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KL2021・OD・165
~いざという時の備えに~交通事故マガジン
自転車事故の加害者が未成年の場合の示談・損害賠償の対処法
自転車事故の当事者となる確率は、統計データによると、未成年者が最も多くなっています。
引用元:警視庁
平成24年度における人口千人あたりの年齢層別自転車関連事故においては、16歳~17歳がトップで4.1人、7歳~15歳が2位で2.1人となっています。
これは事故被害者加害者を含めた数字なので、一概に未成年に自転車事故の加害者が多いとは言い切れませんが、事故の当事者になってしまう数が多いということは、自転車事故の加害者になってしまう可能性が比較的高いと言えるのではないでしょうか。
また、自転車事故においては、車・バイクの事故に比べてスピード等が遅いため被害者に対する損害賠償額が低くなるのではというイメージを持たれている方も多いかもしれません。
しかし、被害者の被った損害を賠償するという点においては、自動車事故であるか自転車事故であるかは関係なく、被害者の被害状況により判断されます。
すなわち、自転車事故であっても自動車事故と何ら変わらない損害賠償を行うことになる可能性があります。そしてそれは、加害者が未成年の場合でも同様です。加害者が未成年であることを理由に損害賠償が減額されることは基本的にはありません。
では、加害者が未成年であった場合、損害賠償を請求する相手は誰になるのでしょうか、またもし未成年に対して損害賠償を請求する際に経済的な理由で損害賠償を支払えない場合はどのような対策を取ればよいのでしょうか。
今回は、自転車事故の加害者が未成年だった場合の損害賠償額の請求先と、その際に加害者が経済的な理由で損害賠償を支払えない場合の対策をご紹介します。
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まずは、自転車事故の加害者が未成年だった場合の損害賠償の請求先を確認しておきましょう。
自転車事故に限らず、不法行為により他者に未成年が不利益を与えた場合に損害の賠償をする責任を負うかどうかについては、民法712条により以下のように規定されています。
民法712条
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
引用元:e-Gov 民法712条
未成年が自己の行為の責任を弁識するに足りる知能がない、とはシンプルにいえば「責任能力」と言い換えることができます。そしてここでの責任能力とは、ある行為がその後発生させる結果などを理解することができ、自ら有効な意思決定が行える能力のことをいいます。
つまり、責任能力がある場合には自転車事故の加害者である未成年本人に損害賠償の責任があり、責任能力が無い場合には、未成年には損害賠償の責任がないということが言えます。
自転車事故の加害者である未成年に責任能力がある場合には、未成年本人に損害賠償の責任があることが分かりました。では未成年に責任能力が無い場合には損害賠償を請求することはできないのでしょうか。民法ではその点について以下のように規定しています。
民法第714条
前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りではない。
引用元:e-Gov 民法第714条
上記の責任無能力者を監督する法定の義務を負う者とは、一般的には未成年の親権者のことをいいます。つまり未成年者に責任能力が無い場合は、未成年の親権者が未成年の代わりに損害賠償の責任を負います。
注意点として、民法第714条の後半部分においては「ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」と、親権者が監督義務を怠らなかった際には例外的に親権者が損害賠償責任を負わないという場合もあります。
しかし自転車事故においては、親権者が未成年に対して自転車の運転時の注意点や安全な運転を指導する義務があることは明らかで、未成年者が自転車事故の加害者になってしまった場合に、親権者が監督義務を怠らなかったことが認定される可能性はほとんどないと言えます。
そのため未成年者に責任能力が無い場合は、親権者に対して損害賠償を請求します。
未成年者に責任能力があっても、親権者が損害賠償の責任を負うことがあります。具体的には、親権者が未成年者に対する監督義務を怠っており、その義務違反と未成年者の自転車事故に因果関係が認められる場合は、民法709条に則り、親権者が固有の損害賠償責任を負うことがあります。
未成年者が無資力であることが通常であり、責任能力があるかないかによって被害者の損害賠償という保護において大きく差が開いてしまうことは不合理な場合があります。そのため未成年者に責任能力があっても、未成年の親権者に対して請求を行う法律構成として、上記のような解釈が成り立つのです。
では、未成年に責任能力があるのかないのかの判断はどこでされるのでしょうか。責任能力の判断要素としては、年齢や環境、生育度・行為の種類など、様々な視点が挙げられますが、過去の判例から平均するとおよそ12歳程度、つまり小学校卒業程度が責任能力の有無の目安となるようです。
ここでは、自転車の加害者が未成年者であった際の過去の判例を見て見ましょう
要旨:一一歳一一か月の小学校六年生が自転車運転中に起こした人身事故について両親に責任無能力者の監督者義務としての責任が肯定された
引用元:裁判年月日 平成元年 9月 6日 裁判所名 京都地裁
事件番号 昭62(ワ)2803号 文献番号 1989WLJPCA09060004
この事件では、ワンマンバスから降りてきた乗客に11歳の子供が自転車走行中に追突した事故で、加害者本人には責任能力は認められませんでしたが、親の監督者義務として、親権者に損害賠償の責任を認めた判例です。
要旨:被告Y1の運転する自転車が、夜間、交通整理の行われていない丁字路交差点を右折中の原告の自転車に衝突したことにより、原告が、これにより傷害を受け、損害を被ったと主張して、被告Y1らに対し、損害賠償を請求した事案において、被告自転車の運転が無灯火であり、相当速い速度で交差点に進入し、ブレーキをかける間もなく原告自転車に衝突したなど極めて危険な走行であったと認められる一方、原告自転車にも右折にあたって合図をしなかった過失があるとして、被告Y1対原告の過失割合を90対10と認定し、原告の請求を一部認容した
被告Y1(男・13歳)の運転する自転車が、原告自転車に衝突したことにより、原告が、損害を被ったと主張して、被告Y1並びに同人の両親であるY2、Y3に対し、損害賠償を請求した事案において、本件事故につき、Y1の責任能力を肯定するとともに、両親につき、交通ルールを守る監督義務をまったく果たしていなかったと推認しうるとして、両親の監督義務違反と事故との相当因果関係を肯定し、両親の不法行為責任をも認め、原告の請求を一部認容した
引用元:裁判年月日 平成19年 5月15日 裁判所名 東京地裁
事件番号 平17(ワ)23860号 文献番号 2007WLJPCA05158006
この事故では、13歳の中学生が、無灯火で高速度で自転車を運転していて、被害者と衝突する際にもブレーキをかけることがなく、裁判所の判断としては加害者の責任能力を認めながらも、両親の監督義務違反を認め、親権者に対する損害賠償責任を認めた判例です。
自転車事故には、自動車事故とは別に以下のような問題点があります。
自賠責保険や、任意保険に加入している割合が高い自動車事故と違い、自転車事故の際には自賠責保険はなく、また任意保険に加入している可能性も低いです。その場合被害者自身が自費で行わなければなりません。
もし加害者が未成年で親権者などもなく資力がない場合には損害賠償を受けることが出来る可能性がより低くなるということに注意が必要です。
自動車事故の場合であれば、損害賠償額の算定などは加害者の加入する保険会社が行ってくれます。しかし自転車事故で任意保険に未加入であった場合、被害者加害者双方知識に乏しい場合、適切な損害賠償金を算定することが困難になります。
交通事故の場合、被害者加害者どちらか一方だけに過失があるという場合はまれで、双方ともに一定割合で事故に対して原因があるのが通常です。被害者加害者の事故の過失を表したものを過失割合と言いますが、損害賠償はこの過失割合に応じて減額されます。
自動車事故の場合であれば、過失割合の算定は加害者の保険会社が行うことが一般的ですが、自転車事故の場合、任意保険に加入していなければ当事者同士で算定をしなければなりません。過失割合に関しても専門的な知識がなければ算定することは非常に困難となります。
では上記問題を解決するためにどのような対策を弁護士が行ってくれるかについて確認してみましょう。
基本的に、損害賠償金は一括で支払われることが前提にされています。しかし加害者に資力がなく、一括で支払いが困難な場合には、分割での支払を検討する必要があります。弁護士であれば示談交渉を行い、資力がない相手でも損害賠償が支払われるよう交渉を行います。
また弁護士は法律知識が豊富であるため、過去の判例などをもとに損害賠償や過失割合の算定を行ってくれます。示談の際の損害賠償額は双方が納得していればどのような額でも問題はありませんが、金額が妥当でない場合には加害者が示談に応じてくれる可能性は低くなるでしょう。
しかし弁護士が算定した損害賠償金や過失割合は過去の判例をもとにするため合理性も高いです。そのため加害者としても示談の内容に合意する可能性が高くなります。
もし、示談に納得できない場合には訴訟をして裁判を行うことになります。交通事故の裁判は民事裁判となります。
民事裁判は必要な手続きを行い書類さえ揃えれば誰でも行うことができます。しかし仮に加害者側が弁護士を代理人として立てた場合は、専門的な知識のない方では納得の行く判決を獲得することは困難であると言えるでしょう。
もし示談の内容に納得できず訴訟を行う場合には弁護士に依頼するようにして下さい。
自転車事故であり、加害者が未成年であったとしても、それらを理由に損害賠償額が減額されることはありません。被害者の状態によっては非常に高額な損害賠償を請求することができます。
基本的に事故による紛争の解決は示談→訴訟という流れになりますが、専門的な知識・経験がなければ解決は困難な場合が多いでしょう。万が一、自転車事故の被害者になった際には一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
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