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飛行機事故で死亡した際の賠償金の算定法

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公開日:2020.6.26  更新日:2022.3.15
交通事故の責任 弁護士監修記事

飛行機事故で死亡した際の賠償金の算定法

日本における航空機事故として多くの方が思い浮かべるのは、1985年8月12日に発生した通称「日本航空123便墜落事故」ではないでしょうか。

東京・羽田を出発した日本航空の定期123便のジャンボジェットは、修理ミスを原因とした機体の破損(後部圧力隔壁の破損、及び垂直尾翼と油圧操縦システムの喪失)により、群馬県多野郡上野村の高天原山の尾根(御巣鷹の尾根)に墜落し、死者の数は520名となりました。

飛行機での事故が発生し、乗客が死亡してしまった場合、その賠償額はいくらになるのでしょうか。

今回は、飛行機事故における損害賠償額の算定について記載したいと思います。

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飛行機事故で死亡した賠償金額の規定

飛行機事故での賠償額は、どのように決まるのでしょうか。ここでは飛行機事故での賠償金の決定方法について確認していきましょう。

 

飛行機事故で死亡した賠償金額は話し合いで決まる

飛行機事故で死亡した際の賠償金は、それぞれの飛行機会社での規約に基づいて、飛行機会社と遺族との話し合いにより決まります。ただし、どのような規約が設けられているかについては、飛行機の運行が国内線、国際線により変わってきますのでそれぞれを確認してみましょう。

 

国際線での損害賠償決定方法

国際線において飛行機事故で死亡した際の賠償額は、「モントリオール条約」が適用されるか否かにより大きく変わってきます。

 

モントリオール条約とは、国際線の航空運送に関しての損害賠償の範囲等について定めた条約のことをいい、2000年に締結され、日本は2003年に加盟しました。モントリオール条約制定以前はワルソー条約により損害賠償の上限が規定されていました。

 

ワルソー条約では、死亡の際の損害賠償額の上限が約280万円までと規定されていました。しかし航空機の運航本数の増加などの世界的な情勢に合わせて、損害賠償額が少ないことを見直すこと等を目的としてモントリオール条約が制定されました。

 

モントリオール条約においては、最低11万3100SDR(約1,800万円)までに関しては「無過失責任」として、航空会社に過失があったとしてもなかったとしても、遺族に賠償金を支払わなければなりません。

 

また、モントリオール条約は賠償額の上限に関しても撤廃を行いました。モントリオール条約では無過失責任をこえる11万3100SDR(約1,800万円)以上の賠償に関しても航空会社に過失がないという反証がなければ上限なく損害賠償が支払われることになります。

 

モントリオール条約が適用されるかどうかは、出発地と到着地の両方が条約に加盟している必要があります。また仮に損害賠償額に納得できずに裁判となった場合でも、航空会社の住所地や主たる営業所の所在地、到着地、旅客の主要かつ恒常的居住地のどの場所の裁判所でも訴訟を起こすことが出来るようになっています。

参考:国土交通省|モントリオール条約:「国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約」について

 

モントリオール条約加盟国に関しては以下のサイトで確認して下さい。

国土交通省|日本乗り入れ航空会社の損害賠償の範囲(旅客の死亡又は傷害の時)

※リンク先は古い情報であり、現在では、中国、香港も加盟国になっています。

 

もし出発地もしくは到着地がモントリオール条約に加盟していない場合には、ワルソー条約の規定により上限が約280万円までとなります。またワルソー条約においては航空会社に過失が無かった場合には被害者に対して賠償を行う必要がありません。さらに裁判を起こす際にも契約の締結地もしくは航空会社の所在地で起こさなければなりませんので注意が必要です。

 

国内線での損害賠償の決定方法

国内線においては、上記のモントリオール条約などの適用がありません。そのため国内線において飛行機事故により死亡した場合の損害賠償額は原則事故国の一般法か、航空会社の約款が適用されます。

 

一例としてJALの場合の国内旅客運送約款には、以下のように規定されています。

 

第4節 責任

会社は、旅客の死亡又は負傷その他の身体の障害の場合に発生する損害については、

その損害の原因となった事故又は事件が航空機内で生じ

又は乗降のための作業中に生じたものであるときは賠償の責に任じます。

 

会社は、会社及びその使用人(本章において使用人とは、被用者、代理人、請負人等の履行補助者をいいます。)がその損害を防止するため必要な措置をとったこと

又はその措置をとることができなかったことを証明したときは、

賠償の責に任じません。

 

会社は、旅客の故意又は過失が、その損害の原因となったこと

又は原因に関係していたことを証明したときは、

当該故意又は過失がその損害の原因となり

又は原因に関係している範囲において、

会社のその旅客に対する責任の全部又は一部を免除されます。

引用元:JAPAN AIRLINES 国内旅客運送約款

 

つまりJALにおいては、国内線で飛行機事故において死亡した場合に関しては、JALが賠償責任を負うと規定しています。また一般的に飛行機事故の原因は航空会社にあると考えられますが、上記約款の2つ目の文章をJALがどのように解釈するかは判断しかねます。

 

また、外国、特に発展途上国の場合には損害賠償額が低くなることが想定されますので、注意が必要です。

 

過去の飛行機事故での損害賠償額判例

ここでは、過去の飛行機事故での損害賠償額の判例を見てみしょう。

 

中華航空エアバス社製旅客機事故

1994年に発生した名古屋空港中華航空墜落事故に関連した裁判例です。

 

・内容:台北発名古屋行き中華航空一四〇便が名古屋空港への着陸降下中、同空港誘導路付近着陸帯内に墜落して機体が大破し、乗客及び乗員が死傷した事故につき、乗員が無謀な操縦を行ったとして、中華航空側の損害賠償責任が認められました。認められたのは積極損害や逸失利益のほか、慰謝料に関しても認められ、慰謝料の算定に関しても過去の判例をもとに行われました。この裁判においては、中華航空側は賠償額をワルソー条約の上限額通り約280万円と主張していました。しかし裁判所はワルソー条約25条を適用させ(ワルソー条約第25条では、故意、ないし事故が十分起こり得るという認識がありながらも無謀にも行った行為の結果事故が起こった場合、上限の撤廃を規定しています)、原告の中傷した、本来の損害賠償額が認定されました。

 

主  文

 

被告中華航空股分有限公司は、別紙「請求金額及び認容金額一覧表」の原告欄記載の各原告(ただし、原告甲山A夫、同乙川B子、同丙谷C美及び同丁沢D雄を除く。)に対し、各原告に対応する同表の認容金額欄記載の各金員及びこれに対する平成6年4月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

裁判年月日 平成15年12月26日

事件番号 平8(ワ)1423号・平7(ワ)4179号

引用元:2003WLJPCA12260002

 

 

飛行機での死亡事故トラブルの解決を弁護士に依頼するメリット

飛行機事故の際には、国際線であればモントリオール条約により、航空会社に過失があってもなくても約1,800万円までは損害賠償額が保証されています。ただし1,800万円以上に関しては、もし航空会社に過失がないと証明された場合支払う義務がありません。飛行機事故の賠償額の算定はまずは飛行機会社との話し合いにおいて決まり、それに納得できない場合は民事裁判となります。民事裁判において航空会社が自社の過失がないと主張した場合、1,800万円以上の損害賠償を受け取ることが出来ない可能性があります。

 

さらに国際線においては、モントリオール条約は適用されず、各航空会社の約款通りに損害賠償額の算定がなされます。この賠償額に関しても遺族が納得できない場合には民事裁判となります。

 

まず、話し合いの際に航空会社が損害賠償額を提示してきますが、その損害賠償額が妥当であるとは限りません。そのため飛行機事故の遺族の方は、まず損害賠償額を提示された時点で弁護士に相談をされると良いでしょう。

 

さらに民事裁判となった場合、自身が希望する損害賠償額を手に入れたい場合は専門的な法律知識をもつ専門家のサポートが必要不可欠です。その際には弁護士、とくに飛行機事故におけるトラブル解決に注力している弁護士に依頼をすることをおすすめします。

 

まとめ

飛行機事故で死亡した場合の損害賠償額についてご理解いただけましたでしょうか。

 

国際線であれば出発地さらに到着地がモントリオール条約に加盟していれば一定額賠償金に関しては保障されますが、モントリオール条約が適用されない場合においては、上限が設けられています。さらに損害賠償額について争う場合にも、航空会社に過失があるかどうかが問題点となります。

 

飛行機に乗る際、特に国際線に乗る際には、出発地と到着地がモントリオール条約に加盟しているかどうかに注意が必要です。

 

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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