事故の状況
被害者は、自動車で交差点の横断歩道を通過する際に、交差点に進入しようとした貨物自動車と衝突しました。この事故で被害者は頭部や全身に強い衝撃を受け、外傷性くも膜下出血や胸部、腰部、下肢の多発骨折などの重傷を負いました。その結果、事故から約1年後に亡くなりました。
依頼内容
本件について、相手方の保険会社は貨物自動車の対面信号が「青」であったと主張し、事故の過失については被害者側に責任があり、ご遺族が受け取った自賠責保険金のほかには支払うべき金額はないと主張していました。
ご遺族はこの主張に納得できないとのことでご相談に来られました。
対応と結果
事故現場付近の防犯カメラ映像を確認したところ、被害者が赤信号で交差点を横断しようとしている場面が映っており、対面信号が赤であることが判明しました。一方、相手側の対面信号は映っておらず、信号周期や周囲の自動車の進行状況を元に推測する必要がありました。
事故当時の信号の組み合わせについては、いくつかのパターンが考えられるものの、当初から保険会社は、相手の貨物自動車の対面信号が「青」であったと主張し、ご遺族が受け取った自賠責保険金以外には支払う金額はないとしていました。そのため、主に過失割合を争点として提訴することとなりました。
本件では、自賠責保険金の受け取ってから提訴するという通常とは異なる対応を選びました。この判断には以下の理由がありました。最悪の場合、訴訟での認定額が自賠責保険金の額を下回る可能性があり、事前に自賠責保険金を確保する必要があったのです。
① 過失割合が大きくなるおそれがあった
この事故では、被害者の対面信号の色は確定しましたが、相手の信号色は確定していませんでした。これにより、被害者の過失割合が大きくなるリスクがあり、過失割合が大きくなると十分な賠償金を得られない可能性がありました。
② 被害者が高齢だった
被害者は死亡時に90歳近い年齢であり、この年齢を考慮すると認定される逸失利益の額が少なくなると予想されました。
裁判では以下のことが争点になりました。
① 生活費控除率
被害者は年金受給者であり、年金における生活費控除率が争点となりました。裁判所は、生活費控除率を50%とする和解案を提示しました。
② 慰謝料
死亡慰謝料と遺族固有の慰謝料の金額が争われましたが、裁判所は遺族固有の慰謝料を含めて2,800万円の慰謝料を提示しました。
③ 過失割合
被害者が赤信号で横断していたことが明確になり、貨物自動車の信号色については、専門家の意見書を基に議論が行われました。意見書に食い違いが見つかり、それを指摘することで保険会社の主張は不合理であると主張しました。その結果、裁判所は貨物自動車の対面信号が「黄」であったと認定し、被害者の過失割合を30%と評価しました。
最終的に、双方が裁判所の和解案を受け入れ、約1000万円の追加支払いを受けて和解を成立することができました。