自動運転車による交通事故、一体誰の責任?明治大学の中山教授に取材

~いざという時の備えに~交通事故マガジン

交通事故弁護士ナビTOP > 交通事故マガジン > 交通事故の責任 > 自動運転車による交通事故、一体誰の責任?明治大学の中山教授に取材
キーワードからマガジンを探す
Sidebar writer recruit
交通事故マガジン
公開日:2020.10.26  更新日:2020.10.29
交通事故の責任 弁護士監修記事

自動運転車による交通事故、一体誰の責任?明治大学の中山教授に取材

2020年4月、道路交通法と道路運送車両法の2つが改正され、公道でのレベル3の自動運転走行()が解禁となりました。

レベル3の自動運転…規定条件下では、ドライバーの監視なしでシステムによる運転が可能。ただし、緊急時にはドライバーが操作を行う。

改正道路運送車両法…自動運転車両の状態や事故発生時のデータを記録する「作動状態記録装置」の設置が必須となる。

改正道路交通法…自動運転時に一部運転以外の操作が可能となる。自動運転車の状態や事故発生時のデータを記録しなければならない。(参考:自動運転ラボ

交通事故削減のため、これからさらに自動運転車の研究が進み、普及していくことが見込まれます。

そこで気になるのが、もしも自動運転車による交通事故が起きた場合、誰の責任になるのか?という点。

交通事故弁護士ナビ編集部では、自動運転に関する法整備や司法制度に関する研究を行っている明治大学の中山教授に、詳しくお話を伺いました。

インタビューしたのは…

 

明治大学専門職大学院法務研究科(法科大学院)

中山 幸二 教授

日本民事訴訟法学会理事、仲裁ADR法学会理事、法科大学院協会事務局長を歴任。(公益財団法人)自動車製造物責任相談センター審査委員会委員長。自動車技術会HMI委員会幹事。明治大学自動運転社会総合研究所・前所長。法律学の観点から自動運転に関わる法整備と事故原因究明に向けた活動を行っている。

 

これからは自動運転車があたりまえの時代になる?

アシロ取材班

自動運転の普及について、中山教授のお考えをお聞かせください。ちなみに、完全自動運転車(人間による運転操作がまったく必要ない車)は、2030年には一般的になるだろうとの声がありますよね。

中山教授

確かに「2030年までに完全自動運転の車が普及する」といった説はありますが、日本において完全自動運転の車と人が運転する車が一般的な道路を並走することは難しいかもしれません。 完全自動運転の車と人が運転する車が走る区間を分けるなどの対策があれば可能でしょう。

アシロ取材班

今話題のサポカー(高齢者向けの安全運転サポート車)も自動運転車の一種ですし、自動運転レベル2の車はもうどんどん売り出されていますね。

中山教授

サポカーには、急発進防止装置やアクセルブレーキの踏み間違い防止装置などが備わっています。仰るようにこれらは自動運転の機能です。 国際的には自動運転に関してレベル1からレベル5までを定義しており、人間の運転をサポートする程度によってレベル分けされていますが、レベル2までの自動運転車は2020年になって非常に多く出てきました。 レベル3からは一定の区間において手を離して運転が可能になり、運転の中心をシステムが担うことになります。2020年4月1日に施行された道路交通法改正よって、レベル3の自動運転車も道路を走れるようになりましたね。 認証基準もできましたので、レベル3の車はもうすぐ売り出されるのではないかといわれていますよ。

 

自動運転車が起こした交通事故の責任は一体誰に?

アシロ取材班

自動運転レベル3の車が走行するための法整備はできているということですね。自動運転で交通事故が減るという見方もありますが、自動運転で交通事故が起こった場合の責任に関する議論もあるのではないでしょうか。

中山教授

今までは、交通事故が起きた場合の責任は基本的に運転手にありました。しかし、認知・判断・操作の全てを機械が行う状態になれば話は変わってくるでしょう。 対人については被害者の救済を目的とした自賠法という法律がありますが、これらは運転手に不注意や運転ミスがなかったとしても賠償責任を負わせることになります。 自動運転で走行していた場合には運転手が保険などを利用して一旦支払った後に、車に欠陥があれば運転手または保険会社などが自動車メーカーに支払いを求めるといったこともあるかもしれません。

アシロ取材班

なるほど。「メーカーに責任がある」と判断する場合もあり得るということですね。

 

完全自動運転車が走行するためには法改正が必要?

 

アシロ取材班

レベル3の自動運転車は法で裁くことができるということですが、これから自動運転レベル4〜5が普及していく上で、やはり法改正は必要でしょうか。

中山教授

法改正が必要になるでしょうし、道路交通条約の改訂も必要かもしれません。先ほどご説明した通り、現在の法律では自動運転レベル3までの車の走行が認められています。

アシロ取材班

つまり、”自動運転レベル4〜5用の法律”があってはじめて、一般的な走行が可能になるわけですね。

中山教授

はい。ちなみに自動運転レベル4の実現は早いのではないかと考えられています。 例えば現在、路面電車のように一定の時間に一定の場所を走る環境であったり、鉄道廃線跡地を整備した道路のように他の車両が入ってこない環境であったりすれば、試験的な走行も可能です。

 

自動運転システムのミスで交通事故が起こる可能性はゼロではない?

アシロ取材班

完全自動運転は人的ミスが減ることで交通事故が起こりにくいと想定されていますが、安全面ではどのような問題があげられますか?

中山教授

歩行者が飛び込んでくるなど、走行車側に責任がない状態での交通事故が起きるリスク機能の限界でドライバーに権限委譲するときに対応できなかった場合のリスクが問題点としてあげられるのではないでしょうか。 後者については、技術部門とエンジニアはドライバーの居眠り防止アラームなど、ドライバーを監視するシステムの開発を進めています。

アシロ取材班

自動運転に限りませんが、交通事故削減のためには歩行者の交通マナーも大きく関わってきますよね。自動運転では誤作動が起こるのではないか?という意見も見聞きします。中山教授のお考えをお聞かせください。

中山教授

誤作動については、どこから誤作動と認識するかという問題もありますが、設計者が予想できない欠陥が発生する可能性はゼロではありません。 製造過程において問題があった場合や取扱説明書の内容が不十分だった場合などには、やはりメーカーが責任を負うことになるでしょうね。 現在ではバグに対応してバックアップ機能を搭載していますが、搭載されている電子回路やコンピューターには元々バグというものがありますから、決して交通事故が起こらないと言い切ることは難しいかもしれません。 また、サイバー攻撃を受けた際には誤作動が起きることがあり、これは機械を使っている限りは避けられないことです。再現不能なバグが発生して交通事故が起きた場合には、運転手とメーカーのどちらにも過失がないという考え方もできるでしょう。 責任を誰も問われない状況になる可能性もあるかもしれません。

アシロ取材班

現状では、自動運転だからといって交通事故をゼロにすることは難しいということですね。ただし、開発者の方々は交通事故ゼロを目指して開発に挑んでいるとのことですから、これからの発展が楽しみです。

 

自動運転車のログが裁判において重要な証拠になる?

アシロ取材班

責任の問われ方については、これからの法改正でしっかり定められることになるかもしれませんね。

中山教授

自動運転にはたくさんの機能が備わっており、誤作動が起きたか、人的ミスが起きたかなどはログに詳細が残ります。いわゆるフライトレコーダーのようなものと捉えてください。 ログデータと映像記録が極めて重要です。現在もEDR(作動状態記録装置)()の解析記録とドライブレコーダーの映像が裁判に提出されることもありますから、自動運転のログも裁判に使われることがあるかもしれません。

エアバッグの展開を伴う衝突などの事象の前後の時間において、車両速度等の車両状態に係わる情報 を時系列で記録する装置または機能がある。 これをイベント・データ・レコーダ(Event Data Recorder 、 以下「EDR」という。)

(引用:交通事故総合分析センター

 

アシロ取材班

ログから解析ができるなら、仮に人的ミスが原因で起きた交通事故の場合は車のせいにしたり、言い逃れしたりといったことはできなくなりますね。

中山教授

そうですね。ログによって交通事故原因はより明確になり、これに伴い、交通事故の過失割合(交通事故においてお互いの過失を割合で示したもの)もより細かく認定されるのではないでしょうか。

アシロ取材班

交通事故状況が細かくわかることで今後の対策がしやすくなり、再発防止にもつながりますね。

中山教授

自動運転車の開発は交通事故を減らすことを主な目的としています。自動ブレーキが開発されたことによって実際に交通事故件数は減っていますから、これから自動運転車の普及に比例して、交通事故による死亡者数も減っていくと考えています。

この記事の監修者
アシロ 社内弁護士
株式会社アシロの社内弁護士が監修しました。
編集部

本記事は交通事故弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※交通事故弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

交通事故の責任に関する新着マガジン

交通事故の責任に関する人気のマガジン


交通事故の責任マガジン一覧へ戻る