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KL2021・OD・165
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居眠り運転事故の加害者・被害者が知っておくべき罰則と慰謝料増額方法
車やバイクの運転者であれば、誰しも一度は居眠り運転をしそうになったことがあるのではないでしょうか。とくに高速道路を長期間運転する場合、単調な道路が続くため、居眠り運転をしてしまう可能性が高くなります。
居眠り運転での事故の件数は発表されていませんが、参考になりそうな資料がありましたのでご紹介させてください。
引用元:政府統計
上の図は、交通事故の原因となった法令違反を年代ごとに表したグラフです。この中で万全運転の平成28年度の件数は約4万件となっています。漫然運転とは、十分な注意を尽くすことができない又は尽くさない状態で運転をすることです。漫然運転は、最高速度違反、わき見運転、動静不注視に次ぐ4番目の事故原因とされているようです。
居眠り運転を起こしてしまった場合、警察による捜査がおこなわれ、事故の内容によって加害者は「安全運転措置義務違反」もしくは「過労運転」として処罰の対象となります。
さて、居眠り運転で事故を起こした場合に、違反点数はどうなるのか。またどのような罰則があるのか明確になっていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。また被害者はどのような点に気を付けなければならないのか気になる方も多いのではないでしょうか。
今回は、加害者が受ける罰則と、被害者が損害賠償を請求する際に注意するべき点について記載したいと思います。
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加害者が受ける処分には「民事上の不利益」「行政上の不利益」「刑事上の不利益」の3つの不利益があります。ここでは具体的にそれぞれの内容について確認していきましょう。
居眠り運転の加害者が受ける民事上の不利益は、被害者に対する損害賠償です。これは民法の709条により規定されています。
被害者への損害賠償は、様々なものがあり、ケガの治療にかかった費用の補償である「積極損害」、受傷の影響で休業した際の収入の減少や、後遺障害を負った場合の労働力減少を原因とした収入の減少を補償する「消極損害」、事故による影響で精神的な苦痛を受けたことに対する補償である「慰謝料」などを含みます。
どの程度、被害者に対して損害賠償を行わなければならないかは、事故の状況や被害者の状態によります。詳しい損害賠償額の算定や目安に関しては「損害賠償|交通事故の慰謝料と損害賠償請求・増額の全手順」を参考にしてください。
居眠り運転の加害者が負う行政上の不利益は、点数加算です。
自動車やバイクの運転免許には、点数制度が設けられており、違反を行うたびに点数が加算されていきます。加算された点数の内容により免許停止や免許取消などの行政処分を受けます。
点数制度における、交通事故を起こした際に加点される点数は
①交通違反の基礎点数
②交通事故付加点数
③措置義務違反
の合計額となっています。ここではそれぞれの内容につて確認してみましょう。
交通違反の基礎点数とは、交通事故を起こした際に、交通違反を行っていた場合に加算される点数のことです。
居眠り運転は、道路交通法70条に規定された行為に違反しており、「安全措置義務違反」として2点が基礎点数として加算されます。
ただし、警察での事故現場の調査により「過労運転」と判断した場合には25点が基礎点数として加算されます。
過労運転は、道路交通法の66条に規定されています。
道路交通法第66条
何人も、前条第一項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、
正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。
引用元:道路交通法第66条
居眠り運転が「安全運転措置義務違反」と「過労運転」どちらになるかについては、警察の調査などによりますが、過去の判例を見ると、運送用のトラックなどの業務上の運転を行っている際に「過労運転」と判断されることが多いようです。
交通事故付加点数は、交通事故を起こした際の被害者の状態により付加される点数です。事故状況と付加される点数は以下の一覧の通りとなっています。
交通事故の種類 |
加害者の責任 |
点数 |
死亡事故 |
重い |
20 |
軽い |
13 |
|
重症事故(治療期間3ヵ月以上または後遺障害が存するもの) |
重い |
13 |
軽い |
9 |
|
重症事故(治療期間30日以上3ヵ月未満) |
重い |
9 |
軽い |
6 |
|
負傷事故(治療期間15日以上30日未満) |
重い |
6 |
軽い |
4 |
|
軽傷事故(治療期間15日未満) |
重い |
3 |
軽い |
2 |
措置義務違反を行った場合に加点される点数で、加点される点数は35点となっています。措置義務違反とは、ひき逃げなど事故の被害者の救護を怠ることです。
加点された点数による行政処分は、免許停止、免許取消になります。どちらの処分を受けるかは、点数によって変わってきます。加点された点数による行政処分を以下に一覧で記載しておきます。
表:点数別免許停止・免許取消期間一覧
前歴 点数 |
0回 |
1回 |
2回 |
3回 |
4回以上 |
1 |
|
|
|
|
|
2 |
|
|
停止90日 |
停止120日 |
停止150日 |
3 |
|
|
停止120日 |
停止150日 |
停止180日 |
4 |
|
停止60日 |
停止150日 |
取消1年(3年) |
取消1年(3年) |
5 |
|
取消1年(3年) |
|||
6 |
停止30日 |
停止90日 |
|||
7 |
|||||
8 |
停止120日 |
||||
9 |
停止60日 |
||||
10-11 |
取消1年(3年) |
取消2年(4年) |
取消2年(4年) |
||
12-14 |
停止90日 |
||||
15-19 |
取消1年(3年) |
取消2年(4年) |
|||
20-24 |
取消2年(4年) |
取消3年(5年) |
取消3年(5年) |
||
25-29 |
取消2年(4年) |
取消3年(5年) |
取消4年(5年) |
取消4年(5年) |
|
30-34 |
取消3年(5年) |
取消4年(5年) |
取消5年 |
取消5年 |
|
35-39 |
取消3年(5年) |
取消4年(5年) |
取消5年 |
取消5年 |
取消5年 |
35-39 |
取消3年(5年) |
取消4年(6年) |
取消5年(7年) |
取消6年(8年) |
取消6年(8年) |
40-44 |
取消4年(5年) |
取消5年 |
取消5年 |
取消5年 |
取消5年 |
40-44 |
取消4年(6年) |
取消5年(7年) |
取消6年(8年) |
取消7年(9年) |
取消7年(9年) |
45以上 |
取消5年 |
取消5年 |
取消5年 |
取消5年 |
取消5年 |
45-49 |
取消5年(7年) |
取消6年(8年) |
取消7年(9年) |
取消8年(10年) |
取消8年(10年) |
50-54 |
取消6年(8年) |
取消7年(9年) |
取消8年(10年) |
取消9年(10年) |
取消9年(10年) |
55-59 |
取消7年(9年) |
取消8年(10年) |
取消9年(10年) |
取消10年 |
取消10年 |
60-64 |
取消8年(10年) |
取消9年(10年) |
取消10年 |
||
65-69 |
取消9年(10年) |
取消10年 |
|||
70以上 |
取消10年 |
参考:交通事故の行政処分|加点制度と免許停止・免許取消についての全知識
更に詳しく行政処分について知りたい方は、「交通事故の行政処分|加点制度と免許停止・免許取消についての全知識」を確認するようにして下さい。
居眠り運転の加害者が負う刑事上の不利益としては、居眠り運転により被害者を死傷させた場合に、犯罪として立件され、これが有罪となったときに罰金、禁錮、懲役といった刑罰を受ける可能性があるというものです。
罰金は、財産を納める処分のことを言い、禁錮・懲役は、刑務所に身柄を拘束される処分のことを言います。禁錮と懲役についてですが、懲役は刑務所内で強制的に労働をさせられますが、禁錮に関しては、労働を強制させられることはありません。ただし希望すれば労働を行うことができます。
ここでは居眠り運転による死傷事故により成立する犯罪と、その刑事処分の一例を記載しておきます。ただし、居眠り運転についていかなる犯罪が成立するかは、居眠りの原因が、単に寝不足や過労によるものなのか、風邪薬の服用や飲酒なのかや、運転の態様によって異なります。そして、成立する犯罪が異なれば、当然、適用される罰則の内容も変わってきます。より詳しい刑事処分の内容を知りたい方は「交通事故の刑事処分|刑事処分の内容と加害者ができる対応」を確認して下さい。
処罰行為 |
内容 |
罰則 |
過失運転致傷罪 |
車や、バイクなどの車両等を運転している場合に、運転者が必要な注意を怠ったことにより、人を死亡させたり、人を受傷させた場合 |
7年以下(無免許の場合は10年以下)の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金 |
危険運転致死傷罪 |
危険な行為(飲酒や薬物の使用など)で人を死亡させたり人を受傷させた場合に適用 |
15年以下の懲役 1年以上の有期懲役など |
ここでは、被害者が加害者に対して損害賠償金を請求する際に注意してほしいことを記載します。
損害の賠償を行う際には、保険会社との示談交渉を行います。その示談交渉の際に注意していただきたいのが、保険会社の提示してくる慰謝料です。
加害者に損害賠償として請求できるものとして、①積極損害②消極損害③慰謝料の3つの項目があることはお伝えしましたが、③の慰謝料に関しては、精神的な苦痛に対する慰謝料であり、苦痛の感じ方は人によって変わるため算定の方法が明確ではありません。そのため慰謝料に関しては一定の基準が設けられています。
慰謝料の算定基準には「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つの基準があり、「自賠責保険基準」<「任意保険基準」<「弁護士基準」の順に慰謝料額が高くなります。
示談交渉の際に加害者の保険会社が提示してくる慰謝料額は任意保険基準を基に算定された額です。そのため交渉により、最高額である「弁護士基準」での獲得をすることが可能になりますが、被害者自身で交渉を行っても、保険会社の担当員は法律的な知識を豊富にもつ示談交渉のプロであり、自社の利益保護の観点から慰謝料増額に合意しない可能性があります。
そのため、保険会社との示談交渉においては、慰謝料算定に少しでも疑問がある場合は弁護士に交渉を依頼することを強くすすめます。弁護士に依頼をすることで、最高額である「弁護士基準」での慰謝料を獲得する可能性が大幅にあがります。
慰謝料に関する基準についてより詳しく知りたい方は「交通事故の慰謝料|適正な金額を得るための完全ガイド」を参考にしてください。
被害者は交通事故によって被った損害について加害者に請求することが出来ますが、事故には過失割合があり、被害者の過失の割合によって獲得できる損害賠償額は変わります。ただ、相手が居眠り運転をしていた場合、相手側に重大な過失があると考えられるので、通常であれば被害者側に過失が認められる事例であっても、被害者側の過失が0と評価される可能性もあります。
過失割合とは、事故の加害者と被害者の責任の程度を数値化したものです。事故においては発生の原因が100%加害者にある場合というは少なく、少なからず被害者が注意を怠たった場合など、被害者においても事故発生の責任が一定割合で存在します。この事故発生の原因となった被害者・加害者の責任の割合を、全体を100%としてそれぞれに割り振ったものが過失割合です。事故状況別の過失割合は「【図解あり】交通事故の過失割合|状況別全パターンと加算・減算要素まとめ」を参考にしてください。
そして過失割合により、被害者が実際に手にすることができる損害賠償額が減額されることになります。これを「過失相殺」と呼びます。例えば算定された損害賠償額が1,000万円であり、被害者・加害者の過失割合が、被害者:加害者=20:80だった場合、被害者が実際に獲得できる損害賠償額は
1,000万円×(1-0.2)=8,00万円
となり、800万円しか獲得できず2割減ってしまうことになります。
実際に手にすることができる損害賠償額を左右する過失割合ですが、誰が決めるのでしょうか。過失割合は誰かが決めるものではなく、事故の客観的態様から自ずと決まるものです。しかし、示談交渉の中では被害者と加害者との協議により決定されています。
事故発生時には、警察が事故現場の調査を行い事故の内容を「実況見分調書」にまとめます。示談交渉の際には、この警察が作成した実況見分調書と過去の判例などをもとに、加害者の加入する保険会社が過失割合を算定して提示することが一般的です。
保険会社が提示した過失割合は、過去の判例を基にしているとはいえ、自社の利益確保の観点から妥当なものでない場合があるので、注意が必要です。そのため過失割合に関して少しでも疑問がある場合には弁護士に相談することをおすすめします。
前述の通り、過失割合に関しては事故の内容により定型化がされており、過去の判例を基に算定されますが、事故特有の「修正要素」を加味して、過失割合が加算されたり減算されたりします。
修正要素にはたくさんの種類がありますので詳しい内容については「【図解あり】交通事故の過失割合|状況別全パターンと加算・減算要素まとめ」を参考にしていただければと思いますが、居眠り運転の場合は、重過失として加害者に対して過失が2割程度加算される場合が多いです。ただしこれはあくまでも目安として考えておいてください。
被害者としては、加害者に請求できる損害賠償額が出来るだけ多い方がいいというのが本音だと思います。また居眠り運転での事故被害者の心情として、居眠り運転という悪質性を事由に損害賠償額が増額されるか否か疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
答えとしては、過去の判例を見る限り、居眠り運転のみを理由に損害賠償額が増額されたケースは多くありません。しかし、生じた結果が重大である場合、居眠り事故であることを重視して、慰謝料額が通常よりも増額される可能性は否定できません。
居眠り運転での事故被害者にとって、損害賠償請求の増額となる点は、慰謝料と過失割合です。示談交渉における保険会社の提示する慰謝料額、過失割合に疑問がある場合は、一度弁護士に相談することをおすすめします。
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