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交通事故の示談交渉を行うタイミングと示談の流れ

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
交通事故の示談交渉を行うタイミングと示談の流れ

ある日突然巻き込まれる、交通事故。

事故の被害者にとっても、また加害者にとっても、どうしたらよいのかわからないことばかりでしょう。中でも困るのが『示談交渉』についてです。どのタイミングで交渉するのか、内容はどうすればよいのかなど、判断に困ることが多々出てくるでしょう。

そこでこの記事では、交通事故の示談交渉について、重要なポイントを解説します。

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交通事故における示談交渉とは?

何かトラブルがあったときに『示談をする』というフレーズを耳にしますが、そもそも示談とは何なのでしょうか。

示談とは、簡単にいえば損害賠償に関する当事者間の約束です。

例えば『事故でバンパーが壊れたので、修理費として10万円払います』といった内容の約束をしたら、加害者はこれに従って支払いをします。

ここで注意してほしいのが、示談は一度してしまうと原則として覆すことができないという点です。少し難しいですが、示談は法律上『和解』契約であるとされます。

(和解)

第695条 和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。

(ポケット六法平成30年度版/有斐閣)

和解は契約であるため、一度合意すると原則として一方的に変更できません。仮に後から『請求し忘れた損害があった』という場合でも、従前の和解内容を当然には覆すことができないのです。そのため、示談を行う際には慎重に交渉を進める必要があります。

※ただし、和解後であっても因果関係の確かな後遺症が発覚した場合は請求が認められる可能性もあります。

交通事故で示談交渉を行うタイミング

示談交渉のタイミングに法律上の決まりはありません。事故直後から交渉を始めることも可能です。

しかし、損害賠償の金額が定まっていない段階で交渉をはじめると、不当な金額を請求することで交渉が決裂したり、あとから思わぬ損害が見つかり後悔することになったりと、お互いにとってメリットがありません。

そこで一般的には、以下のようなタイミングで示談交渉が開始されます。

  • 人身事故…治療が完了するか、症状が固定したとき
  • 物損事故…壊れたものの修理費や弁償する額が明らかになったとき

保険会社が示談交渉を急かすこともありますが、このような誘いには安易に乗らず、示談交渉のタイミングを見極めましょう。

交通事故の被害者が注意すべき点

交通事故の示談交渉において、被害者が注意すべき点をまとめました。

怪我をしていた場合に物損事故として届け出ない

例えば、交通事故に遭い、転倒してかすり傷を負ったとします。相手のドライバーはとても反省しているようです。「怪我も大したことないし、警察に人損として届けなくてもいいかな…」と考えてしまうかもしれません。

しかし、損害賠償の観点からいうと、むやみに物損で届け出るべきではないのです。物損として届け出てしまうと、事故態様に争いがある場合の有用な証拠である実況見分調書が作成されないというデメリットがあります。

症状が固定するまで病院に通う

交通事故の補償額は入通院期間によって変動します。そのため、疼痛症状が残っている状態で無理に治療を打ち切る必要はありません。

『示談をしない』という選択肢はリスクが大きい

交通事故の被害者の中には、『絶対に示談をしたくない』という方がいらっしゃいます。その理由としては、『被害者に重い刑罰を与えたいから』『相手が不当な額を請求しているから』ということが挙げられるでしょう。しかし、示談をしないという選択肢には、リスクがあることも理解しておきましょう。

示談をしない≠重い刑罰

一般に『被害者と示談をした』という点は、加害者の量刑判断(罪の重さを判断すること)の一要素になります。すなわち、裁判官の気持ちとして『被害者と示談をしたから、罪を軽くしよう』という考慮が働くということです。しかし、これは絶対的なものではありません。また、加害者が『示談交渉をしようとした』という姿勢が評価されることもあります。

そのため、示談をしないことで、必ずしも重い刑罰が科されるとは限らない、という点を押さえておいてください。

時効が進む

損害賠償には3年間の時効があります(民法724条)。具体的には、損害および加害者を知ったときから3年間請求しないことで、損害賠償を請求することができなくなってしまうのです。そのため、示談を拒んだまま、何もせずにいると、いつの間にか損害賠償の時効期間が過ぎてしまった、ということにもなりかねません。

なお、時効を中断(一時的にストップ)する方法として、加害者に賠償を約束させた念書を書かせる、保険会社から仮渡金をもらう、などの方法もあります(民法147条)。いずれの方法もきちんとした内容で行う必要があるため、示談をせずに時効を中断させたい場合には、早めに弁護士に相談しましょう。

民事裁判に進む

示談をせずに加害者に損害賠償請求をする場合、民事裁判へと進みます。民事裁判になると、解決まで数年かかることもあります。また、裁判官の判断により減額されることや、弁護士費用がかかることを考えると、最終的にもらえる金額は示談より低くなるといえましょう。

「裁判になってもいいから、示談には応じたくない」という場合には、このようなデメリットがあることをよくよく考慮する必要があります。

示談交渉の流れ

交通事故が発生してから、どのように示談交渉をしていくのでしょうか。示談成立までの流れを見ていきましょう。

①相手方の保険会社からの連絡

事故発生後、相手が任意保険に加入している場合には、保険会社の担当者から連絡があります。やりとりは対面の場合もありますし、電話の場合もあります。

このとき、すでに治療のため通院しているのであれば、通っている医療機関の名前を伝えましょう。保険会社が医療機関に直接治療費を支払ってくれます。

これを一括対応と言います。

②書類の送付

相手方保険会社から書類が送られてきます。この中で、同意書はすぐに記入して送り返しましょう。同意書がないと、一括対応をしてもらえません。

③示談交渉

示談交渉に入るタイミングは、治療が終わったとき、または自賠責保険による後遺障害の等級認定が確定したときが一般的です。必ず、治療を完全に終えるまで(あるいは症状が固定するまで)病院に通い続けましょう。

加害者側の保険会社、または加害者との間で示談がまとまれば、書面を交わし、示談成立です。

示談交渉は、法的知識だけでなく、交渉テクニックも要求される高度なものです。無理に自分で対応しようとせず、早い段階で弁護士に依頼するようにしましょう。 

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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