの(習慣性脱臼)が該当します。
裸体となったときに変形が明らかに分かる状態をいいます。このケースでは、骨が何cmズレているといった数値的な基準は設けられておらず、裸になったとき、他の人が見て明らかに変形しているのが確認できれば条件はクリアしているとされます。また、変形した骨の本数は関係ありません。
「1耳の耳殻の大部分を欠損したもの」とは、耳介の軟骨部の1/2以上を欠損した状態をいいます。耳を失ったことで後遺障害認定されるのは、外見が醜くなるという醜状障害が主な理由ですので、場合によっては外観の醜状障害として第7級12号でも適用されます。
歯科補綴(しかほてつ)を加えたものとは、交通事故で歯を7本以上無くしたり、著しく破損してしまった場合に、差し歯やブリッジ、あるいはクラウンなどで治療し、とりあえず事故以前と同じく普通に物が噛めるようになった状態のことです。
7本というカウントは、あくまで事故で損傷した歯の数なので、もともと虫歯などで抜けていた歯はカウントされません。また、後遺障害の対象は永久歯限定で、生え変わる予定の乳歯は後遺障害の認定対象外です。
「まぶたに著しい運動障害」とは、まぶたを開いた時に瞳孔を完全に覆うえない、またはまぶたを閉じた時に角膜を完全に隠せないないものをいいます。
などがわかりやすい例かと思います。
遠くの物を見たり、近くの物をみる時にピント機能がうまく働かない状態(調節機能障害)か、頭を固定した状態で目だけを動かした場合に、視野が健常者の2分の1になってしまった状態(運動障害)、このどちらかの障害がある場合です。
後遺障害認定で「非該当」であれば保険会社が提示する示談金額は、あくまで入通院慰謝料分の補償額でありそれほど多額となりません。
しかし、後遺障害認定がなされた場合、補償額は多額となります。
以下の表では後遺障害14級に該当した場合と非該当だった場合に獲得できる金額を比較しています。
事例:
男性(会社員)
年齢:35歳
年収:500万円
休業日数:30日
入通院20日・治療期間60日
労働能力喪失期間:2年
獲得金額 |
14級に認定された場合 |
非該当の場合 |
||
自賠責基準 |
弁護士基準 |
自賠責基準 |
弁護士基準 |
|
治療費 |
10万円 |
10万円 |
10万円 |
10万円 |
入通院慰謝料 |
17万2千円 |
77万円 |
16万8千円 |
77万円 |
後遺障害慰謝料 |
32万円 |
110万円 |
0円 |
0円 |
逸失利益 |
46万円 |
46万円 |
0円 |
0円 |
合計 |
105万2千円 |
243万円 |
26万8千円 |
87万円 |
このように弁護士基準と自賠責基準いずれの場合にも、2倍以上の獲得金額の差が出てしまうことが分かります。
例えば、「14級9号」の認定がされた場合でも、後遺障害慰謝料や逸失利益を算定した結果、弁護士基準で300~400万円程度の損害額になることも珍しくありません。
また、「12級13号」が認定されれば同様の算定の結果、800~1000万円程度の損害額になることもあります。
このように、同じ頚椎捻挫・腰椎捻挫と診断され、症状が残ってしまった場合、
によって損害賠償の金額に随分と大きな違いが生じることになります。
もし等級の認定や慰謝料に不満がある場合は、弁護士などの専門家に相談した方がいいでしょう。
項目 |
金額 |
---|---|
自賠責保険の後遺障害慰謝料額 |
94万円 |
弁護士基準の後遺障害慰謝料額 |
約290万円 |
労働能力喪失率 |
14/100 |
後遺障害第12級の基本的な慰謝料の基準は上記の表の通りです。なお、弁護士・裁判所基準では、各後遺障害等級に応じた慰謝料水準(相場)は290万円となっており、自賠責保険に比して相当高額とされています。
交通事故の場合に加害者側に請求できる費目については、以下にあるものが一般的です。なお、以下の金額は自賠責保険基準によるものですので、弁護士・裁判所基準で算定した場合は一般的にこれよりも高額となります。
治療関係費 |
治療費や入院費。 |
看護料 |
入院付添費:近親者付添の場合、1日につき4,200円 |
入通院慰謝料 |
1日4,300円として算定(2020年3月31日以前に発生した事故の場合、4,200円) |
入院雑費 |
入院1日につき1,100円(超える場合は実費) |
通院交通費 |
通院に要した交通費(実費)。自家用車使用の場合には1km15円で算定 |
その他 |
将来介護費や装具購入費、ケガのため進級が遅れた場合の学費などです。家庭教師代など |
休業損害 |
実休日日数1日当たり6,100円(超える場合は実額) |
逸失利益 |
後遺障害が認定された場合に請求します |
後遺障害慰謝料 |
インターネット上で種々紹介されている事例には「慰謝料が1,000万円」などの高額な金額が挙げられているものもありますが、これは慰謝料だけでなく上記の損害全額の補填額のことを指す場合が多いのではないかと思います。
具体的には、【治療費用+入院雑費+休業損害+入通院慰謝料+後遺障害慰謝料(死亡慰謝料)】、この総額である損害賠償額を、簡単に「慰謝料」と呼んでいるのだと思いますが、不正確です。
交通事故で実際に治療した費用になります。入通院中の治療に要した費用がここに含まれます。
自賠責保険では「治療期間」について若干特殊な計算方法をしています。
この2つの計算式を比べて、日数が少ない方を「治療期間」として算定されています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
交通事故の治療で50日間入院
退院後の通院期間が100日間(実治療日数は40日)だった場合
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1:50+100=150日 2:(50+40)×2=180日
となるので、自賠責保険上の「治療期間」は150日、慰謝料額は4,300円×150日=645,000円です。
表:自賠責基準の入通院慰謝料の相場
通院期間と入院期間 |
自賠責基準 |
①通院のみ3ヶ月 |
25万8,000円 |
②通院のみ6ヶ月 |
51万6,000円 |
③入院1か月・通院3ヶ月 |
51万6,000円 |
④入院1か月・通院6ヶ月 |
77万4,000円 |
⑤入院2か月・通院6ヶ月 |
103万2,000円 |
症状固定として治療終了後に、将来にわたって残存する後遺障害が認められる場合に、これに対する精神的損害に対して支払われる金銭です。
逸失利益とは、後遺障害が残ったことで失われた労働能力を金銭換算したものです。
【逸失利益=基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数(ライプニッツ係数)】
後遺障害等級によって変わってきますが、後遺障害等級12級の場合は「14%」です。
表:労働能力喪失率
中間利息控除係数(ライプニッツ係数)
※民法改正により、2020年4月1日以降に発生した事故においてはライプニッツ係数が異なった基準で計算する費用がありますのでご注意ください。
38歳の会社員が人身事故に遭遇。
入院35日。通院日数4ヶ月。
事故前の年収500万円
後遺障害12級に該当し労働能力喪失期間5年と仮定した場合の後遺障害に関する損害額(裁判所基準での計算例)
・後遺障害慰謝料・・・・・・290万円
・逸失利益・・・・303万0650円
基礎収入500万円×0.14×4.3295(5年間のライプニッツ係数)
=303万0650円
合計:438万8650円
被害者請求は、交通事故にあった被害者自身が加害者の自賠責保険に対して補償を求める手続です(自賠法16条)。
これとは別に、加害者側の任意保険会社に全部お任せする事前認定という手続もありますが、被害者請求は認定に必要な立証を自分で尽くすことができることや、一定額の補償を示談成立前に先取りできる、などのメリットがあります。
自賠責保険は、「加害者が任意保険に加入していない」「被害者の過失も大きく保険会社の対応が受けられない」場合にやむを得ず請求するというイメージがありますが、後遺障害認定の場面では「戦略的被害者請求」を行う方が適切な場合が多いです。
確かに事前認定手続であれば後遺障害認定の申請手続を全て加害者側保険会社が行ってくれますので、負担は軽いです。
しかし、加害者側保険会社が被害者側の後遺障害認定のために尽力するとは限らないため、事前認定では立証資料が足りず、後遺障害等級の認定が下りないというケースもあり得ます。
自分で行うことで手間などはかかりますが、適切な後遺障害等級を獲得するためにも、ぜひ「被害者請求」で行うことをお勧めします。
後遺障害の等級認定審査では、『後遺症が、どの級のどの号の要件に当てはまっているか』、あるいは『その後遺症には、事故と確かな因果関係があるか』という点が提出された証拠資料により判断されます。
そのため、後遺障害診断書に後遺症状がいくら記載されていても、これを裏付ける客観資料がないと後遺障害認定はされません。
下記でポイントを絞って解説していきます。
審査上の難点の一つが「事故との因果関係」です。これはいくら医師が「交通事故によるもの」と診断していても不十分です。
など、自賠責の調査事務所は色々な角度から審査を行います。そのため、事故状況を立証する資料(警察記録等)、後遺症状の内容を明らかにする画像(MRI画像等)、客観的な資料が必須です。
交通事故によって負ったケガが「これ以上治らない状態」を「症状固定」といい、入通院に関する補償はこの「症状固定」の時期までを基準として、相手方保険会社から受け取ることができます。
そのため、医師が症状固定と判断すると、それ以降の治療費や通院慰謝料は発生しないということになります。
交通事故処理の実務では保険会社が被害者に対し「そろそろ症状固定しましょう」といった提案をすることがよくあります。保険会社としても、損害精算のための症状固定時期を早めに固めておきたいからです。
しかし、改善可能性があり治療を継続する必要があるのに安易に症状固定とした場合、その後の治療について十分な補償が受けられなくなる可能性がありますので、慎重に判断しましょう。
被害者が後遺症に苦しんでいることは、客観的に証明される必要があります。そのため、レントゲン、MRI、CTスキャンなどの画像で異常な箇所が認められることが必須です。
また、むちうちなどの神経に損害がある場合は画像に映らないことがありますので「ジャクソンテスト」や「スパーリングテスト」など「むちうちなどの症状がわかりにくい場合」に行う検査を実施したい旨を医師に相談されるのが良いでしょう。
医師は「治療のプロ」であっても「後遺障害診断書作成のプロ」ではありませんので、医師がどのような記載内容を書けば「最高の後遺障害診断書になるのか」を知らない可能性もあります。
私たちが下手に口出しをすると、医師自身もいい気はしないかもしれませんが、医師とよく相談してみるのが良いでしょう。
損害賠償の金額を左右する要素としては、基本的に以下の4つがあげられます。
怪我の治療にかかった入通院期間
過失割合の有無
休業損害の有無
後遺障害認定の有無
なお、1や4に対応する補償額は、自賠責基準と裁判所基準では相当異なっており、用いる基準によって金額に大きな差が生じる可能性があります。
基準別の後遺障害慰謝料の表
等級 |
自賠責基準 (2020年3月31日までに発生した事故) |
任意保険基準(推定) |
弁護士基準 |
1,150万円 (1,100万円) |
1,600万円程度 |
2,800万円 |
|
998万円 (958万円) |
1,300万円程度 |
2,370万円 |
|
861万円 (829万円) |
1,100万円程度 |
1,990万円 |
|
737万円 (712万円) |
900万円程度 |
1,670万円 |
|
618万円 (599万円) |
750万円程度 |
1,400万円 |
|
512万円 (498万円) |
600万円程度 |
1,180万円 |
|
419万円 (409万円) |
500万円程度 |
1,000万円 |
|
331万円 (324万円) |
400万円程度 |
830万円 |
|
249万円 (245万円) |
300万円程度 |
690万円 |
|
190万円 (187万円) |
200万円程度 |
550万円 |
|
136万円 (135万円) |
150万円程度 |
420万円 |
|
94万円 (93万円) |
100万円程度 |
290万円 |
|
57万円 |
60万円程度 |
180万円 |
|
32万円 |
40万円程度 |
110万円 |
入通院慰謝料の場合も、下表のように裁判所基準は保険会社や自賠責保険の基準よりも高額になっています。
「後遺障害等級12級の損害賠償額の計算例」で計算したケースを用いると、入院が50日なので約3ヶ月、通院は40日ですので約1ヶ月で計算した場合、162万円になります
表:通常の弁護士基準による入通院慰謝料の表(単位:万円)
表:むち打ち症で他覚症状がない場合に適用される入通院慰謝料表(単位:万円)
後遺障害の等級に関して、弁護士に依頼することは様々なメリットがあります。ひとつは慰謝料が増額することであり、もうひとつは後遺障害の等級級数があがる可能性があることです。
交通事故の案件を多く取り扱う弁護士であれば、後遺障害診断書の書き方、提出する画像の種類、実施すべき検査など、豊富な認定経験をもとに有効な戦略を得られます。
自分で保険会社と戦う場合よりも、適切な後遺障害等級認定を受けられる確実性はかなり高まるでしょう。
弁護士による交渉は裁判所基準を前提として行います。そのため、弁護士に依頼した場合、任意保険基準よりも高い水準で交渉が行われることになり、結果的に補償額が上がる可能性があります。
もし入院や通院ともなれば、病院に行って治療をしなければならないし、何かと不便な生活を強いられる可能性があります。そんな状況になる一方で、保険会社との交渉や必要書類の準備を強いられ治療に集中することもできませんし、治るものも治らないという状況になることも考えられます。
この点、弁護士に依頼していただければご自身は治療に集中することができます。
後遺障害認定の基準としては、交通事故によって被害者が受けた精神的・肉体的な障害(ケガ)が、今後の将来において回復の見込めない状態となること。交通事故とそのケガの症状との間に因果関係(関連性や整合性)が認められ、その存在が医学的に証明あるいは説明できること、労働能力を失う(低下)を伴うものであることとされているため、これに該当しない場合は後遺障害認定が認められないと考えられます。
引用元:後遺障害認定がされないケースと対処法
この場合あなたが取れる行動は「1:異議申し立てを行う」「2:裁判に持ち込む」の2パターンがあります。
異議申し立ては「損害保険料率算出機構」に対して再審査を求めることになり、裁判の場合と同様に弁護士への依頼が必須と考えて良いでしょう。ここで、自分でなんとかしようとするのはナンセンスです。
どうして後遺障害の等級認定が下りなかったのか、理由までは教えてくれませんので、プロに頼まないと改善の余地がありません。
いかがでしたでしょうか。後遺障害等級12級の獲得は、むちうちなどの画像所見ではわかりづらい神経系後遺症が後遺障害と認められるか否かの基準になります。
14級の場合でも同じことが言えますが、
以上のことに気をつけて、今回の内容を実行していただければ幸いです。
12級以外の後遺障害等級について知りたい方は、下記の該当する等級よりご確認ください。
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