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交通事故の後遺障害には、第1級から第14級までの等級が設定されています。後遺症の症状にはさまざまな態様があり、その症状の重さもケース・バイ・ケースです。
そのため、後遺症の内容や程度に応じて、職業生活への影響を算定できるよう、このような等級分けがされているのです。
この記事では、後遺障害で14級と認定された際の後遺障害慰謝料について解説するとともに、慰謝料を正当な金額で受け取り、増額させる方法をご紹介します。
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交通事故の慰謝料を請求する際には、必ずといっていいほど話題に上がる3つの基準があります。自動車の運転手が必ず加入する『自賠責基準』、加入は運転手の自由である『任意保険基準』、そして裁判所や弁護士による『弁護士基準(裁判所基準)』があります。
この3つの基準で、それぞれ支払われる慰謝料の金額が大きく異なってきます。まずはこの3つの基準の違いによって、慰謝料がどのくらい変わるのかを確認していきましょう。
自賠責保険は法律で定められている強制保険で、後遺障害14級の慰謝料は32万円と決まっています。当該金額は、後遺障害14級の適正な慰謝料額を検討する上での「最低基準」と考えられています。
ここでいう保険会社は任意保険と呼ばれるものです。通常、自賠責保険でカバーされない損害部分を支払うために利用されています。
慰謝料について、保険会社は基準額を明らかにしていません。そのため、被害者は適正な金額が支払われているかどうか、わからないという問題があります。一般的には、任意保険基準は弁護士基準よりも低く、自賠責保険の上限と同額か、もう少し高い程度となるケースが多いです。
裁判所は過去の判例の集積から、交通事故の被害の損害賠償額について一定の目安を持っています。この目安を一般的には裁判所基準といいますが、これは日弁連の発行する『民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準』(通称・赤い本)に記載されています。同基準では後遺障害14級の慰謝料額は110万円とされています。
後遺障害14級の慰謝料額は弁護士基準では110万円と考えられていますので、自賠責一時金では補填されない金額については、加害者側に請求していくことになります。
また、後遺障害と認められる場合には慰謝料だけでなく、労働能力喪失割合に応じた逸失利益の請求も可能です。
なお、後遺障害に該当するかどうかは、通常は加害者側の自賠責保険が行います。当該自賠責が非該当と判断した場合には、異議申し立てをすることができます。
異議申し立て手続により新たな資料等を提出したことで自賠責側の判断がくつがえることもあります。自身での対応に不安を覚えるのであれば、弁護士に手続きを依頼することも検討するべきかもしれません。
ここまでに見てきた通り、自賠責基準と裁判基準では、3.5倍くらいの慰謝料の差があることがわかります。最低基準と最高基準の差額が非常に大きいため、後遺障害等級認定は、たかが14級とヤケになって考えることは危険です。
認定の有無によっては、100万円単位で補償額が変わる可能性がある大切な事項です。したがって、後遺障害が認定される可能性がある場合には、必ず交通事故の専門家へ相談されることをおすすめします。
<後遺障害等級と後遺障害の慰謝料一覧>
等級 |
自賠責基準 (2020年3月31日までに発生した事故) |
任意保険基準(推定) |
弁護士基準 |
190万円 (187万円) |
200万円程度 |
550万円 |
|
136万円 (135万円) |
150万円程度 |
420万円 |
|
94万円 (93万円) |
100万円程度 |
290万円 |
|
57万円 |
60万円程度 |
180万円 |
|
32万円 |
40万円程度 |
110万円 |
14等級の後遺障害でも該当の有無によって、請求できる損害賠償の金額は100万円近く変わります。 ですから、少しでも後遺症が残る恐れがあるのであれば、治療期間中に後遺障害についての基礎知識を身につけておいた方がよいでしょう。
首や手に鋭い痛みとしびれが残ってしまって、仕事が半分しかできなくなったり、ひどいときには出社することすらできなくなったりしてしまう…。事故後、このような後遺障害が残る場合があります。この場合、後遺障害がなければ得られたはずの収入が失われることになりますね。
そのような状況では、逸失利益の請求が認められます。逸失利益とは、後遺障害がなければ将来得られていたはずの収入です。
逸失利益の金額は、被害者の収入や後遺障害によって働けなくなった期間を参考に算出されます。なお、年収500万円の会社員がむちうち(14等級の後遺障害、完治まで5年)を負った場合の逸失利益は約108万円です。
交通事故で負傷し、治療を尽くしても後遺障害が残った場合、下記の2つの種類の慰謝料を請求することができます。
入通院慰謝料とは負傷治療のため入院や通院を余儀なくされたことに対する慰謝料です。
後遺障害慰謝料とは後遺障害が残ったことに対する慰謝料です。
交通事故の慰謝料を算出するものとして3つの基準(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)があり、どの基準を選択するかによって算定結果は変動します。
それでは各慰謝料について、これら3つの基準により計算した場合に結果がどの程度変動するのかを見ていきましょう。
1~6カ月通院した場合の通院慰謝料の目安は以下の通りです。
通院期間 |
自賠責基準(※1) |
任意保険基準(推定) |
弁護士基準(※2) |
1ヶ月間 |
8万6,000円 (4万3,000円) |
12万6,000円 |
28(19)万円 |
2ヶ月間 |
17万2,000円 (16万8,000円) |
25万2,000円 |
52(36)万円 |
3ヶ月間 |
25万8,000円 (25万2,000円) |
37万8,000円 |
73(53)万円 |
4ヶ月間 |
34万4,000円 (33万6,000円) |
47万8,000円 |
90(67) 万円 |
5ヶ月間 |
43万円 (42万円) |
56万8,000円 |
105(79) 万円 |
6ヶ月間 |
51万6,000円 (50万4,000円) |
64万2,000円 |
116(89) 万円 |
※1:初診から治療終了日を21日とし実際の通入院は10日間だったと仮定し、2020年3月31日までは4,200円、2020年4月1日より後に発生した事故に関しては4,300円で計算しています。
※2:()内はむちうち等の他覚症状がない負傷の慰謝料
自賠責基準は、強制加入の自賠責保険を適用する場合の計算基準です。
自賠責基準の計算は以下のとおりです。
のうち少ない数値に4,300円をかけることで計算します。
自賠責基準の計算例:
入通院期間:120日/通院4回・入院日数7日の場合
入通院日数×2:(4+7)×2=22日
となり、入通院日数×2の方が低い数値となります。
そのため、
慰謝料相場:22日×4300円=94,600円
が、自賠責基準での慰謝料額です。
任意保険基準は、各保険会社が内部で定めている基準であり、公表されたものではありません。そのため、あくまで推計です。
弁護士基準は裁判例の蓄積から統計的に算出された基準です。
弁護士基準は「赤本」と呼ばれる「民事交通事故訴訟 損賠賠償額算定基準」に掲載されています。
実際に赤本に掲載されている基準表を掲載しますので参考にしてください
表:通常の弁護士基準による入通院慰謝料の表(単位:万円)
入院 |
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
13月 |
14月 |
15月 |
|
通院 |
|
53 |
101 |
145 |
184 |
217 |
244 |
266 |
284 |
297 |
306 |
314 |
321 |
328 |
334 |
340 |
1月 |
28 |
77 |
122 |
162 |
199 |
228 |
252 |
274 |
191 |
303 |
311 |
318 |
325 |
332 |
336 |
342 |
2月 |
52 |
98 |
139 |
177 |
210 |
236 |
260 |
281 |
297 |
308 |
315 |
322 |
329 |
334 |
338 |
344 |
3月 |
73 |
115 |
154 |
188 |
218 |
244 |
267 |
287 |
302 |
312 |
319 |
326 |
331 |
336 |
340 |
346 |
4月 |
90 |
130 |
165 |
196 |
226 |
251 |
273 |
292 |
306 |
316 |
323 |
328 |
333 |
338 |
342 |
348 |
5月 |
105 |
141 |
173 |
204 |
233 |
257 |
278 |
296 |
310 |
320 |
325 |
330 |
335 |
340 |
344 |
350 |
6月 |
116 |
149 |
181 |
211 |
239 |
262 |
282 |
300 |
314 |
322 |
327 |
332 |
337 |
342 |
346 |
|
7月 |
124 |
157 |
188 |
217 |
244 |
266 |
286 |
304 |
316 |
324 |
329 |
334 |
339 |
344 |
|
|
8月 |
139 |
170 |
199 |
226 |
252 |
252 |
274 |
292 |
308 |
320 |
328 |
333 |
338 |
|
|
|
9月 |
139 |
170 |
199 |
226 |
252 |
274 |
292 |
308 |
320 |
328 |
333 |
338 |
|
|
|
|
10月 |
145 |
175 |
203 |
230 |
256 |
276 |
294 |
310 |
322 |
330 |
335 |
|
|
|
|
|
11月 |
150 |
179 |
207 |
234 |
258 |
278 |
296 |
312 |
324 |
332 |
|
|
|
|
|
|
12月 |
154 |
183 |
211 |
236 |
260 |
280 |
298 |
314 |
326 |
|
|
|
|
|
|
|
13月 |
158 |
187 |
213 |
232 |
262 |
282 |
300 |
316 |
|
|
|
|
|
|
|
|
14月 |
162 |
189 |
215 |
240 |
264 |
284 |
302 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
15月 |
164 |
191 |
217 |
242 |
266 |
288 |
|
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※スマホの方は左にスライドできます。
後遺障害慰謝料は、治療を尽くしても一定の後遺症が残り、これが後遺障害と認められる場合の精神的苦痛に対する慰謝料です。
後遺障害慰謝料は該当する等級ごとに慰謝料額の目安が示されています。
後遺障害慰謝料を請求するには、後遺障害認定を受ける必要があります。後遺障害が認定されるには、以下4つの条件を満たさなければいけません。
後遺障害が認められるのは、後遺症発症が事故によるものと認められるときです。そのため、極めて低速度で追突されたり、事故自体の規模が小さかったりする場合には、症状が発症していたとしても非該当とされることもあります。
追突を受けたとしても、加害者の車は低速度で車に軽い傷がついた程度の被害状況では、後遺障害認定を受けるのは難しいかもしれません…。
後遺障害の等級認定を受けるためには、受傷直後から症状が断定(症状固定)されるまで、整形外科等の医師の治療を継続して受けている必要があります。
例えば事故直後から1ヶ月まったく通院していなかったり、2週間に1回程度の通院、整骨院等の通院のみで医師の治療を受けていなかったりする場合は、等級認定を受けられない場合があります。
事故直後から症状固定まで、症状が一貫・連続(痛むところが一定、毎回違う症状が出ていない)していることが必要です。
例えば、交通事故当初は、左足の関節が痛んでいたけれど、交通事故から5ヶ月経つと右足の痛みを訴えるようになったり、1ヶ月おきに別の箇所に痛みが出たりなど、一貫性や連続性がないと非該当となることがあります。
そもそも後遺障害というくらいなので、残った症状がそれなりに重いことが必要になります。
例えば、頚部の『コリ』『違和感』『だるさ』などの症状では、後遺障害として認められない可能性が高くなります。また、基本的に、後遺障害は一過性のものではなく、慢性症状であることが基本です。
これらを総合的に考慮して、後遺障害等級14級に該当するかどうかが判断されます。
後遺障害認定を受けるには、『事前認定』と『被害者請求』の2種類の申請方法があります。
後遺障害の申請方法 |
|
事前認定 |
加害者の保険会社に一括して手続きを行ってもらえる申請方法 |
被害者請求 |
被害者自らが手続きを行う申請方法(弁護士に依頼可能) |
被害者請求は、被害者自身が自らの後遺症状を明確化するための資料を用意して送付できるので、後遺障害が認定される可能性が比較的高いのがメリットです。ただ、この手続きは手間だけでなく知識も必要になるので、準備に時間がかかるのが難点です…。
したがって、十分な立証活動をしたうえで、後遺障害等級認定を受けたいと思うのであれば、弁護士への相談を検討した方がよいでしょう。弁護士に被害者請求を任せるのが、最も認定率が高い認定方法になります。
後遺障害等級14級と認定されるのは以下のとおりです。
等級
後遺障害
保険金(共済金)額
第十四級
1. 一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
2. 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
3. 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
4. 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
5. 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
6. 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの
7. 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの
8. 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
9. 局部に神経症状を残すもの75万円
引用元:国土交通省|遺障害等級及び限度額
目を閉じた際に角膜を完全に覆うことができるけど、白目が露出している程度のものです。まつげはげとは、まつげの生えている周縁の1/2以上にわたってまつげのはげを残すものといわれています。
歯科補綴(しかほてつ)とは、完全に無くしている、または、著しく欠損した歯に対する補綴をいいます。
一耳の平均純音聴力レベルが40db以上70db未満の状態をいいます。簡単にいうと、小声でささやかれる程度では聞こえない状態です。
手の指までを含む肘関節以下の部分を「上肢」といいます。醜いあとの明確な基準はありませんが、誰が見てもひどい状態とお考えください。
足の指までを含む足膝関節以下の部分を「下肢」といいます。4同様、誰が見てもひどい状態とお考えください。
片手の指の骨の一部を失っていることがエックス線写真などで確認できる状態をいいます。
次の2点に該当することをいいます。
遠位指節間関節とは、指の途中の関節のうち、指の先端に近いほう(=遠位)の関節のこと。これが曲がらなくなった状態をいいます。
損傷と原因が明らかで、自由に屈伸ができない、またはこれに近い状態にあるものをいいます。
具体的には、次の場合がこれに該当します。
片足の指を切断したもの、又は遠位指節間関節または近位指節間関節が無くなったもの
中足指節関節又は近位指節間関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されるもの
少しわかりにくいかと思いますが、大まかに言うと足の指が切断される、あるいは半分しか動かない状態であるとお考えください。
医学的に説明できることが前提となるような神経症状といわれていますが、どんな症状が神経症状として認められているかという明確な基準や規定はないのが現状です(他覚症状がないむちうちや高次脳機能障害などがあてはまります)。
後遺障害等級14級として認定されたあと、保険会社から指示された慰謝料の額が明らかに少ないと感じた場合は、弁護士に依頼することで、後遺障害の慰謝料と逸失利益の増額が期待できます。
加害者の保険会社が提示する賠償金の金額が低いという話は、決してウソではありません。保険会社も営利組織なので、交通事故の被害者に対して最初に提示される賠償金額が、法律上請求することのできる最高額になることはまずありません。
ですから、適正な額の慰謝料を獲得したいのであれば、弁護士を雇って弁護士基準で請求を行うべきです。後遺障害が関与する事故では、弁護士費用よりも弁護士基準での増額分の方が大きくなりやすいので、まずは相談だけでも検討されてみることをおすすめします。
今回は交通事故における後遺障害等級の、14級の慰謝料に関することをお伝えしました。
その他の後遺障害等級に関しては、『後遺障害認定を受けるまでの流れや非該当となった場合の対処法を解説』をご覧いただければ、詳しく内容を把握することができますので、参考にしていただければと思います。
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