交通事故や自転車事故など、事故はいつ起きてしまうか分からないものです。弁護士費用を用意できず泣き寝入りとなってしまうケースも少なくありません。
ベンナビ弁護士保険は、弁護士依頼で発生する着手金を補償する保険です。
交通事故だけでなく、自転車事故、労働問題、離婚、相続トラブルなど幅広い法的トラブルで利用することができます。
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過失相殺(かしつそうさい)とは、交通事故の被害者にも過失がある場合、過失の大きさに応じて賠償金を減額処理することを指します。
交通事故の被害者は、交通事故による損害を示談交渉などにて加害者(通常は加害者の加入する保険会社)へ請求することになります。
なお過失割合は事故状況によって客観的に決められますが、決定にあたっては警察が行う現場検証の資料(実況見分調書)が最も重要な資料となります。
今回は、過失相殺の意義や、過失相殺後の補償金に納得がいかない場合の対応、弁護士への相談をおすすめする理由などを紹介します。
過失相殺は、事故当事者の過失割合に基づいて、被害者に補償されるべき損害額を決定する処理のことで、民法第722条の不法行為に基づくものとされています。
(損害賠償の方法及び過失相殺)
第七百二十二条 第四百十七条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
2 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
引用元:民法第722条
過失相殺が行われるのは「加害者と被害者の双方に責任がある交通事故」という場合です。
例えば「スピード違反でぶつかってきた加害者が悪いのは間違いないが、被害者も注意を払っていれば避けられたはず」というようなケースが挙げられます。
人身事故の加害者は、被害者に対してケガの治療費や車の修理費など、多くのお金を用意する必要があり、仕事を休んだ場合は休業中の賃金なども負担する必要があります。
さらに入通院した場合は入通院慰謝料、後遺障害が残った場合は後遺障害慰謝料も発生するなど相当額の負担が生じますが、もし被害者にも一定の過失がある場合は「情状酌量の余地あり」として、事故当事者の過失割合に応じて調整する意味で処理を行います。
過失相殺を語る上で「過失割合」という言葉は避けて通れませんが、意味合い的には非常に似ています。
事故当事者のどちらがどの程度悪かったのかを示すのが過失割合で、その過失割合に応じて賠償額の処理を行うのが過失相殺です。
例えば「被害者の過失20%:加害者の過失80%」という場合、被害者にとっては20%の過失がついたことになりますが、加害者にとっては20%の過失を相殺できたという見方もできます。
ここでは、過失相殺の手順・方法を解説します。
人身事故の場合は、警察を呼んだのち、詳細な現場検証が行われます。
そして「実況見分調書」という、交通事故現場の状況を記載した書類が作成されます。
例えば「被害者の車が加害者の車に追突されて被害者が怪我をした」という場合、警察は「どちらがどの方向からぶつかったのか」「スピードはどれくらいだったか」「車はどの程度損傷したか」などを調べ、これを記録化します。
実況見分調書は、公的機関が公平中立に作成した資料として信用性が高く、事故態様を表す重要な証拠となります。
当該証拠から明らかとなった事故態様を踏まえ、事故発生の原因となった加害者や被害者の行為を検討し、それぞれの過失割合が定まることになります。
加害者側の保険会社は、事故態様をふまえて、当該過失割合について「このくらいでどうですか?」と提案してきます。
この提案に納得できれば示談成立となりますが、納得できない場合には、具体的な根拠を示したうえで納得できない旨を説明し、交渉する必要があります。
過失相殺を行う際は、以下の式で請求額を計算します。
全損害額×(100%-自分の過失割合)
例えば「被害者に発生した全ての損害額が4,000万円、加害者の過失90%:被害者の過失10%」という場合、実際の請求額は以下の通りです。
4,000万円×(100%-10%) = 3,600万円
つまり交通事故の責任の10%は被害者にあるため、獲得金額も10%減るということです。
このように、被害者にも過失があると判断される交通事故では損害分すべてを請求できるわけではありませんので、注意しましょう。
示談交渉の際に重要なことは、過失割合の算出だけではありません。
提示されている慰謝料が「被害者にとって妥当な金額かどうか」を知ることも重要です。
慰謝料には、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準という3種類の計算基準があります。
保険会社を相手に示談交渉する場合、任意保険基準が用いられることが多いものの、弁護士基準と比べると低額になりやすい傾向にあります。
弁護士であれば、弁護士基準での慰謝料請求を依頼できるため、結果的に賠償金の増額が期待できます。
<任意保険基準と弁護士基準の慰謝料比較>
被害状況 |
任意保険基準(推定) |
弁護士基準 |
入通院慰謝料 |
||
1ヶ月間の通院 |
12万6,000円 |
28(19)万円 |
3ヶ月間の通院 |
37万8,000円 |
73(53)万円 |
6ヶ月間の通院 |
64万2,000円 |
116(89)万円 |
後遺障害慰謝料 |
||
110万円 |
280万円 |
|
40万円 |
110万円 |
※弁護士基準の( )はむちうち等の他覚症状がない負傷の場合
過失相殺は、示談交渉の段階で保険会社から提案されます。
怪我の程度にもよりますが、おおよその目安としては事故から数ヶ月過ぎて怪我も回復した頃でしょう。
しかし、場合によっては「納得がいかない」と思いつつも、心身ともに疲れてしまって言われるがままになり、泣き寝入りしてしまうこともあるかもしれません。
実務的には、過失相殺は保険会社との交渉の中で定まっていくため、交渉次第では被害者側に有利な内容になることもあります。
しかし事故直後などは、お互いにパニック状態になってしまうこともあるでしょう。
また加害者であれば「できるだけ責任を負いたくない」と強く思う部分もあるかもしれませんし、被害者であれば警察からの質問に対して冷静な回答ができないこともあるかもしれません。
そのような結果、加害者と被害者で事故態様について認識のズレが生じる可能性も十分あり得ます。
このズレが解消されない場合、過失相殺について「納得がいかない」とトラブルに発展してしまうこともあります。
示談交渉では、示談内容に合意して書類にサインすると示談成立となります。
示談成立とは「この交通事故に関して、このお金を受け取ることで、事件を終わりにする」という契約であるため、一度サインした後は事故態様や過失割合を争うことはできません。
したがって、できるだけ有利な形で損害賠償請求を行うためには、示談書にサインをする前に適切な交渉を行わなければならないのです。
保険会社から発生した全損害について補償を受けるためには、保険会社に対して自分には過失がないことを明確に主張して、これを証明する必要があります。
もっとも、車同士の事故の場合は「動いている車同士の事故はお互いに過失がある」という考え方が一般的です。
したがって特別な事情(加害者の無免許、飲酒運転等)がない限り、保険会社が被害者の過失割合を0と認めることはほぼないといえるでしょう。
交通事故によっては、物損事故のように警察による詳細な現場検証資料が作成されない場合もあります。
そのような場合は、事故態様を明確にする証拠がないため、加害者と被害者の言い分が異なるケースも多々あります。
この場合、被害者は「自分が考える事故態様」について証明したうえで「自分の過失が0であること」を証明しなくてはなりません。
【関連記事】物損事故とは?事故後の流れや人身事故との違いを解説
過失相殺は事故の補償額に直接影響する処理でありながら、その交渉は容易ではありません。
したがって、保険会社から提示された過失割合について納得がいかない場合には、示談書にはサインせず、なるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。
【関連記事】弁護士に無料法律相談できるおすすめ相談窓口|24時間・電話相談OK
保険会社との交渉で、自身の過失が0であることを主張するのは容易ではありません。
さらに被害者が自身の過失が0であることを主張する場合、被害者の加入している保険会社に交渉を頼むことができないため、自ら対応せざるを得ません。
ただし唯一、弁護士であれば交渉対応を依頼できます。
また弁護士費用特約という保険特約が付いている場合には、保険会社が弁護士費用を負担してくれます。
事故に遭った際は、一度保険会社に確認してみると良いでしょう。
過失相殺は賠償額に直接影響するため、特に注意して対応する必要があります。
しかし交通事故の知識・経験のない方では負担も大きく、難しいでしょう。
弁護士であれば、被害者の話を聞いて妥当な過失割合を判断し、これに基づいて交渉してくれます。
初回無料相談を行っている弁護士も多くあるので、まずは気軽に相談してみましょう。
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