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交通事故の刑事処分|刑事処分の内容と加害者ができる対応

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公開日:2020.7.7  更新日:2022.3.15
交通事故の責任 弁護士監修記事

交通事故の刑事処分|刑事処分の内容と加害者ができる対応

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刑事処分とは、交通事故の加害者が負う3つの処分の内の1つで、罰金や懲役または禁錮のことを言います。刑事処分の対象は人身事故(被害者が事故の影響で死亡したり、ケガを負った場合)であり、物損事故(自動車が破損した場合)のみであれば刑事責任を負うことはありません。

交通事故の刑事処分にはどのようなものがあるのか、またもし加害者になってしまった場合に減刑をするための手段があるのか明確ではない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は交通事故の刑事処分の内容と、加害者が出来る減刑のための対策について詳しく見ていきましょう。

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交通事故の刑事処分とは

交通事故の刑事処分の元になる法律は、基本的には、刑法、道路交通法、平成26年5月20日より施行された「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下自動車運転処罰法)」です。刑事処分の具体的な内容は罰金もしくは懲役または禁錮です。

 

ここではそれぞれの内容について詳しく見ていきましょう。

 

罰金

罰金は、財産を納付する刑事罰のことを言います。

 

交通事故の罰金の金額に関しては事故の状況により様々ですが、10万円以上になることもあり、比較的高額です。

 

罰金刑に処分された場合、検察庁から指定の金融機関に罰金を払うための納付書が送付されてきます。納付書に従い罰金を支払えば刑事処分を受けたことになります。罰金の納付は現金での一括払いとなっています。

 

罰金が納付できず滞納した場合、身柄を拘束されることがあります。この場合、労役場留置にて罰金額に達するまで作業を命ぜられます。

 

反則金と罰金の違い

警察官に交通違反を現認された場合に支払う金銭には「反則金」と「罰金」の2種類があります。この2つを混同されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

反則金とは、「交通反則通告制度」により、多発する交通違反事件を簡易そして迅速に処理するために設けられた行政罰であり刑事罰ではありません。そのため、反則金納付で済む場合に前科はつきません。

 

これに対して罰金は、違反行為が重い場合の刑事罰であり前科がついてしまいます。

 

反則金と罰金の違いや、交通違反の際の反則金に関しては「交通違反の点数|正しい計算方法と罰金・反則金の違い」を参考にしてください

 

懲役または禁錮

懲役または禁錮とは、自由刑の一つで、刑事施設に拘置する処罰です。拘置される期間は交通事故の状況により変わってきます。懲役は一定の作業を命ぜられますが、禁錮は作業をする必要がありません。ただし禁錮刑であっても願い出れば作業をすることもできます。

 

また懲役や禁錮には執行猶予が付く場合があります。執行猶予とは刑の執行を一時的に猶予するというものです。例えば「懲役2年執行猶予4年」とされた場合は、執行猶予期間である4年間犯罪に手を染めることなく過ごすことが出来れば言い渡された刑が無効となります。ただし、執行猶予付判決の場合も前科はつきますし、次回以降に刑事罰を受ける際には前科があることが不利に考慮されてしまいます。

 

執行猶予がつくかつかないかは、交通事故の態様、結果の重大性、前科の有無、被害弁償の有無等により変わってきます。

 

交通事故における刑事処分の罰則

交通事故の刑事処分の内容を把握していただいたところで、具体的にどのような行為がどの程度の刑事処分となるのかを確認していきましょう。

 

交通事故の内容と罰則の規定

ここでは交通事故の際に刑事処分の元となる、主な法律と罰則に関して案内します。

 

過失運転致傷罪

過失運転致傷罪は、その内容が自動車運転処罰法の5条に規定されています。

 

過失運転致死傷罪は、車や、バイクなどの車両等を運転している場合に、運転者が必要な注意を怠ったことにより、人を死亡させたり、人を受傷させた場合に適用されます。

 

過失運転致死傷罪の場合の罰則は、7年以下(無免許の場合は10年以下)の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金となっています。ただし被害者の状態の重軽により罰則が決められます。

 

危険運転致死傷罪

危険運転致死傷罪は、その内容が自動車運転処罰法の第2条及び3条により規定されています。

 

過失運転致死傷罪との違いは、特に危険な行為で人を死亡させたり人を受傷させた場合に適用されます。特に危険な行為とは以下のことをいいます。その際の罰則も同時に記載しておきます。

 

危険な行為の内容

罰則

受傷

死亡

アルコールまたは薬物の影響で正常な運転が困難な状態での運転

15年以下の懲役

1年以上の有期懲役

技能不足での運転

アルコールまたは薬物の影響で正常な運転に支障が生じる恐れのある状態での運転

12年以下の懲役(無免許の場合は15年以下)

15年以下の懲役(無免許の場合は6ヵ月以上の有期懲役)

自動車の運転に支障があると政令で定める病気(※1)の影響で正常な運転に支障が生じる恐れのある状態での運転

12年以下の懲役(無免許の場合は15年以下)

15年以下の懲役(無免許の場合は6ヵ月以上の有期懲役)

制御困難な高速度での運転

15年以下の懲役(無免許の場合は6ヵ月以上の有期懲役)

1年以上の有期懲役(無免許の場合は6ヵ月以上の有期懲役)

高速な運転での信号無視

法令で車の通行が禁止されている道路での高速の運転

高速な運転で、人または他の車の通行の妨害

(※1)具体的には統合失調症、低血糖症、そううつ病、てんかん、再発性の失神症、重度の睡眠障害などを言います。

 

過失運転致死傷アルコール等影響発覚免除罪

過失運転致死傷アルコール等影響発覚免除罪はその内容が自動車運転処罰法の第4条に規定されています。

 

過失運転致死傷アルコール等影響発覚免除罪とは、アルコールや薬物を摂取しての運転であることが発覚することを回避するために、その場でアルコールや薬物を摂取したり、事故現場を離れてアルコールや薬物の反応を軽減させる行為をした場合に適用されます。

 

過失運転致死傷アルコール等影響発覚免除罪の場合の罰則は12年以下(無免許の際は15年以下)の懲役となっています。

 

緊急措置義務違反

緊急措置義務違反は道路交通法の第72条により規定されています。救護義務は交通事故が起こってしまった際の加害者が行うべき行為で、以下のことを言います。

 

・運転の停止と事故状況の確認、負傷者の救護

・道路上の危険の除去

・警察への報告

 

緊急措置義務違反は上記の行動を取らなかった場合に適用されます。一般的にはひき逃げや当て逃げと呼ばれる行為です。緊急措置義務違反による罰則は以下の表の通りです。

必要な措置

事故内容

罰則

1. 運転の停止と負傷者の救護

2. 危険防止措置

死傷事故

5年以下の懲役または

50万円以下の罰金

死傷事故以外

1年以下の懲役または

10万円以下の罰金

3. 警察への通報

すべての事故

3ヶ月以下の懲役または

5万円以下の罰金

 

殺人罪

殺人罪は刑法の第199条により規定されています。交通事故における殺人罪は、被害者を傷つける意図のもと事故を起こし、被害者が死亡した場合に適用されます。

 

殺人罪の場合の罰則は死刑または無期もしくは5年以上の懲役となっています。

 

傷害罪

傷害罪は刑法の第204条により規定されています。交通事故における傷害罪は、被害者を傷つける意図のもと事故を起こし、被害者がケガを負った場合に適用されます。

 

傷害罪の場合の罰則は15年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。

 

交通事故発生から刑事処分までの流れ

では、交通事故発生から刑事処分で罰則を受けるまでの流れを見てみましょう。

交通事故における刑事処分確定までの流れ

1:警察の取り調べ

交通事故発生後は、警察が現場に来て事故関係者からの事情聴収を行います。また、当日又は後日、当事者立会の下で現場の計測、事故状況の写真撮影の実況見分を行います。なお、この際酒酔いや無免許等の悪質な交通事故で逃走の恐れや証拠隠滅などがある場合にはその場で又は後日に逮捕される可能性もあります。

 

その後病院や警察署で供述調書が作成されます。これは警察官が関係者から事情を聴いて調書としてまとめたものです。

 

2:検察庁からの呼び出し

検察庁は、実況見分調書、供述調書などの警察の取り調べ等が適切になされたかどうかなどを加害者と確認します。もし自身の供述と違う点、不備などがあればはっきりと具体的に指摘するようにして下さい。

 

3:検察庁での起訴、不起訴の判断

加害者の取り調べが終わった際に、検察官は最終的に起訴か、不起訴かの決定を行います。

 

起訴とは検察が、裁判所に対し、「この被疑者を刑事裁判にかけてください」と申請することです。起訴されると対象者は「被疑者」から「被告人」に呼び名が変わります。日本の刑事司法では、起訴されれば統計上は99.9%の確率で有罪となります。

 

更に起訴の場合にも、検察庁は略式命令の請求か公判請求のどちらかを行います。

 

略式命令の請求とは、検察官が事故の内容から判断して、罰金刑が適切であると判断し、さらに被疑者に異論がない場合に行われます。略式命令の際には裁判所は正式な裁判手続きを行わず、書類の審査だけの手続きで加害者に対して罰金刑を言い渡すことになります。

 

公判請求とは検察庁が刑事裁判の手続きの申請をすることを言います。刑事裁判となった場合には、裁判所が加害者に対しての刑罰を判断し、言い渡すことになります。

 

不起訴となる場合

検察官が裁判所の審判を求める必要がないと判断した場合には不起訴処分となります。交通事故において不起訴処分となる要素として、

・事案が悪質でない

・被害が少ない又は補償済みである

・本人が反省している

・前科・前歴がない

などがあり、これらを踏まえて検察官が判断します。不起訴となった場合には前科はつきません。

 

4:起訴の場合は刑事裁判

検察の判断が略式命令の請求であった場合には定型的な手続きで処理を行い罰金の処分となります。

 

これに対して事故の内容が悪質であったり、複雑なものなどに関しては正式裁判で審理されます。検察官、弁護士が立ち会い、被告人在廷の下で審理が行われて判決の言渡しとなります。

 

刑事手続による影響

刑事手続を受けることになった場合は日常生活に相当程度影響があります。

 

身柄拘束をされることもある

逮捕や勾留された場合、起訴まで最大23日間身体拘束を受けることになります。さらに、公判請求された場合は判決を宣告されるまで2カ月程度の身柄拘束を強いられることもあり得ます。なお、判決で実刑となればそのまま刑務所に収監されます。

 

身柄拘束が長引くことによって、仕事や家庭への影響が出てくることは十分に考えられるでしょう。最悪のケースであれば、解雇や家庭崩壊などの事態にもなりかねません。

 

前歴はデータとして残る

仮に逮捕された場合、警察と検察のデータベースには前科の情報が、加害者が死亡するまで残ります。データベースとして保管しておく目的は再犯の防止や事件の解決、また再犯の際の判決の基準とするためです。また本籍の市区町村の犯罪人名簿に残ることになります。

 

また、刑事裁判(略式裁判を含みます)で有罪判決を受ければ、前科情報が同様に永続的に残ることになります。

 

就職に不利になる可能性がある

弁護士や弁理士、教員、またその他の国家資格は、禁錮以上の前科者は欠格事由とされますので一定期間は就業できないことになります。

 

また、就職の際に面接等で、前科の有無を確認する企業もあります。基本的には前科の有無を確認する方法は本人からの申告しかありませんが、もしこの時就職に不利になりそうだと考え前科がないと進言してしまうと経歴詐称となります。経歴詐称の対象が重大で、会社採用・人事判断に支障を与えるような場合には解雇の理由となりますので注意が必要です。(もっとも、事件が広く報道された等の事情がない限り、企業が前科の有無を調べる方法はありません)

 

刑事処分の減刑事由

裁判においては加害者への罰則が懲役刑なのか、それとも禁錮刑なのか、懲役や禁錮は何年とするのか、また執行猶予は付けるのかどうか、罰金の場合はいくらにするのかなどが判断されます。

 

そして裁判官はいろいろな観点から総合的に判断して処分を確定します。ここで説明する対策を行っていれば必ず処分が軽くなるとは限りませんが、場合により軽くなる可能性がありますので参考程度に確認しておいてください。

 

示談交渉を終わらせておく

損害賠償金の支払いが既に終わっているような場合には、被害弁償が完了しているとして、刑の減刑事由として考慮されます。

 

被害者に嘆願書を提出してもらう

交通事故の被害者が早期の示談を望まない場合もあります。例えば事故の受傷の治療が長引き症状固定まで時間がかかっている場合などです。

 

この場合、被害者に厳罰を望まない旨の「嘆願書」を提出してもらうという方法があり得ます。このような場合も、被害感情が峻烈でないとして刑の減軽事由として考慮されます。

 

不起訴処分になった加害者に被害者が刑事処分を加えたい際の対策

もし検察庁において、加害者が不起訴になったことに対して、不服がある場合は、検察審査会に対して申立てを行うことが出来ます。検察審査会は20歳以上の選挙権を有する国民からくじで選出された11人により構成されています。交通事故の加害者が不起訴となった場合に、それを不服とすると審査会が開かれて、不起訴の決定が妥当であったかどうかの判断が行われます。

 

検察審査会が起訴相当であると判断した場合にはその旨が検察官に通知されます。この時検察官は起訴することも不起訴にすることも可能です。

 

まとめ

交通事故の刑事処分について理解していただけましたでしょうか。

 

交通事故では事故の状態によって罰金や懲役などの処分をうけ、刑事処分を受けた場合には前科が残ることになります。前科がつくとその後の生活において不利になる場合もあります。そのようにならないために安全運転に努めるようにして下さい。

 

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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