交通事故や自転車事故など、事故はいつ起きてしまうか分からないものです。弁護士費用を用意できず泣き寝入りとなってしまうケースも少なくありません。
ベンナビ弁護士保険は、弁護士依頼で発生する着手金を補償する保険です。
交通事故だけでなく、自転車事故、労働問題、離婚、相続トラブルなど幅広い法的トラブルで利用することができます。
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駐車場で当て逃げされたり、赤信号で停車中に後続車両に衝突されたりすると、交通事故で生じた損害については過失割合10対0で加害者側が全額負担をするのが一般的です。
ただし、過失割合10対0の物損事故の被害者になったときには、加害者側との示談交渉において注意しなければいけません。
というのも、過失割合10対0の物損事故では、示談交渉時に被害者側が契約をしている任意保険会社の示談交渉サービスを使うことができないからです。
つまり、過失割合10対0の物損事故では、被害者本人が加害者側の保険会社との間で直接示談金などの諸条件について交渉をしなければいけないということです。
また、加害者側が任意保険未加入だと、加害者本人から直接示談金等を引き出すために、示談交渉や民事訴訟などの措置を検討しなければいけません。
そこで本記事では、過失割合10対0の物損事故の被害者になった場合に、相手へ請求できる示談金の詳細や示談の流れなどを分かりやすく解説します。
まずは、過失割合10対0の物損事故において被害者側が加害者から示談金等を支払ってもらえるかについて解説します。
交通事故で損害が生じた場合、人身事故であろうが物損事故であろうが、被害者側は加害者側から示談金等を支払ってもらえる可能性があります。
というのも、交通事故によって損害が生じたということは、被害者側が加害者側に対して不法行為に基づく損害賠償請求権を取得することを意味するからです。
したがって、過失割合10対0の物損事故に限らず、全ての交通事故被害者は加害者に対して損害賠償請求をして相応の示談金を受け取ることができる可能性があります。
交通事故では、当事者の過失割合が認定されて、交通事故によって生じた損害賠償責任の分配がおこなわれます。
たとえば、過失割合9対1の交通事故なら、加害者側が損害額の9割、被害者側が損害額の1割を負担しなければいけません。
次に過失割合10対0の交通事故では、当事者間で過失相殺がおこなわれません。
過失割合10対0の場合は、通常被害者が被った物的損害の全額が示談金の対象となります。
この場合に加害者が示談を目指すのであれば、物的損害と同額かそれと近い金額の示談金を請求されると考えられるのです。
物損事故では、原則として加害者に対して慰謝料を請求することはできません。
一方、交通事故の被害を受けて負傷した場合(人身事故の場合)であれば、以下の慰謝料を請求できます。
このように交通事故における慰謝料とは、交通事故で負傷を受けたことに対する精神的な苦痛に対する損害賠償にあたるのです。
物損事故では被害者が負傷をしていないので、原則として交通事故の慰謝料は請求できないことになります。
もちろん、物損事故でも自動車を破損させられたことによる精神的な苦痛を受けたとはいえるでしょう。
しかし、その精神的苦痛は、修理費など物的損害の賠償を受けたことで慰謝されると考えられるのです。
なお、物損事故でも慰謝料の請求が認められたケースがないわけではありません。
交通事故によりペットの犬が亡くなったり自宅が破壊されたりした場合に、慰謝料が認められたことはあります。
過失割合10対0の物損事故で加害者側に請求できる示談金等の範囲・項目・内訳について解説します。
物損事故の示談金の主要項目が、自動車の修理費や買替費です。
たとえば、自動車の塗装が剥げて塗り直しをした場合、バンパーなどのパーツ交換をした場合、ボディの凹みを板金で施工した場合などでは、修復に要した修理費を実費で示談金等として加害者側に請求できます。
また、物損事故によって自動車が全損したケースでは、自動車の買替費を請求するのも選択肢のひとつでしょう。
なお、物損事故後に修理をしたからといって、修理費を全額加害者側に請求できるとは限りません。
たとえば、板金塗装で修復可能なのに、わざわざパーツ交換をして高額の修理費用が発生したとしても、板金塗装に要した費用しか支払ってもらえない可能性が高いです。
物損事故では、あくまで必要かつ相当とみなされる分の金額まで相手へ請求できます。
まず交通事故において自動車の全損とは以下のようなケースを指します。
これらのケースでは、自動車の時価とされる金額まで賠償金を請求できます。
新車に買い替える費用を全額請求できるわけではないので注意ください。
車両の年式が相当古いなどの理由で時価が低く、結果として請求可能な賠償額もおさえられる可能性があるわけです。
なおケースによっては、自動車の買い替えにかかる費用などの一部を請求できることもあります。
物損事故によって車両が損害を受けると、修理によって再び問題なく走行できる状態に戻ったとしても、車両本体の評価額が下がることがあります。
たとえば、自動車の中古市場では、当該車両に修復歴・事故歴があるか否かが市場価値を左右するポイントとされることが多いです。
適切な修復作業によって機能性には問題がない状態でも、過去に事故歴・修復歴があることで、市場価格が大幅に目減りしてしまいます。
そして、過失割合10対0の物損事故の示談金には、評価額の目減り分である「評価損」相当額を計上できる場合があります。
加害者側との交渉次第ですが、所有していた車両の元々の市場価値が高額のケースでは、粘り強く相手方と交渉をして評価損分を含めた示談金額での合意形成を目指すべきでしょう。
物損事故によって自動車の買い替えが必要になるケースや、修理工場に一定期間当該車両を預ける必要があるケースでは、代車を使わなければいけないことがあります。
以下のように、代車を使用することに必要性・相当性が認められる場合には、代車費用を加害者側に請求できます。
言い換えれば、必要性や相当性のない状況で物損事故後に代車を調達しても、加害者側に対して代車費用を満額請求できない可能性があるということです。
結果的に、公共交通機関やタクシーを使った程度の金額までしか賠償が認められないことも考えられます。
休車損害とは、普段事業活動に使用していた車両が交通事故で使用できず、修理期間や買い替えに要する期間中に従来通りの利益を上げることができなかったときに生じる営業損失のことです。
たとえば、営業車やタクシー、バス、送迎車などの事業活動用の車両が物損事故で使用できなくなったケースが挙げられます。
休車損害として物損事故の加害者側に請求できる金額は個別事案によって判断されますが、一般的には、「(1日あたりの平均売上額 - 1日あたりの変動経費)×休車日数」によって算出されることが多いです。
なお、物損事故によって使用できない車両が発生したとしても、代替車両・代替手段によって従来通りの営業利益を確保できるようなケースでは、実質的に営業損害は生じていないと考えられるので、休車損害を示談金の項目に計上できない可能性があります。
物損事故で車両を修理に出さざるを得なくなった場合、修理期間中は当該車両を使用することができません。
そのため、代車を手配することなく公共交通機関やタクシーなどを利用した場合には、交通費を示談金等の内訳に含めることができます。
交通費の請求をするには、必ず全ての領収書を手元に残したうえで、加害者側と示談交渉を進めましょう。
その他、過失割合10対0の物損事故では、加害者側に以下の示談金等の請求が認められることが多いです。
過失割合10対0の物損事故で加害者側に示談金を請求する際には、被害者側で生じた損害をひとつずつ丁寧に計上する必要があります。
被害者本人だけでは請求漏れなどのリスクが生じるので、必ず物損事故後速やかに弁護士へ相談をして、示談金として請求できる損害の範囲や示談金請求にあたって必要となる書類等についてアドバイスを求めましょう。
物損事故が発生してから示談金等を受け取るまでの流れについて解説します。
物損事故が発生した直後は、速やかに警察や消防に通報をしなければいけません。
というのも、車両運転者などの交通事故の当事者には警察などへの報告義務が課されているからです。
(交通事故の場合の措置)
第七十二条
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。
この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。同項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置(第七十五条の二十三第一項及び第三項において「交通事故発生日時等」という。)を報告しなければならない。
特に軽い物損事故のケースでは、「けがをしたわけではないからわざわざ警察に通報する必要はないだろう」と考える方も少なくはないでしょう。
しかし、交通事故の軽重にかかわらず報告義務は課されているため、報告義務に違反して通報せずに当事者だけでその場で解決したことにすると、3ヵ月以下の懲役刑または5万円以下の罰金刑が下される危険性があります。
警察に通報しなければ交通事故の履歴が残らないので、加害者本人や相手方の保険会社に対して示談金等を請求する際に交通事故証明書の発付を受けることができず、損害賠償請求が困難になりかねません。
さらに、最初は軽微な物損事故だと考えていたケースでも、数日後にむちうちなどの症状が出てきて人身事故としての処理を求める必要に迫られることも大いに考えられるので、警察への通報は不可欠です。
物損事故について警察へ通報し終えた後は、必ず加害者側と連絡先を交換してください。
「一度自宅に戻って書類を取ってくる」などと言われて警察がやってくる前に現場から加害者側が立ち去ってしまうと、加害者側の情報が分からないので示談金等の請求などが困難になりかねません。
一例として名刺を交換する方法もあります。
名刺がない場合、氏名・電話番号・住所・メールアドレスなどをメモに控えておくことが必要です。
過失割合10対0の物損事故の被害者側だとしても、念のためにご自身が加入されている任意保険会社まで連絡を入れておきましょう。
そもそも、過失割合は交通事故が発生した時点で確定するものではありません。
交通事故の状況を踏まえたうえで、加害者側との交渉の過程や民事裁判で過失割合は決まります。
ご自身の保険会社に連絡を入れておいた方が、過失割合について加害者側と争いが生じた時の対応がスムーズでしょう。
また、任意保険会社に連絡すれば、レッカー移動や修理工場の案内などのサービスについて説明してもらえます。
保険契約ごとに保険の適用範囲や付帯サービスは異なるので、できるだけ早いタイミングで保険会社までお問い合わせください。
物損事故後にディーラーや整備工場・修理工場に車両がレッカーされた場合、修理費用の見積もりを出してもらいましょう。
過失割合10対0の物損事故事案では、修理費用の見積もり額がそのまま示談金等として相手方へ請求できる金額になります。
ただし、被害者側の出した見積もりに対して加害者側が異議を唱えるケースは少なくありません。
修理箇所の範囲や方法などについて反論されたり、修復箇所と物損事故との因果関係を否定されたりする可能性が考えられます。
物損事故によって生じた損害額が確定した時点で、相手方と示談交渉を開始します。
加害者側が任意保険を契約しているときには保険会社と、任意保険未加入のときには加害者本人と示談交渉をすることになります。
示談交渉は電話や書面・FAXのやり取りでおこなうことが多いですが、状況次第では相手方と直接面談することもあります。
なお、過失割合10対0の物損事故では、被害者側の過失が存在しないため、被害者側が契約している任意保険会社の示談交渉サービスは使えません。
被害者自身で加害者側と連絡を取り合うか、委任契約を締結した弁護士に示談交渉を任せましょう。
加害者側との話し合いに目途がついたタイミングで、加害者との間で和解契約を締結したうえで示談書を作成します。
物損事故の態様次第ですが、一般的な交通事故トラブルの示談契約書には以下の事項が記載されることが多いです。
示談書にサインをするときには、賠償額や過失割合などの諸項目について注意深く読み込む必要があります。
というのも、一度でも示談書にサインをしてしまうと、示談書の内容を覆すのは現実的に相当難しいからです。
当初は過失割合10対0を前提として話し合いがおこなわれていたのに、加害者側から送付されていた示談書に異なる過失割合が記載されており、その旨の示談書にサインをしてしまうと、後から示談条件を覆すことができなくなってしまいます。
したがって、加害者側との間で作成した示談書にサインをするときには、示談書の内容を弁護士に確認してもらったうえで、物損事故をめぐる示談条件に問題がないか判明してから署名をするべきでしょう。
なお、一般的な物損事故の場合、相手方の保険会社と示談契約を締結してから数週間以内には示談金が振り込まれます。
これに対して、加害者側が保険会社に加入していない場合には、相手方が素直に応じてくれたらすぐに示談金の支払いを受けることができますが、相手方の誠実な対応を期待できないケースでは民事訴訟などの提起を検討しなければいけません。
物損事故で加害者側に示談金を請求する際の注意点を3つ紹介します。
物損事故の示談金を左右する大きなポイントは過失割合です。
たとえば、過失割合10対0で加害者側との間で合意形成に至れば、被害者側に生じた損害額について全額を示談金等として請求可能です。
これに対して、被害者側の過失割合が認定されると、その分が過失相殺されるので、物損の一定割合を被害者側で負担しなければいけなくなります。
以上を踏まえると、満足のいく示談金額を受け取るには、少しでも有利な示談条件での合意形成を目指すべきだと考えられます。
後方からの衝突事故のような明らかな過失割合10対0の物損事故以外では、加害者側と過失割合について争いが生じることが多いので、必ず交通事故トラブルに強い弁護士に相談・依頼をしたうえで、加害者側との示談交渉を進めましょう。
新車が物損事故の被害を受けたとしても、新車代金をそのまま示談金として支払ってもらえるわけではありません。
なぜなら、物損事故で受けた車両の損害額は時価・市場価格によって判断されるからです。
新車で購入して間もないとはいっても、それに対する価値を決定するときには中古不動産市場における売却価格などが参考にされます。
ただし、物損事故に遭った車両が以下の要素を有する場合には、中古不動産市場でも高値が付くと考えられるので、評価損分を示談金に盛り込む余地が残されています。
このような高額の示談金を請求できる余地がある事案では、同時に、加害者側からの厳しい反論も予想されます。
できるだけ弁護士に相談・依頼をして、新車が物損事故にあった被害者心情に寄り添った示談交渉を展開してもらうべきでしょう。
物損事故の加害者側が任意保険未加入の場合には、加害者本人に対して直接示談金を請求する必要があります。
そして、任意保険に加入しないような加害者に対する示談交渉は、通常、難航することが多いです。
なかなか連絡が取れなかったり、交渉の場を設けても誠実な対応を期待できなかったりすると、最終的には民事訴訟を提起したうえで、加害者の所有財産に対して強制執行をかけることまで検討しなければいけません。
法律の素人である被害者本人ではこれらの手続きを履践するのは簡単ではないので、物損事故の加害者側が任意保険に加入していないのなら、可能な限り早いタイミングで交通事故案件に強い弁護士へ依頼をして、示談交渉段階から代理してもらうべきでしょう。
さいごに、過失割合10対0の物損事故で示談金を請求する場面についてよく寄せられる質問をQ&A形式で紹介します。
物損事故の加害者側が示談交渉に応じてくれない場合は、民事訴訟などの法的措置を検討しなければいけません。
最終的に確定した勝訴判決に従って加害者側が賠償金等を素直に支払ってくれたら交通事故トラブルはその時点で終了しますが、判決が出ても加害者側が支払いに応じなければ、給料や財産を差し押さえて回収を図る必要があります。
このように、加害者側が示談に応じてくれなかったり、過失割合や賠償額について反論をして合意形成が難しかったりすると、紛争が長期化するリスクが高いです。
相手方が示談交渉に後ろ向きな姿勢を見せた時点で弁護士へ相談・依頼をして、早期の示談成立を目指してもらいつつ、将来的な法的措置も視野に入れた準備をスタートしてもらうのがおすすめです。
物損事故の示談金等の対象には、車両以外にも次のような損害が含まれます。
ただし、物損事故は人的被害が存在しない事案なので、慰謝料のような精神的損害に対する賠償を求めることはできません。
物損事故で車両に同乗していたペットが負傷したときには、ペットの治療費を示談金の項目に計上できます。
また、ペットと連れ添った期間が長くペットが家族の一員となっていたような事案において、ペットが負ったけがが重く障害が残ったようなケースでは、慰謝料請求を認める裁判例も存在します。
物損事故によって生じた不法行為に基づく損害賠償請求権は、事故翌日から3年で時効が成立します。
人身事故の消滅時効期間が5年であることと比較すると、時効までの期間が短いので注意しましょう。
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
物損事故により被害を受けたときには、事故後速やかに示談金の請求に向けた準備が必要です。
弁護士への相談によって早期の示談成立を目指しやすくなるので、初回無料相談などの機会を積極的に活用ください。
過失割合10対0の物損事故では、通常修理費や代車費用などを示談金の内訳に含めることができます。
ただし、被害者側の過失が0のケースでは、被害者側が契約している任意保険会社の示談交渉サービスは利用できません。
そのため、加害者側に対して示談金等を請求するには、被害者本人が相手方と直接話し合いを進める必要があります。
一方で、交通事故では過失割合や損害賠償の範囲について加害者側が争ってくるケースが多いです。
また、交通事故の示談交渉に慣れた相手方の任意保険会社とやり取りをすると不利な言質を取られるリスクもゼロではありません。
以上を踏まえると、過失割合10対0が想定される物損事故であったとしても、念のために交通事故案件の実績豊富な弁護士へ相談・依頼することをおすすめします。
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