交通事故や自転車事故など、事故はいつ起きてしまうか分からないものです。弁護士費用を用意できず泣き寝入りとなってしまうケースも少なくありません。
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死亡逸脱利益とは、被害者が死亡したことにより生存していれば得られたはずの収入が失われたことに伴う損失のことです。
交通事故により被害者が亡くなってしまった場合、ご遺族の方はこの逸失利益も損害賠償の一部として請求することが可能ですが、保険会社の提示金額に含まれていないことや低く計算されていることが多々あります。
そのため、示談金を提示された場合、損をしないためにも、必ず金額が妥当か確認することが重要です。
この記事では、死亡逸失利益の計算方法などについて紹介します。
死亡逸失利益は以下の様に求められます。
逸失利益=基礎収入×(1-生活費控除率)×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数 |
各項目について具体的に確認します。
基礎収入の算出方法は交通事故直近の年収をベースとするのが一般的です。
例えば、会社員であれば事故前年の源泉徴収票に記載された年収額面、自営業者の場合には、事故前年の確定申告書に記載された所得+固定費を基礎収入とするケースが多くあります。さらに専業主婦(夫)のような家事労働者については事故時点の同性・同年齢の平均賃金を基礎収入とするケースが一般的です。
このような基礎収入が、賃金センサス(厚生労働省が公表している賃金構造基本統計調査のこと)の平均賃金を大幅に下回っていることもあり得ます。その場合には、賃金センサスの数値とするケースや、これに一定割合を乗じて基礎収入とするケースなど事案に応じて変化します。
死亡した被害者が若く、今後平均的な賃金を得られていた可能性の高い場合、学歴計や産業計、企業規模計などに応じた全年齢平均収入を基礎収入とされます。実際にあった判例では、以下のような判決が下りました。
交通事故により死亡した被害者(32歳・男・日本料理調理師)の逸失利益につき、被害者の職種は技術の習得を要する日本料理の調理であって、事故前年の年収はいまだ480万余円であるが、この金額は賃金センサス産業計・企業規模計・男子労働者30ないし34歳の平均賃金とそれほどの差異がないので、生涯を通じては全年齢平均程度の収入を得られる蓋然性が高いとし、賃金センサス産業計・企業規模計・男子全労働者の全年齢平均収入を基礎とし生活費控除率を30パーセントとして逸失利益が算定された事例。
(大阪地裁 平成15年 7月30日大阪地裁判決 WestlawJAPAN 文献番号2003WLJPCA07306004)
事故時点で就労していない幼児や学生については、賃金センサスの平均賃金を活用しながら妥当な金額を算定していくことになります。また、医学部や薬学部、大学進学の蓋然性の高い高校生などは、通常よりも高い賃金が認められることがあります。
大学生であれば大学卒業時から、その他の学生・幼児に関しては18歳以上から働くことと仮定して、計算していきます。
また、既に就労していない高齢者については、年金受給を受けている場合はこの金額をもとに基礎収入を算定することになります。年金のみを受給している場合でも、具体的に就労の可能性が認められる場合や、家事従事者としての側面がある場合には、年金のみならずその他の収入が認められる場合もあります。
死亡逸失利益は被害者が生存していたら得られたはずの収入の喪失に対する補償であるため、生存していれば必要であったと想定される生活費を控除して算出されます。
生活費控除率は被害者の家庭状況に応じて以下の数値が採用されるケースが多いです。
被害者の家庭状況 |
生活費控除率 |
一家の支柱(被害者が中心的に生計維持に貢献していた場合)が死亡した場合 |
30~40% |
女子(主婦、独身、幼児含む)が死亡した場合 |
30~45% |
男子(主夫、独身、幼児含む)が死亡した場合 |
50% |
被害者の家庭状況 |
生活費控除率 |
逸失利益は将来発生する損害を現在時点で請求するものであるため、現在価値に引き直す計算が必要となります。具体的には、労働能力喪失が認められる期間(労働能力喪失期間)に対応するライプニッツ係数という数値を乗じることで現在価値への引き直しを行います。
労働能力喪失期間は67歳までの期間とすることが一般的ですので、被害者死亡時の年齢から67歳までの期間算定し、これに対応するライプニッツ係数を使用することになります。
もっとも、以下のような場合にはライプニッツ係数の決定に工夫が必要です。
・被害者が67歳以上であるケース
・被害者が18歳未満であるケース
被害者が67歳以上であり、年金収入にかかる逸失利益を算定する場合は平均余命期間に対応するライプニッツ係数を用います。また、当該高齢者について家事労働や個人事業についての逸失利益を算定する場合は平均余命までの期間の50%の期間とするなどの方法が考えられます。この辺りはケース・バイ・ケースです。
被害者が18歳未満である場合は、就労年齢に達していませんので、その期間はライプニッツ係数から除外する必要があります。具体的には以下の計算式でライプニッツ係数を導きます。
(67歳-実年齢)のライプニッツ係数-(18歳-実年齢)のライプニッツ係数
なお、ライプニッツ係数は自力で算定することができないではありませんが、実務では労働能力喪失期間とライプニッツ係数の対応表を用いて決定することがほとんどです。
なお、2020年4月1日に施行された民法改正により、中間利息の利率として参照する法定利率が5%から3%に変更となりました。
それに伴い、参照するライプニッツ係数表が変更となりましたので、2020年4月1日以降の事故については用いるライプニッツ係数の対応表が異なることに注意しましょう。
交通事故で被害者の方がお亡くなりになったときに、適切な死亡逸失利益を獲得することで、生活を維持していくための大きな支えとなります。
特に、現在の保険実務では、代理人がついていない遺族に対しては、保険会社は本来認められるべき金額よりも低い金額を提示してくる場合がほとんどで、これは悲しいですが現実です。
保険会社の提示金額に少しでも不信感や適切ではないと感じた方は弁護士への相談をおすすめします。
まずは、最寄りの事務所へご相談ください。
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