交通事故や自転車事故など、事故はいつ起きてしまうか分からないものです。弁護士費用を用意できず泣き寝入りとなってしまうケースも少なくありません。
ベンナビ弁護士保険は、弁護士依頼で発生する着手金を補償する保険です。
交通事故だけでなく、自転車事故、労働問題、離婚、相続トラブルなど幅広い法的トラブルで利用することができます。
弁護士保険で法律トラブルに備える
交通事故の被害者は、加害者側の保険会社と賠償金について交渉することが多いです。
交渉が不調となった場合には民事訴訟を起こして賠償金を請求することも検討せざるを得ません。
法的な知識・経験のない素人が民事訴訟を提起して手続きを進めることは一般的に難しいため、自力での対応を不安に覚える場合は「弁護士への依頼」も検討するべきでしょう。
本記事では、交通事故で示談不成立となった際の対処法や、加害者側が任意で賠償金を支払わない場合の対応、弁護士に依頼するメリットなどを解説します。
交通事故の示談に不安な方は、ぜひ参考にしてください。
自身が任意保険に加入している場合、被害者側にも過失のある事故であれば、契約する保険会社が示談交渉の対応をしてもらえます。
しかし、被害者側に過失のない又は被害者側が過失0を主張する事故の場合には、保険会社はこのような示談代行ができないので、被害者自身が対応することになります。
独自で示談交渉をおこなった結果、以下のように交渉不成立となることもあり得るかもしれません。
交通事故で請求できる賠償金としては、治療費や入院費など実際にかかった費用だけでなく、以下のような費用もあります。
それぞれ被害状況に応じて算定する必要があります。
特に慰謝料には3種類の計算基準があり、どれが適用されるかによって金額は変動します。
また、慰謝料以外の損害についても、双方の認識の違いから金額について争いとなることもあります。
このように双方が主張する賠償金額に乖離がある場合、結局話がまとまらず、示談不成立となってしまうことがあるのです。
交通事故では被害者と加害者の過失割合が何対何かというのも大きなポイントです。
被害者の過失が大きければ大きいほど、加害者に請求できる賠償金は少なくなります。
そのため、加害者側としては「被害者にも過失があった」という主張をすることは珍しいことではありません。
被害者側が自身の過失を0と主張する場合、過失割合の対立から交渉がまとまらないということはありえるのです。
一般的に、過失割合は事故態様から客観的に決まりますので、事故態様について双方の認識に乖離がある場合にこのようなことが起こりやすいといえるでしょう。
加害者側の交渉窓口が保険会社である場合には、相手と音信不通になったり不誠実な対応をとられたりなどはほとんどありません。
他方、加害者が無保険であり、加害者本人が交渉相手となる場合には、相手が真剣に対応しようとしなかったり、不誠実な対応を繰り返したりするということもまれにあります。
このような場合は、交渉そのものが難しく、協議がまとまらない可能性が高いといえます。
以下では示談がまとまらない場合の対処法を解説していきます。
独自に示談交渉をおこなったものの、なかなかうまくいかないという場合には、弁護士に代わりに交渉してもらうことで状況が好転することもあります。
交通事故トラブルの解決に注力する弁護士であれば、交通事故に関する知識・経験に基づいて、的確に示談協議を進めることが可能です。
たとえば、慰謝料や過失割合などで争いが生じており交渉が進まない状態であれば、被害者側の主張内容を法的に整理して提示してもらったり、加害者側の主張内容の誤りを指摘してくれたりということが期待できます。
結果、依頼者にとって有利な形で交渉を進めることができるかもしれません。
また加害者側が真剣に対応しないことから交渉が頓挫しているようなケースでも、弁護士が介入したことで危機意識を持ち、態度を改めるということも想定されます。
弁護士に依頼するか否かを問わず、加害者側との交渉がどうしてもまとまらないという場合は、民事訴訟を起こして法的手続で解決を図ることを検討せざるを得ません。
訴訟手続は、当事者双方が自身の主張を証拠とともに提出し、裁判所がこれを踏まえた裁定をおこなう手続きです。
また裁判所での解決は、判決による解決だけでなく、双方の話合いによる和解による解決も多いです。
当事者間の話合いでは解決しない場合には、訴訟手続を提起して、裁判所を交えたやり取りを行うことで、解決に至ることもあります。
ただし、民事訴訟を起こす場合、法的な知識・経験がある程度必要ですし、手続遂行にかかる労力も大きいです。
素人だけで対応するのはハードルが高くなるので、弁護士に依頼することをおすすめします。
ここでは、民事訴訟を起こす場合の流れについて解説していきます。
なお、裁判所が公表している「裁判所データブック2022」によると、手続きに要する期間としては平均10.5ヵ月、また判決によって終結したものに限ってみると平均14.6ヵ月でした。
まずは裁判を始めるために訴状と呼ばれる書類を作成して必要書類とともに裁判所へ提出します。
訴状は裁判所ホームページ「損害賠償(交通事故による物損)請求」からダウンロードでき、被害者と加害者の氏名・住所・連絡先、加害者に請求する内容、事故の状況などの事項を記載します。
また、提出先について請求金額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所へ提出することになります。
なお、裁判を申し立てるタイミングに特別なルールはありません。
そのため、必ずしも示談不成立となったタイミングでおこなう必要はなく、交渉途中で「このままでは示談が成立しそうもない」と感じた時点でおこなうことも可能ですし、最初から示談交渉をしないで民事訴訟を提起することも可能です。
ただし、民事訴訟はある程度重厚な手続きであるため、これをおこなうべきかどうかについては、一度弁護士と相談するなどして慎重に決めたほうがよいでしょう。
提出書類の内容に問題がなければ、裁判所は第一回目の弁論期日を決定したのち、加害者(被告)に対して訴状や証拠資料を送付します。
この手続きを送達と呼びます。
訴訟手続は、弁論期日又は弁論準備期日という手続きの中で当事者双方が主張・立証を積み重ねる形で進められます。
このような複数回の期日(手続き)を積み重ねることで、裁判所は事件の争点を明確にしつつ、争点に対する心証を形成していきます。
訴訟手続に時間がかかるのはこの期日が1〜2ヵ月の間隔で複数回おこなわれるためです。
なお、このような主張・立証はすべて書面でおこなう必要があり、当事者は準備書面という主張書面を提出し、これを裏付ける証拠書類を提出する必要があります。
このような書類作成も訴訟手続の負担のひとつです。
裁判所は弁論・弁論準備期日の中での主張・立証がある程度尽きた段階で、当事者双方に和解の提案をおこなうことが一般的です。
特に交通事故事件では、裁判所は書面での主張・立証で概ねの心証を固めるため、この時点で「判決になるとこうなるよ」という前提で、具体的な和解案の提示をしてくれることが多いです。
当事者が和解での解決に合意する場合には、その時点で和解が成立し、訴訟手続は終了します。
当事者が和解による解決を拒否した場合には、裁判所は判決に向けて心証を確定させる必要があります。
この場合、裁判所に当事者や証人が出廷して直接話をする、尋問手続がおこなわれるのが一般的です。
裁判所は尋問前にある程度心証を固めているのが一般的ですが、証人尋問を経て、心証を確定させることになります。
なお、証人尋問後に裁判所から確定的な心証を踏まえた和解の勧告がされることもあります。
そこで和解が成立すれば手続きは判決に至らず終了しますが、和解ができない場合には判決となります。
上記の手続きを経ても和解による解決ができない場合には、裁判所は判決により当事者間の権利・義務関係について裁定をくだします。
判決内容に不満がある場合は、判決書が送達されてから2週間以内に高等裁判所に控訴することで、さらに争うことも可能です。
この期間内に控訴しない場合には判決は確定し、もはや争う余地はなくなります。
加害者側が任意保険に加入している場合、民事訴訟での判決が確定すれば、保険会社は当然支払い処理をしてくれます。
しかし、加害者側が任意保険に加入していない場合には、判決が確定しても加害者が任意でこれに対応しないということはあり得ます。
このような場合、被害者側は確定判決に基づいて加害者の財産を強制的に差し押さえる強制執行という手続きをおこなわざるを得ません。
具体的には、被害者の保有する預金・給与・土地・車などの財産を差し押さえ、これを換価することで、債権の回収を図る手続きです。
注意点として、強制執行手続は相手が判決に従わないからといって自動的におこなわれるものではありません。
債権者側で執行裁判所に必要書類を提出して手続きを開始する必要があります。待っていれば裁判所がなんとかしてくれるというものではないのです。
また、強制執行手続きをおこなう場合には、債権者のほうで債務者の財産を特定しなければいけません。
たとえば、預金であればどこの金融機関の何支店に口座があるか、不動産であれば所有する不動産の所在や地番はどこかを特定する必要があります。
したがって、債務者の財産が把握できない場合には判決を得ても、債権の回収は困難です。
なお、2020年4月1日から施行される改正法のもとで、裁判所が債務者の財産(預貯金、不動産、勤務先)について調査する手続きが新設されました。
この新制度のもとで、債権者による強制執行手続きがある程度おこないやすくなることが期待されます。
示談交渉がうまくいかない場合は、以下2つのポイントに気をつけて対応したほうがよいでしょう。
詳しく解説します。
交通事故の示談交渉において、安易に妥協して示談を成立させるとあとで後悔することになるかもしれません。
示談は当事者の合意により成立するものであるため、一度示談が成立すれば気が変わったからといって、一方的に示談内容を反故にすることは原則できません。
そのため、示談に合意して請求処理を終了するかどうかは慎重に検討するべきです。
賠償金を請求できる期間には限りがあります。
あまりにも請求対応に時間をかけすぎてしまうと、時効が成立して請求権が消滅し、賠償金を受け取れなくなることもあり得ますので注意しましょう。
なお、民法が改正されたことで、時効期間については「交通事故がいつ発生したのか」によってそれぞれ異なります。
2020年3月31日までに起きた交通事故の場合、時効期間は3年(加害者が不明の場合は事故から20年)となります。
また2020年4月1日以降に起きた交通事故(人身事故)の場合、時効期間は加害者が判明してから5年(加害者が不明の場合は事故から20年)となります。
また以下のように、時効の起算点は事故の状況によって異なります。
あわせて確認しておきましょう。
時効までのカウントダウンが始まるタイミング |
|
物損事故 |
交通事故発生の翌日より起算 |
人身事故 |
交通事故発生の翌日より起算 |
後遺障害 |
症状固定の翌日より起算 |
死亡事故 |
被害者死亡の翌日より起算 |
示談交渉が不成立となった際は、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼した場合のメリットを説明します。
示談交渉がうまくいかないからといって、必ずしも民事訴訟を起こしたほうがよいとは限りません。
場合によっては、民事訴訟以外の手段で解決に至ることもありますので、よく考えてから行動に移しましょう。
ただし、交通事故に関する知識がない素人では、判断を誤って余計な手間やコストがかかってしまうということも考えられます。
その点、弁護士であれば「民事訴訟を起こしたほうがよいか」「民事訴訟以外の手段でも解決が見込めそうか」など、依頼者の状況をもとに適切なアドバイスをしてくれます。
なお、初回相談であれば無料で対応してくれる弁護士もいますので、少しでも不安な方は一度相談してみることをおすすめします。
民事訴訟を起こす場合は「民事訴訟の流れ」で解説したようにさまざまな手続きが必要となります。
訴訟経験のない方にとっては、大きな手間と労力がかかってしまうことが予想されます。
弁護士であれば、民事訴訟の手続きを一括で依頼することができます。
弁護士は法律の専門家ですので、素人が対応するよりもスムーズに手続きを進めてくれるでしょう。
依頼後は、生活の立て直しや仕事の復帰に向けて集中できますので、これも大きなメリットといえます。
交通事故で受け取る賠償金は「入通院した期間」「事故で残った後遺症の程度」「被害者の年齢」など、さまざまな要素をもとに算定されますので、ケースごとに金額は異なります。
弁護士であれば、依頼者目線で賠償金の請求対応をおこなってくれますので、被害状況に見合った額の賠償金の獲得が見込めます。
また慰謝料を請求する際には、「自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準」という3つの計算基準のいずれかになります。
通院期間 |
自賠責基準(※1) |
任意保険基準(推定) |
弁護士基準(※2) |
1ヵ月間 |
8万6,000円 (8万4,000円) |
12万6,000円 |
28(19)万円 |
2ヵ月間 |
17万2,000円 (16万8,000円) |
25万2,000円 |
52(36)万円 |
3ヵ月間 |
25万8,000円 (25万2,000円) |
37万8,000円 |
73(53)万円 |
4ヵ月間 |
34万4,000円 (33万6,000円) |
47万8,000円 |
90(67) 万円 |
5ヵ月間 |
43万円 (42万円) |
56万8,000円 |
105(79) 万円 |
6ヵ月間 |
51万6,000円 (50万4,000円) |
64万2,000円 |
116(89) 万円 |
※1: 初診から治療終了日を21日とし実際の通入院は10日間だったと仮定し、2020年3月31日までは4,200円、2020年4月1日より後に発生した事故に関しては4,300円で計算しています。
※2:()内はむちうち等の他覚症状がない負傷の慰謝料
弁護士に依頼すれば、最も高額な弁護士基準での慰謝料請求ができますので、自力で対応するよりも獲得金額が増額する可能性が高くなります。
示談交渉がうまくいかない場合、民事訴訟を起こして請求が認められれば、賠償金の支払いが受けられます。
ただし素人では対応しきれないケースも多々ありますので、まずは弁護士に相談して「民事訴訟を起こすべきかどうか」アドバイスをもらったほうがよいでしょう。
また弁護士であれば、今後の対応についてアドバイスがもらえるだけでなく、民事訴訟の手続きを一任できますので、依頼者にかかる負担を大きく軽減できます。
そのほかにも、被害者に代わって示談交渉してもらうことで交渉のみで解決に至ったり、賠償金が増額したりなどのメリットもありますので、一度弁護士に相談することをおすすめします。
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