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危険意識の高まる道路の特徴とは? 右折直進事故がなくなる「新しい交差点」

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公開日:2020.10.29  更新日:2020.10.29

危険意識の高まる道路の特徴とは? 右折直進事故がなくなる「新しい交差点」

危険意識の高まる道路

運転をしていると、道幅が狭かったり、人通りが多かったりと「事故が起きそうで怖いな」と感じる道路があると思います。

危険意識と事故発生件数には関係性があるのでしょうか。

この記事では、「運転者の交通事故危険認知行動を踏まえた道路計画に関する研究」に携わった、秋田大学の浜岡秀勝教授に、危険意識の高まる道路の特徴や事故との関係について、お話をお伺いしました。

浜岡 秀勝教授

浜岡 秀勝


秋田大学 土木環境工学コース

1968年 福岡県生まれ
1991年 東京工業大学土木工学科卒業
1993年 東京工業大学大学院土木工学専攻修了
1994年 東京工業大学助手、1999年 東京大学助手、
2001年 秋田大学講師、2004年 秋田大学助教授を経て、2014年より現職

 

運転手の危険意識が高まる道路とは

ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)編集部:

運転手が危険意識を持つ道路とは、どのような道路なのでしょうか?

 

浜岡教授:

運転者の交通事故危険認知行動を踏まえた道路計画に関する研究」では、横浜市の緑区の住民を対象に100ヶ所の道路について、どのような印象を持っているかアンケート調査しました。

 

アンケート結果を集約した際、危険意識を感じる道路について、各回答の共通点をまとめると「狭さく性」「交通流の乱れ」「歩車の錯綜」という3つの項目に振り分けることができました。

 

ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)編集部:

「狭さく性」「交通流の乱れ」「歩車の錯綜」ですか

それぞれどのような状況を指すのでしょうか?

 

浜岡教授:

狭さく性」とは、道路の見通しのよさ、標識の視認性などの5項目を指します。

具体的には、道路の内幅の印象に関することです。また、道路の曲がりやすさや歩道が整備されているか、歩行者になったとき歩きやすいかなどを調査項目として設けました。

 

交通流の乱れ」は、交通量やその区間で渋滞が発生しやすいかどうか、ブレーキの踏む頻度、コンビニなど沿道への出入りの多さなどを表しています。

 

歩車の錯綜」とは、歩行者や路上駐車の多さ、沿道への出入りが多いかなど、人と車が事故を起こしやすい状況になっているかを項目として取り上げています。

 

また、この3つの中でも、「狭さく性」を強く感じる道路では、「交通流の乱れ」「歩車の錯綜」と比較して約3倍も危険意識が高まるとの結果が出ました。

 

危険意識と事故発生件数の関係

ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)編集部:

狭い道は人身事故だけではなく、こすってしまうなどの物損の心配もあるので危険意識が高まるのも納得できます。

危険意識が高い道路では、やはり事故も多いのでしょうか?
 

浜岡教授:

研究をする前は、危険と思われる道路では事故の発生件数も比例して多くなると想定していましたが、実際は以下のような差が生じました。

 

危険意識と事故件数

危険意識の高い道路では、多くの運転手が注意して運転するため、一定を超えると事故が減るという結果です。

 

逆に危険意識が低い道路では、運転手の集中力が下がってしまうため、この差が発生するのだと思います。

ですので、危険が少ないと思われる道路でも、安心しすぎず注意して運転することが必要です

 

右折直進事故が多発する交差点の特徴

ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)編集部:

運転者の交通事故危険認知行動を踏まえた道路計画に関する研究」では、右折直進事故が多発する道路において、運転手の視線動向に着目されていましたが、どのような研究だったのでしょうか。

 

浜岡教授:

交差点を右折する際、直進する車が来ていないか見通す必要がありますが、対向車も右折したい場合、車同士が対面します。

そうなると、右折したい対向車に視線が遮られ、直進してくる車を目視できず、右折直進事故が発生する可能性が高まるのです。

 

右折直進事故を起こさないために…

このような問題を解消するため、右折車の停止位置を少しですが両端にずらし、視線を遮らない対応が必要になると考えています

 

すでに信号機に矢印信号をつけるなど右折直進事故を防止する工夫も行われています。また、交差点の形を新しいものに変えることで右折直進事故をゼロにできます。

 

右折直進事故を減らす「新しい交差点の形」とは

ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)編集部:

交差点の新しい形とはどのようなものでしょうか?

 

浜岡教授:

新しい交差点とは「ラウンドアバウト」のことです。10年くらい前から日本でも所々に整備されるようになりました。

 

ラウンドアバウト

信号交差点をラウンドアバウトにすることで、右折直進事故をゼロにできるだけではなく、さまざまなメリットが発生します。

 

【メリット】

・信号交差点より上手に交通処理ができるため、効率的に運用できる

・ラウンドアバウト内は時速20~30キロとなるため、万が一接触・追突事故が発生しても死亡につながりにくい

・震災等で行きたい道路がふさがっていたり、浸水していたりする場合、無理なくUターンをすることができる

・震災等で停電しても信号が不要なため、正常に機能する など

 

今全国にできているものは標準サイズですが、もっと大きくしていけば新宿駅前の交差点もラウンドアバウトにできます

 

ただ、急に大きく変えてしまうと、混乱させてしまいかえって事故が多発するリスクがあるため、すぐに整備できるわけではありません。

今後、至る所にラウンドアバウトができれば、もっと交通量がさばける二車線ラウンドアバウトもできてくるのではないかと思っています。

 

ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)編集部:

二車線になると内側の人がずっとまわり続けてしまいそうですが、大丈夫なのでしょうか?

 

浜岡教授:

二車線ラウンドアバウトは実に上手くできていて、そのような心配はありません。

 

二車線ラウンドアバウトは基本的に、下図のように交差点内の道路が二車線になっています。

 

二車線ラウンドアバウト

左側の車線は、左折して出る車もしくは直進して出る車用の車線です。右側の車線は、半周以上走行して出る車用の車線になります。

 

右車線を走る車が出るとき、左車線の車と衝突しないか不安になると思いますが、左車線の車は右側車線の車が左折する前に出てしまうもしくは同時に出るため、基本的に衝突するリスクは大きくありません。

 

 

ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)編集部:

なるほど…とても考えられた設計がされているのですね。

日本の信号交差点もすべてラウンドアバウトになるのでしょうか?

 

浜岡教授:

交差点直近に橋があるなど構造上ラウンドアバウトにできない道路もありますので、信号交差点とラウンドアバウトの両方を使い分けていく必要があります

イギリスやドイツは、信号交差点とラウンドアバウトの使い分けが非常に上手です。

 

ラウンドアバウトはただ作ればいいというわけではありません。

「作ること」にいろいろな意味を持たせることで、日本の交通に貢献してくれるのではないかと思います

 

 

まとめ

「狭さく性」「交通流の乱れ」「歩車の錯綜」を感じる道路では、事故も多くなりますが、危険意識が高すぎる道路では、一定の部分より事故の発生件数が減少していくことがわかりました。

逆に、安心しすぎてしまうと事故につながりやすいため、広く見通しの良い道路であっても危険意識をもって運転することが重要です。

 

「新しい交差点の形」であるラウンドアバウトが日本で増えていき、最終的に東京の各所にも見られるようになる将来がとても楽しみです。

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本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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