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公開日:2021.5.20  更新日:2021.5.20

交通事故におけるADRとは?メリット・デメリットや解決までの流れ

新小岩法律事務所
古関 俊祐
監修記事
交通事故ADRのメリット・デメリット

交通事故に遭った際は、ADRという解決手段があります。ADRとは「裁判以外の手段で、ADR機関が示談成立のための手続きを仲介する」というものです。

裁判手続きの場合、終結までに1年以上かかることも珍しくありません。一方、ADRであれば3ヶ月程度で示談成立する可能性があるほか、基本的に無料で利用できるため費用の心配がいらないという点も特徴です。

この記事では、交通事故におけるADRの方法やメリット・デメリット、解決までの流れやおすすめのADR機関などを解説します。

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交通事故で利用できるADR(裁判外紛争解決手続)とは?

ADRとはAlternative Dispute Resolutionの略語で、一般的には「裁判外で紛争を解決する手続き」を指します。

ADRでは裁判所は介入せず、交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターなどのADR機関が介入し、基本的に無料で利用可能です。

また、ADR機関は「あくまで中立的な立場で紛争処理を行う」という特徴があり、仲介人である弁護士などが申立人である被害者や相手方のどちらか一方に味方することはありません。

交通事故にあったときADR利用してできる3つのこと

ADRでできる3つのこと

交通事故に遭ってADRを利用する場合、担当弁護士への法律相談・和解のあっ旋・審査員による審査などが利用可能です。ここでは各対応内容について解説します。

担当弁護士への法律相談

ADRでは、まず示談成立に向けて各ADR機関に登録している弁護士との法律相談が可能です。ただし、あくまで各ADR機関の登録弁護士は中立的な立場での対応となるため、一般的な示談内容よりも有利に相手方から賠償金を獲得するなどのアドバイスは望めません

あくまで、一般的な内容での示談を成立させるため、どのような方法で進めるべきかなどのアドバイスとなります。

和解のあっ旋

和解のあっ旋とは、ADR機関が申立人である被害者と相手方の間に立ち、お互いの示談条件の調整を行って解決を図る手段です。

基本的には相手方と対面せず、仲介人(多くはADR機関に登録している弁護士になります)との話し合いにより進められるため、感情的なトラブルなどが起こる心配もありません

審査員による審査

審査とは、審査会に所属する審査員が賠償額などを判断する手段です。和解あっ旋では解決しそうもない場合に審査会が開催され、申立人である被害者と相手方の主張内容をもとに裁定が下されます。

交通事故トラブルでADRを利用するメリット・デメリット

交通事故トラブルでADRを利用する場合、以下のようなメリット・デメリットがあります。

ADRを利用するメリット

ADRは基本的に無料で利用できるため、費用の心配がいらないという点がメリットです。そしてADR機関は中立・公平に対応してくれるため、相手方にとって一方的に有利な条件で示談成立することもありません。

また、ADRを利用せずに民事裁判にて解決を図る場合、終結までに1年以上かかることもあります。一方、ADRを利用した場合、早ければ3ヶ月程度で和解することもあるなど、手続きにかかる期間が比較的短いという点もメリットです。

ADRを利用するデメリット

ADR機関はどちらか一方の味方をすることはないため、申立人である被害者にとって有利な条件になるよう動いてもらえないという点がデメリットです。さらに、担当弁護士を自由に選択・変更できないという制限もあります。

また損害賠償請求権には時効があり、請求と示談は時効成立前に済ませなければいけません。ADRを利用せずに民事裁判にて解決を図るのであれば、訴えを起こした時点で時効が中断されるため、時効を心配する必要がなくなります。

一方、ADRによる和解・裁定では時効が中断されないため、請求と手続きの対応が遅れると損害賠償請求権を失う可能性があります(弁護士会個別のADRセンター・そんぽADRセンターを除く)。

ほかにも、民事裁判であれば事故発生日を起算点として遅延損害金という賠償金も請求できますが、ADRの和解・裁定では遅延損害金がつきません。そのためADRでは賠償金が低額になる恐れもあります。

交通事故トラブルをADRで解決するまでの流れと期間

ADRでは、相談・和解のあっ旋・審査会による審査という流れで進めるのが通常です。

ADRの流れ

なおADRを利用する際は、交通事故紛争処理センターまたは日弁連交通事故相談センターに任せるケースが多いようですが、ADR機関ごとに対応内容が異なる部分もあります。

ここでは、各ADR機関の対応内容の違いも触れながら、解決までの流れと期間を解説します。

①申し込み

まずはADR機関に連絡してADRを利用したい旨を伝えましょう。なお交通事故紛争処理センターの場合、法律相談は予約制ですので相談予約を取っておく必要があります。

ADR機関に連絡すると、ADRの進め方や必要書類などについて指示されたのち、利用申込書や利用規定書などの申込書が送られてきます。必要事項を記入して準備しておきましょう。

ADRを利用する際の必要書類としては以下の通りです。ただしケースによっては他の書類が必要になることもありますので、適宜指示に従ってください。

  • 交通事故証明書
  • 事故発生状況報告書
  • 保険会社の賠償金提示明細書
  • 病院の診断書・領収書 など

②弁護士との法律相談

次は、申立人である被害者と担当弁護士による法律相談です。基本的には面接形式で行われますが、日弁連交通事故相談センターでは電話相談も受け付けています。

法律相談では、はじめに交通事故の経緯・損害項目・相手方との交渉状況などを確認したのち、示談成立に向けた相談に乗ってもらえます。

なお法律相談の注意点として、交通事故紛争処理センターの場合は治療終了後の示談交渉段階でなければ相談できません。事故直後や治療中など、示談交渉前の段階で相談したい場合は、日弁連交通事故相談センターなどを選択する必要があります。

法律相談だけでは示談成立が難しい場合には、和解のあっ旋を希望する旨を担当弁護士へ伝えてください。担当弁護士が必要性を認めれば、和解のあっ旋へと移ります。

③弁護士を交えた加害者との話し合い

ここでは、まず担当弁護士が申立人である被害者からヒアリングした請求内容をもとに、和解に向けたあっ旋案をまとめます。

そして担当弁護士は相手方の主張も伺いながら、双方にとって公平な内容になるよう、あっ旋案の内容を調整します。双方に異議がなければ和解成立となり、手続きは終了です。

交通事故紛争処理センターの場合、1ヶ月に1回のペースで話し合いが行われ、3~5回程度で和解成立に至ることが多いようです。一方、日弁連交通事故相談センターの場合、2~3週間に1回のペースで行われ、原則3回で終了することが多いようです。

なお和解あっ旋の注意点として、交通事故紛争処理センターの場合、相手が任意保険・任意共済に加入していなければ和解あっ旋は原則利用できません。この場合、日弁連交通事故相談センターなどを選択する必要があります。

和解あっ旋では解決しない場合には、不合意になってから14日以内であれば審査請求が可能です。審査請求が受理されれば、審査会による審査へと移行します。

④審査会による審査

審査会では、申立人である被害者と相手方が出席して双方の考えを主張したのち、審査員によって裁定が下されます。裁定後は14日以内に同意・不同意を回答しなければならず、無回答の場合は不同意として扱われます。

ただし注意点として、審査会の裁定には裁判での判決のような拘束力はありません。もちろん双方が同意すれば裁定内容通りに賠償金の支払いが行われますが、どちらか一方が不同意の場合には裁定自体が無効となります。

なお、交通事故紛争処理センターの場合は損害保険会社や一部自動車共済、日弁連交通事故相談センターの場合は特定の自動車共済と協定を結んでいます。ADR機関と協定を結んでいる相手と示談交渉する場合、相手方は審査会での裁定について尊重しなければいけません。

つまり、相手方は審査会での裁定について不服を申し立てることはできず、示談成立になるかどうかは被害者の判断に全て委ねられることになります。

⑤手続きの終了

申立人である被害者と相手方が裁定に同意した場合、示談書・免責証書が作成されたのち賠償金が支払われます。支払い方法は銀行口座への一括払いが原則で、基本的には示談成立後から2週間程度で支払われることが多いようです。

和解が成立しなかった場合

申立人である被害者と相手方が裁定に同意しなかった場合、裁判所を介した民事調停民事裁判などに移行せざるを得ません。裁判手続きであれば必ず決着がつくことになりますが、ADRと比べると手間も時間もかかり、終結まで1年以上かかることもあります。

なお日弁連交通事故相談センターの場合は、裁判手続きに移行する際に弁護士を紹介してもらえます。一方、交通事故紛争処理センターの場合、弁護士の紹介は受けられません。

交通事故解決におすすめの機関と口コミ

ADR機関としては交通事故紛争処理センター日弁連交通事故相談センターなどが代表的ですが、ほかにはそんぽADRなども利用可能です。ここではADR機関の特徴や口コミなどを紹介します。

①交通事故紛争処理センター

交通事故紛争処理センターは1974年から活動しており、最も歴史のあるADR機関です。窓口は全国11ヶ所に設置されており、基本的には無料でADR手続きを利用できます。

交通事故紛争処理センターの場合、損害保険会社や一部自動車共済と協定を結んでいるため、それらを相手に審査会へもつれ込んだ際は裁定に一定の拘束力が生じるという点が特徴です。

営業時間(電話予約受付)

月~金:9:00~12:00、13:00~17:00

所在地

全国11ヶ所に設置

(北海道・岩手・埼玉・東京・静岡・石川・愛知・大阪・広島・香川・福岡)

地域別の住所・連絡先はこちら

なお、なかには交通事故紛争処理センターを利用できないケースもあり、詳しくは以下の通りです。

(1)次の紛争は、センターのご利用の対象ではありません。

①加害者が自動車(原動機付自転車を含む)でない事故の場合、例えば、自転車と歩行者、自転車と自転車の事故による損害賠償に関する紛争

②搭乗者傷害保険や人身傷害保険など、自分が契約している保険会社又は共済組合との保険金、共済金の支払いに関する紛争

③自賠責保険(共済)後遺障害の等級認定・有無責等に関する紛争

④求償に係る紛争(保険会社等間、医療機関、社会保険等との間の求償)

⑤相手方の保険会社等が不明の場合

 

(2)次の場合は、センターにおける本手続を行いません。 ただし、相手方が同意した場合は、本手続を行う場合があります。

①加害者が任意自動車保険(共済)契約をしていない場合

②加害者が契約している任意自動車保険(共済)の約款に被害者の直接請求権の規定がない場合

③加害者が契約している任意自動車共済が、JA共済連、こくみん共済 coop(全労済)、交協連、全自共及び日火連以外である場合

引用元:ご利用について|交通事故紛争処理センター

②日弁連交通事故相談センター

日弁連交通事故相談センターも、交通事故紛争処理センターに並んで代表的なADR機関です。窓口は全国157ヶ所に設置されており、基本的には無料でADR手続きを利用できます。

日弁連交通事故相談センターの場合、示談交渉前の段階でも法律相談が可能で和解あっ旋のペースが比較的早いほか、ADRで解決できなかった場合には弁護士の紹介が受けられるなどの点が特徴です。

営業時間(電話相談受付)

月~金:10:00~16:30

※毎月10日は10:00~19:00

所在地

全国157ヶ所に設置

地域別の住所・連絡先はこちら

なお、なかには日弁連交通事故相談センターを利用できないケースもあり、詳しくは以下の通りです。

当センターは以下の場合には相談を行いません。

 

①弁護士法第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)違反の疑いのある者からの申込み

②相談者がすでに弁護士である代理人を選任しているとき

③相談回数が原則として同一事案につき5回を超えるとき

④事故当事者本人以外の者からの申込みであるとき

ただし、同居の親族、四親等内の親族及びこれらに準ずる者からの申込みであるときを除く

⑤その他、相談を行うのに適当でないと認められるとき

引用元:電話・面接相談|日弁連交通事故相談センター

当センターは以下の場合には示談あっ旋の申込みを受理できません。

 

①調停または訴訟手続に係属中であるとき

②他の機関にあっ旋を申し込んでいる事案であるとき

③不当な目的により申込みをしたものと認められるとき

④当事者が権利又は権限を有しないと認められるとき

⑤弁護士法第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)違反の疑いがある者からの申込みであるとき

⑥その他、示談あっ旋を行うに適当でないと認められるとき

引用元:示談あっ旋・審査|日弁連交通事故相談センター

③そんぽADR

そんぽADRとは、日本損害保険協会が設置している相談窓口のことです。

窓口は全国10ヶ所に設置されており、交通事故や損害保険の相談・苦情受付・和解のあっ旋などが受けられます。「損害保険会社に対して苦情がある」「トラブルになっている」という方は選択肢の一つとして考えても良いかもしれません。

営業時間(電話相談受付)

月~金:09:15~17:00

所在地

全国10ヶ所に設置

(北海道・宮城・東京・石川・愛知・大阪・広島・香川・福岡・沖縄)

地域別の住所・連絡先はこちら

なお、そんぽADRを利用できるのは「日本損害保険協会との間で手続実施基本契約を締結した損害保険会社一覧」に記載されている保険会社が関係するケースに限ります。詳しくは上記HPのリンクをご覧ください。

ADRの利用がおすすめの人・おすすめしない人

最後に、ADRを利用するのがおすすめの人・おすすめしない人を解説します。

ADRの利用がおすすめの人

以下に該当する場合、ADRを利用するのが良いでしょう。

  • 交渉や話し合いに慣れている
  • あまり費用はかけたくない
  • なるべく早く賠償金を受け取りたい

ADRの利用がおすすめしない人

以下に該当する場合、ADRではなく個別の弁護士事務所へ一度相談した方が良いでしょう。

  • 少しでも多く賠償金を受け取りたい
  • 事故対応のために時間を割く余裕がない
  • 後遺障害の申請を代理でお願いしたい
  • 後遺障害等級に不服がある
  • 意見の主張や会話が苦手
  • 弁護士費用特約が保険についている

個人で対応するのが難しい、後遺障害等級に関する対応をお願いしたい人は弁護士へ相談しましょう。

また、弁護士費用特約が保険に付帯している場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士費用特約とは、法律相談費用を最大10万円、弁護士費用を最大300万円まで補償してくれる保険のオプションサービスです(補償金額は保険会社により異なります)。そのため、費用をかけずに弁護士へ依頼できます。

まとめ

交通事故に遭った場合、ADRを利用すれば早期の示談成立が望めるほか、賠償金についても一定の満足感を得られるでしょう。ただしADR機関によって細かい対応内容は異なりますので、以下を参考によく考えてから選択することをおすすめします。

 

交通事故紛争処理センター

日弁連交通事故相談センター

窓口の数

11ヶ所

159ヶ所

相談予約

必要

必要なし

相談方法

面接のみ

面接または電話

相談可能なタイミング

示談交渉の段階に入ってから

どのタイミングでも可能

担当弁護士

事案終了まで同じ弁護士

相談と和解あっ旋では違う弁護士

和解あっ旋を利用できないケース

相手が任意保険・任意共済に未加入

物損事故で相手が任意保険等に未加入

和解あっ旋のペース

約1ヶ月に1回

約2~3週間に1回

和解成立までのあっ旋回数

3~5回程度

原則3回

審査会での裁定の拘束力

損害保険会社・一部の自動車共済に対して拘束力がある

特定の自動車共済に対して拘束力がある

なお、費用の安さだけでADRを選択すると、費用は安いものの慰謝料等の賠償額も低額でまとまってしまうリスクがあります。

弁護士費用がかかるものの慰謝料等を多く獲得できることや、弁護士費用特約を利用することで、最終的にADRを利用したとき以上に示談金を手元に残せるでしょう。

事故により後遺症が残ってしまった場合、少しでも多くの費用を獲得できるかで今後の生活が大きく変わります。

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この記事の監修者
新小岩法律事務所
古関 俊祐 (東京弁護士会)
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本記事は交通事故弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※交通事故弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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