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公開日:2020.7.13  更新日:2020.9.15

交通事故で治療費の打ち切りを保険会社から宣告された際の対応まとめ

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事

交通事故の被害者であれば、加害者側の保険会社に対して治療費を請求する権利があります。実務的には、加害者が任意保険に加入している場合、被害者の治療費は任意保険会社が立て替えて負担します。

しかし治療期間が長引くと、保険会社から「これ以上の通院については立て替え払いを行わない」として、治療費の立て替えを拒否されることもあります。

もちろん、保険会社が治療費の立替を終了しても、被害者が治療費を自己負担して治療を継続することは可能です。また、この場合、立替払い終了後の治療行為と事故との因果関係が認められれば、自己負担分の治療費を相手保険会社に請求することも可能です。

このように、保険会社から治療費の立替終了を通知されても、被害者に直ちにダメージが生じることはありませんし、その時点で治療を終了しなければならないわけでもありません。この記事では交通事故の治療費について、保険会社から立替払いを終了する旨通知された際の対処法等を紹介します。

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治療費打ち切りとは

人身事故の加害者が任意保険に加入している場合、被害者の入通院の費用は、とりあえず加害者側の保険会社が立替払いするという処理が一般的です。結果、被害者は、当面は費用面での負担を心配せずに、治療を受けることができます。しかし、治療期間が長引くと、加害者側保険会社から連絡が来て「治療費の立替払い対応を打ち切りたい」と伝えられるケースは珍しくありません。
 
この場合、被害者側でも通院の必要性を感じない場合には、特に問題はありません。しかし、被害者側においてまだ治療を継続したいという場合、保険会社の対応に納得できないとしてトラブルとなることがあります。
 
もちろん、保険会社からの連絡はあくまで立替払対応の終了であり、被害者が自己判断で通院を継続することは許容されますし、当該継続的通院について事故との因果関係が肯定されれば、保険会社に補償を求めることは可能です。

治療費の打ち切り宣告がされる状況

保険会社からの治療費についての立替払対応の終了が通告されるのはどのような状況なのでしょうか。
具体的には以下のような場合に保険会社から当該通告を受けるケースが多いと考えられます。
 

治療期間が長期に亘る場合

保険会社は、負傷の種類に応じて治療期間についての一定の目安を持っています。例えば、他覚所見のないむち打ち症状であれば、通常は1~3ヶ月で軽快し、どんなに重くても3~6ヶ月内には軽快するという目安があります。この目安を超えて治療が長引いている場合、保険会社としてこれ以上の通院の必要性を認めることができないとして、治療費の立替払いを終了することは多いです。

前回治療との間に期間が空いている場合

交通事故で負傷し、通院治療を要する場合、通常は定期的な通院が継続されます。そのため、これまで定期的に通院していたものがある一定のタイミングで途切れたような場合、保険会社として治療終了とするべきタイミングであると判断することがあります。

よって、直前の治療日との間が例えば1ヶ月以上空いてしまったような場合には、保険会社からこれ以上の通院の必要を認めないとして、治療費の立替払いを終了する旨通知されることも珍しくありません。

治療費の打ち切り対応は撤回できるのか?

保険会社は、一度立替払い対応を終了する旨決定した場合、容易にその判断を変更することはありません。しかし、担当主治医が治療継続の必要性を強く主張したり、弁護士を通じて具体的な治療計画・治療方針を説明することで、当該決定を撤回する可能性もゼロではありません。
 
そのため、保険会社から立替払いの終了を打診された場合、すぐに担当医や弁護士に相談することで、立替払い対応終了までの期間が延長されることはあり得ます。

治療費の打ち切りを通知された場合の対応方法

ここでは、保険会社から治療費の打ち切りを通知された場合の対処法をご紹介します。

担当医から保険会社へ治療の必要性を説明してもらう

保険会社が当該対応を行うのは、保険会社側で「治療の終了時期として妥当」と考えているためです。もっとも、治療を終了するべきかどうかは、本来的には治療の状況を踏まえて担当医と患者が協議して決めるべき事柄です。

そのため、担当医が「まだ治療効果がある」と考えており、患者も治療継続を希望しているという場合、担当医が保険会社に治療継続の必要性を説明して、立替払いの継続を打診してくれることが稀にあります。

したがって、もし保険会社から当該通知を受けた場合、まずは担当医にその旨伝え、上記対応が可能かどうか相談してみても良いかもしれません。

もっとも、このような対応をしてくれる医師は稀ですし、医師が打診しても保険会社側の判断が覆るとは限りませんので、あまり期待しない方がよいかもしれません。下記のとおり、自己負担で治療を継続する方法もありますので、この点に拘る必要もないでしょう。

自費で治療を続けて後から後日自己負担分を請求する

保険会社が治療費の打ち切りをしてもそれ以降の治療を受けてはならないわけではありません。したがって、被害者は自ら治療費を負担して、必要な治療を継続することができます。この場合に負担した治療費は、当該治療と交通事故との因果関係が認められる限りで、後日、加害者側保険会社に請求することができます。

したがって、保険会社からの通知を受けた後も「治療を継続する必要がある」と考えるのであれば、自費で治療を続けて、その間の領収書を取っておくとよいでしょう。このとき気をつけなければならないのは、自由診療のまま治療を受けると治療費が莫大になる可能性があるということです。

自己負担で通院を継続するのであれば、健康保険を利用して通院するようにしてください。

また、後日請求が可能なのは、あくまで「交通事故との因果関係が認められる範囲」に限られます。自身では治療継続が必要であると考えていても、客観的に必要な治療とは認められない場合には、当該因果関係が否定され、自己負担した治療費を加害者側保険会社に請求することはできませんので、この点も気をつけましょう。

治療費を立て替える余裕がない場合

治療費を立て替える余裕がないという方については、「人身傷害保険」や「仮払金制度」といった各種サービスの利用が可能かを検討すると良いでしょう。

まず人身傷害保険とは、人身事故によって発生した治療費や休業損害などの損害について、補償を受けられる保険を指します。利用しても等級が下がることもないため、もし現在加入しているのであれば、利用の可否について保険会社に確認すると良いでしょう。

次に仮払金制度とは、一定の支払事由が認められる場合に、加害者側の自賠責保険会社が一定の仮渡金を先払いしてくれる制度です。ただ、利用可能な範囲は相当に限定されているので、必ずしも当該制度の利用が可能なわけでもないことは注意しましょう。

仮渡金額

条件

290万円

  • 死亡者がいる

40万円

  • 脊柱の骨折で脊髄を損傷したと認められる症状を有する場合
  • 上腕または前腕骨折で合併症を有する場合
  • 大腿または下腿の骨折
  • 内臓破裂で腹膜炎を起こした場合
  • 14日以上入院を要する傷害で30日以上の医師の治療が必要な場合

20万円

  • 脊柱の骨折
  • 上腕または前腕の骨折
  • 内臓破裂
  • 入院を要する傷害で30日以上の医師の治療を必要とする場合
  • 14日以上の入院を必要とする場合

5万円

  • 11日以上の医師の治療を要する傷害を受けた場合

後遺症が遺った場合には後遺障害申請を行う

交通事故の負傷について治療を尽くしても一定の後遺症が残ったような場合は「後遺障害慰謝料」「逸失利益」などを請求できる場合があります。

加害者側保険会社に対して当該補償請求をスムーズに行うのであれば、必要書類を準備して後遺障害申請を行い「後遺障害」として認定を受けることを検討するべきでしょう。

後遺障害に対する補償額は、負傷に対する補償額に比して相当に大きいため、もし後遺症が遺ってしまったという場合には、当該処理を積極的に検討するべきでしょう。

弁護士を通じて保険会社と交渉する

事故後の対応については、弁護士が心強い味方となります。

ご自身で対処してうまくいかない場合でも、弁護士に依頼し、弁護士を通じて立替払期間の延長を交渉することで、保険会社が終了時期を後ろ倒しにすることもあり得ます。もし、保険会社の立替払期間を伸長したいのであれば、弁護士への依頼を検討しても良いでしょう。

また弁護士であれば、仮に後遺障害申請が必要となったり、保険会社と示談協議をする必要となった場合も、対応を一任できます。事故対応にかかる肉体的・精神的負担も大幅に軽くなるでしょう。

なお、依頼にあたっては弁護士費用がかかりますが、弁護士が交渉することで慰謝料の増額も見込めるので、収支的にはプラスになる可能性も十分にあります。

治療費の打ち切りまでの期間の目安

ここでは、治療費の立替払終了時期について解説します。

むちうち(頸部・腰部捻挫)等の場合

むちうちや打撲は交通事故の典型的傷害ですので、保険会社は過去の蓄積から、治療に要する期間について一定の目安があります。

保険会社の治療終了の判断基準

打撲

1ヶ月~3ヶ月

むちうち

3ヶ月~6ヶ月

したがって、上記期間が経過した時点で保険会社から治療の終了を促されることもあるでしょう。

通院を怠ってしまっている

一定時期以降の通院頻度が極端に少なくなったり、治療を一定期間やめてしまったという場合、治療の必要性について疑問が生じるのは当然です。このような場合、「最終通院日以降の通院の必要性が認め難い」としてそれ以降の治療費負担を拒否されることがあります。

特に、通院と通院の間が1ヶ月以上空いてしまっているような場合は、通院と事故との因果関係について否定的見解を持たれてしまう可能性が高く、裁判所も同様の判断をする可能性が高いです。

治療費を打ち切りされた際の注意点

ここでは、保険会社から治療費の立替払いを終了すると通知された際に、注意すべきことを3点ご紹介します。

交通事故で保険会社に治療費打ち切りをされた際の注意点

自己判断で治療をやめない

保険会社の担当者は必ずしも医学的な根拠に基づいて「治療を終了するべき」と主張しているとは限りません。したがって、保険会社から「もう治療は十分だろう」と示唆されても、必ずしも治療終了のタイミングとして適切かどうかはわかりません。

この場合、まずは担当医に治療継続の必要性や意味について相談し、今後治療を継続するべきかどうかについて医学的観点からアドバイスをもらうべきでしょう。

示談には安易に応じない

交通事故における示談とは、補償条件(損害賠償の金額)を決めて和解する行為です。保険会社は治療終了の打診をすると供に示談に向けた協議を申し入れてくるのが通常です。

示談は一度明確に成立した場合、後日「やっぱり気が変わった」と言っても一方的な内容変更は認められません。そのため、示談に応じてしまうと、それ以降に通院等をしても追加で補償を求めることはできなくなってしまいます。安易に示談に応じてはならないのはこのためです。

感情的な対応は取らない

正しいか間違っているかは別として、保険会社が治療終了時期と判断をしたのには、それなりの根拠があります。被害者がどんなに声を荒げて反論しても、それのみで保険会社の判断が覆ることは考え難いです。

むしろ、被害者側が感情的な対応に終始し、高圧的な態度を繰り返すような場合、保険会社の対応も強硬となる可能性もあります。このように、感情的に対応してもうまくいかないことがほとんどでしょう。

治療費の打ち切りによる慰謝料への影響

保険会社からの治療費打ち切りによる慰謝料への影響

保険会社の立替払いの終了は、あくまで保険会社の内部処理の問題であり、被害者の損害賠償請求権には直ちに影響しません。

しかし、保険会社が立替払い対応を終了した場合、保険会社から提示される補償額は、あくまで当該終了時点までの治療行為についての補償に限定されているのが通常です。
 
この場合、被害者として立替払対応終了後も通院を継続しているのであれば、当該継続的な通院も含めて補償を求めていくことになります。
 なお、保険会社からの対応終了の連絡を受けて、実際に治療そのものを中止してしまった場合には、何らか症状を覚えていたとしても通院治療に関する補償は当該中止時点までが限界となりますので、注意しましょう。

治療期間で加害者に請求できる慰謝料が変わる|相場一覧

加害者に請求できる慰謝料の一つとして入通院慰謝料がありますが、入通院慰謝料は治療期間に応じて計算されます。

なお慰謝料の請求にあたっては、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準という3つの計算基準があり、どれが適用されるかによって相場額が異なります。この3つのうち、自賠責基準が最も安く、一般的に保険会社はこの基準で慰謝料等を計算します。逆に弁護士は、弁護士基準で計算するため、金額を増額することが可能です。

ここでは、入通院慰謝料の請求額の相場をご紹介しますので、請求時の一つの目安としていただければ幸いです。

通院3ヶ月のケース

上記のようなケースの場合、入通院慰謝料の相場としては以下の通りです。

慰謝料種類

請求額相場

自賠責基準 (週2回・月8回の通院と仮定)

20万1,600円

任意保険基準 (推定)

37万8,000円

弁護士基準 (他覚症状のないむちうちの場合)

53万円

弁護士基準

73万円

通院5ヶ月のケース

上記のようなケースの場合、入通院慰謝料の相場としては以下の通りです。

慰謝料種類

請求額相場

自賠責基準 (週2回・月8回の通院と仮定)

33万6,000円

任意保険基準 (推定)

56万8,000円

弁護士基準 (他覚症状のないむちうちの場合)

79万円

弁護士基準

105万円

入院3ヶ月+通院3ヶ月のケース

上記のようなケースの場合、入通院慰謝料の相場としては以下の通りです。

慰謝料種類

請求額相場

自賠責基準 (週2回・月8回の通院と仮定)

75万6,000円

任意保険基準 (推定)

102万円

弁護士基準 (他覚症状のないむちうちの場合)

128万円

弁護士基準

188万円

まとめ

保険会社から治療費の立替払いを終了する旨連絡が来たからといって、必ずしも治療を諦める必要はありません。このような場合、上記で記載した内容を参考にしつつ、落ち着いて行動しましょう。

また弁護士であれば、治療費の打ち切りに関する対応だけでなく、後遺障害申請・示談交渉なども任せられますので、怪我の治療に専念できる上、獲得金額の増額なども期待できます。問題や不安を抱えている方は、一度相談してみましょう。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事は交通事故弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※交通事故弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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