信号無視での事故による被害者がすべき対応全知識|妥当な過失割合の算定方法
信号無視での交通事故の件数は年々下降傾向にあります。
2010年 |
2011年 | 2012年 | 2013年 |
2014年 |
20,250件 | 19,022件 | 17,951件 | 16,720件 | 15,702件 |
2015年 |
2016年 |
2017年 |
2018年 |
2019年 |
15,505件 |
14,110件 |
13,590件 |
12,495件 |
11,652件 |
しかし2019年においても、信号無視による事故は1万1千件以上も発生しており、いつ事故の被害者になってしまうか分かりません。
交通事故の被害者になってしまった場合、加害者に対して損害賠償を請求できますが、獲得できる賠償額は事故の過失割合によって変わってきます。
今回は、信号無視による事故の被害者になった場合の過失割合の算定方法について解説します。
加害者に請求できる損害賠償は過失割合によって変わる
信号無視の事故に限らず、交通事故の場合、加害者は被害者に対して損害賠償の義務を負うことが民法709条により規定されています。
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、
これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用元:民法第709条
交通事故の加害者に請求できる損害賠償の内訳については「交通事故や人身事故の損害賠償請求で知っておくべき7つのこと」をご覧ください。
過失割合とは、被害者・加害者それぞれの事故の責任の割合のことを指します。実際のところ、交通事故で加害者が100%悪いというケースよりも、被害者にも一定の責任が認められるケースが多く、これは信号無視での事故の場合も例外ではありません。
被害者側にも過失が認められる場合、加害者が支払う賠償金は減額処理されます。このような処理のことを過失相殺と呼びます。
過失相殺の例
例えば「被害者の損害額が1,000万円、過失割合が1(被害者):9(加害者)」という場合、被害者が受け取れる金額は「1,000万円から被害者の過失分にあたる100万円を減額した900万円」になります。
このように過失割合は賠償額に大きく影響するため、示談交渉の際は過失割合についても慎重に取り決める必要があるでしょう。
過失割合は一般的に保険会社と協議して決定する
過失割合は、示談交渉の際に被害者と加害者の加入する任意保険会社が協議して決定するのが一般的です。
交通事故が発生した場合、警察が事故現場を調べて「実況見分調書」を作成します。実際の事故状況に応じて過失割合は大きく異なりますが、過去に起こった判例をもとにした一定の目安が設けられており、それを用いて決められます。
加害者側の任意保険会社は、事故の客観的状況を判例などに当てはめて過失割合を提示してきます。そして最終的に被害者との交渉によって決定します。
事故の内容別|過失割合の例
ここでは信号無視による事故の過失割合を紹介します。なお実際の過失割合は、事故現場の状況や交通整理の状況などによっても異なりますので、あくまで以下は一つの目安です。
自動車同士の場合
まずは自動車同士での事故の過失割合について紹介します。
青信号Aと赤信号Bの過失割合
過失割合(%)|【A:0】【B:100】
赤信号Aと黄信号Bの過失割合
過失割合(%)|【A:80】【B:20】
双方が赤信号の過失割合
過失割合(%)|【A:50】【B:50】
バイクと自動車の場合
次に自動車とバイクでの事故の過失割合を紹介します。
バイクが青信号、自動車が赤信号の過失割合
過失割合(%)|【バイク:0】【自動車:100】
バイクが赤信号、自動車が青信号の過失割合
過失割合(%)|【バイク:100】【自動車:0】
バイクが黄色信号、自動車が赤信号の過失割合
過失割合(%)|【バイク:10】【自動車:90】
バイクが赤信号、自動車が黄信号の過失割合
過失割合(%)|【バイク:70】【自動車:30】
双方が赤信号の過失割合
過失割合(%)|【バイク:40】【自動車:60】
自転車と自動車の場合
次に自転車と自動車での事故の過失割合を紹介します。
自転車が青信号、自動車が赤信号の過失割合
過失割合(%)|【自転車:0】【自動車:100】
自転車が赤信号、自動車が青信号の過失割合
過失割合(%)|【自転車:80】【自動車:20】
自転車が黄色信号、自動車が赤信号の過失割合
過失割合(%)|【自転車:10】【自動車:90】
自転車が赤信号、自動車が黄信号の過失割合
過失割合(%)|【自転車:60】【自動車:40】
双方が赤信号の過失割合
過失割合(%)|【自転車:30】【自動車:70】
歩行者と自動車の場合
最後に歩行者と自動車での事故の過失割合を紹介します。
歩行者が青信号、自動車が赤信号の過失割合
過失割合(%)|【歩行者:0】【自動車:100】
歩行者が赤信号、自動車が青信号の過失割合
過失割合(%)|【歩行者:70】【自動車:30】
歩行者が黄色信号、自動車が赤信号の過失割合
過失割合(%)|【歩行者:10】【自動車:90】
歩行者が赤信号、自動車が黄信号の過失割合
過失割合(%)|【歩行者:50】【自動車:50】
双方が赤信号の過失割合
過失割合(%)|【歩行者:20】【自動車:80】
過失割合は場合により加算や減算される
運転者・歩行者の状況や事故発生時の時間帯など、過失割合は事故状況に応じて5%~20%ほど加算・減算されます。代表的な例としては以下が挙げられます。
自動車に加算 |
酒気帯び運転や無免許運転などの過失を犯している場合 歩行者が幼児・児童・老人の場合の事故 |
バイクに加算 |
酒気帯び運転やヘルメット未装着などの過失を犯している場合 |
自転車に加算 |
二人乗りや手放し運転などの過失を犯している場合 |
歩行者に加算 |
夜間の事故、横断禁止場所での事故 |
過失割合が0の場合保険会社が示談交渉を行うことが出来ない
客観的にみて被害者の過失が0と判断できる場合や、被害者自身が過失0を主張する場合などは、被害者自身が保険会社を相手に示談交渉することになります。また、被害者が任意保険に加入していなかった場合も同様です。
しかし保険会社は営利企業であるため、賠償金の負担を避けるために被害者にとって不利な過失割合を提示してくる可能性もあります。また法律知識なども豊富で示談交渉にも慣れているため、被害者が自身の過失を減算するよう主張しても受け入れてくれないことも考えられます。
加害者の保険会社が提示する過失割合に納得できない場合は弁護士に相談を
事故の過失割合は、最終的には加害者が加入する保険会社との交渉で決まります。この時に少しでも過失割合に関して疑問があれば弁護士に相談しましょう。
弁護士は法律知識が豊富であるため、もし相手方の提示内容が妥当でない場合には、論理的に指摘してもらうことで適切な過失割合の獲得が望めます。
また弁護士に依頼をすることで、賠償金の各項目が増額する可能性もあります。例えば慰謝料の場合には「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3種類の計算基準が設けられており、なかでも弁護士基準が最も高額になりやすい傾向にあります。
しかし保険会社が提示する慰謝料は、弁護士基準より低額な任意保険基準で算定されることがほとんどです。弁護士に依頼することで、弁護士基準でのスムーズな請求対応が望めるため、賠償金の増額が期待できます。
まとめ
過失割合は賠償金に大きく作用します。しかし過失割合は事故の状況によって様々であり、相手保険会社が提示してきたものが妥当であるという保障もありません。
少しでも過失割合に関して疑問がある場合は、一度弁護士に相談することをおすすめします。
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