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交通事故の行政処分|加点制度と免許停止・免許取消についての全知識

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公開日:2020.7.7  更新日:2020.7.7
交通事故の責任 弁護士監修記事

交通事故の行政処分|加点制度と免許停止・免許取消についての全知識

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交通事故の加害者になってしまった場合、3つの責任を負わなければなりません。

それぞれ「行政上の責任」「民事上の責任」「刑事上」の責任です。

 

行政上の責任は、主に自動車運転免許証の点数加算や、それに伴った免許停止や免許取消です。

 

点数の加算の方式や、どれくらい点数が加算されると免許停止・免許取り消しの処分を受けなければならないのか明確でない方も多いのではないでしょうか。また、そもそも行政処分を受けたくない、行政処分の責任から逃れたいと思われている方もいるかもしれません。

 

今回は点数の加算の詳細や、どのような場合に免許停止、免許取消となるのかについて記載します。

 

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交通事故には3つの責任がある

交通事故の加害者は3つの責任を負わなければなりません。ここでは負わなければならない3つの責任についてまずは整理してみましょう。

 

行政上の責任

交通事故における行政上の責任とは、運転免許の取消、もしくは免許停止の処分のことを言います。交通事故を担当する行政は警察と公安委員会です。

 

交通違反と交通事故の行政上の責任の違いについて

交通事故ではなく、交通違反を行った場合も行政上の責任を負わなければなりません。

 

交通事故の行政上の処分は、免許の点数加算により運転免許の取消、もしくは免許の停止処分となりますが、交通違反の場合は、交通反則通告制度により、反則金の支払いと点数の加算よる行政処分を受けます。ただし、重い違反の場合は刑事処分され、罰金を支払う必要があります。

 

反則金と罰金の違いについては「交通違反の点数|正しい計算方法と罰金・反則金の違い」を参考にしてください。

 

民事上の責任

交通事故の加害者になってしまった場合、民法709条、また自賠法3条の運行供用者責任等の規定により、被害者に対して損害賠償をしなければなりません。

 

 

民法709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、

これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

 

自賠法3条

自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

 

具体的には対して与えた損害に応じて、被害者に対して賠償金を支払うことになります。

 

刑事上の責任

交通事故を起こした場合、自動車運転死傷行為処罰法や道路交通法など、法律に則って、懲役(禁錮)や罰金に処せられます。

 

点数制度の仕組み

ここでは具体的に、交通事故の加害者になった時にうける行政処分の点数制度について詳しく見ていきましょう。

 

交通事故の行政処分は点数の減点(正確には累積)

免許の点数は減点方式だと思われているかもしれませんが、日本では「加点方式」が採用されています。

 

運転免許を取得したときは「0点」から始まります。交通違反や交通違反を起こすとその度に違反の内容に応じて点数が加算されていきます。この点数が一定の値に達すると、加算された点数に応じて免許停止・免許取消の対象となります。

 

点数加点の期間

点数の加算は交通事故が発生した日から起算して、過去3年間の点数が計算されます。但しこれには例外が4つあり、以下の場合は、それ以前の点数の加算がされず、リセットされます。

 

①免許を受けている者が過去1年以上の間、無事故、無違反で過ごしたとき。

②運転免許の取消しや停止処分を受けて、無事故、無違反で取消し期間、又は停止期間を過ごしたとき。

③免許を受けている者が軽微な違反行為(3点以下の交通違反)をし、過去2年間に違反行為をしたことがなく、かつ、当該軽微な違反行為をした後、3か月間に違反行為をしたことがないとき。(運転可能期間に限る)

④軽微な交通違反(1点、2点又は3点)を繰り返し、累積点数が6点(交通事故の場合は1回で6点を含む)になり、違反者講習を受講したとき。

参考:国土交通上|違反点数票

 

交通事故状況による点数加点一覧

行政処分として何点加点されるのかは、起こしてしまった事故の状況によります。ここでは交通事故の状況による加点点数を確認してみましょう。

 

物損事故の場合

物損事故とは、人の死傷が無く器物の損壊のみの場合の事故をいいます。物損事故の場合、事故自体による点数の加算はありません。

参考:物損事故の違反点数はゼロ|罰金や処罰に対する知識まとめ

 

注意が必要なのは、物損事故を起こしたときに、交通違反を犯していた場合は、その違反の内容に応じて点数の加算と、反則金を支払う行政処分を受けなければなりません。

交通違反による点数の加算と反則金は「交通違反の点数と反則金一覧」をご覧ください。

 

ただし、物損事故でなくとも家屋やビルなどの建造物を破壊した場合は刑事処分が下される可能性があります。

 

道路交通法116条

車両等の運転者が業務上必要な注意を怠り、又は重大な過失により他人の建造物を損壊したときは、

六月以下の禁錮又は十万円以下の罰金に処する。

 

人身事故の場合

人身事故の場合は、「基礎点数」「交通事故付加点数」「措置義務違反点数」の3つの点数が合算されたものが加点されます。1つずつ見てみましょう。

 

「基礎点数」

基礎点数は人身事故を起こした際に、交通違反を犯していた場合加算されます。点数は以下の一覧の通りですが、同時に複数の違反が行われていた場合は最も点数の高い違反項目が採用されます。

 

違反行為の種別

点数

酒気帯び点数

0.25以上

0.25未満

酒酔い運転

35

 

 

麻薬等運転

35

 

 

共同危険行為等禁止違反

25

 

 

無免許運転

25

 

 

大型自動車等無資格運転

12

25

19

仮免許運転違反

12

25

19

酒気帯び運転

0.25以上

25

 

 

0.25未満

13

 

 

過労運転等

25

 

 

無車検運行等

6

25

16

無保険運行

6

25

16

速度超過

50以上

12

25

 

30(高速40)以上50未満

6

25

16

25以上30(高速40)未満

3

25

15

20以上25未満

2

25

14

20未満

1

25

14

積載物
重量制
限超過

大型等10割以上

6

25

16

大型等5割以上10割未満

3

25

15

普通等10割以上

3

25

15

大型等5割未満

2

25

14

普通等5割以上10割未満

2

25

14

普通等5割未満

1

25

14

放置駐車
違反

駐停車禁止場所等

3

 

 

駐車禁止場所等

2

 

 

保管場所
法違反

道路使用

3

 

 

長時間駐車

2

 

 

警察官現場指示違反

2

25

14

警察官通行禁止制限違反

2

25

14

信号無視

赤色等

2

25

14

点滅

2

25

14

通行禁止違反

2

25

14

歩行者用道路徐行違反

2

25

14

通行区分違反

2

25

14

歩行者側方安全間隔不保持等

2

25

14

急ブレーキ禁止違反

2

25

14

法定横断等禁止違反

2

25

14

追越し違反

2

25

14

路面電車後方不停止

2

25

14

踏切不停止等

2

25

14

しゃ断踏切立ち入り

2

25

14

優先道路通行車妨害等

2

25

14

交差点安全進行義務違反

2

25

14

横断歩行者等妨害等

2

25

14

徐行場所違反

2

25

14

指定場所一時不停止等

2

25

14

駐停車違反

駐停車禁止場所等

2

25

14

駐車禁止場所等

1

25

14

整備不良

制動装置等

2

25

14

尾灯等

1

25

14

安全運転義務違反

2

25

14

幼児等通行妨害

2

25

14

安全地帯徐行違反

2

25

14

騒音運転等

2

25

14

携帯電話使用等(交通の危険)

2

25

14

携帯電話使用等(保持)

1

25

14

消音器不備

2

25

14

高速自動車国道等
措置命令違反

2

25

14

本線車道横断等禁止違反

2

25

14

高速自動車国道等
運転者遵守事項違反

2

25

14

車間距離不保持

1

25

14

免許条件違反

2

25

14

番号表示義務違反

2

25

14

混雑緩和措置命令違反

1

25

14

通行許可条件違反

1

25

14

通行帯違反

1

25

14

路線バス等優先通行帯違反

1

25

14

軌道敷内違反

1

25

14

道路外出右左折方法違反

1

25

14

道路外出右左折合図車妨害

1

25

14

指定横断等禁止違反

1

25

14

進路変更禁止違反

1

25

14

追い付かれた車両の義務違反

1

25

14

乗合自動車発進妨害

1

25

14

割込み等

1

25

14

交差点右左折方法違反

1

25

14

交差点右左折等合図車妨害

1

25

14

指定通行区分違反

1

25

14

交差点優先車妨害

1

25

14

緊急車妨害等

1

25

14

交差点等進入禁止違反

1

25

14

無灯火

1

25

14

減光等義務違反

1

25

14

合図不履行

1

25

14

合図制限違反

1

25

14

警音器吹鳴義務違反

1

25

14

乗車積載方法違反

1

25

14

定員外乗車

1

25

14

積載物大きさ制限超過

1

25

14

載方法制限超過

1

25

14

制限外許可条件違反

1

25

14

牽引違反

1

25

14

原付牽引違反

1

25

14

転落等防止措置義務違反

1

25

14

転落積載物等
危険防止措置義務違反

1

25

14

安全不確認ドア開放等

1

25

14

停止措置義務違反

1

25

14

初心運転者等保護義務違反

1

25

14

座席ベルト装着義務違反

1

25

14

幼児用補助装置使用義務違反

1

25

14

乗車用ヘルメット着用義務違反

1

25

14

大型自動二輪車等乗車方法違反

2

25

14

初心運転者標識表示義務違反

1

25

14

最低速度違反

1

25

14

本線車道通行車妨害

1

25

14

本線車道緊急車妨害

1

25

14

本線車道出入方法違反

1

25

14

牽引自動車本線車道通行帯違反

1

25

14

故障車両表示義務違反

1

25

14

仮免許練習標識表示義務違反

1

25

14

参考:交通違反の点数一覧表

 

交通事故付加点数

交通事故付加点数は、死亡事故、重傷事故、軽傷事故などの交通事故の種類と違反者の責任の軽重(加害者の一方的な不注意で発生したかどうか)により点数が変わってきます。交通事故付加点数は以下の一覧の通りです。

 

交通事故の種類

加害者の責任

点数

死亡事故

重い

20

軽い

13

重症事故(治療期間3ヵ月以上または後遺障害が存するもの)

重い

13

軽い

9

重症事故(治療期間30日以上3ヵ月未満)

重い

9

軽い

6

負傷事故(治療期間15日以上30日未満)

重い

6

軽い

4

軽傷事故(治療期間15日未満)

重い

3

軽い

2

 

措置義務違反点数

措置義務違反点数とはひき逃げの場合に加点される点数です。交通事故を起こしながら、非人道的な行為に対しては別途加算される仕組みになっています。措置義務違反点数は35点となっています。

 

故意の違反をした場合は点数が決まっている。

故意に事故を起こし、被害者が死亡したり受傷した場合には、事故の内容により点数が決まっています。故意の違反の場合の点数は以下の表の通りです。

 

事故の内容

点数

運転殺傷等

運転殺人等

62

 

運転障害等(治療期間3ヵ月以上または後遺障害が存するもの)

55

 

運転障害等(治療期間30日以上3ヵ月未満)

51

 

運転傷害等(治療期間15日以上30日未満)

48

 

運転傷害等(治療期間15日未満)

45

危険運転致死傷

危険運転致死

62

 

危険運転致致死傷(治療期間3ヵ月以上または後遺障害が存するもの)

55

 

危険運転致致死傷(治療期間30日以上3ヵ月未満)

51

 

危険運転致致死傷(治療期間15日以上30日未満)

48

 

危険運転致致死傷(治療期間15日未満)

45

 

もし、措置義務違反を行っていた場合は、上記一覧の点数に35点が加点されます。

 

点数別の免許停止、免許取消一覧

点数が一定の基準に達すると免許停止、もしくは免許取消となります。まずは、免許停止、免許取消の内容について確認しておきましょう。

 

免許停止

免許停止は行政処分として「一時的に免許の効力を停止させられる処分」のことを言います。そのため免許停止の期間が過ぎれば、免許の効力を取り戻すことが出来ますので、再度自動車、バイク等の運転が可能になります。免許停止の期間は加算された点数の値により変動します。

 

免許取消

免許取消は免許を取り上げられる行政処分になります。この際教習所に通うなどして再度一から免許を取り直す必要があります。

 

ただし、免許取消の際には「欠格期間」という制限期間が設けられています。この欠格期間中は免許を再度取り直すことが出来なくなります。

 

点数別の免許停止・免許取消期間一覧

以下に免許停止と免許取消の点数別の期間を記載しておきます。ただし、前例というのは免許の停止・取消を受けた回数のことを言います。またかっこ内の数字は免許取消における欠格期間を表しています。

 

表:点数別免許停止・免許取消期間一覧

  前歴

点数

0回

1回

2回

3回

4回以上

1

 

 

 

 

 

2

 

 

停止90日

停止120日

停止150日

3

 

 

停止120日

停止150日

停止180日

4

 

停止60日

停止150日

取消1年(3年)

取消1年(3年)

5

 

取消1年(3年)

6

停止30日

停止90日

7

8

停止120日

9

停止60日

10-11

取消1年(3年)

取消2年(4年)

取消2年(4年)

12-14

停止90日

15-19

取消1年(3年)

取消2年(4年)

20-24

取消2年(4年)

取消3年(5年)

取消3年(5年)

25-29

取消2年(4年)

取消3年(5年)

取消4年(5年)

取消4年(5年)

30-34

取消3年(5年)

取消4年(5年)

取消5年

取消5年

35-39

取消3年(5年)

取消4年(5年)

取消5年

取消5年

取消5年

35-39

取消3年(5年)

取消4年(6年)

取消5年(7年)

取消6年(8年)

取消6年(8年)

40-44

取消4年(5年)

取消5年

取消5年

取消5年

取消5年

40-44

取消4年(6年)

取消5年(7年)

取消6年(8年)

取消7年(9年)

取消7年(9年)

45以上

取消5年

取消5年

取消5年

取消5年

取消5年

45-49

取消5年(7年)

取消6年(8年)

取消7年(9年)

取消8年(10年)

取消8年(10年)

50-54

取消6年(8年)

取消7年(9年)

取消8年(10年)

取消9年(10年)

取消9年(10年)

55-59

取消7年(9年)

取消8年(10年)

取消9年(10年)

取消10年

取消10年

60-64

取消8年(10年)

取消9年(10年)

取消10年

65-69

取消9年(10年)

取消10年

70以上

取消10年

 

免許取消の際の再取得方法

免許取消処分を受け、再度免許を取得しようとする場合には、まず「取消処分者講習」をかならず受講しなければなりません。費用は30,550円で、日程は2日間、計13時間の講習です。

 

また取消処分者講習は、免許試験を受ける1年以内に受講する必要があります。

 

免許再取得の2つの方法

免許の再取得は自動車学校で行うか、運転免許試験場で行うかの2通りがあります。

 

自動車学校での免許再取得

自動車学校での再取得する場合、通常の免許取得と同じように仮免許試験と本免許試験に合格する必要があります。ただし、仮免許は欠格期間中でも取得ことができます。また、本免許試験では技能試験が免除されます。

 

運転免許試験場で免許再取得

運転免許試験場で免許を再取得することもできます。運転免許試験場での取得には、本試験の前に10時間の路上運転練習と、座学や高速講習などを行う必要があります。また、技能試験は減点基準に達すると、即試験終了となり、自動車学校での再取得に比べてハードルが高く設定されています。

 

免許停止・免許取消処分に不服の時

90日以上の免許の停止処分の場合や、免許の取消処分の場合は、公安委員会は意見の聴取をしなければならないことになっています。そのためこの意見の聴取手続きの際に弁明をすることができます。

 

さらに処分を知った日の翌日から60日以内に公安委員会に対して書面にて異議申立てが出来ますし、処分取消の訴えを裁判所にすることもできます。

 

行政処分の取消はできない

もし仮に、事故発生時に被害者に受傷がなく、物損事故として処理されたのちに、被害者が後日病院でむち打ちなどと診断され、警察に対して人身事故の届け出を提出した場合、事故当初は物損事故として扱われている為、行政上の処分は下されませんが、人身事故に変更された場合、行政上の処分を下されることになります。

 

この時被害者と交渉して、人身事故への切り替えを取り下げてもらえることはできるのでしょうか。

 

答えとしては取り下げてもらうことはできません。行政上の処分は、故意にしても不注意にしても、法律を犯して危険な運転をした加害者を処罰することにより、社会的な利益にもつながっています。加害者と被害者だけの問題ではありません。

 

警察への届け出は事実をありのまま報告するようにしましょう

 

まとめ

交通事故の際の行政処分に関してご理解いただけましたでしょうか。

 

交通事故の加害者になってしまった場合、刑事処分と民事処分も併せて受けなければなりません。それぞれどのような処分を受ける必要があるかについては「人身事故ガイド|交通事故の違反点数や罰金と示談交渉の知識」を確認してください。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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