物損事故から人身事故への切り替えについて
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交通事故は大きくわけると『人身事故』と『物損事故』の2つに分類できます。
両者の違いは「死傷者がいるかいないか」です。
被害者の中に死傷者がいれば人身事故、死傷者がいなければ物損事故として扱われます。
しかし「実は怪我をしていたのに、物損事故として処理をされてしまった」という事例はめずらしくありませんが、物損事故のまま処理を進めることでリスクが生じる場合もあります。
この記事では、人身事故と物損事故の違いや、物損事故から人身事故に切り替える方法、切り替えられなかった場合の対応などを解説します。
物損事故から人身事故へ切り替えるべきか悩んでいる方へ
交通事故に遭い、物損事故として処理されて「人身事故に切り替えた方がいいの?」「切り替え方法が分からない…」と不安な方も多いでしょう。
物損事故で処理された場合、適正な賠償金を受け取れないリスクがあります。弁護士であれば切り替え手続きを依頼できますので、交通事故の知識がなく不安な方にはおすすめです。
以下に当てはまる方は、弁護士への依頼を検討しましょう。
- 人身事故に切り替えるべきか判断できない
- 自力で人身事故に切り替えられる自信がない
- 適正な賠償金を受け取るためにサポートしてほしい
適切に事故処理できれば、仕事や日常生活への支障も小さく抑えられるでしょう。一人で悩まずに、まずはお近くの弁護士にご相談ください。
この記事に記載の情報は2023年01月16日時点のものです
人身事故と物損事故の違い
人身事故と物損事故の違いを詳しく解説します。
人身事故とは
人身事故とは、「事故で脚を骨折した」「むちうちが残った」「被害者が死亡した」 などのように、死傷者のいる事故を指します。
人身事故では、加害者に対して免許停止・免許取消などの行政処分が科させられたり、懲役・罰金などの刑事処分が下されたりします。
人身事故における被害程度別の割合は以下のとおりです。
種類
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件数
|
割合
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死亡事故
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2,784件
|
1%
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重症事故
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26,448件
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8.5%
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軽傷事故
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279,946件
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90.5%
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このデータを見ると、人身事故のほとんどが軽症事故であることが分かるでしょう。
人身事故を起こした加害者は、以下の責任を問われます。
物損事故とは
物損事故とは、「事故で自動車にかすり傷がついた」「バンパーがへこんだ」 などのように、死傷者のいない事故のことを指します。
物損事故では、行政上の責任や刑事上の責任は生じません。
ただし、物損事故を招いた背景に信号無視や飲酒運転などの違反が存在する場合は、行政処分・刑事処分を受けることになります。
交通事故の被害者が人身事故として処理するメリット
軽微な事故では、警察の判断で、ひとまず物損事故として処理されることがあります。
ただし、これはあくまでも行政上・刑事上の処理に関わる問題であり、民事的な処理に直接影響するものではありません。
たとえ警察が事故を物損で処理していたとしても、被害者が交通事故で負傷し、病院での治療を余儀なくされたような場合は、車の損傷などの物損についての損害だけでなく、負傷についての人身損害についても加害者側に賠償を求めることが可能です。
交通事故被害によって生じる損害の種類には次のような項目が挙げられます。
<物的損害>
項目
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内容
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修理費用
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車などの傷や故障箇所を修理する際にかかった費用
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代車費用
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事故で車が利用できなくなり、代車を借りた際にかかった費用
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車の評価損
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事故で車の評価額が下がってしまった際、減額分について請求できる場合もある
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休車損害
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営業車(タクシーやバスなど)が破損した場合、事故がなければ獲得できたはずの収入分に生じた損害について請求できる
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積荷損
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トラックなどに載せていた荷物が事故により破損した場合、それに関する損害について請求できる(必ずしも全額分を請求できるわけではない)
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<人身損害>
項目
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内容
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入通院慰謝料
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入院や通院した際に請求できる慰謝料
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後遺障害慰謝料
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後遺障害が残った際に請求できる慰謝料
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死亡慰謝料
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被害者が死亡した際に請求できる慰謝料
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治療費
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怪我の治療にかかった費用
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入院雑費
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日用品雑貨費・通信費などにかかった費用
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通院費用
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通院のためタクシーなどの交通機関を用いた際にかかった費用
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付添看護費
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介護や介助を要する場合に請求できる費用
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将来の看護費
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介護が必要な後遺症が残った際に請求できる費用
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児童の学費等
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事故で学習の遅れが生じたことでかかった授業料など
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葬儀関係費
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被害者に葬儀などのためにかかった費用
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休業損害
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事故によって休業し減収した際に請求できる賠償金
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逸失利益
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事故によって後遺障害が残った・死亡した際に請求できる賠償金
(後遺障害逸失利益・死亡逸失利益)
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物損事故から人身事故に切り替えるメリット
物損事故で処理された場合でも、人身損害について加害者側に請求することは可能です。
当事者間で事故状況に対する認識に一切争いがなければ、物損事故をあえて人身事故に切り替えるメリットは少ないでしょう。
一方で、事故状況に対する認識に差異がある場合には、人身事故として処理を求めることで一定のメリットが期待できます。
人身事故で処理される場合、警察は事故状況の詳細を明らかにするために『実況見分調書』を作成します。
この書類には、事故当時の信号機の色や道幅の広さ、天候や見通し状況といった現場の状況についての情報に加えて、事故が起こるまでの車両の動き方や衝突の態様についての情報が記載されます。
当事者間が事故状況に対する認識で対立している場合、警察の作成した実況見分調書が事故状況を証明する有用な資料となり得るのです。
物損事故の場合でも、警察は『物損事故報告書』という書類を作成しますが、この報告書は非常に簡素なもので、事故状況に関する証拠としては価値が乏しいと言わざるを得ません。
事故態様がどのようなものであったのかは、事故当事者間の過失割合を判断するうえで極めて重要です。
当事者双方の事故認識に対立がある場合は、物損事故ではなく人身事故として処理してもらうことを積極的に検討するべきでしょう。
物損事故から人身事故に切り替える方法

警察が当初は物損事故で処理した場合でも、被害者側が必要な資料を提供することで人身事故への切り替えが可能です。
物損事故から人身事故に切り替える際の流れを見ていきましょう。
①病院で受診して診断書を受け取る
はじめに、病院で受診して診断書を作成してもらいます。
診断書は、事故により怪我を負っていることを証明するための資料として必須です。
たとえば、骨折や打撲であれば整形外科、頭を怪我した際は脳神経外科や神経内科などを受診して、診断書の作成を求めましょう。
基本的に警察が、物損事故から人身事故に切り替えるかどうかを判断するうえで重要なポイントは「被害者が交通事故によって負傷したか否か」です。
最初に受診した日が交通事故の発生日から大きく離れてしまっている場合には、傷病と交通事故との因果関係が明確でないとして、警察から切り替えを拒否されてしまうおそれが高いでしょう。
人身事故への切り替えを考えている場合は、できるだけ早く、遅くとも交通事故の発生から数日以内に病院を受診しておくべきです。
②事故現場を管轄する警察署に診断書を提出する
警察の事故担当者に対し、医師が作成した診断書を提出して人身事故への切り替えを依頼しましょう。
診断書以外にも関係資料の提出を求められた場合は、指示に従って資料を集める必要があります。
事故を物損から人身に切り替えるかどうかの判断は、最終的には警察が下します。
時間が経過してしまい事故と傷病との因果関係が明確でない場合には、診断書を提出しても切り替えてもらえないことがあるので素早いアクションが肝心です。
③人身事故として捜査が行われる
警察は、物損事故から人身事故への切り替えをもって人身事故としての捜査を開始します。
捜査の過程では、加害者・被害者の双方から事故状況を聴取するために、関係者の取り調べや事故現場の実況見分などを実施します。
実況見分調書は事故態様を立証するため有用な資料となるため、立ち会いの際には、記憶に従ってできるだけ詳細に説明しましょう。
人身事故に切り替えられなかった場合の対応
物損事故から人身事故への切り替えは警察の判断に委ねられています。
そのため、被害者側の要望があっても、必ず切り替えられるとは限りません。
とはいえ、人身事故への切り替えができなかった場合でも、人身損害を請求できないわけではありません。
被害者が、交通事故と負傷との間の因果関係を的確に示すことができれば、人身損害について加害者側に賠償請求することは可能です。
もっとも、警察が人身事故への切り替え処理を拒否するようなケースでは、交通事故と負傷との因果関係に疑いがあるとして、加害者が人身損害の賠償金を支払うことに難色を示すことは十分にあり得ます。
交渉によって任意で賠償金が支払われる可能性は低くなるので、加害者を相手に民事訴訟を起こして解決することも検討する必要があるでしょう。
民事訴訟に踏み切る場合は、個人で対応しても十分な賠償が得られない危険があるため、弁護士に対応を一任したほうが安全です。
賠償金をできるだけ多く獲得するためのポイント
適切な後遺障害等級の認定を受ける
交通事故による負傷が完治せず後遺障害が残った場合は、後遺障害に対する慰謝料や逸失利益の請求が可能です。
ただし、被害者が「まだ痛みを感じる」「違和感がある」と主張するだけでは後遺障害とは認められません。
後遺障害に対する賠償を求めるには、後遺障害等級認定を受ける必要があります。
後遺障害等級認定には、医師が作成する後遺障害診断書が必要です。
継続的な治療・リハビリを行ってきた経緯や医学的な検査結果をもとに診断がされるため、事故当初から主治医の指示に従って適切な治療を受けなければなりません。
また、後遺障害等級を認定するのは医師ではなく損害保険料率算出機構なので、医師の診断書どおりに認定されるわけでもありません。
適切な後遺障害等級認定を受けるには、医師の診断書とともに症状を証明する客観的な資料も不可欠です。
弁護士基準を用いて請求する
人身事故にかかる賠償金には3つの基準があります。
3つの基準のうちもっとも高額な賠償金が期待できるのは、過去の判例をもとに賠償基準額が設定されている弁護士基準です。
同じ内容の怪我でも、適用する基準が異なるだけで賠償額に大きな差が生じるケースもめずらしくないので、弁護士基準で交渉を進めることで賠償金の増額が期待できます。
ただし、個人が「弁護士基準で請求する」と主張しても保険会社が応じてくれる可能性はほとんどありません。
弁護士基準で請求するためには、交渉を弁護士に一任する必要があります。
⇒【初回相談無料】交通事故の損害賠償・慰謝料請求が得意な弁護士一覧
妥当な過失割合を主張する
交通事故では『過失割合』によって賠償額が変動します。
停止中の車に追突された、赤信号を無視した車が衝突してきたといったケースを除き、走行中の接触・衝突事故では双方に過失が認められるのが一般的なので、過失割合の判断はきわめて重要です。
過失割合は過去の同様の事故事例を参考に判断されますが、まったく同じ条件、同じ状況で起きる事故は2つとないので、個別の判断が必要になります。
過失割合の判断に不満がある場合は、保険会社との交渉を重ねて妥当な過失割合を主張しなければなりません。
保険会社と過失割合を争うのは容易ではないので、弁護士のサポートが必須となるでしょう。
交通事故に遭って弁護士に依頼する2つのメリット
事故の被害者は、弁護士に依頼することで以下のようなメリットが望めます。
人身損害の損害賠償請求をスムーズに行うことができる
物損事故で処理されても、交通事故と負傷との因果関係を的確に示すことができれば、加害者側に人身損害について賠償を求めることは可能です。
しかし、交通事故処理の知識や経験の乏しい個人が対応しても、因果関係の証明が難しく賠償に応じてもらえない事態を招くおそれがあります。
人身損害について適正な賠償金を受け取りたいのであれば、個人の判断で対応するのではなく、弁護士に相談・依頼して、的確な処理を行うことも検討するべきでしょう。
賠償金が増額する可能性がある
加害者に賠償金を請求する場合は「事故の過失割合は何対何か」「慰謝料はいくらが妥当か」など、さまざまな項目について示談交渉を重ねていくことになるでしょう。
弁護士に対応を任せることで被害者にとって有利な方向で交渉を進めてもらうことが期待でき、結果、賠償金の増額にもつながります。
次の例は、事故で通院した際の入通院慰謝料相場を示したものです。
適用する基準によって大幅に慰謝料額が変動することがよくわかるでしょう。
通院期間
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自賠責基準(※1)
|
任意保険基準(推定)
|
弁護士基準(※2)
|
1ヶ月間
|
8万6,000円
|
12万6,000円
|
28(19)万円
|
2ヶ月間
|
17万2,000円
|
25万2,000円
|
52(36)万円
|
3ヶ月間
|
25万8,000円
|
37万8,000円
|
73(53)万円
|
4ヶ月間
|
34万4,000円
|
47万8,000円
|
90(67) 万円
|
5ヶ月間
|
43万円
|
56万8,000円
|
105(79) 万円
|
6ヶ月間
|
51万6,000円
|
64万2,000円
|
116(89) 万円
|
※1:2020年4月1日以後の事故(入通院慰謝料額は1日4,300円)で、実通院日数は月10日間だったと仮定して計算しています。
※2:()内はむちうち等の他覚症状がない負傷の場合の入通院慰謝料を指します。
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大分
宮崎
鹿児島
沖縄
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まとめ
民事上の賠償金を求めるうえで、警察による人身事故と物損事故の扱いの違いが賠償金に差を生じさせることはありません。
ただし、当事者間で事故態様の認識に争いがある場合は、人身事故としての処理を受けたほうがメリットは大きいでしょう。
事故処理を進めるうえで分からないことや不安なことがある場合は、弁護士への相談がおすすめです。
交通事故トラブルに注力している弁護士なら、具体的に何をすればよいかのアドバイスが望めるほか、損害賠償請求を依頼した場合には賠償金の増額も期待できます。
無料相談を受け付けている事務所も多数なので、まずは早い段階で弁護士に相談してアドバイスを受けるべきでしょう。