交通事故の休業補償が振り込まれるまでの流れ | なるべく早く受け取るには?

交通事故に遭って仕事を休むことになった場合、相手方の保険会社に休業損害を請求することになります。
休業損害は、仕事を休んだことによる減収分を補うものなので、生活への影響を考えると早めに受け取りたいものです。
しかし実際のところ、休業損害は請求してからどのくらいで振り込まれるものなのでしょうか?
本記事では、休業損害が振り込まれるまでの一般的な期間を解説します。
休業損害を請求する際の必要書類、休業損害の計算方法、休業損害を早く受け取る方法なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。
交通事故の休業損害が振り込まれるまでの流れ | いつ振り込まれる?
交通事故によるけがが原因で仕事を休むことになった場合、事故の相手方に休業損害を請求することができます。
休業損害は示談が成立したあとに一括で支払われるのが一般的ですが、事故発生から支払いまでの期間が空いてしまい、被害者の生活に支障をきたすケースも少なくありません。
そのため、休業損害には、示談が成立する前に支払いがおこなわれる「先払い(内払い)」という方法が認められています。
なお、以前は自賠責保険にも内払い制度がありましたが、2008年10月1日に廃止されており、現在は任意保険にのみ内払いが認められています。
先払いに対応してもらえるかは保険会社によって異なりますが、応じてもらえる場合は一括支払いよりも早く休業損害を受け取ることが可能です。
まずは、休業損害が支払われるまでの一般的な流れを、先払い・一括請求のそれぞれに分けて解説します。
相手側の保険会社が先払い(内払い)に応じる場合
保険会社が先払いに対応できる場合、以下の流れで請求します。
- 相手方の任意保険会社に必要書類を提出する
- 保険会社での事務処理後、休業損害を受け取る
先払いの場合、必要書類を提出してから1週間以内に支払われることもあれば、1ヵ月ほどかかることもあります。
保険会社により支払いまでの期間が異なるので、事前に確認しておくとよいでしょう。
示談交渉後に一括で請求する場合
示談成立後に一括請求する場合の流れは以下のとおりです。
- 相手方の任意保険会社に必要書類を提出する
- 保険会社が示談金を算定し、被害者に提示する
- 示談交渉を通じて示談金を決定する
- 示談が成立したら示談金とともに休業損害を受け取る
一括請求の場合は、示談が成立してから1週間〜2週間ほどで休業損害が支払われるのが一般的です。
休業損害を請求する際の必要書類
休業損害を請求する際に必要な書類は、以下のとおりです。
職業などにより異なるので、自分の場合はどの書類が必要なのか確認しておきましょう。
職業 |
必要書類 |
---|---|
給与所得者 |
✓休業損害証明書 ✓事故の前年分の源泉徴収票 |
自営業 |
✓事故の前年分の確定申告書の控え |
会社役員 |
✓休業損害証明書 ✓事故の前年分の源泉徴収票 ✓会社の決算書類 |
専業主婦・兼業主婦 |
✓家族分の記載がある住民票 ✓源泉徴収票(兼業主婦の場合) ✓休業損害証明書(兼業主婦の場合) |
無職 |
✓求職活動をしていたことがわかる資料(企業への応募履歴・人事担当者とのメールなど) ✓内定通知書・内定証明書(内定をもらっていた場合) |
学生 |
✓源泉徴収票(アルバイトの場合) ✓休業損害証明書(アルバイトの場合) ✓内定通知書(内定をもらっていた場合) ✓就労時期が遅れたことがわかる書面 |
休業損害の算出方法
休業損害の基本的な算出方法は「1日あたりの基礎収入×休業日数」です。
休業日数は、事故発生日からけがが完治または症状固定した日のあいだで、けがの治療のために仕事を休んだ日数を指します。
1日あたりの基礎収入は、基本的に事故前の収入を基に算出しますが、細かい計算方法は職業によって異なります。
ここでは、休業損害の算出方法を給与所得者・自営業者やフリーランス・家事従事者の3つのケースに分けて見ていきましょう。
給与所得者の場合
給与所得者の1日あたりの基礎収入の求め方は以下のとおりです。
事故前3ヵ月間の給与合計額÷稼働日数 |
事故前3ヵ月間の給与合計額は、会社が作成する休業損害証明書を基に証明することになります。
稼働日数とは、土日祝日などを除いた実際の労働日数のことです。
稼働日数ではなく、「90日(30日×3ヵ月)」で計算する方法もありますが、この方法では休みなしで働く前提で休業損害を算出することになってしまいます。
現実的に、土日祝日も休みなく働くケースはほとんどないので、現在は稼働日数で割る方法が主流です。
なお、相手方の保険会社から提示された休業損害額が90日を基準にして算定されていた場合は、計算をしなおすことで休業損害額を増額できる可能性があります。
自営業者・フリーランスの場合
自営業者・フリーランスの場合、基礎収入は以下のように算出します。
事故の前年の所得額÷365日 |
事故の前年の所得額は、確定申告書の控えや課税証明書などを基に証明します。
確定申告をしていなかった場合は、銀行口座の取引履歴や帳簿などから所得額を算定しましょう。
家事従事者の場合
専業主婦や兼業主婦などの家事従事者も、けがのために家事ができなかった日に対して休業損害を受け取ること可能です。
家事従事者の場合、1日あたりの基礎収入は「賃金センサス」という厚生労働省の統計調査を基に算出します。
賃金センサスには、労働者の性別・年齢・学歴などに応じて平均収入をまとめられています。
賃金センサスに示された平均収入と、被害者の年齢などを照らし合わせ、基礎収入を求めましょう。
なお、専業主夫の場合も、女性の賃金センサスが用いられる点は留意してください。
兼業主夫の場合は、実際の収入と賃金センサスに基づく平均収入のいずれか高いほうが基準となります。
相手側の保険会社が先払いに応じない場合、休業損害を早く振り込んでもらうには?
休業損害の先払いに応じてもらえるかは、保険会社によって異なります。
先払いに応じてもらえない場合、以下の対応をとることで休業損害を早めに受け取れる可能性があるでしょう。
相手方の自賠責保険へ被害者請求をおこなう
まずは、相手方が加入する自賠責保険会社に被害者請求をおこないましょう。
被害者請求とは、交通事故の被害者が保険会社に対して損害賠償を直接請求する方法です。
被害者請求をおこなうことで、示談成立前に最低限の補償を受けられるので、経済的な負担を抑えられます。
必要書類の収集や審査に手間や時間がかかる点がネックですが、自分で書類を用意するため手続きの透明性が高い方法といえるでしょう。
なお、弁護士に依頼すれば、必要書類を代わりに集めてもらえたり、手続きがスムーズに進んだりとさまざまなメリットがあります。
被害者請求を検討する場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。
訴訟の提起や調停の申立てを検討する
被害者請求が難しい場合は、裁判所に仮払仮処分の申立てをおこなうか、調停を申し立てましょう。
裁判所が休業損害の早急な支払いが必要と判断すれば、示談が成立していなくても休業損害を受け取ることが可能です。
ただし、休業損害を受け取るまでには3ヵ月〜1年ほどかかることが一般的です。
交渉が難航していて、示談成立までに1年以上かかりそうな場合や、弁護士から申し立てを提案された場合は検討してみるとよいでしょう。
また、公益財団法人「交通事故紛争処理センター」に相談し、弁護士に和解をあっせんしてもらうのも一つの手です。
交通事故の休業損害についてよくある質問
ここからは、休業損害についてよくある質問をまとめています。
休業損害はいつまでもらえる?
休業損害は、交通事故が発生した日から、けがが完治または症状固定する日まで支払われます。
症状固定とは、これ以上治療をしても改善が見込めないと医師が判断した状態のことです。
症状固定後は、休業損害ではなく「後遺障害逸失利益」を請求することになります。
休業損害と休業補償は何が違うの?
休業損害は加害者の自賠責保険や任意保険から支払われるのに対し、休業補償は労災保険から支払われます。
通勤中や業務中に事故に遭って休業を余儀なくされた場合、休業開始後4日目から休業補償が支給されます。
補償の重複を避けるため、原則として休業損害と休業補償を併用することはできません。
しかし、休業補償のうち「休業特別支給金」は休業損害と重複しないと考えられることから、休業損害を請求した場合でも休業特別支給金を受け取ることが可能です。
どちらを請求すべきか・両方請求すべきかはケースによって異なるので、弁護士に相談してみましょう。
さいごに|休業損害でお悩みなら弁護士へ相談を
休業損害が振り込まれるまでの期間は、先払い(内払い)か一括請求かで異なります。
先払いの場合は必要書類を提出してから1週間〜1ヵ月ほど、一括請求の場合は示談成立後1〜2週間ほどで支払われることが一般的です。
先払いに応じてもらえるかは保険会社によって異なります。
「休業損害が受け取れないと生活に支障が出るけれど、先払いに応じてもらえない」という場合は、一人で悩まず弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談すれば、適切な対応方法を教えてもらうことができ、休業損害を早く受け取れる可能性も高くなります。
休業損害に関して悩んでいるなら、どんなに小さなことでもまずは弁護士に相談してみ
弁護士に相談するかお悩みの方へ
下のボタンからあなた当てはまるものを選んで悩みを解消しましょう。
弁護士費用特約があれば 実質0円で依頼できます!

多くの保険会社では、被害者1名につき最大300万円までの弁護士費用を負担してくれます。特約があるか分からない方でも、お気軽にご相談ください。弁護士と一緒にご確認した上で依頼の有無を決めて頂けます。
特約を利用して弁護士に相談する交通事故問題を依頼する弁護士の選び方にはポイントがあります。
- 過去の解決事例を確認する
- 料金体系が明確である弁護士を選ぶ
- 交通事故問題が得意な弁護士から選ぶ
等です。
詳しくは以下の記事を読んで、正しい弁護士の選び方を理解した上で弁護士に相談しましょう。
弁護士の選び方について詳しくみる
【人身事故被害者の方へ】事故直後・通院中いずれの場合もまずはご相談ください。弁護士への依頼で、結果が大きく変わるかもしれません。【初回面談無料】【着手金無料プランあり】【オンラインで全国対応可能】
事務所詳細を見る
【初回相談0円&弁護士特約で自己負担0円】軽微な事故から死亡事故まで幅広く対応◎町の板金屋さんや自動車整備共同組合から多くのご相談いただき交通事故の対応経験が豊富◆事故に遭ってしまったらすぐにご相談を
事務所詳細を見る
【初回面談無料】事故直後からご相談可能!「依頼者第一主義」をモットーに、交通事故被害でお困りの方に寄り添います。クイックレスポンスで対応◎不安なこと、分からないこともお気軽にご相談下さい。
事務所詳細を見る当サイトでは、有料登録弁護士を優先的に表示しています。また、以下の条件も加味して並び順を決定しています。
・検索時に指定された都道府県に所在するかや事件対応を行っている事務所かどうか
・当サイト経由の問合せ量の多寡


損害賠償・慰謝料請求に関する新着コラム
-
保険会社の提示する慰謝料額はうのみにしないでください。交通事故の被害者にはもっと多くの慰謝料を請求できる権利があるからです。どれくらい増額できるかは、個々の事例...
-
交通事故の被害が原因でけがの治療を受け、仕事を休業した場合は休業補償の請求ができます。本記事では、個人事業主や自営業の方の休業損害の計算方法や、休業損害を請求す...
-
本記事では、交通事故後の通院日数について知りたい方に向けて、事故後の通院日数を増やしても稼げないこと、治療・通院と関係する補償の種類、過剰診療を受けた場合のリス...
-
本記事では、物損事故で慰謝料が認められた5つの具体例を紹介し、請求の条件や対策について説明します。もしも物損事故で心身にも大きな影響を受けた場合は、本記事を参考...
-
交通事故によるけがで仕事を休むことになった方のなかには、休業損害の日数の数え方がわからない方もいるでしょう。本記事では、休業日数の数え方を職業別に解説します。休...
-
交通事故によるけがで仕事を休む場合、いつ頃復帰するのが適切なのでしょうか?本記事では、交通事故が原因で仕事を休む場合の一般的な休業期間や、休業した場合にもらえる...
-
交通事故の休業損害を請求してからどのくらいで振り込まれるのか気になっている方もいるでしょう。本記事では、休業損害が振り込まれるまでの一般的な期間を解説します。請...
-
交通事故にあうと加害者から見舞金が支払われることがあります。労災の場合は会社から支払われることもありますが、必ず支給されるわけではないため注意が必要です。本記事...
-
もらい事故で全損した場合は相手に買い替え費用を請求できます。ただし、新車購入金額の100%を請求できるとは限らないため注意が必要です。本記事では、もらい事故で車...
-
自賠責保険は、交通事故の被害者に対して最低限の補償を提供することを目的としています。本記事では、自賠責保険による傷害補償の限度額(120万円)やその内訳、超過分...
損害賠償・慰謝料請求に関する人気コラム
-
交通事故で負傷した場合は、その肉体的・精神的苦痛に対して慰謝料を請求できます。本記事では、慰謝料の基礎知識から相場、増額方法について解説しています。
-
交通事故の被害に遭った際に、損害賠償請求ができる項目や相場を知らないと、加害者側保険会社の提示金額を鵜呑みにしてしまい適正な金額の賠償を受けられない恐れがありま...
-
人身事故と物損事故ではそれぞれ手続の流れが異なります。けがをしているのに物損事故で処理すると、十分な補償が受けられないなどのデメリットがあります。本記事では、人...
-
慰謝料とは、精神的苦痛に対して支払われる賠償金です。交通事故の場合だと、事故被害で怪我を負った(または死亡事故)の場合に請求可能です。この記事では、交通事故の慰...
-
「休業損害証明書の書き方について知りたい」「休業損害の相場を把握したい」などの悩みを抱えている交通事故被害者の方に向けて、本記事では休業損害証明書の書き方やパタ...
-
交通事故によるけがや病気などで会社を休んだ場合に受けられるのが休業補償ですが、休業損害や休業手当と混合されるケースが多くあります。本記事では、会社を休んだ場合の...
-
「追突事故の慰謝料について知りたい」「慰謝料を増額したい」などのお悩みを抱えている交通事故の被害者に向けて、本記事では追突事故の慰謝料の種類や相場を解説します。...
-
保険金は事故被害から早く立ち直るための大切なお金です。いつどのくらいもらえるのか気になる方が多いのではないでしょうか。この記事では交通事故の保険金の算出方法や相...
-
休業損害とは、交通事故により仕事を休んだことで減収したことに対する損害のことを呼びます。職業や請求方法などにより金額は大きく変わりますので、適切な額を受け取るた...
-
逸失利益とは、交通事故による後遺障害や死亡がなければ、将来得られるはずだった収入の減少分に対する補償のことです。特に逸失利益は高額になるケースが多いため、詳しい...
損害賠償・慰謝料請求の関連コラム
-
交通事故の被害者は、加害者に対して治療費を請求できますが、場合によっては被害者自身が一旦立て替えて支払わなければならないケースがあります。本記事では、交通事故の...
-
本記事では、運転中に追突されたもののけががなかったケースにおいて、請求できる損害賠償の項目や利用できる保険の種類などを解説します。
-
人身事故と物損事故ではそれぞれ手続の流れが異なります。けがをしているのに物損事故で処理すると、十分な補償が受けられないなどのデメリットがあります。本記事では、人...
-
交通事故によるけがや病気などで会社を休んだ場合に受けられるのが休業補償ですが、休業損害や休業手当と混合されるケースが多くあります。本記事では、会社を休んだ場合の...
-
損害賠償請求とは契約違反や不法行為により生じた損害の補填を請求することです。本記事では、損害賠償の種類や請求方法、注意点などを解説します。
-
配達サービスの普及にともない、最近では配達業務中の自転車事故なども発生しています。自転車事故の場合、示談交渉で揉めてしまうケースも多いため注意が必要です。この記...
-
交通事故でかかった治療費は、相手方の任意保険会社や自賠責保険などに請求できます。ただし自賠責保険では上限があるほか、症状固定後の治療費は請求できないなどの注意点...
-
本記事では、物損事故で慰謝料が認められた5つの具体例を紹介し、請求の条件や対策について説明します。もしも物損事故で心身にも大きな影響を受けた場合は、本記事を参考...
-
交通事故が原因の腰痛で請求できる慰謝料は、症状の程度により異なります。腰痛の場合、後遺障害等級12級・14級が認定される可能性がありますが、そのためには申請手続...
-
交通事故での怪我を治療中、相手の保険会社から治療費の負担を打ち切られたとします。それでも、直ちに治療をやめる必要はありません。事故と因果関係のある治療行為であれ...
-
交通事故の過失割合は、事故の客観的な状況に応じて決まります。本記事では、「動いている車同士の事故に過失割合100:0はありえない」が本当なのかどうかについて解説...
-
高次脳機能障害が後遺障害として認定されると、その症状の度合い(等級)に応じて慰謝料や逸失利益などの損害賠償請求をする権利が認められます。本記事では、高次脳機能障...
損害賠償・慰謝料請求コラム一覧へ戻る