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交通事故によるけがが全治6ヵ月と診断された場合は、医師の指示に従って治療を続けるとともに、損害賠償請求の見通しを立てておきましょう。
交通事故の損害賠償請求については、弁護士に相談すればアドバイスとサポートを受けられます。
本記事では、交通事故による全治6ヵ月のけががどの程度重症であるのか、および請求できる損害賠償の内訳や対応時の注意点などを解説します。
交通事故によって生じ得る、6ヵ月程度の治療を要するけがとしては、以下の例が挙げられます。
「むちうち」とは、頸部(首)の外傷による局所的な症状の総称です。
交通事故による衝撃が頸部に強くかかることにより、むちうちを発症することがあります。
むちうちの治療期間は、平均して3ヵ月程度と考えられています。
しかし、実際に治療期間は具体的な症状によって異なります。
軽症であれば1ヵ月程度で完治するケースもある一方で、重症の場合は6ヵ月程度の治療を要するケースもあります。
むちうちによる痛みが強烈で、日常生活にも大きな支障を来すような状態の場合は、6ヵ月程度の治療を要する可能性があることを念頭に置いておきましょう。
「捻挫(ねんざ)」とは、関節に力が加わることによって発症するけがのうち、骨折や脱臼を除いたものをいいます。
レントゲン画像において異常が見られない関節のけがは、捻挫と診断されます。
捻挫は多くの場合、関節において2つの骨を結合する組織である「靭帯(じんたい)」が損傷することによって発症します。
軽症であれば数週間程度で完治することもありますが、重症の場合は3ヵ月から6ヵ月程度、またはそれ以上の治療を要することもあります。
捻挫部分の靭帯が激しく損傷している場合には、6ヵ月程度の治療を要する可能性がある点にご留意ください。
「骨折」とは、骨が壊れることをいいます。
骨にひびが入ること、骨の一部分が欠けること、骨がへこむことなども骨折に該当します。
骨折をすると、負傷部位が元の状態に戻るまで3ヵ月から6ヵ月程度かかるのが一般的です。
重症の場合は、1年またはそれ以上の期間を要することもあります。
交通事故によって比較的重症の骨折が生じてしまった場合は、6ヵ月以上の治療を要する可能性が高いでしょう。
全治6ヵ月のけがは比較的重症であるため、交通事故の被害者が加害者に対して請求できる損害賠償は高額となる傾向にあります。
交通事故で全治6ヵ月のけがを負った被害者が、加害者に対して請求できる主な損害賠償の項目としては、以下の例が挙げられます。
交通事故によるけがの治療やリハビリに要した費用(=治療費)は、原則として実費全額が損害賠償の対象となります。
治療費の主な内訳としては、以下の例が挙げられます。
交通事故で全治6ヵ月のけがを負った場合、当初はしばらく入院するものの、その後は通院治療に切り替わるのが一般的です。
通院のために要した交通費は、加害者側に対する損害賠償請求の対象となります。
公共交通機関を利用した場合は、原則として実費全額が損害賠償の対象です。
自家用車を利用した場合には、距離に応じて通院交通費の金額が計算されます。
タクシー代については、公共交通機関を利用できない合理的な事情がある場合でなければ、全部または一部が損害賠償の対象外となることがあるのでご注意ください。
交通事故によるけがの治療やリハビリのために装具や器具を購入した場合には、必要かつ妥当な実費が損害賠償の対象となります。
具体的には、以下のような装具・器具の購入費用について損害賠償を請求可能です。
被害者の入院や通院に家族や職業付添人が付き添った場合には、その費用が損害賠償の対象となります。
家族が付き添った場合は、入院付添費用として日額6,500円程度、通院付添費用として日額3,300円程度が認められるケースが多いです。
職業付添人が付き添った場合は、必要かつ妥当な実費相当額の付添費用が認められます。
入院中に日用品などを購入するための費用は、入院雑費として損害賠償の対象となります。
入院雑費は、1日当たり1,500円程度が認められるケースが多いです。
交通事故によってけがをしたことに伴い、被害者が受けた精神的または肉体的な苦痛については、入通院慰謝料の損害賠償を受けることができます。
入通院慰謝料の金額の計算方法は、後述します。
交通事故によるけがが完治せずに後遺症が残った場合は、それに伴う精神的または肉体的な苦痛について、後遺障害慰謝料の損害賠償を受けることができます。
後遺障害慰謝料の金額は、後遺症について認定される後遺障害等級に応じて、下表のとおり目安額が決まっています。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料の目安額 |
---|---|
1級(要介護を含む) | 2,800万円 |
2級(要介護を含む) | 2,370万円 |
3級 | 1,990万円 |
4級 | 1,670万円 |
5級 | 1,400万円 |
6級 | 1,180万円 |
7級 | 1,000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
交通事故によるけがが完治せずに後遺症が残り、それによって労働能力の全部または一部を失った場合には、将来にわたって減少した収入(=逸失利益)の損害賠償を請求できます。
逸失利益の金額は、以下の式によって計算します。
逸失利益=1年当たりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数 |
※「1年当たりの基礎収入」とは、原則として交通事故発生前の年収の実額です。
ただし、専業主婦または専業主夫の場合は、賃金センサスに基づく女性労働者の全年齢平均給与額を1年当たりの基礎収入とします。
労働能力喪失率は、後遺症について認定される後遺障害等級に応じて、下表のとおり目安が決まっています。
後遺障害等級 | 労働能力喪失率の目安 |
---|---|
1級(要介護を含む) | 100% |
2級(要介護を含む) | 100% |
3級 | 100% |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 33% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
交通事故による全治6ヵ月のけがについては、治療期間が長くなることに伴い、高額の入通院慰謝料を請求できることが多いです。
全治6ヵ月のけがに関する入通院慰謝料の計算方法と計算例を紹介します。
入通院慰謝料の金額は、「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)の別表Iまたは別表IIを目安として計算されるのが実務の通例となっています。
骨折などの重症については別表Ⅰ、むちうち症・打撲・捻挫など軽症については別表Ⅱを用います。
通院期間と入院期間が交差する点を参照すると、入通院慰謝料の目安額が分かります。
なお、下表の金額はあくまでも目安です。
実際に認められる入通院慰謝料の金額は、具体的な症状の内容や程度などによって変化し得る点にご注意ください。
入院期間 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通院期間 | 0 | 53 | 101 | 145 | 184 | 217 | 244 | 266 | 284 | 297 | 306 | 314 |
1月 | 28 | 77 | 122 | 162 | 199 | 228 | 252 | 274 | 291 | 303 | 311 | 318 |
2月 | 52 | 98 | 139 | 177 | 210 | 236 | 260 | 281 | 297 | 308 | 315 | 322 |
3月 | 73 | 115 | 154 | 188 | 218 | 244 | 267 | 287 | 302 | 312 | 319 | 326 |
4月 | 90 | 130 | 165 | 196 | 226 | 251 | 273 | 292 | 306 | 316 | 323 | 328 |
5月 | 105 | 141 | 173 | 204 | 233 | 257 | 278 | 296 | 310 | 320 | 325 | 330 |
6月 | 116 | 149 | 181 | 211 | 239 | 262 | 282 | 300 | 314 | 322 | 327 | 332 |
7月 | 124 | 157 | 188 | 217 | 244 | 266 | 286 | 304 | 316 | 324 | 329 | 334 |
8月 | 132 | 164 | 194 | 222 | 248 | 270 | 290 | 306 | 318 | 326 | 331 | 336 |
9月 | 139 | 170 | 199 | 226 | 252 | 274 | 292 | 308 | 320 | 328 | 333 | 338 |
10月 | 145 | 475 | 203 | 230 | 256 | 276 | 294 | 310 | 322 | 330 | 335 | |
11月 | 150 | 179 | 207 | 234 | 258 | 278 | 296 | 312 | 324 | 332 | ||
12月 | 154 | 183 | 211 | 236 | 260 | 250 | 298 | 314 | 326 | |||
13月 | 158 | 187 | 213 | 238 | 262 | 282 | 300 | 316 | ||||
14月 | 162 | 189 | 215 | 240 | 264 | 284 | 302 | |||||
15月 | 164 | 191 | 217 | 242 | 266 | 286 |
入院期間(0月) | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通院期間(0月) | 0 | 35 | 66 | 92 | 116 | 135 | 152 | 165 | 176 | 186 | 195 | 204 |
1月 | 19 | 52 | 83 | 106 | 128 | 145 | 160 | 171 | 182 | 190 | 199 | 204 |
2月 | 36 | 69 | 97 | 118 | 138 | 153 | 166 | 177 | 186 | 194 | 201 | 207 |
3月 | 53 | 83 | 109 | 128 | 146 | 159 | 172 | 181 | 190 | 196 | 202 | 208 |
4月 | 67 | 95 | 119 | 136 | 152 | 165 | 176 | 185 | 192 | 197 | 203 | 209 |
5月 | 79 | 105 | 127 | 142 | 158 | 169 | 180 | 187 | 193 | 198 | 204 | 210 |
6月 | 89 | 113 | 133 | 148 | 162 | 173 | 182 | 188 | 194 | 199 | 205 | 211 |
7月 | 97 | 119 | 139 | 152 | 166 | 175 | 183 | 189 | 195 | 200 | 206 | 211 |
8月 | 103 | 125 | 143 | 156 | 168 | 176 | 184 | 190 | 196 | 201 | 207 | 212 |
9月 | 109 | 129 | 147 | 158 | 169 | 177 | 185 | 191 | 197 | 202 | 208 | 214 |
10月 | 113 | 133 | 149 | 159 | 170 | 178 | 186 | 192 | 198 | 203 | 209 | |
11月 | 117 | 135 | 150 | 160 | 171 | 179 | 187 | 193 | 199 | 204 | ||
12月 | 119 | 136 | 151 | 161 | 172 | 180 | 188 | 194 | 200 | |||
13月 | 120 | 137 | 152 | 162 | 173 | 181 | 189 | 195 | ||||
14月 | 121 | 138 | 153 | 163 | 174 | 182 | 190 | |||||
15月 | 122 | 139 | 154 | 164 | 175 | 183 |
たとえば、骨折によって当初1ヵ月間入院して、その後5ヵ月間にわたり通院治療を継続したとします。
この場合、別表Ⅰの「入院期間1月・通院期間5月」の欄を参照すると、入通院慰謝料の金額は141万円となります。
また、むちうちを発症して入院せずに治療を開始したものの、通院治療が長引いて6ヵ月間かかったとします。
この場合、別表Ⅱの「入院期間0月・通院期間6月」の欄を参照すると、入通院慰謝料の金額は89万円となります。
交通事故によって全治6ヵ月のけがを負った場合には、以下の2つの対応を確実におこないましょう。
交通事故によってけがをしたら、医師の指示に従って治療を継続することが大切です。
医師の指示に従うことは、けがを完治させるために必要であることはもちろん、交通事故の損害賠償請求をおこなうに当たっても非常に重要です。
途中で勝手に通院を止めてしまうと、交通事故とけがや後遺症の間の因果関係を立証できなくなり、適正額の損害賠償を受けられない事態になりかねません。
全治6ヵ月の通院治療は長丁場で根気が必要ですが、きちんと医師の指示を守って治療を続けましょう。
全治6ヵ月のけがは比較的重症なので、交通事故の加害者側に対して、高額の損害賠償を請求できる可能性があります。
実際に損害賠償請求をおこなうのは、けがが完治するか、または医師から症状固定(=治療を続けても症状の改善が医学的に見込めない状態)の診断を受けた後です。
しかし、早い段階で損害賠償請求の見通しを立てておいた方が安心に繋がるでしょう。
交通事故の損害賠償請求については、弁護士に相談すればアドバイスを受けることができます。
また、実際に損害賠償請求をおこなう段階になったら、弁護士に依頼すれば必要な対応をほぼすべて代行してもらえます。
交通事故によるけがや後遺症について、適正額の損害賠償を受けるためには、弁護士のサポートが大いに役立ちます。
交通事故によるけがが全治6ヵ月と診断されたら、損害賠償請求の見通しなどについて、早い段階で弁護士へご相談ください。
交通事故によるけがの治療が長引いている場合、加害者側の任意保険会社が、被害者に対して治療費の打ち切りを提案してくることがあります。
被害者としては、任意保険会社から治療費打ち切りの提案を受けても、安易に応じてはいけません。
けがが完治するか、または症状固定の状態に至るまでは、必要な治療費をカバーする保険金を受け取る権利があります。
完治や症状固定の診断をするのは、任意保険会社ではなく医師です。
したがって、任意保険会社が治療費の打ち切りを提案してきても、被害者がそれに応じる必要はありません。
治療をいつまで続けるべきかについては、医師と話し合った上で決めましょう。
任意保険会社に対しては、医師と話し合った内容を伝えた上で、引き続き治療が必要であれば治療費の保険金を支払うように求めましょう。
交通事故によって生じ得る全治6ヵ月のけがとしては、重症のむちうち・重度の靭帯損傷を伴う捻挫・骨折などが挙げられます。
いずれも交通事故によるけがとしては比較的重症であるため、加害者側に対して高額の損害賠償を請求できる可能性があります。
早い段階から弁護士に相談して、適正額の損害賠償の獲得を目指しましょう。
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