交通事故や自転車事故など、事故はいつ起きてしまうか分からないものです。弁護士費用を用意できず泣き寝入りとなってしまうケースも少なくありません。
ベンナビ弁護士保険は、弁護士依頼で発生する着手金を補償する保険です。
交通事故だけでなく、自転車事故、労働問題、離婚、相続トラブルなど幅広い法的トラブルで利用することができます。
弁護士保険で法律トラブルに備える
「交通事故の治療費は自分で立て替えないといけない?」「健康保険は利用できない?」など、初めて事故の治療を受ける際、治療費の処理をどのようにすればよいのかわからず不安を感じる方も多いかと思います。
交通事故により負傷した場合の治療費は、加害者側に請求することになりますが、請求先や請求額はケース・バイ・ケースの部分もあります。安心して治療を受けるためにも事故後の対応について知っておきましょう。
この記事では、交通事故により負傷した場合の治療費の処理について簡単に解説します。事故の被害に遭って入院・通院している方は、参考にしてみてください。
被害者は加害者に対して治療費を請求する権利がありますが、請求できる範囲は事案ごとに個別に検討する必要があります。まずは一般的に、治療費として請求の対象となる範囲を確認しておきましょう。
基本的に怪我の治療のために必要と認められる費用が請求の対象となります。例として、手術費用・初診再診費用・検査費用・投薬注射費用・処方箋料など、病院での治療行為に要した費用は請求対象です。
治療費が請求の対象となるかどうかは、事故の治療として必要性・合理性があるか否かという点がポイントとなります。病院の医師による治療は、治療期間が過剰に長くなっているなどの特段の事情がなければ問題なく請求対象となるでしょう。
また整骨院や接骨院での治療であっても、病院で負傷している旨が診断されており、かつ、施術の時期や頻度が適正なものであれば、やはり治療のために必要として請求対象となるケースが通常と思われます。
しかし、医師の診断を受けていなかったり、医師が明確に反対しているのに施術を受けていたりという場合には、整骨院や接骨院での治療が請求対象外と判断されることもあります。そのため、整骨院や接骨院での治療を検討している方は、少なくとも月1回程度は医師の診断を受けて負傷の状況を確認してもらったり、医師に相談した上で施術を受けることを検討するべきでしょう。
交通事故後の治療費が請求対象となるのは、あくまで交通事故で負傷したことと因果関係がある範囲に限られます。そのため、例えば、事故発生前から患っていた持病の治療にかかった費用などは、事故とは関係のない治療行為であるとして請求対象とはなりません。
また、負傷の程度に比して通院期間が過剰に長い場合に生じた費用や、治療効果が明確でない民間療法(ヨガやヒーリングなど)に要した費用も、交通事故で負傷したこととの因果関係が否定される可能性があり、この場合には請求対象外となります。
交通事故により生じた治療費のうち請求対象となるもの、ならないものは上記のとおりです。そして、請求対象となる治療費についても、請求できる範囲には当然限界があります。ここでは、請求できる治療費についての注意事項を紹介します。
交通事故の治療費が請求できるのは、治療として必要かつ合理的な範囲に限られます。治療により負傷が治癒(これ以上治療を続けても症状が軽快しない状態)となった場合には「それ以降の治療行為は必要のない治療」と評価されます。そのため治療費として請求できるのも、この治癒(症状固定)までとされています。
この症状固定となるタイミングは、負傷の内容や経過により様々であり一概にはいえません。通常は、担当医と治療の見通しや効果について相談しながら、妥当なタイミングを判断することになります。
なお患者が要望する場合には、治療効果の有無に関わらず治療を継続することを勧める医師は少なくありません。そのため、症状固定のタイミングを相談する場合には、自分が治療を続けたいかどうかよりも、現在の治療に効果があるかどうか、あるとしてその程度はどの程度かという点を重点的に説明してもらうようにしましょう。
そして、現在の治療を続けても効果があるかは明確でないということであれば、症状固定として治療を終了することも検討するべきでしょう。
自賠責保険は自動車の所有者が強制的に加入させられる保険です。自賠責保険では、傷害に関する賠償金の上限が120万円までとなっているため、「治療費が120万円を超えてしまうと請求できなくなる」と誤解されることもあります。
しかし120万円という上限は、あくまで自賠責保険が補償する賠償金の限度額であり、民事的な責任とは直接関係がありません。そのため、被害者に対して請求するべき金額が120万円を超える場合には、当然、加害者にこれを請求できます。
例えば、必要な治療が長期間となり、治療費が120万円を超えてしまったとしても、加害者本人または加害者側の任意保険会社に対して請求することは可能ですので、安心してください。
交通事故では、必ずしも加害者の過失(責任)が100%になるとは限らず、被害者にも一定の過失が認められるケースも多々あります。
このように、加害者、被害者双方に事故の過失がある場合、被害者が加害者に請求できる賠償額は、加害者の責任の範囲に限定されます。このように、当事者の過失割合に応じて賠償金を調整することを過失相殺と呼びます。
例えば、過失割合が「被害者:20、加害者:80」という事故の場合に、被害者について治療費として50万円の費用が生じたとします。この場合、被害者が加害者に請求できるのは50万円の80%である40万円に限定され、被害者の過失分20%にあたる10万円は自己負担となります。
実際の交通事故の場面では、以下いずれかの方法で治療費を処理するケースが多いようです。
加害者が任意保険に加入している場合には、加害者側の保険会社が治療期間中の治療費を立て替えるのが通常です。そのため、治療時に交通事故の治療であることを伝え、相手保険会社の担当者の連絡先を伝えておけば、病院側は相手保険会社に直接請求しますので、被害者がいちいち支払い処理をする必要はありません。
交通事故の過失割合で加害者・被害者が対立している場合には、相手保険会社が治療費の立替を拒否することがあります。また、加害者がそもそも任意保険に加入していない場合には、保険会社による立替は行われません。このような場合には、被害者が治療費を一時的に負担し、負担した治療費を加害者側に請求することになります。
このような場合には後日のスムーズな請求のためにも、実際にいくら支払ったのか証明する領収書を保管しておきましょう。もし保管していなくても病院に再発行や明細書の発行を依頼できますが、病院から対応を渋られる可能性もありますので、最初からきちんと保管しておく方がベターです。
交通事故の治療で健康保険を活用するとどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
加害者側の保険会社から治療費の立替払い対応を打ち切りされたケースでも、自己判断で通院を継続することは可能です。この場合、交通事故との因果関係が肯定される範囲について、自己負担した治療費を加害者に請求することができます。
もちろん、この場合、自己判断での通院費は一次的に自身が負担することになりますし、後日、因果関係が認められず加害者側に請求できない費用は持ち出しとなります。この場合に、自由診療で治療を継続していれば、自身の負担額が非常に大きくなってしまう可能性があります。
このような場合に健康保険を利用することで最終的な自己負担が増加するリスクを極力抑制することができます。
交通事故ではあまりないケースですが、健康保険の高額療養費制度が利用できる場合もあります。
高額療養費制度とは、同一月に支払った医療費が所定の上限額を超えた分を補填してもらえる制度です。
もし、大きな事故で高額の治療費がかかるという場合に、治療費を一次的に自己負担せざるを得ないという場合はこの制度の利用を検討してみては如何でしょうか。
交通事故について当事者双方に過失がある場合、被害者は発生した損害のうち自身の過失に相当する分は自己負担しなければなりません。この場合、仮に被害者が自由診療で長期間治療を続けた場合、治療費の自己負担分が過剰となり、最終的な手取り補償額が大幅に減ってしまうこともあり得ます。
また、加害者が任意保険に加入しておらず、強制加入の自賠責保険からの補償を受けなければならない場合、補償額には下表の通り上限があります。例えば、負傷に対する補償上限額は120万円です。仮に、仮に被害者が自由診療で長期間治療を続けた場合、120万円の大半を治療費が占めることになりかねず、この場合も補償に回される金額が目減りしてしまうことになります。
このような場合に健康保険を利用すれば、治療費そのものが抑制され、かつそのうち自己負担分のみが損失となりますので、治療費が過剰となるリスクを抑制できます。結果、治療費以外の部分について充実した補償を受けることができる可能性が高まります。
自由診療は、患者側が病院側で自由に設定する高額の医療費を負担する代わり、健康保険の適用対象外である新薬や最先端の治療を受けることができます。他方、健康保険を利用する場合は、患者側の治療費負担が一定のルールで規律されて抑制される代わり、保険適用が認められている診療方法に限定されます。
そのため、交通事故について特殊な治療や最先端治療を受けたいという場合、健康保険が適しないことがあり得ます。
ここまで交通事故の治療で健康保険を活用するメリット・デメリットについてご紹介しました。
では、交通事故の治療で健康保険を活用すべきケースはどのような場合なのでしょうか。
交通事故の過失割合に大きな対立があるような場合や治療の必要性に疑義が生じるようなケースにおいて、加害者側保険会社が治療費の立替払い対応を拒否することがあります。
また、加害者が自賠責保険や任意保険に未加入の場合、治療費の支払いを加害者に請求する必要があります。
加害者本人の資金力の問題等で、支払いが行われないケースもあります。
このような場合、自由診療で高額の治療費を発生させてしまうことはリスクが大きいため、健康保険の活用をお勧めします。
上記メリットで記載したように、加害者側保険会社が治療費の立替払い対応を打ち切った場合に、自己判断で治療を継続するのであれば、治療費の負担リスクを抑制する意味で、健康保険の活用を検討しましょう。
なお、保険会社による対応打ち切りはあくまで、保険会社内部の判断によるものであり、治療の必要性の有無を直ちに決するものではありません。この場合に自己判断で通院を継続するべきかどうかは、担当主治医に対し傷病の状況を伝えつつ、今後の治療方針や軽快可能性を確認しながら判断するべきでしょう。
これも上記メリットで記載しましたが、被害者側にも相当程度の過失がある場合も、被害者側で最終的に負担するべき治療費のボリュームを抑制する意味で、健康保険の利用を検討しましょう。
交通事故の治療で健康保険を活用するにはどのような注意点や方法を知っておくべきなのでしょうか。
健康保険の利用意思を医療機関に申し出ましょう。
医療機関によっては「うちは交通事故の場合は健康保険は使えない」とか「既に自由診療で治療を開始しているから健康保険への切替はできない」などと言われるかもしれませんが、そのようなことはありません。
交通事故でも健康保険の利用はできますし、自由診療で開始した治療を健康保険に切り替えることも可能です。もし医療機関が頑なに健康保険の利用を拒むのであればあまり優良な医療機関とはいえませんので、通院先を変更することも検討しましょう。
必須ではありませんが、健康保険を最初から利用する場合や保険会社の対応終了後に健康保険を利用して治療を継続する場合、その旨相手保険会社に一言伝えた方が親切ではあります。
被害者のなかには、自身で立て替えて支払うことが難しい方もいるかと思います。その際は、以下の対処法を検討しましょう。
人身傷害保険とは、人身事故により生じた損害について補償してくれる保険サービスです。被害者がこの保険に加入している場合には、契約する保険会社に問い合わせることで、加害者との示談前でも約定の保険金を受け取ることができます。この場合に支払われる保険金の額や保険料の取扱いについては、契約保険会社に確認してください。
被害の状況によっては、被害者は加害者の自賠責保険会社から仮渡金として一定額を先払いしてもらえる場合があります。下記のように支給要件と支給額はある程度厳格ですが、支給要件に該当すれば申請後すみやかに支払いが受けられるため、有用といえます。
事故の治療においても健康保険は利用することができます。厚生労働省が公表する「犯罪被害や自動車事故等による傷病の保険給付の取扱いについて」でも「事故を原因とする傷病は健康保険の給付対象である」との旨が述べられています。
この場合、所属する健康保険組合の「第三者行為による傷病届」を病院に提出するのがルールです。病院の中には「交通事故では健康保険は使えない」と断る病院も少なくないようですが、患者側が健康保険の適用を求めれば、病院はこれを拒否できませんので、強くお願いしてみましょう。
健康保険の利用は国から認められている権利です。必要書類もしっかり準備していれば、問題なく健康保険を利用できますので、覚えておきましょう。
交通事故の治療費は基本的に相手保険会社が立替処理をすると説明しましたが、治療期間が長引いてくると、相手保険会社から「これ以上の治療費は負担できない」と立替払いの対応を終了されてしまう場合もあります。ここでは、そのような治療費の打ち切りにあった際の対応などについて解説します。
保険会社が治療費の立替対応を打ち切る理由としては「治療のために必要な範囲を超えて治療費を負担することはできない」と考えているためです。保険会社は営利企業であり、慈善事業をやっているわけではありません。
そのため、被害者に支払う賠償金も適正と認められる範囲でしか負担できないという立場です。そのため被害者の強い意向で治療が継続されていたとしても、客観的に必要性に疑問があるような治療について、保険会社は治療費を負担することができないのです。
そのため、保険会社は傷病に比して治療期間が長引いているようなケースでは「これ以上の治療については必要性が疑問である」と判断し、治療費の立替払いを終了することがあるのです。このように治療期間が過剰と思われるケースのほかにも、通院頻度が極端に低く、治療と治療との間に相当の期間が空いているような場合も、治療の必要性に疑義を持たれる可能性があります。
上記のとおり、治療を続けるかどうかは、治療に効果があるかどうかにより判断するべきです。そして治療の経過には個人差がありますので、保険会社の判断が必ずしも適切とは限りません。そのため治療費を打ち切られたとしても、まだ担当医と相談した結果「治療を続ければ症状が軽快する具体的な見込みがある」と判断するのであれば、治療を続けるべきでしょう。
このように打ち切り後も治療を続ける場合、その間の治療費は被害者が負担することになります。そして、後日、打ち切り後も治療が必要な状態であったことを根拠をもって主張することができれば、そのように自己負担した治療費も加害者側に請求することができます。
なお注意点として、示談成立後に賠償金を追加請求することは原則できません。もし示談を済ませてしまった後に治療を再開したとしても、その際の治療費は原則自己負担となってしまいます。そのため、示談をするのは治療を終えてからの方が良いでしょう。
治療費の打ち切りについては、相手保険会社と交渉することで立替払いの期間が延長されることもあります。ただしこのような交渉にあたっては、今後の治療の見通し等も含めた協議を要するのが通常であり、素人が交渉を進めるのは難しいでしょう。
その点、弁護士であれば、豊富な知識・経験に基づいて保険会社と交渉してくれますので、結果、保険会社が立替払いの期間を延長する判断をすることはあり得ます。独自に交渉することが不安な場合は弁護士への依頼を検討しましょう。
また弁護士には、慰謝料の請求や過失割合の交渉、後遺症が残った際の後遺障害申請など、損害賠償請求で必要な手続きをすべて依頼できます。依頼後は怪我の治療だけに専念できる上、賠償金の増額なども期待できますので、まずは一度無料相談などを利用してみることをおすすめします。
交通事故の治療費については相手保険会社が立て替えるのが通常ですが、もし被害者が立て替えて支払う場合は、健康保険や人身傷害保険などを活用することで、ある程度負担を軽減することができます。
なお、もし相手保険会社から治療費の立替対応を打ち切られそうになっても、保険会社と交渉することで対応期間が延期されることもあります。弁護士であれば、このような交渉も含めて対応を一任できますので、事故処理の負担軽減や賠償金の増額などのメリットも望めます。
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