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交通事故におけるADRとは?メリット・デメリットや解決までの流れ

交通事故におけるADRとは?メリット・デメリットや解決までの流れ

交通事故に遭った際は「ADR(裁判外紛争解決手続)」という解決手段があります。

裁判手続の場合、終結までに1年以上かかることも珍しくありませんが、ADRであれば3ヵ月程度で示談が成立する可能性があります。

そのほかにも、基本的に無料で利用できるため費用の心配がいらないという点も特徴です。

本記事では、交通事故におけるADRの方法やメリット・デメリット、解決までの流れやおすすめのADR機関などを解説します。

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交通事故トラブルで利用できるADR(裁判外紛争解決手続)とは?

ADR(Alternative Dispute Resolution)とは、一般的に「裁判外で紛争を解決する手続き」を指します。

交通事故トラブルでは、交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターなどのADR機関が示談成立のための仲介をしてくれます。

ADR機関は「あくまで中立的な立場で紛争処理をする」という特徴があります。

仲介人である弁護士などが、被害者や加害者のどちらか一方に味方することはありません。

あくまでも、当事者双方を仲介する第三者として間に入り、紛争を解決します。

交通事故トラブルでADRを利用してできる3つのこと

ADRでできる3つのこと

交通事故でADRを利用する場合、担当弁護士との法律相談や和解のあっせん・審査員による審査などが利用できます。

ここでは各対応内容について解説します。

1.担当弁護士との法律相談

ADRでは、示談成立に向けて、各ADR機関に登録している弁護士に法律相談できます。

ただし、各ADR機関の登録弁護士は中立的な立場にあるため、自分にとって有利な条件で示談成立させるためのアドバイスなどは期待できません。

あくまでも「一般的な内容で示談を成立させるためには、どのような方法で進めるべきか」などのアドバイスとなります。

2.和解のあっせん

和解のあっせんとは、ADR機関が被害者と加害者の間に立って、お互いの示談条件を調整して解決を図る手続きです。

相手方と対面することなく、仲介人(基本的にはADR機関に登録している弁護士)との話し合いによって手続きが進行するため、感情的なトラブルなどが起こる心配もありません。

3.審査員による審査

審査とは、審査会に所属する審査員が賠償額などを判断する手続きです。

和解あっせんでは解決が難しい場合に開催され、被害者と加害者の主張内容を基に裁定がくだされます。

交通事故トラブルでADRを利用するメリット・デメリット

交通事故トラブルでADRを利用する場合、以下のようなメリット・デメリットがあります。

ADRを利用するメリット

ADRは基本的に無料で利用できるため、費用の心配がいらないという点がメリットです。

さらに、ADR機関は中立・公平に対応してくれるため、相手方にとって一方的に有利な条件で示談が成立することはありません。

また、ADRを利用せずに民事裁判で解決を図る場合、終結までに1年以上かかることもあります。

一方、ADRを利用すると3ヵ月程度で和解することもあり、手続きにかかる期間が比較的短いという点もメリットです。

ADRを利用するデメリット

ADR機関はどちらか一方の味方をすることはないため、自分にとって有利な条件になるように動いてもらえない点がデメリットです。

さらに、担当弁護士を自由に選択・変更できないという制限もあります。

なお、交通事故の損害賠償請求権には時効があり、示談交渉などは時効成立前に済ませなければいけません。

ADRを利用せずに民事裁判で解決を図るのであれば、訴えを起こした時点で時効が中断されるため、時効を心配する必要がなくなります。

一方、ADRによる和解・裁定では時効が中断されないため、対応に時間がかかると損害賠償請求権を失うリスクがあります(弁護士会個別のADRセンター・そんぽADRセンターを除く)。

ほかにも、民事裁判であれば、事故発生日を起算点として「遅延損害金」という賠償金も請求できます。

しかし、ADRによる和解・裁定では遅延損害金がつかず、賠償金が低額になるおそれもあります。

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交通事故トラブルをADRで解決するまでの流れと期間

ADRで解決するまでの流れと期間

ADRでは、担当弁護士との法律相談・和解のあっせん・審査会による審査という流れで進めるのが通常です。

代表的なADR機関としては、「交通事故紛争処理センター」や「日弁連交通事故相談センター」などがありますが、ADR機関ごとに対応内容が異なる部分もあります。

ここでは、各ADR機関の対応内容の違いにも触れながら、解決までの流れと期間について解説します。

  1. 申し込み
  2. 担当弁護士との法律相談
  3. 弁護士を交えた加害者との話し合い
  4. 審査会による審査
  5. 手続きの終了

1.申し込み

まずは、ADR機関に連絡して、ADRを利用する旨を伝えましょう。

なお、交通事故紛争処理センターの場合、法律相談は予約制なので相談予約が必要です。

ADR機関に連絡すると、ADRの進め方や必要書類などについて指示されたのち、利用申込書や利用規定書などの書類が送られてきます。

必要事項を記入して準備しておきましょう。

ADRを利用する際の必要書類は、以下のとおりです。

  1. 交通事故証明書
  2. 事故発生状況報告書
  3. 保険会社の賠償金提示明細書
  4. 病院の診断書・領収書 など

場合によっては、ほかの書類を求められることもありますので、適宜指示にしたがってください。

2.担当弁護士との法律相談

基本的に担当弁護士との法律相談は面接形式でおこなわれますが、日弁連交通事故相談センターの場合は、電話相談にも対応しています。

法律相談では、交通事故の経緯・損害項目・交渉状況などの確認がおこなわれたのち、示談成立に向けたアドバイスが受けられます

なお、交通事故紛争処理センターの場合は、けがの治療終了後の示談交渉段階でなければ相談できません

交通事故直後やけがの治療中など、示談交渉前の段階で相談したい場合は、日弁連交通事故相談センターなどを選択する必要があります。

法律相談だけでは示談成立が難しい場合は、和解のあっせんを希望する旨を担当弁護士に伝えてください。

担当弁護士が認めてくれれば、和解のあっせんに移行します。

3.弁護士を交えた加害者との話し合い

ここでは、まず担当弁護士が、ヒアリング内容をもとに和解に向けたあっせん案をまとめます

そのあとは、担当弁護士が相手方の主張も伺いながら、お互いにとって公平な内容になるようにあっせん案を調整します。

あっせん案について異議がなければ和解成立となり、手続きは終了です。

交通事故紛争処理センターの場合、1ヵ月に1回のペースで話し合いがおこなわれ、3~5回程度で和解成立となるのが一般的です。

一方、日弁連交通事故相談センターの場合、2~3週間に1回のペースで話し合いがおこなわれ、3回で終了するのが一般的です。

なお、交通事故紛争処理センターの場合、相手方が任意保険・任意共済に加入していないと和解あっせんは原則利用できません。

相手方が任意保険・任意共済に加入していない場合、日弁連交通事故相談センターなどを選択する必要があります。

和解あっせんでも解決しない場合は、不合意になってから14日以内に審査請求します。

審査請求が受理されれば、審査会による審査へと移行します。

4.審査会による審査

審査会では、被害者と加害者が出席してお互いの考えを主張したのち、審査員によって裁定が下されます

裁定後は14日以内に同意・不同意を回答しなければならず、無回答の場合は不同意として扱われます。

ただし、審査会の裁定は、裁判での判決のような拘束力はありません。

もちろん、お互いが同意すれば裁定内容どおりに賠償金の支払いがおこなわれますが、どちらか一方が不同意の場合は裁定自体が無効となります。

なお、交通事故紛争処理センターの場合は損害保険会社や一部の自動車共済、日弁連交通事故相談センターの場合は特定の自動車共済と協定を結んでいます。

示談交渉の相手がADR機関と協定を結んでいる場合、相手方は審査会での裁定内容を尊重しなければいけません。

つまり、相手方は審査会での裁定について不服を申し立てることはできず、示談成立になるかどうかはこちらの判断に全て委ねられることになります。

5.手続きの終了

被害者と加害者が裁定に同意した場合、示談書・免責証書が作成され、賠償金が支払われます。

支払い方法は銀行口座への一括払いが原則で、基本的には示談成立後から2週間程度で支払われます

和解が成立しなかった場合

裁定に同意しなかった場合は、裁判所を介した民事調停や民事裁判などに移行せざるを得ません。

裁判手続であれば必ず決着がつくことになりますが、ADRと比べると手間も時間もかかり、終結まで1年以上かかることもあります。

なお、日弁連交通事故相談センターの場合、裁判手続に移行する際に弁護士の紹介が受けられます。

一方、交通事故紛争処理センターの場合、弁護士の紹介は受けられません。

交通事故トラブルでおすすめのADR機関と口コミ

交通事故トラブルの際の代表的なADR機関には、以下のようなものがあります。

  • 交通事故紛争処理センター
  • 日弁連交通事故相談センター
  • そんぽADRセンター

各ADR機関の具体的な特徴は、下記のとおりです。

比較項目 交通事故紛争処理センター 日弁連交通事故相談センター
窓口の数 11ヵ所 159ヵ所
相談予約 必要 不要
相談方法 面接のみ 面接または電話
相談可能なタイミング 示談交渉の段階に入ってから どのタイミングでも相談可能
担当弁護士 事案終了まで担当弁護士は変わらない 法律相談と和解あっせんでは担当弁護士が変わる
和解あっせんを利用できないケース 相手が任意保険・任意共済に未加入 物損事故で相手が任意保険などに未加入
和解あっせんのペース 約1ヵ月に1回 約2~3週間に1回
和解成立までのあっせん回数 3~5回程度 原則3回
審査会での裁定の拘束力 損害保険会社・一部の自動車共済に対して拘束力がある 特定の自動車共済に対して拘束力がある

では、各ADR機関の詳細や口コミについてさらに詳しくみていきましょう。

1.交通事故紛争処理センター

交通事故紛争処理センターは、1974年から活動しており、もっとも歴史のあるADR機関です。

窓口は全国11ヵ所に設置されており、基本的には無料でADR手続きを利用できます。

交通事故紛争処理センターの場合、損害保険会社や一部の自動車共済と協定を結んでいます。

そのため、審査会へもつれ込んだ際には、裁定に一定の拘束力が生じるという点が特徴です。

知人女性が事故にあった時も相手が舐めてきたけど、交通事故紛争処理センターを間に挟んで後はスムーズに進んで賠償も受け取れたって。
事故にあったら交通事故紛争処理センターの事を思い出そうφ(・ェ・o)

引用元:いつも寝てたい@お布団 (@Eoh1tSOHZIogEcL) / Twitter

営業時間(電話予約受付) (月~金曜)9時00分~12時00分、13時00分~17時00分
所在地 全国11ヵ所に設置
(北海道・岩手・埼玉・東京・静岡・石川・愛知・大阪・広島・香川・福岡)
地域別の住所・連絡先 https://www.jcstad.or.jp/map/

なお、なかには交通事故紛争処理センターを利用できないケースもあります。

詳しくは、以下のとおりです。

(1)次の紛争は、センターのご利用の対象ではありません。

  1. 加害者が自動車(原動機付自転車を含む)でない事故の場合、例えば、自転車と歩行者、自転車と自転車の事故による損害賠償に関する紛争
  2. 搭乗者傷害保険や人身傷害保険など、自分が契約している保険会社又は共済組合との保険金、共済金の支払いに関する紛争
  3. 自賠責保険(共済)後遺障害の等級認定・有無責等に関する紛争
  4. 求償に係る紛争(保険会社等間、医療機関、社会保険等との間の求償)
  5. 相手方の保険会社等が不明の場合

(2)次の場合は、センターにおける本手続を行いません。ただし、相手方が同意した場合は、本手続を行う場合があります。

  1. 加害者が任意自動車保険(共済)契約をしていない場合
  2. 加害者が契約している任意自動車保険(共済)の約款に被害者の直接請求権の規定がない場合
  3. 加害者が契約している任意自動車共済が、JA共済連、こくみん共済、coop(全労済)、交協連、全自共及び日火連以外である場合

引用元:ご利用について|交通事故紛争処理センター

2.日弁連交通事故相談センター

日弁連交通事故相談センターも、交通事故紛争処理センターに並んで代表的なADR機関です。

窓口は全国157ヵ所に設置されており、基本的には無料でADR手続きを利用できます。

日弁連交通事故相談センターの場合、示談交渉前の段階でも法律相談ができて和解あっせんのペースが比較的早いです。

また、ADRで解決できなかった場合は弁護士の紹介が受けられるなどの点が特徴です。

営業時間(電話予約受付) (月~金曜)10時00分~16時30分
※毎月10日は10時00分~19時00分
所在地 全国157ヵ所に設置
地域別の住所・連絡先 https://n-tacc.or.jp/list

なお、なかには日弁連交通事故相談センターを利用できない場合があります。

詳しくは以下のとおりです。

当センターは以下の場合には相談を行いません。

  1. 弁護士法第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)違反の疑いのある者からの申込み
  2. 相談者がすでに弁護士である代理人を選任しているとき
  3. 相談回数が原則として同一事案につき5回を超えるとき
  4. 事故当事者本人以外の者からの申込みであるとき
    ただし、同居の親族、四親等内の親族及びこれらに準ずる者からの申込みであるときを除く
  5. その他、相談を行うのに適当でないと認められるとき

引用元:面接相談(無料)|日弁連交通事故相談センター

当センターは以下の場合には示談あっ旋の申込みを受理できません。

  1. 調停または訴訟手続に係属中であるとき
  2. 他の機関にあっ旋を申し込んでいる事案であるとき
  3. 不当な目的により申込みをしたものと認められるとき
  4. 当事者が権利又は権限を有しないと認められるとき
  5. 弁護士法第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)違反の疑いがある者からの申込みであるとき
  6. その他、示談あっ旋を行うに適当でないと認められるとき

引用元:示談あっせん・審査|日弁連交通事故相談センター

③そんぽADRセンター

そんぽADRセンターとは、日本損害保険協会が設置している相談窓口のことです。

窓口は全国10ヵ所に設置されており、交通事故や損害保険の相談・苦情受付・和解のあっせんなどが受けられます。

たとえば「損害保険会社に対して苦情がある」「トラブルになっている」という方は、選択肢のひとつとして考えてよいでしょう。

営業時間(電話相談受付) (月~金曜)9時15分~17時00分
所在地 全国10ヵ所に設置
(北海道・宮城・東京・石川・愛知・大阪・広島・香川・福岡・沖縄)
地域別の住所・連絡先 https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/adr/location/index.html

なお、そんぽADRを利用できるのは「日本損害保険協会との間で手続実施基本契約を締結した損害保険会社一覧」に記載されている保険会社が関係するケースに限ります。

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ADRを利用するのがおすすめの方・おすすめではない方

最後に、ADRを利用するのがおすすめの方・おすすめではない方について解説します。

ADRを利用するのがおすすめの方

ADRは、基本的に無料で利用できるため、スムーズな示談成立が望めるなどのメリットがあります。

以下に該当する場合は、ADRを利用するのがよいでしょう。

  1. 交渉や話し合いに慣れている
  2. あまり費用はかけたくない
  3. なるべく早く賠償金を受け取りたい

ADRを利用するのがおすすめではない方

ADRは、自分にとって有利な条件になるように動いてもらえず、遅延損害金がつかないなどのデメリットもあります。

また、以下に該当する場合は、ADRではなく個別の法律事務所へ相談したほうがよいでしょう。

  1. 少しでも多く賠償金を受け取りたい
  2. 事故対応のために時間を割く余裕がない
  3. 後遺障害等級の申請を代理でお願いしたい
  4. 後遺障害等級の認定結果に不服がある
  5. 意見の主張や会話が苦手
  6. 弁護士費用特約が保険についている

弁護士費用特約とは、法律相談費用を最大10万円、弁護士費用を最大300万円まで補償してくれる保険のオプションサービスです(補償金額は保険会社により異なります)。

弁護士費用特約が保険についている場合、自己負担0円で弁護士に依頼できることもあります。

まとめ

交通事故に遭った場合、ADRを利用すれば早期の示談成立が望めるほか、賠償金についても一定の満足感を得られるでしょう。

ただし、ADRには慰謝料などの賠償金も相場どおりか相場よりも低額になってしまうデメリットが存在します。

そのため、慰謝料などの賠償金を多く獲得したい場合には、個別の法律事務所に依頼することも検討してみましょう。

弁護士に依頼する場合には、弁護士特約を利用することで弁護士費用を抑えられます。

結果として、ADRを利用するよりも金銭的なメリットは大きくなります。

無料で相談できる法律事務所も多数あります。

まずは無料相談を利用し、弁護士に話を聞いてみることをおすすめします。

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この記事の監修者
古関 俊祐 (東京弁護士会)
重度後遺障害事件から死亡事故まで、きめ細かい対応と豊富な経験をもとに、充実した補償を実現させます。弁護士費用特約に加入していない人へ向け、着手金0円プランもご用意しております。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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