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自転車事故で保険未加入の加害者に遭ったらどうする?裁判例と解決策を紹介

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
自転車事故で保険未加入の加害者に遭ったらどうする?裁判例と解決策を紹介

都内の交通事故全体で自転車事故が占める割合は、年々増加している傾向にあります。

引用元:都内自転車の交通事故発生状況

また、過去に高額な賠償額の支払いを命じた判例もあるため、自転車を運転する際に任意保険に加入することを義務付ける条例を制定する市も増えてきています。

金沢市は自転車利用者の自転車損害賠償保険加入義務化などを定める市自転車安全利用促進条例の改正案を9月4日開会の市議会9月定例会に提出する。自転車の絡んだ事故が増えていることが背景にあり、来年4月の施行を目指す。

引用元:朝日DIGITAL「石川 自転車保険加入は義務 金沢市が条例改正案提出へ」

しかしながら、統計データは無いものの、未だに自転車を運転する際に保険に加入しているケースは一般的ではないといえるのではないでしょうか。

もし自転車事故の被害者になってしまった際に、加害者が保険に加入していない場合は加害者に直接損害賠償の支払いを請求しなければならないなど、さまざまな問題があります。

この記事では、自転車事故の加害者が保険に加入していない場合の問題点とその解決策について解説します。

自転車事故の相手が保険未加入で悩んでいる方へ

自転車事故の相手が保険未加入の場合、直接相手に損害賠償請求することになりますが、交通事故の知識がないと慰謝料や過失割合などで揉めることもあります。

スムーズに済ませたい方は、弁護士に依頼することで以下のようなメリットが望めます。

  1. 事故状況に見合った額の賠償金を計算してくれる
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弁護士にサポートしてもらうことで、面倒な事故対応に時間を取られずに済みます。

一人で悩まずに、まずはお近くの弁護士にご相談ください。

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自転車事故の過去の裁判例

まずは、自転車事故の過去の判例を確認してみましょう。

自転車事故は車やバイクの事故に比べて一般的に運転速度等も遅く、賠償額が高額にならないイメージをもっている方もいるかもしれませんが、過去の判例では損害賠償額の算定方法は車やバイクの事故と変わりありません。

もし被害者が死亡してしまったり、後遺障害を負ってしまった場合には損害賠償額は多額になることが予想されます。

ここでは、過去の自転車事故の判例において損害賠償額が高額となった例を記載しておきます。

賠償額 事件番号 事故の概要
9,521万円 平23(ワ)2572号 男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、植物状態となって意識が戻らない状態になる。
神戸地方裁判所:平成25年7月4日に判決
9,266万円 平19(ワ)466号 男子高校生が昼間、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と正面衝突。男性会社員に言語機能の喪失が残る。
東京地方裁判所:平成20年6月5日に判決
5,438万円 平18(ワ)18455号 男性が昼間、信号無視をして高速度で交差点に進入。青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突。頭蓋内損傷で11日後に死亡を確認。
東京地方裁判所:平成19年4月11日に判決

上記のとおり、過去の判例では自転車事故において9,521万円の損害賠償額が認められた例もあります。

自転車事故といっても加害者に対して多額な損害賠償を請求することは可能になります。

自転車事故で加害者が任意保険に未加入だった場合の問題点

ここでは自転車事故において、加害者が任意保険に加入していない場合の問題点を記載します。

損害賠償額が払えない可能性がある

自転車事故において加害者が任意の保険会社に加入していない場合、損害賠償の請求は加害者に対して直接おこなわなければなりません。

そのため、もし加害者に財産がない場合などは損害賠償金が支払われない可能性があります。

示談がスムーズにおこなえない

交通事故の解決は、まずは示談交渉をおこなうことが一般的です。

もし示談の内容に納得いかない場合は裁判所での訴訟という形になります。

この示談交渉においても、加害者が任意保険に加入していない場合、問題があります。

損害賠償の算定が困難

示談交渉のもっとも重要なポイントのひとつは損害賠償額の算定ですが、その際には損害賠償額の費用の算定は加害者と被害者自身でおこなわなければなりません。

示談の際に請求できる損害賠償額は双方が納得していればいくらでも良いのですが、根拠もなく高い損害賠償を請求しても加害者が応じる可能性は非常に低いでしょう。

そのため、加害者と交渉をおこない妥当な損害賠償を算定する必要がありますが、法律的な知識を持ち合わせていない被害者と加害者との交渉では妥当な損害賠償額を算定することが困難になるといえます。

過失割合の算定が困難

事故の際には、加害者や被害者が一方的に悪いということはなく、被害者に対しても一定割合の過失がある場合が多いです。

その際には被害者と加害者の過失の割合に応じて、損害賠償額から控除をおこなうことになります。

自転車事故はまだ判例もとぼしいため、被害者・加害者同士での過失割合の算定は自動車事故に比べて困難だといえます。

後遺障害の認定が困難

自動車事故等の場合であれば、損害保険料率算出機構の自賠責調査事務所がおこないます。

自賠責保険調査事務所とは、事故被害者の自賠責保険における損害賠償額を算定するための機関です。

しかし、自転車においては自賠責保険がありません。

そのため後遺障害を認定するための機関もありません。

後遺障害の申請をおこない認定を受けると、後遺障害慰謝料や逸失利益を損害賠償として請求することができ、損害賠償額全体の増額を見込むことが出来ますが、後遺障害として認定されていない場合、示談交渉において後遺障害慰謝料や逸失利益の請求をおこなうことは困難になるといえます。

未成年者の場合では親が責任を負う

自転車を運転するのは、財産を持たない未成年である場合もあげられます。

未成年者が自転車事故の加害者になった場合には、民法上では親が監督義務者責任を負うことになります。

第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)
前2条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、
その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、
又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

引用元:e-Gov 民法714条

しかし、未成年者に責任能力が備わっていると判断される場合は、事故の加害者である未成年者に対して損害賠償の請求をおこなうことになります。

どの程度の年齢から責任能力が備わるかについては個別の判断となりますが、過去の判例からは小学校卒業程度となる場合が多いです。

つまり中学生以上であり、親が任意で損害賠償の責任を負わない場合には、加害者の未成年に対して損害賠償請求をおこなわなければならないということもあり得ます。

一般的に中学生は資産を持っているとは考えづらく、このような場合には損害賠償請求をおこなうことが困難となります。

自転車事故で加害者が保険に未加入だった場合の問題点の解決策

自転車事故において、加害者が任意保険に未加入だった場合の問題点を確認してきましたが、ではそれらの問題点をどのように解決すればよいのでしょうか。

ここでは加害者が保険に未加入だった場合の問題点の解決策を見ていきましょう。

損害賠償額が払えない可能性がある際の解決策

損害賠償額が払えない可能性がある場合には、いくつかの解決策があります。

状況別の解決策をみていきましょう。

示談書を作成する

示談交渉をおこない損害賠償の解決をおこなった場合には、示談書を作成してください。

もしこの示談書を「公正証書」にすることができれば、よりベターです。

公正証書とは、公証人が作成する公文書のことです。

公正証書に執行受諾文言を付していれば、相手が支払をおこなわない場合、裁判所の判決などの手続きを必要とせずに直ちに強制執行手続きに移ることができます。

強制執行の際には、土地や建物などの不動産に加えて、不動産以外の時計や宝石などの動産、さらに給与も差し押さえることができます。

民事裁判をおこなう

裁判にて加害者に対し損害賠償の支払いを命じる判決が出た際に、加害者が損害賠償を支払わない場合には被害者は「債務名義」で加害者に対して申立てをおこなうことができ、強制執行をおこなうことが出来ます。

分割で支払うこともできる

損害賠償は基本的には全額を一括で支払いますが、加害者・被害者双方の合意があれば分割で支払うことも可能です。

しかし分割にしても、支払いまでの期間や毎月の支払額を規定しておく必要があるため、示談などの際にはその旨を示談書に記載しておくようにする必要があります。

示談交渉がスムーズにおこなえない場合の解決策

損害賠償額や過失割合算定について被害者と加害者自身で示談交渉が困難な場合には、弁護士に示談交渉の依頼をすることをおすすめします。

損害賠償に関しては、請求できる項目が積極損害や消極損害、また慰謝料など多岐にわたりますが、弁護士に示談交渉の依頼をしておけば、妥当な額の慰謝料を算定してくれます。

また過失割合に関しても判例タイムズなどを基に、根拠のある適切な過失割合を算定してくれます。

その他の問題点の解決策

その他の問題点としては、後遺障害の認定が困難であることや支払い能力のない未成年が加害者である場合などがあります。

自転車事故の場合には自賠責保険が無いため、後遺障害の認定をおこなうことが出来ないことはお伝えしましたが、訴訟を起こした場合には、裁判所にて後遺障害認定受けることができます。

認定を受けることが出来れば被害者に対して後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することが出来ます。

しかし被害者個人で民事裁判をおこなうことは困難であるため、後遺障害認定のために裁判をおこなう際にも弁護士に依頼をするのがよいでしょう。

さらに被害者が未成年で責任能力はあるものの財力がない場合にも、弁護士に相談をしておくことで両親の債務引き受けなどの対策をおこなうことができます。

加害者が加入しておくべき任意保険

ここで、加害者が損害賠償の補償を受けるために加入しておくべき任意保険について確認しておきましょう。

自転車事故のために加入すべき保険としては、自動車の任意保険と同じような、自転車の任意保険か、個人賠償責任保険への加入がおすすめです。

自転車の任意保険は自動車と同じように契約の内容によって保障の内容が変わります。

個人賠償責任保険とは、自動車保険の特約として契約できることが多い保険です。

個人賠償責任保険では、日常生活で他人にケガをさせたり物を壊してしまった際に損害賠償金などを負担してくれる保険のことをいいます。

自動車事故の保険未加入に関するQ&A

加害者が保険未加入の場合に軽微な事故を弁護士に頼むメリットがある?

結論からいうと、弁護士特約で弁護士費用がカバーされる場合でない限り、弁護士に依頼をするメリットはほとんどありません。

加害者が保険未加入である場合、被害者は加害者に発生した損害について直接請求する必要がありますが、加害者が保険未加入の場合、加害者側がちゃんと支払いをするかわかりません。

加えて、事故が軽微な場合には、必然的に損害額も多額とはなりませんので、仮に加害者が何らか任意で支払いをするとしても、補償額はそれほど多額となりません。

そのため、このような事故を弁護士に依頼しても、費用倒れとなる可能性が極めて高く、メリットはほとんどありません。

もっとも、自身が契約する保険会社に弁護士特約が付帯されており、弁護士費用がかからないのであれば、弁護士に依頼することにデメリットはありませんので、積極的に弁護士に依頼するべきでしょう。

加害者に対して直接補償を求める場合のポイントを教えてください

加害者側と示談交渉をおこなうに当たり、最低限押さえなければならないのは、被害者側において損害の内容を特定し、適正な補償額を算定し、これを請求する必要があるといういことです。

よくある誤解として「自分は被害者なんだから、加害者側が責任をもってすべての処理をおこなってくれるはず」とか「被害者である自分は待っていれば、加害者側が自動的に補償をおこなってくれる」というものです。

自動車事故で、相手が任意保険会社に加入している場合には、上記はある意味正しいです。

しかし、自転車事故の場合には、そいうわけにもいきません。

多くの場合は被害者側が何もしなければ、加害者側も何もしません。

そのため、被害者は、自身の被った被害を明確にする資料(事故証明書、診断書、休業損害証明書等)を用意して、損害内容と損害額を特定し、加害者側にこれを提示・説明して補償を求める努力が必要です。

具体的には、警察に申請して事故証明書を取得する、通院先の病院に診断書や診療報酬明細書を作成してもらう、就労先に休業損害証明書を作成してもらう等の対応は最低限必要でしょう。

また、適正な補償額を請求するためには、治療をいつまで続けるのか、治療終了時点で何らかの後遺症が残った場合はどうするのか、仕事はいつ再開するべきなのか等の細かい点も正しい知識で処理しなければトラブルの基となります。

もし、このような対応について難しいと感じるのであれば、弁護士への相談を検討せざるを得ないかもしれません(弁護士特約が付帯されているのであれば、迷わず弁護士に依頼する方がベターです)。

示談交渉を弁護士に依頼する場合の費用はどれくらい?

弁護士への依頼の最大のデメリットは、上記のとおり費用が発生することです(弁護士費用特約があれば、軽微な自転車事故であれば、このデメリットはほぼゼロになります)。

では、弁護士に依頼した場合の費用はどれくらいかかるのでしょうか。

弁護士費用に関する名目毎の相場については以下のとおりです。

名目 費用相場
相談料 5千~1万円/時(無料の事務所も有り)
着手金 15万~30万円(無料の事務所も有り)
成功報酬 経済的利益の15~20%程度
(事務所によって経済的利益の考え方が異なることがあります)
日当・実費 ケース・バイ・ケース

上記はあくまで目安です。

報酬体系は事務所毎に異なりますので、依頼する場合には依頼先の弁護士にきちんと確認しましょう。

まとめ

自転車事故の被害者は、自動車事故の場合と基本的には同じ方法で慰謝料を算定します。

そのため自転車事故であることを理由に損害賠償額が減額されることはありません。

また、自転車事故特有の問題点が多数あるため、その対策として何か不安がある場合には弁護士に相談するようにしてください。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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