交通事故や自転車事故など、事故はいつ起きてしまうか分からないものです。弁護士費用を用意できず泣き寝入りとなってしまうケースも少なくありません。
ベンナビ弁護士保険は、弁護士依頼で発生する着手金を補償する保険です。
交通事故だけでなく、自転車事故、労働問題、離婚、相続トラブルなど幅広い法的トラブルで利用することができます。
弁護士保険で法律トラブルに備える
休業補償(きゅうぎょうほしょう)とは、交通事故によるケガ、病気等で会社を休み、給与の支払いを受けられないという場合に、加害者(加害者契約の保険会社)から受ける補填のことを言います。他方、労働者は会社の業務に従事するにあたってケガや病気になった場合、労働者災害補償保険法に基づき、得られなかった給与について一定の補填(休業補償給付)を受けることができます。
交通事故の加害者から受け取る補填も労災保険の手続きで受け取る補填も「休業補償」であることには変わりありません。しかし、両者は制度趣旨や補償内容が全く異なるので、混同しないように気をつけましょう。
すなわち、
交通事故補償として受け取る休業補償は、損害賠償金としての休業補償金
であるのに対し、
労災・通災補償として受け取る休業補償(休業補償給付)は、業務中又は通勤中の事故で病気等で欠勤等を余儀なくされた場合に法律上支払われる保険金
です。
前者は当事者間の損害賠償金であるのに対し、後者は国から支払われる保険金ですので、両者が全く違うことがご理解頂けると思います。本記事では、それぞれの位置づけおよび手続きについて解説します。
労災保険上の休業補償とは、労働者災害補償保険法に基づく制度で、
業務上の事由または通勤による負傷や疾病による療養
労働することができない
賃金を受けていない
この3つの要件を満たすことで、その第4日目から給付金が支給されると定められているものです。
第十四条 休業補償給付は、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第四日目から支給するものとし、その額は、一日につき給付基礎日額の百分の六十に相当する額とする。
引用元:労働者災害補償保険法 第14条
なお、労災補償給付を受けられるのは4日目からであり、3日目までは労働基準法に基づいて使用者(会社)が休業補償を行わなければならないとされています。
(休業補償)
第七十六条 労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。
引用元:労働基準法 第76条
交通事故における休業補償は、前述のとおり損害賠償金として受けられる補償です。このような損害賠償金を受ける根拠は、民法第709条や自賠責補償法第3条にあります。
具体的には、交通事故で通常の就労ができないことによる『収入減』を損害として構成し、これら法律の規定に基づいて加害者側に賠償を求めることとされています。
種類 |
概要 |
対象 |
---|---|---|
休業補償給付 |
業務上の事由または通勤による負傷や疾病で労働できず、賃金の支払いを受けていない場合に、第4日目から給付金が支給されるもの。 |
労災保険(労働者災害補償保険法) 労働基準法 |
休業補償 (休業損害) |
被害者が交通事故により労働することができないことによる損害を補填するもの。 |
民法・自賠責補償法 |
よく間違えるのは休業補償給付と休業補償の違いですが、それぞれ規定されている制度の種類が違うことを覚えておきましょう。また、休業補償(休業損害)は、自賠責保険の限度額を超えた部分に関しては加害者に対して請求することもできますが、労災保険や自賠責保険の活用して全額の損害を補っていた場合は、加害者へ別途請求することはできません。
休業補償給付は交通事故などで会社を休業した分の補償ですが、具体的な補償額の計算方法をご紹介します。
休業補償給付 = 給付基礎日額の60% × 休業日数
※なお、労災・通災の場面では、上記休業補償給付とは別に、休業特別支給金 = 給付基礎日額の20% × 休業日数が支給されます。
「休業日数」は、症状固定までに実際に休業した日数が基本ではありますが、必ずしも休んだ日数のすべてが含まれるとは限りません。負傷の程度からそれほどの休業は必要ないであろうという場合には、「休業日数」が合理的に休業が必要な期間に限定されることはあり得ます。
また「給付基礎日額」は、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額を言いますが、以下のように、事故直前の収入状況から計算するのが通常です。
事故前3ヶ月間の給与総額の平均
事故前1年間の給与を平均する場合
(季節により給与額の変動が大きい仕事の場合には、基礎収入額の算定に、直近3ヶ月ではなく、前年同期の収入を参考にすることがあります。)
仮に、事故直前の3ヶ月分の給与合計額が60万円で、交通事故で10日間休業した場合…
60万円÷90日(基礎収入額の算定では1ヶ月30日として計算するのが通常です) ≒ 6,667円
6,667×(10日-3日) ×0.6= 28,001円
※特別支給金は6,667円×7日×0.2=9,333円
まず、事業主(会社)に対して休業補償給付を受けたい旨を伝え、事業主が「請求書」を被害者に送付すると同時に医療機関から請求書に証明が行われます。その後、被害者自身が労働基準監督署に記載した請求書を送付すると、支給決定通知がなされ、厚生労働省から支払いが行われるという流れになります。
勤務中・通勤中に起きた事故の場合、労災保険から休業4日目以降の補償を受け取ることができます。なお、労働災害補償を受ける前に相手の任意保険から休業補償の支払いを受けていた場合、同支払分は支給額から減額されることになります。
※減額対象となる労災補償には、「休業特別支給金」は含まれないと考えられています。そのため、加害者からの休業補償を受けていても、特別支給金(20%の支給/支給予定分)は影響を受けません。
休業補償給付はあくまでも労働者の労働災害・通勤災害に対応する保険金です。そのため、主婦や無職者といった就労していない者には同制度の利用はできません。
交通事故の被害者が、加害者側に休業補償を請求できるのは、交通事故によって生じた怪我が原因で仕事を休むことを余儀なくされたという場合です。交通事故で入院した場合に休業補償を求めることができるのは明らかですが、通院やリハビリでも「仕事を休むことを余儀なくされた」のであれば、補償を請求できます。
たとえば、以下のようなケースが考えられます。
運転業務(トラック等運転手や営業など)を行う者が首のムチ打ち症状で左右の安全確認等が困難であり、運転そのものが困難な場合
頸部の痛みとともに激しい頭痛が頻繁に発生するため、出勤しても業務に従事することが困難な場合
手、指にしびれの症状が出ており、PCのタイピング作業や書類の作成作業が困難である場合
医師から継続的な通院やリハビリが必要であると特に指示されており、当該通院やリハビリのために就業時間の出勤が困難な場合
他にも色々なケースが考えられますが、交通事故の負傷により「仕事を休むことを余儀なくされた」場合であれば、請求が可能と考えてください。なお、仕事をしていない主婦や無職者についても休業補償を受ける可能性がないわけではありません。
主婦は家事労働者として、家事労働に係る価値を金銭評価した金額を受け取る余地がありますし、無職者は、就労意思と就労可能性を根拠をもって示すことができれば、休業補償を受ける余地はあります。
ただし、「仕事を休むことを余儀なくされた」か否かが医師の診断に基づくものでない場合は、相手方保険会社も休業補償の対象とすることに納得しないことが多いと思います。
特定の症状や状態について医師の診断がない場合は、休業の必要性について疑義が生じ、結果的に補償を受けることが難しいという場合は十分あり得ます。この点については、担当主治医とよく相談しましょう。
そのため、担当の医師には受診時に自分の症状及び同症状の下での就労が困難となる理由を、明確に伝えてください。
そして、これらを踏まえた医師の判断をカルテおよび診断書に明確に記録してもらうことが重要です。もしも、医師から「仕事を休む必要はない」と言われた場合、「仕事に行く事によって症状が悪化する、もしくは回復が遅れる可能性はないでしょうか?」と尋ねてみましょう。
「その可能性はある」ということであれば、その点を診断書に記載してもらってください。医師がそのような可能性を認めている中で、保険会社が「休業の必要はない」と断言することはなかなか難しいところがあるのではないかと思われます。
なお、保険会社に対して休業補償の請求をしても、必ずしも直ちに補償額を受け取れるとは限りません。保険会社において、提出された資料をもとに請求が正当か否かの審査を行いますので、補償を受けられるのは当該審査後です。
ただ、必ずしも示談交渉が終わるまで受け取れないということもないため、まずは必要な資料を準備して保険会社に提出することが肝要と言えます。
本来であれば休業補償の支払いを受けられるのに、書類の不備や知識の不足により正当な補償が受けられないというケースは十分にあり得ます。そもそも一般人は交通事故に遭ったことなどないのが通常であり、どのようにして補償を求めればいいのかも知らないのが通常です。
そのため、正当な補償を確実に受けるためには、弁護士等専門知識を有する者のアドバイスが有益と言えます。交通事故やその後の対応で苦しんでいる場合は、一人で無理をせず、ぜひ一度弁護士に相談してください。
交通事故で怪我をしてしまった際、慰謝料の他にも得られるものはあります。弁護士等の専門家に相談すれば、自分がどのような補償を受けられるのかについて、適切なアドバイスを受けられますので、泣き寝入りをしないようにしましょう。
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