物損事故でも慰謝料もらえた5つのケース|請求できる条件と相場を解説
物損事故でも、条件を満たせば慰謝料をもらえた実例があります。
SNSや知恵袋でも話題になるテーマですが、過失割合が10対0でも、物損事故だから慰謝料はもらえないと保険会社に言われ、納得できずにいる方も少なくないでしょう。
本記事では、物損事故で慰謝料をもらえた5つの裁判例や、人身事故と物損事故の違い、人身事故への切り替えを検討すべき基準、示談金や迷惑料の相場を紹介します。
あわせて、弁護士に相談することで回収できる慰謝料の金額目安についても触れていきます。
この記事の監修者
澁谷 望 (第二東京弁護士会)
物損事故で慰謝料をもらえた5つのケース
物損事故は、道路交通法上の交通事故のひとつ。
原則として、慰謝料の請求は認められません。
ただし、精神的苦痛を伴う特別な事情があれば、物損事故のままでも慰謝料が認められる場合があります。
実際に、以下のような5つのケースで慰謝料の支払いが認められました。
物損事故として処理したが、実際にはけがをしていた(人身事故)
警察に物損事故として届け出ても、あとからけがが発覚すれば慰謝料をもらえる可能性があります。
「令和3年(ワ)2173号 神戸地方裁判所 令和6年3月27日判決」では、駐車場から出てきた車に追突された男性が、事故直後は車の修理だけを求めて物件事故として届け出ています。
ところが翌日から首や右腕、右膝に違和感を覚えはじめ、約1年間通院治療を受けることになりました。
裁判所は頸椎捻挫や右肩捻挫、右膝捻挫などのけがを認め、慰謝料110万円を含む損害賠償を認定しています。
とはいえ、警察の記録が物件事故のままだと、保険会社から因果関係を否定されるケースも少なくありません。
けがに気づいた時点で早めに病院を受診し、人身事故への切り替えを検討するのがおすすめです。
同乗していたペットが亡くなったり重い傷害を負ったりした
同乗していたペットが死亡したり、重い傷害を負ったりした場合も、慰謝料が認められることがあります。
ペットは法律上「もの」として扱われますが、家族同然に暮らしてきた飼い主にとっては、単純な物損とは言えません。
「平成20年(ネ)483号 名古屋高等裁判所 平成20年9月30日判決」では、後部座席に固定具なしで乗せていた愛犬が、追突事故で腰椎を骨折し、後肢麻痺となった事例が争われました。
子どものいない夫婦が我が子のように育ててきた愛犬で、排泄の介護が必要になるほどの重傷だったことから、裁判所は死亡に近い精神的苦痛を認め、夫婦それぞれに慰謝料20万円を認めています。
ただし、この裁判例はペットとの結びつきが深く、後遺障害が重度だったケースに限られる点には注意が必要です。
精神的価値の高い物が損壊した
墓石や芸術作品など、精神的価値の高い物が壊れた場合も、慰謝料が認められる場合があります。
「平成12年(ワ)27114号 東京地方裁判所 平成15年7月28日判決」では、陶芸家が屋外に保管していた代表作の陶板が、事故車の衝突で15枚以上破損しました。
美術展にも出展された記念碑的な作品で、復元も不可能だったことから、裁判所は慰謝料100万円を認めています。
また「平成12年(ワ)1207号 大阪地方裁判所 平成12年10月12日判決」では、レンタカーが墓石に乗り上げて倒壊させ、骨壺が露出する被害が発生しました。
墓石は先祖への敬愛の念を抱く特別な対象だとして、修理費とは別に慰謝料10万円が認められています。
物の価値そのものだけでなく、被害者にとっての思い入れの深さが判断材料になるのが特徴です。
家屋の破壊で引越しを余儀なくされた
事故で自宅が壊され、生活場所の変更を強いられた場合にも、慰謝料が認められるケースがあります。
「平成12年(ワ)268号 神戸地方裁判所 平成13年6月22日判決」では、深夜に10トントラックが県道から飛び出し、木造住宅の1階部分を大きく損壊させました。
住人は所有者夫婦と高齢の母の3人で、修繕までの半年間、アパートでの生活を余儀なくされています。
修復のための借金や、高齢の家族が受けた心労も考慮され、裁判所は住人3人それぞれに慰謝料30万円を認定しました。
住み慣れた家を離れる負担や生活上の不便さは、修理費の支払いだけでは埋め合わせできないと判断された形です。
加害者の行為が著しく悪質で精神的苦痛を受けた
加害者の運転態度が著しく悪質だった場合も、精神的苦痛を理由に慰謝料が認められるケースがあります。
「平成14年(ワ)第765号 京都地方裁判所 平成15年2月28日判決」では、飲酒運転をしていた加害者が物損事故を起こしたあと、そのまま現場から逃走しました。
被害者は加害者を捜して近隣を歩き回ることになり、大きな不安と心労を強いられています。
裁判所は、飲酒運転と逃走という行為の悪質性、そして被害者が受けた心痛を踏まえ、慰謝料10万円を認定しました。
物の損害そのものより、加害者の行為によって生じた恐怖や不安が評価された事例だといえます。
物損事故で請求できる主な賠償の種類9つ
物損事故では、慰謝料は原則受け取れません。
しかし、財産的な損害に対する賠償は幅広く請求できるのが特徴です。
車の修理費だけでなく、代車費用や荷物の損害など、見落としがちな項目も少なくありません。
ここでは、物損事故で請求できる代表的な賠償の種類を紹介します。
1. 車両の修理にかかる費用
物損事故で車が壊れたら、修理費を損害賠償として請求できます。
ただし、かかった費用を全額払ってもらえるとは限りません。
相当性がないと判断された部分は、認められない場合があります。
たとえば塗装の一部が剥げただけなのに車全体を塗り直した場合、支払われるのは剥げた部分の修理費用のみです。
パーツについても、修理で直せるなら交換費用までは認められないのが一般的。
見積もりの内容に納得できないときは、複数の修理工場で相見積もりを取っておくと安心です。
2. 車の買い替えにかかる費用
修理できないほど損傷が激しい場合や、修理費が高額になりすぎる場合は全損として扱われます。
修理費ではなく買い替え費用の請求です。
修理のほうが安く済むときは、買い替え費用は認められません。
また、全損になったからといって新車の購入代金を全額もらえるわけではないので注意が必要です。
あくまで、事故当時の車の時価に相当する金額のみが支払われます。
想定より低い査定額を提示されるケースも多いため、金額に疑問を感じたら弁護士に相談してみましょう。
3. レッカー代
物損事故でレッカー移動が必要になった場合、その費用も損害賠償として請求できます。
事故で車が自走できなくなるケースは珍しくありません。
レッカー移動後に車両を保管する費用についても、相当な範囲であれば損害として認められます。
一方で、必要以上に長期間保管したり、遠方の業者を選んだりすると、相当性がないとして減額されることもあります。
領収書は全て保管しておき、示談交渉の際にまとめて提示できるようにしておくと安心です。
4. 積んでいた荷物などに被った損害に対する費用
車に積んでいたパソコンやスマートフォンが壊れた場合も、損害賠償の対象です。
着ていた衣服が破れたときも同様に、修理代や時価相当額を請求できます。
ただし支払われるのは、購入価格ではなく時価相当額であることがほとんど。
パソコンやスマートフォンは、購入価格に比べてかなり低い金額になるケースも見られます。
また、本当に事故で壊れたのかを証明しづらく、交渉が難航することもあります。
事故直後に壊れた物の写真を撮っておくと、あとの交渉がスムーズです。
なお、同乗していたペットがけがをしたり亡くなったりした場合も、物損事故の損害賠償請求の対象になります。
5. 代車を借りるのにかかる費用
車を修理に出しているあいだ、代車を使ったなら代車費用も請求できます。
認められる期間の目安は、1~2週間程度。
修理部品が欠品しているなど個別の事情があれば、さらに長期の代車費用が認められることもあります。
一方で、電車やバスで代用できる場合や、ほかに使える車を持っている場合は、請求が認められないケースも。
代車として自分の車より高級な車を使っても、その分の費用は支払ってもらえません。
グレードが近い車を選んでおくのが無難です。
6. 車両修理中にかかる交通費
代車ではなく、電車やバスを使って移動した場合も、その利用料金を損害賠償として請求できます。
ただし、いくらでも請求できるわけではありません。
代車を使った場合にかかる費用が、実質的な上限になるのが一般的です。
そのため、指定席やグリーン車を使うと、差額分が認められないことがあります。
領収書はこまめに保管しておき、通勤や通院にかかった交通費を漏れなく記録しておきましょう。
7. 修理前と比べた評価損
車を修理して元通りに使えるようになっても、修理前より価値が下がることは珍しくありません。
事故に遭わなければ売れたはずの金額と、修理後に売れる金額には差が生まれます。
とくに事故車は、隠れた不具合があるかもしれないため敬遠されやすく、査定額が下がる傾向にあります。
比較的新しい車や高級車ほど、評価損が認められやすいのが特徴です。
ただし、評価損は未確定なこともあり、相手側の任意保険会社が渋りがちな項目でもあります。
支払いに納得できないときは、弁護士などの専門家に相談してみましょう。
8. 休車による損害
自家用車であれば、代車や公共交通機関で代用できます。
しかし、タクシーやトラックなど仕事で使う営業車両は、被害者にとって収入源そのものです。
修理などで業務に使えなかった期間の損害は、休車損害として請求できます。
請求できるのは、事故発生日以降に該当車を使う業務が確定していて、なおかつ予備の車両がない場合のみです。
休車損害の金額は、平均売上額から必要経費を差し引いて計算されるのが一般的。
営業日報や売上記録を日頃から残しておくと、請求時の証拠として役立ちます。
9. 建物や塀などの破損に対する弁償
加害者の車が建物や塀にぶつかり、壊してしまった場合も、修理費や時価相当額を損害賠償として請求できます。
自宅が損壊し、修繕中にアパートを借りなければならなくなったケースでは、その家賃も損害として受け取れる可能性が高いです。
車が突っ込んできて壁や玄関が壊れたようなケースは、決して珍しいものではありません。
被害の範囲は写真や見積書で早めに記録しておくと、あとの交渉がスムーズになります。
修繕費用が高額になりそうな場合や、相手側の保険会社の対応に不安がある場合は、早めに弁護士へ相談しましょう。
物損事故で原則として慰謝料をもらえない4つの理由
物損事故では、基本的に慰謝料を請求できません。
車の修理費などの財産的な損害とは違い、精神的な苦痛への賠償は認められにくいです。
「なぜ物損だと慰謝料がもらえないのか」を知っておくと、示談交渉での納得感も変わってきます。
ここでは、その理由を4つの観点から解説します。
身体や生命を害された人身事故で主に認められるため
慰謝料は、民法710条・711条に基づき、他人の身体や生命を侵害した場合に発生する請求権です。
そもそも慰謝料とは、不法行為によって受けた精神的・肉体的な苦痛に対する賠償金。
けが人がいない物損事故では、精神的な苦痛を感じていたとしても、法律上の損害としては評価されにくいのが現実です。
車がへこんだ悔しさや腹立たしさだけでは、条文が想定する身体や生命への侵害には該当しません。
また、物に対する思いも人それぞれであり、客観的な尺度がないことも理由に挙げられます。
物損事故では慰謝料が認められないとされているのは、こうした法律の建てつけによるものです。
修理費用や賠償金が支払われれば精神的苦痛も補填されるため
車の修理代などが満額支払われれば、精神的なストレスも法律上は回復したものとみなされます。
裁判では、財産的な損害が填補されることで、被害者の精神的苦痛も同時に慰謝されるという考え方が定着しているためです。
長年乗ってきた愛車への愛着や思い入れは、たしかに強いもの。
ただ、主観的な感情は金銭で客観的に評価することが難しく、賠償額の算定に反映しづらいです。
対物賠償責任保険から支払われるのは修理費用のみで、慰謝料は含まれません。
修理代とは別に慰謝料を得たい場合は、次章で紹介する特別な事情があるかどうかがポイントになります。
ペットはものとして扱われてしまうため
ペットは飼い主にとって家族同然の存在です。
しかし、法律上ペットは有体物、つまり動産に分類されるのが現状です。
民法上、動物が事故で死傷した場合は、原則としてものの損壊として扱われます。
治療費そのものは修理費と同様に請求できますが、死亡や重傷に対する慰謝料は、通常の物損と同じく認められにくいのが実態です。
一方で、飼い主の精神的苦痛を例外的に認める裁判例も出てきています。
ただし、あくまで例外的な扱いであり、法的なハードルは今も高いままです。
けが人のいなければ精神的苦痛が認められにくいため
体に傷を負っていない場合、裁判所で賠償に値する精神的苦痛があったと認めてもらうのは簡単ではありません。
事故に遭った恐怖や驚き、手続きの煩わしさへの不満は、日常生活で誰もが経験しうる範囲の不利益として処理されがちです。
PTSDなどの精神疾患について医学的な診断がない限り、物損だけを根拠に精神的苦痛の存在を立証するのは難しいのが現実。
保険会社との交渉でも、精神的苦痛のみを理由にした請求は、その場で断られることがほとんどです。
慰謝料を目指すなら、次章のような具体的な事情や証拠を積み上げていく必要があります。
けがをしている場合は人身事故に切り替えよう
物損事故によって少しでもけがをしているなら、人身事故への切り替えで請求できる範囲が大きく変わります。
ここでは、人身事故と物損事故の違いや切り替えの手順、慰謝料の相場を紹介します。
人身事故と物損事故の違い
人身事故と物損事故の最大の違いは、人の死傷を伴うかどうかです。
物損事故は車や物だけに被害が及んだ事故を指し、人身事故は人命や身体にも被害が及んだ事故を指します。
警察の対応も異なり、人身事故では過失割合を立証する重要な証拠になる実況見分調書が作成されるのが特徴です。
一方、物損事故では簡易な報告書のみで済まされてしまいます。
民事上の違いも大きく、物損事故で請求できるのは修理費などの財産的損害のみです。
人身事故なら、治療費や休業損害に加えて慰謝料も請求できます。
過失割合で相手方と揉めた場合、実況見分調書があるかどうかで交渉の有利さが変わってくるでしょう。
物損事故から人身事故に切り替える流れ
人身事故への切り替えは、病院を受診して診断書をもらうところから始まります。
事故から数日以内を目安に整形外科を受診し、事故との因果関係を明記した診断書を医師に作成してもらいましょう。
診断書のほか、身分証明書や印鑑を持参して、事故現場を管轄する警察署の交通課へ出向きます。
窓口で人身事故への切り替えを申し出れば、被害者と加害者の立ち会いのもと、実況見分がやり直される流れです。
実況見分を経て正式に人身事故へ切り替わったら、相手方の任意保険会社にも連絡を入れておきましょう。
対応が遅れるほど、事故とけがの因果関係を疑われやすくなる点には注意が必要です。
人身事故に切り替えた場合の慰謝料相場
人身事故に切り替えた場合、通院期間や実際の通院日数に応じて入通院慰謝料を請求できます。
算定基準には、法律上の最低限の補償である自賠責基準と、保険会社独自の任意基準があるのが特徴。
自賠責基準は1日あたり4,300円を基準に計算されるのが原則です。
これに対して弁護士に依頼した場合に使われる弁護士基準では、金額が大きく変わってきます。
たとえばむちうちで3ヵ月間、毎月15日間通院したケースでは、自賠責基準で約38万7,000円。
同じ通院期間でも、弁護士基準なら約53万円まで増額されるケースが多いです。
保険会社から提示された金額をそのまま受け入れる前に、一度弁護士に確認してみるとよいでしょう。
物損事故で慰謝料を請求するためのポイント
物損事故で慰謝料を請求できるかどうかは、証拠の集め方ひとつで変わってきます。
けがの有無や、事故当時の状況をどう記録しているかが、示談交渉の結果を左右します。
ここからは、慰謝料獲得を目指すうえで押さえておきたいポイントを紹介するので、自分のケースにあてはめて請求できるかどうかを確認してみてください。
慰謝料を請求できる根拠となるような過去の判例や証拠を集める
物損事故のまま慰謝料を請求するなら、判例と証拠の有無が結果を大きく左右します。
事故とけがの関連性を示す証拠としては、事故直後に受診した医療機関の診断書や、医師の意見書を準備しておきましょう。
そのほか、次のようなものも有力な証拠になります。
- 事故車に搭載していたドライブレコーダーの映像
- 事故発生直後の車や現場の写真
- 交通事故鑑定人による報告書
- 目撃者の証言 など
また、同じような事故で慰謝料が認められた判例を探しておくことも大切です。
ただし、法律の専門知識がない状態で該当する判例を探し出すのは簡単ではありません。
交通事故の慰謝料問題に強い弁護士に相談する
物損事故での慰謝料請求や、賠償額の増額を目指すなら、交通事故の解決実績が豊富な弁護士への相談がおすすめです。
自分で交渉すると、保険会社から物損に慰謝料は払えないの一言で終わらせられることも少なくありません。
弁護士なら、過去の判例をもとに例外的な支払いが認められる根拠を、論理的に主張・立証してくれます。
対応できるのは慰謝料だけではありません。
保険会社が渋りがちな評価損や代車費用といった項目も、法的な根拠を示しながら漏れなく請求できるのがメリットです。
自分の自動車保険に弁護士費用特約が付いていれば、実質自己負担0円で交渉の全権を任せられます。
費用倒れを心配する必要がないのは、大きな安心材料といえるでしょう。
物損事故の慰謝料に関する相談は「ベンナビ交通事故」を活用
物損事故でも慰謝料が認められるかもしれない、と感じたら、まず弁護士に話を聞いてもらうのがおすすめです。
とはいえ、「どの弁護士に相談すればいいかわからない」という方も多いはず。
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初回相談を無料で受け付けている事務所も多く、費用を気にせず複数の弁護士を比較できるのが特徴。
「物損事故でも慰謝料はもらえるのか」「弁護士費用特約が使えるか」といった疑問も、気軽に相談できます。
物損事故の慰謝料についてよくある質問
物損事故の慰謝料については、細かい疑問を持つ方も多いはず。
過失割合や通院の有無によって、対応が変わってくるケースも少なくありません。
ここでは、よく寄せられる5つの質問にお答えします。
Q1. 過失割合が10対0の物損事故でも、相手に慰謝料や迷惑料は請求できないの?
被害者に過失がなく、10対0で加害者が原因の事故であっても、けががない物損事故なら、原則として慰謝料はもらえません。
そもそも慰謝料は、精神的または肉体的な苦痛に対する賠償金です。
物損事故は、精神的な苦痛も肉体的な苦痛も発生していないことを前提とする事故。
人身事故とは違い、被害者の精神的苦痛は財産的な損害の回復と同時に慰謝されると考えられています。
ただし、家族同然のペットが亡くなったなど特別な事情があれば、例外的に慰謝料が認められることもあります。
この場合、精神的苦痛の大きさを示す証拠が結果を左右します。
Q2. 人身事故の切り替えができなかった場合はどうすればいい?
物損事故として届け出たあと、医療機関の診断書を提出しても、人身事故へ切り替えられないことがあります。
そのようなときは、保険会社の担当者から送られてくる人身事故証明書入手不能理由書を提出しましょう。
書類が送られてこない場合は、加害者が加入している任意保険会社のWebサイトからダウンロードできます。
書類を提出することで、治療費や慰謝料が支払われる可能性が出てきます。
提出しても支払いに応じてもらえないときは、弁護士に相談してみてください。
Q3. 物損事故では車の損壊以外にも損害賠償の対象になる?
物損事故は車による事故を指しますが、被害の対象は車だけではありません。
車に乗せていたパソコンやスマートフォンなどの精密機械、荷台に積んでいた荷物なども損害賠償の対象です。
事故に遭ったときに身につけていた服や、腕時計なども対象になる場合があります。
そのほか、車が自宅に突っ込んできたときや、車がぶつかって壁を壊されたときなど、被害者側が車に乗っていないケースも物損事故として扱われます。
修理費や時価相当額を損害賠償として請求できるのが特徴です。
Q4. 物損事故のままでもけがをして通院をしているなら治療費は請求できる?
警察に物損事故として届け出たあとでも、けがに気づいたら医療機関を受診しましょう。
通院が必要であれば、物損事故のままでも治療費を加害者側に請求できる場合があります。
ただし、相手側の任意保険会社がけがと事故の因果関係を認めず、支払いを拒むケースも少なくありません。
確実に治療費を受け取りたいなら、人身事故への切り替えを検討するのがおすすめです。
切り替えたい場合は、その旨を医師に伝えて診断書を作ってもらい、警察に提出してください。
Q5. 物損事故で慰謝料が認められた場合の相場はいくら?
物損事故で例外的に慰謝料が認められる場合の相場は、数万円から100万円程度まで幅があります。
ケースの内容によって金額の目安が大きく異なるのが特徴です。
これまで紹介した判例をあらためて整理すると、次のようになります。
| ケース | 慰謝料の目安 |
| ペットが重傷を負った場合 | 飼い主それぞれに20万円 |
| 家屋が損壊し仮住まいを強いられた場合 | 住人それぞれに30万円 |
| 墓石が倒壊した場合 | 10万円 |
| 一点物の芸術作品が壊れた場合 | 100万円 |
人身事故のような統一の算定表はなく、被害者が受けた精神的苦痛の大きさをもとに、個別に判断されるのが実情です。
さいごに|物損事故でも慰謝料請求をしたいなら弁護士に相談しよう
物損事故では、原則として慰謝料の請求は認められません。
しかし、けがをしていた場合やペット・家屋・思い入れのある物が壊れた場合など、特別な事情があれば慰謝料が認められる可能性があります。
まずは病院を受診して診断書をもらい、事故直後の写真やドライブレコーダーの映像を保管しておきましょう。
自分のケースで慰謝料請求が可能かどうか、どこまで賠償を請求できるのか迷ったときは、交通事故に強い弁護士に相談するのがおすすめです。
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澁谷 望 (第二東京弁護士会)
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