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後遺障害等級10級となる症状と慰謝料の相場

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
後遺障害10級

後遺障害等級10級に認定された場合、その後遺障害が与える労働能力喪失率は27%と設定されており、後遺症が残った場合はいよいよ実生活にも多大な影響を与える症状が多くなってきます。
今回は後遺障害等級10級に該当する症状と、獲得できる慰謝料の相場をご紹介します。

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目次

後遺障害等級10級と判断される症状一覧

下記の表に後遺障害等級10級となる後遺障害をまとめましたので、ますはどんな症状が該当するのかをご確認ください。
 

後遺障害等級『第10級』と保険金限度額

等級

後 遺 障 害

自賠責
保険金額

労働能力喪失率

第10級

1号:1眼の視力が0.1以下になったもの

190万円

27%

2号:正面を見た場合に複視の症状を残すもの

3号:咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの

4号:14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

5号:両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの

6号:1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの

7号:1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの

8号:1下肢を3センチメートル以上短縮したもの

9号:1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの

10号:1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

11号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

1号:1眼の視力が0.1以下になったもの

交通事故が原因で視力が0.1程度になった場合に認定されます。視力が落ちた目は左右どちらであっても等級の区別はありません。
 

2号:正面を見た場合に複視の症状を残すもの

正面を見た際に物が二重に見える“複視”という症状が残ってしまった場合に認定されます。複視には眼球そのものに問題がある“乱視”と、眼球のピントを調節する筋肉や神経に障害があることで起きるものがあります。
 
単に“複視”と呼ばれるのは後者ですが、片目を瞑って見ても物が二重に見えれば、眼球に問題がある「乱視」になり、片目の場合は物がはっきり見え、両目だと二重に見える症状であれば、複視である可能性が高いといえます。
 

3号:咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの

簡単に言うと、食べ物を噛んで飲み込む機能と言葉を話す機能に障害が残った場合に認定される症状です。両方とも口や顎あるいは舌といった部位を使う機能ですので、咀嚼機能に障害が出れば言語機能にも影響が出てくるのはよくあるケースです。ただ、咀嚼機能と言語機能のどちらか一方の機能に問題が残った場合に認定されます。
 
具体的な基準として明確になっているものはありませんが、咀嚼機能の場合、ご飯などの柔らかいモノは食べられるが、せんべいなどの “歯ごたえがある食材”は食べられない程度のものとされています。
 
言語機能の方は以下の4種類の発音方法のうち、1種類の発音方法が出来なくなった場合とされています。
 
口唇音:ま行、ぱ行、ば行、わ行、ふ
歯舌音:な行、た行、だ行、ら行、さ行、しゅ、ざ行、じゅ
口蓋音:か行、が行、や行、ひ、にゅ、ぎゅ、ん
咽頭音:は行
 
一つでも高い等級を獲得したい場合は医師とよく話し合う必要があります。
 

4号:14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

「歯科補綴(しかほてつ)」とは、歯科に掛かって治療したものですが、認定されるのは永久歯のみで乳歯は対象外です。
 

5号:両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの

具体的な検査レベルだと純音聴力レベル40dB以上で、言葉として聴き取れる明瞭度が最高70%以下とされています。
 

6号:1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの

6号は5号と似た部分がありますが、片耳が接するほど近寄って会話をしなければ声が届かないレベルまで悪化したような、大声も聞こえない程度の障害とされています。この検査レベルは純音聴力が80dB ~ 90dB未満のものです。
 

7号:1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの

片手の親指か親指以外の指2本に障害が残ったケースで認定される後遺障害です。詳しくは医師の診断を受けたほうがよいでしょう。
 

8号:1下肢を3センチメートル以上短縮したもの

具体的には、片足の長さが3cm以上、5cm未満短くなってしまった場合は後遺障害が第10級8号となり、もし5cm以上短くなってしまった場合は後遺障害等級8級の5号になります。
 
 

9号:1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの

足の指を切断してしまった足は、左右どちらの足でも関係ありません。
 

10号・11号:1上肢(下肢)の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの|

1上肢の3大関節とは、腕の場合は「肩」「肘」「手首」を指し、足の場合は「股関節」「膝」「足首」になります。この関節が正常に動かなければ日常生活に大きな支障が出てくる可能性が大きくなります。>

後遺障害等級10級で獲得できる慰謝料の相場

後遺障害等級10級が認定された場合の後遺障害慰謝料と、損害賠償の相場は以下の表のようになっています。
 

項目

金額

自賠責保険の後遺障害慰謝料額

190万円

(187万円)

弁護士基準の後遺障害慰謝料額

550万円

労働能力喪失率

27/100

 

慰謝料について一点覚えておいて欲しいのは、一般的に言われている「慰謝料額8,000万円」などの高額な金額は、交通事故における損害賠償のことを指しており、【治療費用+入院雑費+休業損害+入通院慰謝料+後遺障害慰謝料】の総額である損害賠償額を慰謝料と呼んでいたりします。
 
混同していることで慰謝料と損害賠償の計算結果に違和感をおぼえる可能性もあるため、知識として覚えておくとよいでしょう。

交通事故の慰謝料に含まれるもの

請求項目

内容と慰謝料の相場

入通院慰謝料

1日あたり4,300円
自賠責保険の場合・・・
・通院1ヶ月につき10~20万円
・入院1ヶ月につき約30~50万円

後遺障害慰謝料

自賠責保険の後遺障害等級第10級では190万円

死亡慰謝料

一家の大黒柱:2,600~3,000万円
これに準ずる者(配偶者):2,300~2,600万円
それ以外の者:2,000~2,400万円

入通院慰謝料の算定方法

一般的な入通院慰謝料には下記のような計算式で求めることができます。

  • 入院期間+通院期間
  • 実通院日数(入院期間+実際に通院した日数)×2

この2つの計算式を比べて日数が少ない方を採用します。
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
交通事故の治療で80日間入院し、
通院期間が180日間(実際は90日)だった場合
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・1:80+180=260日
・2:170×2=340日
となり、260日 × 4300円=1,118,000円
 

自賠責保険における後遺障害慰謝料

第1級

第2級

第3級

第4級

第5級

第6級

第7級

1,150万円

(1,100万円)

998万円

(958万円)

861万円

(829万円)

737万円

(712万円)

618万円

(599万円)

512万円

(498万円)

419万円

(409万円)

第8級

第9級

第10級

第11級

第12級

第13級

第14級

331万円

(324万円)

331万円

(245万円)

190万円

(187万円)

136万円

(135万円)

94万円

(93万円)

57万円

32万円

後遺障害等級10級の損害賠償の計算

交通事故の場合に加害者側に請求できる費目については、以下にあるものが一般的です。
 

治療関係費

治療費や入院費が該当

看護料

通院付添費:2050円/日

入通院慰謝料

4300円/日

入院雑費

1500円/日

通院交通費

通院に要した交通費など

その他

将来介護費・装具購入費・学費・家庭教師代など

休業損害

5700円/日

傷害慰謝料

入通院期間に基づいて算定(あまりにも入院などが長い場合)

逸失利益

後遺障害が残ったことで失われた利益
【逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×中間利息控除係数】

後遺障害慰謝料

後遺障害が認定された場合に請求

 
今回はモデルとして以下の人物を想定し、損害賠償金を計算していきます。
 
<<モデルケース>>
40歳の会社員が交通事故に遭遇。
入院80日。通院日数180日間(実際は90日)
事故前の年収600万円
後遺障害等級10級に該当
付添人は妻が担当したと仮定
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 

看護料の計算

配偶者(妻)は近親者となるので、
看護料=2,050円 × 90日(実通院数) = 118万4,500円
 

休業損害の計算

今回のモデルケースでは、年収600万円ですので、月給に換算すると約50万円になり、入院期間は90日ですので約3ヶ月です。休業損害とは、入院や通院で仕事を休んだ場合に受けた損害を請求するもの。
休業損害=50万円 × 3ヶ月=150万円
 

逸失利益の計算

逸失利益とは、後遺障害が残ったことで、本来受け取れるはずだった利益のことです。
 
計算式は【逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×中間利息控除係数】で求めることができ、まずは労働能力喪失率を以下の表を参考に算定していきます。
 

表:労働能力喪失率表

後遺障害等級

労働能力喪失率

後遺障害等級

労働能力喪失率

第1級

100/100

第8級

45/100

第2級

100/100

第9級

35/100

第3級

100/100

第10級

27/100

第4級

92/100

第11級

20/100

第5級

79/100

第12級

14/100

第6級

67/100

第13級

9/100

第7級

56/100

第14級

5/100

 
次に67歳で定年退職をすると仮定して、現在の年齢から中間利息控除額を算定していきます。
被害者は現在40歳と仮定しましたので、27年の欄を参考にします。


表:中間利息控除係数(ライプニッツ係数)

喪失期間(年)

ライプニ
ッツ係数

喪失期間
(年)

ライプニ
ッツ係数

喪失期間
(年)

ライプニ
ッツ係数

喪失期間
(年)

ライプニ
ッツ係数

1

0.9524

18

11.6896

35

16.3742

52

18.4181

2

1.8594

19

12.0853

36

16.5469

53

18.4934

3

2.7232

20

12.4622

37

16.7113

54

18.5651

4

3.546

21

12.8212

38

16.8679

55

18.6335

5

4.3295

22

13.163

39

17.017

56

18.6985

6

5.0757

23

13.4886

40

17.1591

57

18.7605

7

5.7864

24

13.7986

41

17.2944

58

18.8195

8

6.4632

25

14.0939

42

17.4232

59

18.8758

9

7.1078

26

14.3752

43

17.5459

60

18.9293

10

7.7217

27

14.643

44

17.6628

61

18.9803

11

8.3064

28

14.8981

45

17.7741

62

19.0288

12

8.8633

29

15.1411

46

17.8801

63

19.0751

13

9.3936

30

15.3725

47

17.981

64

19.1191

14

9.8986

31

15.5928

48

18.0772

65

19.1611

15

10.3797

32

15.8027

49

18.1687

66

19.201

16

10.8378

33

16.0025

50

18.2559

67

19.2391

17

11.2741

34

16.1929

51

18.339

 

 

 
逸失利益=
基礎年収600万円 × 0.27 × 14.643 = 2371万1660円
 

後遺障害等級10級の損害賠償計算例

  • 入通院治療費・・・・・・300万円<
  • 後遺障害慰謝料・・・・・190万円(自賠責基準)
  • 後遺障害診断書作成料・・1万5000円
  • 入通院慰謝料・・・・・・109万2000円
  • 付き添い看護料・・・・・18万4500円
  • 入院中雑貨・・・・・・・13万5000円(1500円×90日)
  • 休業損害・・・・・・・・150万円
  • 逸失利益・・・・・・・・2371万1660円
  • 入通院交通費・・・・・・2万円(必要なバス・電車代など)
  • 衣料損害費・・・・・・・3万円(購入時の時価)

合計:3155万1660円

適切な後遺障害等級の認定を受ける為のポイント

後遺障害等級の認定は、すべて書面での判断になりますので『後遺症がどの級のどの号の要件に当てはまっているのか』『その後遺症には交通事故との確かな因果関係があるか』などをあなたが提出したから書面からすべてを判断することになります。

つまり、後遺障害診断書等に、等級の基準や要件に沿わない症状がどんなに書かれていても等級が認定されることはまずありません。
 

交通事故との因果関係を証明する

後遺症を交通事故が原因でなったという因果関係の説明は、医師の「交通事故によるもの」という診断書だけでは不十分です。

  • 本当に交通事故で患った症状なのか
  • 交通事故の前からあった症状ではないのか
  • 交通事故の後に交通事故とは関係ない理由で発症していないか など

自賠責の調査事務所は色々な角度から因果性を見てきますので、医師と協力して「適切な後遺障害診断書を書く」ことが重要になってきます。
 

保険会社の「症状固定にしましょう」に応じないこと

交通事故で負ったケガが治療やリハビリを継続した結果、「もうこれ以上は改善の余地がない」という状態を「症状固定」といいます。治療を始めてから症状固定と認められるまで、治療費や休業損害を相手方の保険会社から受け取ることができますが、症状固定になると保険会社からの支払いは打ち切られてしまいます。
 
このとき、保険会社から「もう症状固定にしましょう」といった提案が来ますが、安易に同意してしまうと、適切な後遺障害等級が認定されないどころか、治療費なども受け取れなくなる可能性がたかまりますので、まだ症状が安定しない時期に決めてしまうのは非常に危険です。

後遺障害を証明する検査をできるだけ行う

レントゲン画像などで異常な箇所がわかれば問題はないのですが、この画像所見がないと”証明”が難しくなります。特にむちうちなど、神経に損害がある場合に多くありますので「ジャクソンテスト」や「スパーリングテスト」など、「むちうちなどの症状がわかりにくい場合」にこういった検査を実施したい旨を、医師に相談してみるがよいでしょう。
 

後遺障害等級の申請は被害者請求で行う

これがもっとも有効な方法と言えますので、ぜひおすすめしたいのですが、後遺障害の申請を「被害者請求で行う」ことです。

通常は相手方の保険会社が後遺障害の申請手続きなどのすべてを行ってくれますが、相手の保険会社はあなたに支払う保険金をできるだけ定額にしたい、もっといえば払いたくはないと考えているので、望む結果が出るとは限りません。

損害賠償額の増額を狙うなら弁護士に依頼するのがベスト

これまで計算してきた慰謝料や損害賠償額は、あくまでも自賠責保険基準で算定した結果であり、最低限の保証しか得られない基準となっています。これを弁護士基準で計算するだけで、慰謝料や損害賠償金は大幅にアップします。
 
表:基準別の後遺障害慰謝料の違い(上:自賠責、下:弁護士)

第8級

第9級

第10級

第11級

第12級

第13級

第14級

331万円

(324万円)

331万円

(245万円)

190万円

(187万円)

136万円

(135万円)

94万円

(93万円)

57万円

32万円

830万円

690万円

550万円

420万円

290万円

180万円

110万円


 

表:通常の弁護士基準による入通院慰謝料の表(単位:万円)

 

入院

1月

2月

3月

4月

通院

 

53

101

145

184

1月

28

77

122

162

199

2月

52

98

139

177

210

3月

73

115

154

188

218

4月

90

130

165

196

226

5月

105

141

173

204

233

6月

116

149

181

211

239

7月

124

157

188

217

244

8月

139

170

199

226

252

9月

139

170

199

226

252

10月

145

175

203

230

256

11月

150

179

207

234

258

12月

154

183

211

236

260

13月

158

187

213

232

262

14月

162

189

215

240

264

15月

164

191

217

242

266

 

表:むち打ち症で他覚症状がない場合に適用される入通院慰謝料表(単位:万円)

 

入院

1月

2月

3月

4月

通院

 

35

66

92

116

1月

19

52

83

106

128

2月

36

69

97

118

138

3月

53

83

109

128

146

4月

67

95

119

136

152

5月

79

105

127

142

158

6月

89

113

133

148

162

7月

97

119

139

152

166

8月

103

125

143

156

168

9月

109

129

147

158

169

10月

113

133

149

159

170

11月

117

135

150

160

171

12月

119

136

151

161

172

13月

120

137

152

162

173

14月

121

138

153

163

174

15月

122

139

154

164

175

・後遺障害慰謝料:190万円 → 550万円
・入通院慰謝料 :111万8,000円 → 211万円(148万円)
 
後遺障害等級の適切な獲得のための保険会社との交渉も行ってくれますので、交通事故のあらゆる被害で損をしないためには、弁護士に依頼されることをご検討ください。

まとめ

後遺障害等級10級の関する内容は以上になります。今回の内容が、保険会社との交渉などにお役に立てば幸いです。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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