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人身事故の違反点数や罰金・免停処分の全知識

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公開日:2018.6.18  更新日:2020.10.29
交通事故の責任 弁護士監修記事

人身事故の違反点数や罰金・免停処分の全知識

人身事故(じんしんじこ)とは、交通事故で被害者がケガを伴う負傷をした場合の事故の事を言い、被害者の診断書が警察に提出され、警察が人身事故として立件した場合が該当します。

人身事故の場合は、車両のみが壊れる『物損事故』とは違い、被害者のケガの重さに関係なく刑事責任が伴い、加害者へは違反点数が付いたり罰金・処罰を受けることになります。

例えば、車の免許の違反点数の加算、免許停止や取り消し、また反則金や罰金も科せられる事になるでしょう。人身事故の最も多い解決手段は保険会社を通した示談になりますが、その際、人身事故の示談を効率よく行う手順などを解説していきます。

被害者にとっては、人身事故による慰謝料を加害者に対していくら要求できるのかも気になる部分かと思いますので、下記の『人身事故に遭ったら被害者がまずやるべき事』で解説していきます。

人身事故の定義|物損事故との違いとは

まずは人身事故に関する基礎知識からご紹介していこうと思います。人身事故における大きな着眼点は物損事故との違いや、違反点数・罰則がどうなるのかという事ではないでしょうか?

加害者や被害者にとって点数などがどう違うのかを確認していきましょう。
 

人身事故

人身事故は被害者がケガをしたり、後遺障害になったり、死亡してしまうという状況になった交通事故のことで、人身事故では加害者へ「刑事・民事・行政」の3つの処罰の対象となります。

具体的に言うと、罰金刑や懲役刑、違反点数が加点されて免許停止になったり、反則金の支払い、さらには被害者への慰謝料・損害賠償が発生することもあります。

▶︎人身事故の違反点数と罰金処分の例|人身事故に伴う3つの責任とは

物損事故

物損事故は被害者がケガや後遺障害、死亡するといった、人に対して傷害を与えることのない交通事故のことです。物損事故でも警察へ届け出ることは必要ですが、基本的には車両補償だけで済むケースが多いです。

物損事故の場合は違反点数が引かれることはない

人身事故は、車を運転中に交通事故を起こして、被害者に対してケガや後遺障害などの損害を負わせた場合が該当します。これに対して、人的被害がない物損事故や自損事故は人身事故には含まれません。

つまり、物損事故は『無事故無違反』扱いとなり、違反点数が引かれたり、免停やゴールド免許剥奪とはなりません

人身事故の違反点数と免停・免許取り消しの関係

では次に、人身事故による違反点数と罰則の例を見ていきましょう。

免許停止(免停)

自動車免許の処罰は正式には『免許停止』と言い、行政処分として「一時的に免許の効力を停止させられる処分」の事を言います。したがって、免停の指定期間が過ぎれば、再び免許の効力を取り戻すことが可能になります。
 

免許取り消し(免取)

免許取消は免許を取り上げられる処分になります。ただ取り上げられるだけでなく、一定期間免許を取得できない「欠格期間」という制限期間もあり、「欠格期間」になるともう一度教習所に通い、いちから免許を取り直す必要があります。
 

免許停止期間・欠陥期間

免許停止期間

前歴

30日

60日

90日

0回

6~8点

9~11点

12~14点

1回

-

4~5点

6~7点

2回

-

-

2点

3回

-

-

-

前歴

120日

150日

180日

0回

免許取消

1回

8~9点

免許取消

-

2回

3点

4点

-

3回

2点

3点

-

免許取消(欠格期間)

前歴

1年

2年

3年

0回

15~24点

25~34点

35点以上

1回

10~19点

20~29点

30点以上

2回

5~14点

15~24点

25点以上

3回

4~9点

10~19点

20点以上

人身事故の違反点数が計算される期間は3年|ただしリセットがある

交通違反をした事による点数は、交通事故発生日から起算して、過去3年間の点数が計算されます。ただし、下記の場合には以前の交通違反や交通事故の点数は加算されないとされています。
 

免許を受けている者が過去1年以上の間、無事故、無違反で過ごしたとき。

運転免許の取消しや停止処分を受けて、無事故、無違反で取消し期間、又は停止期間を過ごしたとき。

免許を受けている者が軽微な違反行為(3点以下の交通違反)をし、過去2年間に違反行為をしたことがなく、かつ、当該軽微な違反行為をした後、3か月間に違反行為をしたことがないとき。(運転可能期間に限る)

軽微な交通違反(1点、2点又は3点)を繰り返し、累積点数が6点(交通事故の場合は1回で6点を含む)になり、違反者講習を受講したとき。

引用元:国土交通上|違反点数票

人身事故の3つの責任|刑事・民事・行政上の付加点数と罰金処分の例

一般的に、人身事故を起こすと加害者には3つの責任を負う義務があります。主な例としては以下のような罰則があります。
 

  • 刑事処分:懲役や禁固刑及び罰金刑
  • 行政処分:累積違反点数に対する免許停止や取り消し
  • 民事処分:被害者に対する損害保証

刑事処分の例

基本的な手続きは強盗や殺人を犯した加害者と同じで、逮捕や起訴される事態になるのは交通事故で被害者を殺してしまったというような、悪質な交通事故の場合などです。

一部ではありますが、刑事上の責任が伴うものを下記にまとめますので、参考にして頂ければと思います。
 

事故の度合い

付加点数

刑事処分(目安)

死亡事故

20

懲役刑(7年以下)
禁固刑

治療期間3月以上の重傷事故、又は特定の後遺障害が伴う事故

13

懲役刑・禁固刑及び
罰金刑:50万円

治療期間30日以上、3月未満の重傷事故

9

罰金刑:30万~50万円

治療期間15日以上、30日未満の軽傷事故

6

罰金刑:20万~50万円

治療期間15日以上、30日未満の軽傷事故

4

罰金刑20万~30万円

治療期間15日未満の軽傷事故又は建造物損壊に係る交通事故

3

罰金刑15万~20万円

治療期間15日未満の軽傷事故又は建造物損壊に係る交通事故

2

罰金刑12万~15万円


 なお、自動車事故の場合に適用される刑事罰は

  • 業務上過失致死傷害罪(刑法211条)
  • 過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法5条)
  • 危険運転致死傷罪(自動車運転処罰法2条)
  • 過失建造物損壊罪(道路交通法第116条)

 
などがあり、最も重い危険運転致死罪の場合には1年以上20年以下の懲役が科されられます。

行政処分の例

加害者の免許に関する処分が主な内容になります。加害者が犯した過失の程度に変動して、免停100日や免許取り消しといった、運転免許資格に関する処罰が下ります。

交通事故の行政処分は、『交通違反の違反点数』のように、1つの違反に対して加算されるものとは違い、複数の要因を計算していきます。
 

  1. 基礎点数
  2. 付加点数
  3. 措置義務違反

 
この(1)+(2)+(3)の合計が人身事故に関する行政処分であり、最低4点以上になることが計算されます
 

安全運転義務違反

基礎点数

2

被害者の負傷程度

付加点数

 免取・免停

死亡事故

20

免許取消

13

90日~

重症事故

13

90日~

3ヶ月以上

後遺障害あり

9

60日~

重症事故

9

60日~

30日以上

3ヶ月未満

6

30日~

軽傷事故

6

30日~

15日以上

30日未満

4

軽傷事故

3

15日未満

建造物損壊事故

2

措置義務違反

35

死亡事故の点数の決め方

  • 運転者の不注意:20点
  • 被害者にも過失があった場合:13点
     

重傷事故の点数の決め方

  • 負傷者の治療期間が3ヶ月以上で後遺障害があり、運転者の一方的な不注意:13点
  • 被害者にも過失がある場合:9点
  • 治療期間が30日以上3ヶ月未満、運転者の一方的不注意:9点
  • 被害者にも過失がある場合:6点
     

軽傷事故の点数の決め方

  • 治療期間が15日以上30日未満、運転者の不注意:6点
  • 被害者にも過失がある場合:4点
     

建造物損壊事故の点数の決め方

  • 治療期間が15日未満の場合または建造物損壊の場合で、運転者の不注意:3点
  • 被害者にも過失がある場合:2点
     

民事処分の例

交通事故の加害者が問われる民事責任とは、直接的に有罪や無罪を確定するものではなく、加害者から被害者に対して、損賠賠償を金銭で補填する責任になります。つまり慰謝料などのお金を払う義務が生じるとお考えください。

民事処分によって伴う責任は、民法709条に定められた「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」とされているもので、一般的に損害賠償と呼ばれているものです。
 
事故の様態によって変わりますので、一概には言えませんが、一般的には下記のようなものを、人身事故の被害者は加害者へ請求できるものは下記のようなものがあります。
 

損害賠償

精神的損害
(慰謝料)

財産的損害

  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 死亡慰謝料

消極損害

積極損害

  • 休業損害
  • 後遺障害逸失利益
  • 事故がなければ得られた逸失利益
  • 医療費関係
    • 入通院治療費
    • 入院雑費
    • 付添看護費(医師の証明が必要)
    • 入通院交通費
    • 将来の手術、義足等 装具費
    • 診断書等費用、その他

人身事故は平成26年5月から罰則が強化

平成26年5月20日から、運転者の処分を厳しくする『自動車運転死傷処罰法』が施行されました。具体的に何が変わったのかを、簡単にご紹介していきます。
 

通行禁止道路の危険走行による死傷事故

一方通行道路や高速道路の逆走、歩行者天国、歩行者専用道路、車両通行止めの道路などが該当します。
 
・死亡事故:1年以上20年以下の懲役
・負傷事故:15年以下の懲役(無免許運転の場合は6ヶ月以上20年以下)
 

飲酒運転や薬物使用時による死傷事故

アルコール摂取後の運転やなどで、正常な運転ができない状態で死傷事故を起こした場合が該当します。
 
・死亡事故:1年以上20年以下の懲役
・負傷事故:15年以下の懲役(無免許運転の場合:6ヶ月以上15年以下)
 

幻覚や発作による死傷事故

統合失調症、低血糖症、そううつ病、てんかんなどの症状があるにもかかわらず運転し、死傷事故を起こした場合が該当します。
 
・死亡事故:1年以上20年以下の懲役
・負傷事故:15年以下の懲役(無免許運転の場合:6ヶ月以上15年以下)
 

新設:過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪

従来の刑法では飲酒運転で交通事故を起こした場合でも、現場から逃走することで発覚を免れる加害者がいたため、これを阻止する為に新設された刑法です。
 
・アルコールの摂取、アルコールや薬物反応を減少させる行為:12年以下の懲役(無免許の場合:15年以下の懲役)
 

飲酒運転の違反点数も改正

・酒酔い運転:25点⇒35点(欠格期間2年 ⇒ 3年)
・酒気帯び運転0.25%以上:13点 ⇒ 25点
・免許停止 ⇒ 免許取消(欠格期間90日 ⇒ 2年)
・酒気帯び運転0.15%~0.25%未満:6点 ⇒13点
 欠格期間30日 ⇒ 90日
 

悪質危険運転行為に対する点数強化

・危険運転致死:62点
・危険運転致傷:45~55点
・車運転による故意の殺人:62点
・車運転による故意の致傷:45~55点
・ひき逃げ:35点
 

人身事故に遭ったら被害者がまずやるべき事

次に、人身事故に遭った被害者が、のちのち不利な状況にならない為の事故直後の手順をご紹介していきます。

  1. 人身事故直後はすぐに警察に連絡
  2. 人身事故として申請する
  3. 加害者の情報(電話番号・住所・車のナンバー)を確認しておく
  4. 現場の事故写真を撮っておく
  5. 事故の目撃者を確保しておく
  6. 病院や修理費用の領収書は必ず保管しておく
  7. 後遺障害の可能性がある場合は診断書を書いてもらう

人身事故直後はすぐに警察に連絡

ひき逃げでもない限りは、相手方と一緒に事故現場に残ることが大切です。警察は事故状況について詳細な資料を作成し、これは事故態様を明らかにする資料として証拠価値が高く、『過失割合』などの決定に重宝します。

必ず人身事故として届け出る

加害者によっては『人身事故』ではなく『物損事故』として処理させて欲しいと申し出ることもありますが、あなたが少しでも怪我を負ったのであれば必ず人身事故として警察に届け出るようにしましょう。

加害者の住所・連絡先・ナンバーを確認

相手が任意保険会社に加入していない場合、示談交渉は相手当事者と直接行う必要があります。その場合相手の連絡先は必須であるため、相手当事者の『連絡先』は必ず聞いておきましょう。

事故証明を取得すれば相手の連絡先は確認できますが、その場で聞ける場合は聞いておきましょう。
 

現場の証拠写真は自分でも撮っておく

どのような人身事故であっても、自分で現場の状況を『記憶』し、写真等で証拠となる『記録』を残しておくようにするべきです。相手方に損害賠償を請求するためにも、情報は正確に把握しておくべきです。
 

相手との事故当時の会話も録音しておこう

警察は、当事者双方から話を聞きますが、その供述内容の記録は開示されることはほぼありません。そのため、当事者の会話として記録すべきものがあれば、自分で録音等しておくことも大事です。
 

事故当時の目撃者を確保する

相手の身元の確認ができたところで、周囲に目撃者がいた場合は証人として、同行してもらったり、連絡先を聞いておいたりしましょう。事件当事者と利害関係のない第三者の証人は警察や保険会社に信用されることが多いからです。
 

病院や車の修理費の領収書は必ず保管

保険金や損害賠償金は、被害の程度に応じて変動していきますので、実際に支払った金額が正確にわかるものは、必ず控えるよう心がけましょう。
 

後遺障害の疑いがあれば診断書を必ずもらう

もし交通事故で受けた痛みが交通事故によって発生した場合、物損事故として処理されたあとでは取り返しがつきませんので、むちうちなどの後遺症と診断されるような痛みがでてきた場合、病院で診断書をもらいましょう。
 
交通事故の対応についての詳しい内容は以下の記事ををご覧ください。

人身事故の解決なら弁護士に相談

人身事故の違反点数や処分についてお伝えしてきましたが、加害者となってしまった場合は、上記のような責任が伴うことを覚えておきましょう。

この責任に対して被害者と示談交渉で解決を目指すことは多いと思いますので、不安なこと、疑問に思ったことは弁護士へ相談することをオススメします。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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