交通事故弁護士ナビTOP > 交通事故コラム > 死亡事故 > 死亡事故の被害者が歩行者の場合の損害賠償や請求時のポイントを解説
キーワードからコラムを探す
Sidebar_writer_recruit
公開日:2020.1.30  更新日:2020.2.5

死亡事故の被害者が歩行者の場合の損害賠償や請求時のポイントを解説

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事

交通事故で身内が亡くなったような場合、しばらく気持ちの整理がつかないのが通常です。しかし交通事故の被害者が死亡した場合は、葬儀や相続といった手続きだけでなく、当該交通事故被害について補償を求めるなどの事故対応もしなければなりません。

 

心の傷が癒えていない状態でこのような対応をするのは負担です。せめて適正額の賠償金を受け取るためにも、この記事で死亡事故のポイントについて知っておきましょう。また、もし相手との対応を重荷に感じるのであれば、弁護士への依頼も積極的に検討することをおすすめします。

 

この記事では、死亡事故の現状や損害賠償の内訳、損害賠償請求時のポイントや事故状況別の過失割合などを解説します。

 

歩行者の死亡事故の現状

まずは、現在発生している死亡事故の発生状況や被害推移、主な事故原因などを解説します。

歩行者の死亡事故の発生状況

警視庁が発表している平成30年中交通死亡事故の状況によると、2018年は3,521人の方が交通事故で亡くなっているとのことです。なかでも「歩行中に事故に遭い亡くなった」という方が全国では35.6%(1,258人)と最も多く、さらに都内においても42%と非常に高い割合となっています。

 

引用元:歩行者の交通事故防止|警視庁

歩行者の死者数の推移

交通事故の死者数については、以下の通り2008年と比べると5,192人→3,521人と減少状態にあります。また歩行者の死者数についても同様で、1,745人→1,258人と減少しています。

 

しかし、各状態別の死者数割合について大きな変化はなく、少なくとも10年間は「歩行者の死者数が最も多い」という状態が続いています。

 

引用元:平成30年における交通死亡事故の特徴等について|警察庁交通局

歩行者の死亡事故の発生原因

警察庁によると、高齢者(65歳以上)の歩行者については約58%、高齢者以外の歩行者については約70%が法令違反をしていたことが判明しています。死亡事故が起きた背景として、以下のように歩行者による法令違反があったことが大きな原因の一つとしてあるでしょう。

 

引用元:平成30年における交通死亡事故の特徴等について|警察庁交通局

法令違反の内訳としては以下の通りで、横断違反・信号無視・めいていなどが主な原因として挙げられます。

 

引用元:平成30年における交通死亡事故の特徴等について|警察庁交通局

死亡事故の被害者遺族が知っておくべき2つのポイント

死亡事故においては、被害者遺族が事故後の対応を進めなければなりません。スムーズに対応を済ませるためにも、ここでは賠償金算定時のポイント・損害賠償請求時の注意点・賠償金の分配方法など、遺族が知っておくべきポイントを解説します。

賠償金は過失割合に大きく影響される

交通事故は加害者に100%の責任があるというケースばかりではありません。実際の事故状況に応じて加害者・被害者双方に責任があるというケースも多数あります。

 

被害者が歩行者の場合、加害者に100%責任があるというケースが比較的多いものの、それでも歩行者に一定の責任が認められる場合もあります。このような「加害者と被害者の事故に対する責任割合」を過失割合といいます。

 

この過失割合は、加害者の負担するべき損害賠償額に直接影響するため、非常に重要です。

例として被害総額200万円で過失割合が加害者7:被害者3というようなケースでは、加害者が負担する賠償額は、以下のように発生した損害から被害者の過失分を控除し、140万円となります。

 

200万円×(1-0.3)=140万円

 

このように、加害者に請求できる賠償金は加害者・被害者の過失割合に直接影響されます。そのため、被害者の過失が大きければ、当然、加害者から受け取れる賠償金は少なくなります。したがって、交通事故処理において、加害者・被害者の過失割合をどのように取り決めるかは、適正な賠償金を得る上で重要なポイントとなり得ます。

損害賠償請求と相続

死亡事故では被害者が亡くなっているため、本人以外の者が損害賠償請求することになります。この場合、法定相続人の中から代表者を決めて、当該代表者が他相続人のために請求処理を行うケースが多いですが、必ずしも必須ではありません。

 

そのため、法定相続人となる者がそれぞれ個別に自身の法定相続分に従って補償を求めるという対応も理論的にはあり得ますし、そのような処理を行うこともあります。しかし、交渉窓口が分散すると、結局、協議がスムーズに進まないので、これはあまり推奨されません。なお、法定相続人となり得るのは下表の親族です。

 

・被害者の配偶者

・被害者の子供

・被害者の直系尊属(親・祖父母)

・被害者の兄弟姉妹

 

なお、法定相続人や法定相続分の詳細は以下のとおりです。

 

配偶者と子供が受け取る場合

配偶者と両親が受け取る場合

配偶者と兄弟が受け取る場合

死亡事故について加害者へ請求できる損害

死亡事故が起きた際、加害者へ請求できる損害は主に以下の3つです(もちろん、状況によってはこれ以外の損害が生じることもあり得ます)。ここでは、それぞれの概要や相場額、計算方法などを解説します。

死亡慰謝料

死亡慰謝料とは、交通事故によって被害者が亡くなったことに伴う精神的苦痛を慰謝する賠償金です。この慰謝料額を算定するうえで3種類の計算基準があります。どの計算基準を用いるかによって金額も大きく変わります。ここでは、各計算基準に基づく慰謝料額の目安を紹介します。

 

交通事故慰謝料の計算基準

自賠責基準

自賠責保険で用いる計算基準

任意保険基準

各保険会社それぞれが定める計算基準

弁護士基準

裁判所での過去の判例などをもとにした計算基準

自賠責基準

自動車の運転者は自賠責保険に強制加入しているのが通常です。そのため、被害者遺族は少なくとも当該自賠責保険から慰謝料の支払いを受けることができます(相手が自賠責保険に加入していない場合でも別途の救済制度があります)。

 

この場合の慰謝料額は、自賠責の設ける基準で算定されることになり、具体的には請求する遺族の数遺族が被害者に扶養されていたか否かで金額が定まります。

 

請求する要項

慰謝料額

死者本人に対する慰謝料

350万円

死亡者に扶養されていた場合(※)

200万円

慰謝料を請求する遺族が1人の場合

550万円

慰謝料を請求する遺族が2人の場合

650万円

慰謝料を請求する遺族が3人の場合

750万円

※死亡者が遺族を扶養していた場合200万円が加算されます。(遺族が1人かつ扶養されていた場合:350万円+200万円+550万円=1,100万円)

 

任意保険基準

加害者が自賠責保険の外に、損害保険会社の任意保険に加入している場合(多くの事故はこのようなケースです)、事故の補償対応は当該保険会社が担当するのが通常です。この場合に、当該保険会社が独自に賠償額を提示する際に用いる基準を、便宜上任意保険基準と呼んでいます。

 

この基準は各保険会社が独自に定めるものであり、特に公表されているわけでもありませんので、確かなものではありません。以下はあくまで参考値とお考えください。

 

死亡者の立場

任意保険基準(推定)

一家の支柱

1,500~2,000万円

配偶者、母親

1,500~2,000万円

上記以外

1,200~1,500万円

 

弁護士基準

弁護士基準は裁判所の先例を集計し、この蓄積により設けられた基準です。裁判手続を踏まえた金額であるため、他基準に比して高額となる傾向にあります。

 

なお、被害者遺族が弁護士を介入させずに弁護士基準で慰謝料を請求しようとしても、相手保険会社から対応を渋られるケースもあるようです。弁護士基準での請求をスムーズに済ませるのであれば弁護士に依頼するべきでしょう。

 

死亡者の立場

弁護士基準

一家の支柱

2,800万円

配偶者、母親

2,500万円

上記以外

2,000万~2,500万円

死亡逸失利益

死亡逸失利益とは、交通事故被害者が生存していれば本来得られたはずの収入に係る損失のことです。この金額は以下のような式によって計算します。

 

基礎収入額×(1―生活費控除率)×就労可能年数に対応する中間利息控除

葬儀関係費用

葬儀関係費用とは、被害者が死亡したことで発生した、葬儀や埋葬などの費用のことです。なお葬儀関係費用は、自賠責保険については原則的な上限があります。また、これ以外の基準でも、必ずしもかかった金額全部が請求可能なわけではなく、合理的な範囲を超える場合には補償額が当該範囲に限定されます。

 

以下の金額は、自賠責の場合は上限額、それ以外の基準は合理的範囲の目安です。

 

請求できる葬儀代の限度額

自賠責基準

60万円(原則)

任意保険基準

保険会社により異なるが、多くは自賠責基準と弁護士基準の間ほど

弁護士基準

150万円

死亡事故の被害者が歩行者の場合の過失割合

死亡事故の被害者遺族が知っておくべき3つのポイントでも解説した通り、交通事故の賠償金は双方の過失割合に大きく影響されます。この過失割合は、交通事故の態様・状況から客観的に評価されるものです。ここでは事故状況ごとに紹介します。

信号機のある横断歩道の場合

信号機のある横断歩道上

過失割合(%)

四輪車

歩行者

歩行者が青で横断開始

 

車が赤で横断歩道を直進

100

0

 

車が青で交差点に進入右左折

100

0

歩行者が黄で横断開始

 

車が赤で横断歩道を直進

90

10

 

車が青で交差点に進入黄で右左折

70

30

 

車が黄で交差点に進入右左折

80

20

歩行者が黄で横断開始、その後赤に変わる

安全地帯のない中央寄り

車が青で直進

70

30

安全地帯の通過直後

車が青で直進

60

40

歩行者が赤で横断開始

 

車が青で横断歩道を直進

30

70

 

車が黄で横断歩道を直進

50

50

 

車が赤で交差点に進入

80

20

歩行者が赤で横断開始、(見込み進入)

その後青に変わる

車が赤で直進

90

10

車が赤で右左折

90

10

歩行者が青で横断開始したが、

途中で赤に変わる(信号残り)

安全地帯の通過直後

60

40

安全地帯のない道路の中央寄り

80

20

横断終了直前、または安全地帯直前

100

0

車が赤で横断歩道を通過

100

0

信号機のある横断歩道の直近

過失割合(%)

四輪車

歩行者

直進車が横断歩道を通過した後の衝突

車が赤

歩行者が青で横断開始

50

50

歩行者が黄で横断開始

50

15

歩行者が赤で横断開始

75

25

車が青

歩行者が赤で横断開始

30

70

車が黄

歩行者が赤で横断開始

50

50

直進車が横断歩道通過する直前の衝突

車が赤

歩行者が青で横断開始

90

10

歩行者が黄で横断開始

80

20

歩行者が赤で横断開始

70

30

車が青

歩行者が赤で横断開始

30

70

車が黄

歩行者が赤で横断開始

50

50

右左折車が横断歩道を通過した後の衝突

車が青で交差点に進入

歩行者が青で横断開始

90

10

車が黄で交差点に進入

歩行者が黄で横断開始

70

30

信号機のない横断歩道の場合

信号機のない横断歩道

過失割合(%)

四輪車

歩行者

通常の横断歩道上

100

0

歩行者からは容易に衝突を回避できるが、車からは歩行者の発見が困難

85

15

横断歩道の付近

70

30

信号機や横断歩道のない交差点またはその付近の場合

信号機・横断歩道のない交差点またはその付近

過失割合(%)

四輪車

歩行者

幹線道路または広狭差のある道路における広路

直進車

80

20

右左折

90

10

幹線道路でない道路または広狭差のある道路における狭路

90

10

信号機のない一般道路の場合

事故状況

過失割合(%)

四輪車

歩行者

信号機のない一般道路

80

20

歩行者が対向または同方向を進行していた場合

対向ないし同方向進行歩行者

過失割合(%)

四輪車

歩行者

歩行者用道路

 

100

0

歩道のある道路

歩道上

 

100

0

車道上

歩行者が車道通行を許される場合

90

10

歩行者は車道通行を許されない場合

車道側端

80

20

車道中央寄り

70

30

路側帯のある道路

路側帯上

 

100

0

車道上

歩行者が車道通行を許される場合

90

10

歩行者が車道通行を許されない場合

車道側端

90

10

車道中央寄り

80

20

車道だけの道路

道路端

 

100

0

道路中央

幅員8m以下の道路

90

10

幅員8m以上を超える道路

80

20

歩行者が道路で横になっていた場合

歩行者が道路で横になっていた場合

過失割合(%)

四輪車

歩行者

車からの事前発見が容易な場合

80

20

車からの事前発見は容易でない場合

70

30

夜間

50

50

車が後退してきた場合

車が後退してきた場合

過失割合(%)

四輪車

歩行者

歩行者が後退中の車の直後を通行

80

20

直後通行以外

100

0

上記の過失割合が加算・減算される場合

基本的には、上記のように事故状況に応じて過失割合が判断されることになります。なお、上記に加えて被害者の属性、加害車両の走行状況、道路の形状等細かな事情を更に考慮することで、より的確な過失割合が算定されることになります。

 

一例として、以下のような場合は過失割合が修正される可能性があります。

 

<歩行者の過失割合が加算される修正要素>

事故発生時間が夜間:夜間は車のライトによって歩行者は車両の存在に気付きやすい一方、車両は歩行者の存在に気づきにくいため

幹線道路を横断していた:交通量の多い幹線道路は横断の危険が大きく、車両側も歩行者の横断を予見しにくいため

車両の直前直後の横断・横断禁止場所を横断していた:自動車側は歩行者の存在について予見したり、歩行者との衝突を回避することが、相対的に困難となるため

 

<自動車の過失割合が加算される修正要素>

被害者が幼児・児童・老人・身体障害者(※):被害者が交通弱者であり損害の公平分担の観点から責任を減ずるのが相当であるため

集団通行時の事故:自動車側が歩行者の存在を容易に予測できるため

著しい過失・重過失があった(※):通常の過失より責任が重いため

※幼児:6歳以上、児童:6歳以上13歳未満、老人:大体65歳以上

※著しい過失:わき見運転など前方不注意が著しい場合・酒気帯び運転・時速15㎞以上30㎞未満の速度違反・著しいハンドル・ブレーキの操作ミスなど

※重過失:居眠り運転・酒酔い運転・無免許運転・時速30㎞以上の速度違反など

死亡事故で被害者の過失割合を0と主張する場合、被害者は保険会社に対応を依頼できない

被害者も自動車保険に加入していれば、交通事故が起きた場合の加害者側との補償交渉を加入先保険会社に任せることができます。しかし「青信号を歩行横断中の事故」や「歩行者用道路での事故」など、被害者の過失割合が0である(又は、被害者が自身の過失を0と主張する)事案では、加入している保険会社に示談交渉の代行を依頼することはできません。

 

そのため、被害者は自ら相手先保険会社と交渉することになりますが、被害者が事故処理の素人である一方、保険会社は事故処理に慣れていますので、そこに交渉格差が生まれてしまいます。もしこのような示談格差に不安がある場合、弁護士に依頼して格差を埋めることを検討するべきでしょう。

死亡事故の対応を弁護士に依頼する2つのメリット

死亡事故が起きてしまった場合の対応は、やはり弁護士に依頼することをおすすめします。ここでは、弁護士に依頼した際のメリットを解説します。

適正な補償を受けることができる

加害者から適正な補償額を受け取りたいという場合、事故の損害額を的確に算定し、過失割合についても適切な評価をして、加害者側にその根拠とともに請求する必要があります。

 

このような計算・評価・根拠提示はいずれも交通事故処理の知識・経験がないと困難な場合が多いです。特に死亡事故の場合、賠償額が高額となりますので、正しい方法で計算・評価等しないと適正な補償を受けられなくなる可能性もあります。

 

したがって、このような深刻な事故については、弁護士に対応を依頼する方が良い場合は多いと思われます。

事故後の対応を一任できる

交通事故について被害者側に過失がないと考える場合、被害者側は加害者(加害者加入の保険会社)と自らやり取りしなければなりません。被害者が死亡するような深刻な状況の中、不慣れな事故後対応にも追われることは、極度のストレスとなります。

 

このような場合に、弁護士に事故処理を一任できれば当該ストレスからは概ね解放されます。もちろん、その都度弁護士と連携して対応が必要な場面もありますが、独自に対応する場合と比べれば雲泥の差でしょう。

まとめ

死亡事故においては、死亡慰謝料・死亡逸失利益・葬儀関係費用といった損害を請求することができますが、実際に受け取るまでのプロセスは、決して容易なものではないこともあります。

 

その際、交通事故トラブルに長けた弁護士に依頼すれば、「どのように事故後の手続きを進めれば良いのか」アドバイスが望める上、弁護士基準での請求や過失割合の算定など、依頼者にとって利益となるようにサポートしてもらえます。少しでも望ましい結果を得るためにも、まずは相談してみることをおすすめします。

この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事は交通事故弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※交通事故弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

死亡事故に関する新着コラム

死亡事故に関する人気のコラム


死亡事故コラム一覧へ戻る