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飲酒運転による死亡事故の罰則|慰謝料の相場と刑事罰まとめ

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公開日:2020.7.7  更新日:2020.7.7
交通事故の責任 弁護士監修記事

飲酒運転による死亡事故の罰則|慰謝料の相場と刑事罰まとめ

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飲酒運転による死亡事故は年間で200~250件程度発生しており、飲酒事故全体の件数と比較すると、およそ5%の死亡事故率になります。5%という死亡事故率は他の事故より極めて高い数値であるため、飲酒運転が死亡事故に繋がりやすいといえるでしょう。

 

飲酒運転による交通事故件数と死亡事故率(年代別)

 

飲酒運転による交通事故件数(平成22年~26年の累計)

 

20歳
未満

20歳代

30歳代

40歳代

50歳代

60歳代

70歳代

80歳
以上

合計

飲酒事故

640

4478

4787

4972

4155

3383

1122

141

23678

死亡事故
(内数)

58

312

269

244

180

143

61

12

1281

死亡事故率

9.1%

7.0%

5.6%

4.9%

4.3%

4.2%

5.4%

9.9%

5.4%

 

参考:「警察庁交通局配布資料 世代別・年齢別 飲酒事故件数(平成22年~26年)

 

飲酒運転による交通事故が原因で婚約者や子供、親などを亡くしてしまった場合には精神的苦痛に対する慰謝料や損害賠償金を請求するべきです。そこで今回は、死亡事故で被害者の遺族が請求できる保険金の相場と併せて、加害者側の示談交渉で気を付けるべきことを解説いたします。

 

当記事は被害者向けに執筆されております。加害者の方は以下記事を参照ください。

【加害者向け】飲酒運転で逮捕された際の罰則と罰金|逮捕後の流れと早期対策の手順

 

死亡事故が起きたら弁護士に相談しましょう

死亡事故が起きたとき、加害者から被害者(遺族)へ、死亡慰謝料が支払われます。

そして、死亡慰謝料は『弁護士に請求を依頼すること』で、金額が増加する可能性があります。
交通事故の死亡慰謝料の自賠責と弁護士基準の比較表
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死亡事故につながる飲酒運転の危険性

死亡事故で得られる慰謝料や損賠賠償金について取り上げる前に、まずは飲酒運転の概要について確認していきます。少しでもアルコールを摂取すると麻痺作用により正常な判断ができなくなるため、死亡事故を引き起こす可能性が高くなるでしょう。

 

飲酒運転による交通事故の死亡率は他の事故と比べて高い

平成28年度の統計では、飲酒運転による死亡事故は213件発生しており、飲酒運転事故全体と比較した死亡事故率は5.67%です。対して、飲酒運転事故以外における死亡事故率は0.68%であるので、飲酒していない場合の事故と比べて約8.3倍も多いことになります。

参考:「飲酒運転による死亡率、他事故の8倍超 平成28

 

飲酒運転が危険である理由|判断能力・運動能力の低下

飲酒運転による死亡事故の割合が大きい理由として、アルコールを摂取することでの判断能力や運動能力の低下はもちろんのことですが、以下のような意識的な問題も挙げられます。

 

  • 飲酒運転に対する犯罪意識が薄い
  • 酒が強いから自分は大丈夫だと思っている

 

酒が強い人は酔っていないから安全に運転できると思い込んでいるかもしませんが、調査研究によると酒の強い人と弱い人がアルコールを摂取した場合、アルコール濃度が同じであれば反応が同じレベルで遅くなることが明らかになっています。

参考:「警察庁 低濃度のアルコールが運転操作等に与える影響に関する調査研究

 

つまり、『自分は酔っていない』と思っていても、実際は判断能力や運動能力が低下している場合があるといえるでしょう。

 

飲酒運転による死亡事故は重い罪になる

飲酒運転による死亡事故では行政処分(免許取消しや停止など)に加えて以下表の通り、重い刑事罰が科されます。死亡事故における危険運転致死傷罪の罰則は1年以上の有期懲役であり、一見すると軽い処罰であると思うかもしれませんが、最大で20年の懲役が科されることもあります。

参考:「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

 

《飲酒運転による交通事故に関する罰則:刑法》
※飲酒運転による交通事故では、以下2つの罪状のいずれかになる場合があります。

自動車運転過失致死傷罪

(死亡・負傷の両方)

7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金

危険運転致死傷罪

(死亡)1年以上の有期懲役

(負傷)15年以下の懲役

 

死亡事故で被害者の遺族が請求できる慰謝料と損害賠償金の相場

死亡事故で請求できる慰謝料と損害賠償の相場について解説していきますが、3種類の相場基準によって金額が異なります。詳細については『交通死亡事故で遺族がすべき対応と慰謝料請求する手順』でも取り上げているので、併せてご確認いただければと思います。

 

死亡慰謝料|飲酒運転の場合は増額が認められる

死亡慰謝料は被害者(死亡者)の遺族に対して支払われるものですが、被害者本人に対する慰謝料と遺族に対して支払われる慰謝料があります。自賠責基準の場合は被害者本人と併せて遺族(請求権者)の人数に応じて死亡慰謝料が決められます。

 

《被害者に対する死亡慰謝料》

被害者本人の立場

自賠責基準

任意保険基準(推定)

弁護士基準

一家の支柱

350万円

1,500万円〜2,000万円

2,800万円〜
3,600万円程度

子ども

350万円

1,200万円〜1,500万円

1,800万円〜
2,600万円程度

高齢者

350万円

1,100万円〜1,400万円

1,800万円〜
2,400万円程度

上記以外
(配偶者など)

350万円

1,300万円〜1,600万円

2,000万円〜
3,200万円程度

 

《近親者に対する慰謝料》

自賠責基準

遺族の慰謝料

被害者に被扶養者
がいる場合

被害者に被扶養者
がいない場合

請求権者1人の場合

750万

550万

請求権者2人の場合

850万

650万

請求権者3人以上の場合

950万

750万

参考:「交通事故で被害者が死亡した場合の慰謝料相場

 

死亡逸失利益|被害者の死亡によって減少した収入を補償

死亡逸失利益は、被害者が死亡したことによって失った収入を補償してくれるものになります。死亡逸失利益の損害賠償額を決める基準は、死亡者の基礎収入とライプニッツ係数(被害者の労働喪失年数に応じた数値)に加えて、被害者がいなくなった分減少する生活費が加味されます。

参考:「逸失利益を計算する方法

 

《死亡逸失利益の計算式》

1年あたりの基礎収入 ×(1-生活費控除率) × ライプニッツ係数

 

《生活費控除率》

被害者の立場

生活費控除率

男性(未成年も含む)

50

女性(主婦や未成年も含む)

30

一家の支柱(被扶養者が1人の場合)

40

一家の支柱(被扶養者が2人以上の場合)

30

 

葬儀費|各相場基準によって異なる

葬儀費も損害賠償金として請求できますが、死亡慰謝料と同様にそれぞれの相場基準によって異なります。詳細は以下の通りです。

 

  • 自賠責基準|原則として最大60万円
  • 任意保険基準|目安として120万円程度
  • 弁護士基準|目安として130万円~170万円

 

自賠責基準では明確な上限額が設定されていますが、弁護士基準で請求した場合はケースに応じて増額が認められています。

 

飲酒運転による死亡事故の具体的な事例と死亡慰謝料認定額

上記で取り上げた死亡慰謝料はあくまで一つの基準になるため、飲酒運転による過失が認められて慰謝料が増額される可能性が高くなります。

 

飲酒運転による死亡事故に遭った場合に認定された死亡慰謝料額について、2つの事例を参考に見ていきましょう。飲酒運転の場合には『死亡事故につながる飲酒運転の危険性』でも説明したように正常な判断ができないため、速度超過や事故現場からの逃走など、様々な悪質性が重なることで加害者側が不利になるでしょう。

 

酒気帯び運転と併せて速度超過があった死亡事故

19歳の女性が交通事故で死亡したケースですが、加害者側に酒気帯び運転だけでなく速度超過も認められたことで、弁護士基準より増額されました。

 

弁護士基準額

2,000万円~2,200万円

慰謝料認定額

被害者(死亡者)に2,400万円
被害者の父母にそれぞれ100万円

参考:「交民集 40巻・4号・891頁」

 

飲酒運転と併せて居眠りや事故後の逃走などが考慮された死亡事故

65歳の女性が交通事故で死亡したケースで、被害者側の落ち度(過失)が認められないことに加え、加害者側が飲酒後の運転で居眠りをしていたことで事故を起こし、さらに事故後の逃走に悪質性が考慮されました。

 

弁護士基準額

2,400万円

慰謝料認定額

被害者(死亡者)に2,400万円
被害者の長女に200万円・次女に150万円

参考:「交民集 43巻・6号・419頁」

 

任意保険会社との示談交渉をする時に気を付けるべきこと

死亡事故における慰謝料や損害賠償金の相場についてお分かりいただけたかと思いますが、被害者側から主張しないと不当に保険金額を下げられてしまうこともあるので、示談交渉の注意点を最後にまとめました。
参考:「交通事故の示談をする時に必ず知っておきたい流れと注意点

 

任意保険会社の早期的な示談交渉には注意

示談交渉では基本的に加害者本人と直接話すわけではなく、加害者側の任意保険会社が代理で出てきますが、任意保険会社は早期的な示談交渉を望んでいる場合があります。しかし以下のような加害者側の都合が考えられるため、被害者は安易に応じないようにするべきです。

 

  • 相場よりも安い示談金(損害賠償金と慰謝料)で取り決めたい
  • 早めに示談を成立させることで加害者側の量刑を軽くしたい

 

裁判前に示談成立している場合は被害者側との和解が済んでいると見なされ、心証が良くなるため懲役刑が軽くなったり執行猶予になったりする可能性が高くなります。ですが、あくまで加害者の意向を優先した行為であるので、被害者は急がずに示談金額が妥当であるかどうかを慎重に見極める必要があるでしょう。

 

飲酒運転の過失が加味されていない死亡慰謝料を提示されることもある

上記と関連しますが、被害者側より指摘されない限りは任意保険会社の都合に従った慰謝料額で丸め込まれてしまう可能性があります。

 

なので、任意保険会社より提示された示談金額の妥当性を判断することが重要になりますが、被害者自身で交渉に応じるより交通事故案件に詳しい弁護士に頼んで対応してもらう方が確実だと思われます。

 

弁護士への依頼と弁護士費用

飲酒運転の過失を指摘して適切な額の慰謝料や損害賠償金を要求するには、弁護士に依頼することが一つの手段です。

 

被害者は弁護士に依頼することで発生する費用(弁護士費用)について不安に思うかもしれませんが、基本的には請求できた賠償金額の一部を報奨金として支払う形になるため、賠償金を獲得できれば被害者側が損をする可能性はほとんどありません。
参考:「交通事故の弁護士費用の相場

 

また、裁判で損害賠償請求額の10%を弁護士費用として請求できるケースもあるため、一部に限られますが補償されます。飲酒運転による交通事故で家族を亡くしてしまった場合には、弁護士費用の見積りを確認する目的も含め、早めに弁護士に相談してみるのが良いでしょう。

まとめ

飲酒運転による死亡事故では、慰謝料や損害賠償金をめぐって裁判で争われる可能性もあります。遺族は精神的な負担が大きく立ち直ることが難しいかもしれませんが、任意保険会社との示談内容に納得がいかないのであれば、弁護士の協力を受けて加害者側へ訴えることが重要になるでしょう。

 

交通事故の損害賠償金弁護士が
交渉
することで増額する可能性が高まります

結論からお伝えすると、保険会社から提示されている損害賠償金の増額には弁護士への依頼が必要不可欠です。

残念ですが、一般の方が保険会社と交渉しても聞く耳持たないのが現状で増額には弁護士への依頼が必須です。まずは、弁護士への依頼でどれくらいの増加が見込めるのか依頼するしないは別として、ご自身の場合、弁護士に依頼するとどのようなメリットがあるのかを具体的に相談してみることをオススメします。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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