交通事故や自転車事故など、事故はいつ起きてしまうか分からないものです。弁護士費用を用意できず泣き寝入りとなってしまうケースも少なくありません。
ベンナビ弁護士保険は、弁護士依頼で発生する着手金を補償する保険です。
交通事故だけでなく、自転車事故、労働問題、離婚、相続トラブルなど幅広い法的トラブルで利用することができます。
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交通事故で突然子供を亡くしてしまった場合、悲しみから何も手が付かないということも決して珍しいことではないはずです。このような場合、交通事故の損害賠償請求を進めることすら苦痛であるということもあると思います。しかし、何もしないままというわけにもいかないため、感情を抑えながら対応を余儀なくされるということも少なくありません。
このような交通事故の損害賠償請求を的確に進めるためには、ある程度の「交通事故に関する知識・経験」が必要となる場面も多々あります。上記のような難しい状況の中、自力での対応に不安がある場合は弁護士に依頼することも積極的に検討するべきでしょう。
この記事では、交通事故で子供が死亡した場合の損害賠償請求のポイントや弁護士に依頼するメリットなどについて解説していきます。
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交通事故で死亡事故を起こした加害者に対しては、刑事責任・行政責任・民事責任などの責任追及が考えられます。まずはそれぞれの中身について解説していきます。
刑事責任とは、懲役・罰金・禁固などの刑罰が処されることを指します。「運転者が飲酒していた場合」や「無免許だった場合」など、事故の状況によって以下のように科される刑罰は異なります。
刑事責任 |
罰則 |
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自動車運転死傷行為処罰法 |
過失運転致死傷罪 |
7年以下の懲役もしくは禁錮又は100万円以下の罰金 |
|
危険運転致死傷罪 |
負傷は15年以下の懲役、死亡は1年以上の有期懲役 |
||
道交法 |
緊急措置義務違反 |
人身 |
5年以下の懲役または50万円以上の罰金 |
酒酔い運転 |
5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
||
酒気帯び運転 |
3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
||
無免許運転 |
1年以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
行政責任とは、免許の停止・取り消しなどの処分が下されることを指します。こちらは「運転者が信号を守って走行していたか否か」「法定速度を守っていたか否か」など、過失の有無によって以下のように付加される点数は異なります。
違反者の不注意による事故の場合 |
左記以外の場合 |
|
付加点数 |
20点 |
13点 |
民事責任とは、交通事故により生じた損害について賠償金を支払うことを指します。
交通事故で子供が死亡してしまった場合は、死亡慰謝料・死亡逸失利益・葬儀関係費用などの損害を請求することができます。これのみではありませんが、ここではこの3つの損害について詳しく解説します。
死亡慰謝料とは、交通事故によって被害者が死亡した際に受け取ることができる慰謝料を指します。なお慰謝料を請求する際は、以下に挙げた計算基準を用いて請求することになりますが、なかでも弁護士基準が高額になる傾向にあります。
交通事故慰謝料の計算基準 |
|
自賠責基準 |
自賠責保険で用いる計算基準 |
任意保険基準 |
保険会社がそれぞれ独自で定める計算基準 |
弁護士基準 |
裁判所の過去の判例などをもとにした計算基準 |
自動車の運転者は誰でも自賠責保険に加入しておりますので、すべてのケースで自賠責基準での請求が可能です。この場合、以下のように「慰謝料を請求する遺族の数」に応じて金額が変わります。
また「死亡者が遺族を扶養していた」という場合には慰謝料が200万円加算されますが、死亡者が子供のケースでは特に考えなくて良いでしょう。
請求する要項 |
慰謝料額 |
死者本人に対する慰謝料 |
400万円(2020年4月1日以前に発生した事故に関しては350万円) |
慰謝料を請求する遺族が1人の場合 |
550万円 |
慰謝料を請求する遺族が2人の場合 |
650万円 |
慰謝料を請求する遺族が3人の場合 |
750万円 |
任意保険基準とは、任意保険会社が独自に用意する内部基準です。公表されているものではないため、本記事ではあくまで推定値として掲載しています。他方、弁護士基準とは、交通事故損害に対する裁判例の蓄積により構築された基準であり、こちらの基準は刊行物により公表されています。
交通事故慰謝料の算定に当たりどのような基準を適用するかについて特段のルールはありません。ただ、一般的には弁護士基準が最も高額となりやすく、次いで任意保険基準が高くなり、自賠責基準が最低ラインという考え方が主流です。
例えば、死亡慰謝料については、任意保険基準(推定値)と弁護士基準では以下のような開きが生じる可能性があります。
死亡者の立場 |
任意保険基準(推定) |
弁護士基準 |
一家の支柱 |
1,500万~2,000万円 |
2,800万円 |
配偶者、母親 |
1,500万~2,000万円 |
2,500万円 |
上記以外 |
1,200万~1,500万円 |
2,000万~2,500万円 |
死亡逸失利益とは、交通事故に遭わなければ受け取れるはずだった、将来分の収入のことを指します。以下のように、被害者の収入や年齢などをもとに計算されます。
基礎収入額×(1―生活費控除率)×就労可能年数に対応する中間利息控除 |
ただし死亡者が子供のケースではまだ就労年齢に達していない場合も多いです。この場合には、就労年齢に達した年齢を起算点として、平均年収(賃金センサス)をもとに就労可能年数までの想定賃金額を計算するのが通常です。詳しい計算方法については、以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
交通事故の加害者には、葬儀や埋葬のために実際に要した費用なども請求できます。ただし各計算基準によって請求できる範囲は異なりますので、必ずしも全額支払ってもらえるとは限りません。あくまで目安ですが、以下の範囲を超える部分については自己負担となります。
請求できる葬儀代の限度額 |
|
自賠責基準 |
60万円(原則) |
任意保険基準 |
保険会社ごとで異なるが、自賠責基準と弁護士基準の間というケースが多い |
弁護士基準 |
150万円(原則) |
母親のお腹の中の子供(胎児)について、あくまで法律上では「一人の人間」ではなく「母親の一部」として考えられています。したがって交通事故で胎児が死亡したからといって、胎児について別途の賠償金を求めることは理論的には困難です。
ただし「交通事故によって胎児が死亡した」という因果関係が認められた場合には、胎児を亡くしたことで母親が負った精神的苦痛が考慮されて、母親への慰謝料が増額されることはあり得ます。
交通事故で支払われる慰謝料などの賠償金は、さまざまな事情を考慮した上で判断することになりますので、ケースによって金額は大きく異なります。ここでは、死亡事故の被害者が子供の場合の裁判例を3つ紹介します。
8歳の男の子が自転車で駐車場から道路に侵入した際に加害者のトラックにはねられ、脳挫傷や頭蓋底骨骨折などの重傷を負って事故の翌日に亡くなってしまったというケースです。 裁判所は「事故現場の道幅は約4.5mと狭く、さらに制限速度が時速20kmと定められていたにもかかわらず、加害者は時速40kmという速度で安全確認が不十分な状態で走行していた」として、速度違反や安全確認不十分などの過失があることを認めています。また一方で、被害者についても「道路侵入時に一時停止を無視していた」として過失があることを認めており、双方の過失割合を「15(被害者):85(加害者)」としています。 また慰謝料の算定にあたっては、加害者が制限速度を超過して走行していた事実や、突然被害者を失ったことで被害者の両親や兄に生じた精神的苦痛などが考慮されており、合計2,800万円(被害者本人:2,300万円、被害者の両親:各200万円、被害者の兄:100万円)の請求が認められました(参考判例:東京地裁平成19年9月19日判決、Westlaw Japan 文献番号 2007WLJPCA09196003) |
3歳の男の子が乗車する乗用車が交差点で加害者の乗用車に衝突され、脳挫傷などの重傷を負って事故後まもなく亡くなってしまったというケースです。 裁判所は「事故当時、加害者側の信号は赤だったにもかかわらず、加害者は考え事をしていたため気付かずに信号無視を犯していた」として、前方不注視や信号無視などの過失があることを認めています。また一方で、乗用車を運転していた被害者の父親についても「チャイルドシートを装着せずに被害者を乗車させていた」として過失があることを認めています。 ただしこのケースでは、加害者が事故現場の約252m手前を走行していた時点で、加害者側の信号が赤に変わっていたことから「少しの注意さえ払えば信号を確認できたにもかかわらず、一切気付かずに注意散漫な状態で5秒以上も走行していた前方不注視の程度は著しい」として、加害者の過失を100%としています。 また慰謝料の算定にあたっては、加害者が信号無視を犯していた事実や、死の理解すら難しい3歳という若さで亡くなった被害者の肉体的・精神的苦痛が大きいこと、被害者の両親や兄姉に生じた精神的苦痛などが考慮されており、合計2,840万円(被害者本人:2,200万円、被害者の両親:各300万円、被害者の兄姉:各20万円)の請求が認められました(参考判例:大阪地裁平成20年3月13日判決、Westlaw Japan 文献番号 2008WLJPCA03136003)。 |
幼児用自転車を運転する5歳の男の子が、信号機のない交差点に侵入した際に加害者の乗用車にはねられ、脳挫傷の重傷を負って事故後まもなく亡くなってしまったというケースです。 裁判所は「事故現場では制限速度が時速30kmと定められていたにもかかわらず、加害者は考え事をしていたため気付かずに時速約50㎞という速度で走行していた」として、加害者には速度違反や前方不注視などの過失があることを認めています。また一方で、被害者が運転していたのが幼児用自転車であることから「被害者を歩行者」とみなした上で、「十分に周囲の安全を確認していなかった」として、被害者にも過失があることを認めています。 ただしこのケースでは、加害者が制限速度を約20㎞超過していたことや前方注意を著しく欠いていたこと、被害者が幼児であることなどを踏まえて、加害者の過失を100%としています。 また慰謝料の算定にあたっては、加害者が制限速度を超えて運転していた事実や、突然被害者を失ったことで被害者の両親や弟に生じた精神的苦痛などが考慮されており、合計3,100万円(被害者本人:2,400万円、被害者の両親:各300万円、被害者の弟:100万円)の請求が認められました(参考判例:京都地裁平成24年10月24日判決、Westlaw Japan 文献番号 2012WLJPCA10246005)。 |
交通事故で示談交渉する際は、注意すべきポイントが3つあります。以下でそれぞれ解説していきます。
過失割合とは「交通事故の被害者と加害者それぞれの過失(責任)の割合」のことで、よく「50対50」「50:50」などの形で示されます。「被害者が歩行者」というケースでは、被害者の過失が0とされることも多いようですが、歩行者側に無視できない過失が認められる場合には100:0で処理しないことも多々あります。
被害者にも過失がある場合、加害者に対して請求できる金額は「被害者の過失割合分を差し引いた金額」となります。つまり「被害総額100万円、過失割合30(被害者):70(加害者)」の場合、100万円を全額請求することはできず、被害者の過失割合分30万円を差し引いた70万円を請求することになります。
このように、過失割合によって受け取れる賠償金は変動しますので、示談交渉にあたって過失割合の取り決めは大きなポイントとなります。なお取り決める際は、事故状況が類似する判例を基準にして行うことになりますが、少しでも対応に不安がある方は弁護士に依頼するのが有効です。
示談交渉を行う際、くれぐれも安易に示談成立に応じることは避けるべきです。なぜなら交通事故で示談が成立することは「問題解決」を意味するからです。一度示談が成立してしまうと、示談内容を変更することは原則できなくなりますので、追加で賠償金を請求しようとしても基本的に認められません。
相手から言われるがまま示談を成立させてしまった場合、大きな後悔が残ってしまうこともあり得ますので、十分に考えた上で示談に応じることです。なお示談が成立した後では、たとえ弁護士に依頼したとしても対応できることはほとんどありません。弁護士への依頼を考えている方は、示談が成立する前に依頼しましょう。
交通事故の賠償金を請求できる期間には時効が定められており、時効期間は3年(加害者が不明の場合は20年)です。ただし民法が改正されたことで、2020年4月1日以降に起きた人身事故については「加害者が判明してから5年(加害者が不明の場合は20年)」となりますので知っておきましょう。
なお以下のように、時効を数え始めるタイミングは事故の種類によって異なりますので、これもあわせて知っておきましょう。死亡事故であれば「被害者が死亡した次の日」からスタートします。
時効までのカウントダウンが始まるタイミング |
|
物損事故 |
交通事故発生の翌日より起算 |
人身事故 |
交通事故発生の翌日より起算 |
後遺障害 |
症状固定の翌日より起算 |
死亡事故 |
被害者死亡の翌日より起算 |
交通事故で賠償金を請求する際は、弁護士に依頼することでさまざまなサポートが受けられます。ここでは、弁護士に依頼するメリットについて解説していきます。
交通事故で受け取れる死亡慰謝料は「どの計算基準で請求するのか」によって金額が大きく異なります。なるべく多くの金額を受け取りたいのであれば弁護士基準で請求するのが有効でしょう。
加害者側の保険会社は弁護士が介入した場合、弁護士基準での慰謝料算定について特に異論を述べることはありません。そのため、弁護士に依頼した方が、弁護士基準での慰謝料請求をスムーズに済ませられます。場合によっては、ほかの計算基準で請求する場合と比べて相当に増額できる可能性もあります。
交通事故で受け取れる賠償金は過失割合によって大きく変わります。しかし交通事故の知識がない素人では、相手保険会社から「被害者30:加害者70としましょう」などと提示されても、そもそも提示内容が妥当なのか判断できない可能性がありますし、根拠をもって反論することも難しいでしょう。
弁護士に依頼すれば、事故状況に応じた的確な過失割合の判断が望めます。さらに過失割合に関する交渉も依頼できますので、相手保険会社の提示内容について反論してもらって過失割合が見直される、ということもあり得ます。
交通事故では慰謝料の金額や過失割合など、さまざまな事項について相手と交渉して決めていくことになります。また示談交渉が難航した場合は裁判へと発展することもあり、子供を亡くして間もない状態でこれらの対応を行うのは精神的にも厳しいものがあるでしょう。
弁護士には、示談交渉や裁判対応など事故後の手続きをすべて依頼することができます。依頼後は弁護士からの報告を待つだけで済みますので、相手と顔を合わせる必要もありません。このように、事故対応の負担から解放される点も弁護士に依頼するメリットの一つです。
死亡事故では賠償金が数千万円以上となることもありますので、特に過失割合の交渉や各損害額の算定などは注意して対応する必要があるでしょう。しかし突然子供を亡くして事故対応の経験もない方にとっては、大きな負担となってしまうことも予想されます。
弁護士であれば相手との交渉をすべて代わってくれますし、慰謝料の請求や過失割合の交渉などを代わりに行ってもらうことで賠償金が増額することもあり得ます。事務所によっては無料相談できるところなどもありますので、まずは一度相談することをおすすめします。
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