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自転車事故で後遺症が残ったら|被害者が取るべき行動と慰謝料の請求方法

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
自転車事故で後遺症が残ったら|被害者が取るべき行動と慰謝料の請求方法

自転車事故で怪我を負い、途方にくれていませんか? この記事は、『自転車運転中(もしくは歩行中)に交通事故に巻き込まれた人』に向けて書かれています。

自転車事故も自動車と同様です。被害者は加害者に対して、受けた損害を請求できます。

後遺症が残れば、『後遺障害慰謝料』や『逸失利益』といった名目で、高額な請求をすることも可能です。ですが、2つの問題点があります。

①後遺症を、『後遺障害』と認められる必要があること

②自転車事故の場合、後遺障害について審査する公的機関が乏しいこと

「え?じゃあ、後遺障害の補償は受けられないじゃん…」とお思いのあなた。あきらめるのはまだ早いかもしれません。

この記事には『後遺障害認定を受けなくても、補償を受ける方法』を紹介しています。

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事故発生から解決(示談成立)までの簡単な流れ


まずは、事故発生から解決までの流れをおさらいしましょう。

後遺症との関連が深い、③症状固定と、④後遺障害等級認定については、重要ですので説明を追加してあります。

  1. 事故発生
  2. 治療
  3. 症状固定(もしくは完治)
  4. 後遺障害等級認定
  5. 示談

③症状固定とは

症状固定とは、簡単にいうと「この怪我はこれ以上回復しません」という状態のことです。

症状固定時に、『後遺障害診断書』を作成します。後遺障害診断書とは、治療終了時に『残ってしまった症状(後遺症)』についての診断書です。

④後遺障害とは

  • 後遺症→『怪我が治りきらず症状が残っている』という状態のみを指す言葉。
  • 後遺障害→後遺症が、『後遺障害』として認定されたもの。被害者には、労働能力の低下による損害が生じたことが認められる。

つまり、後遺症は、後遺障害として認められないと意味がないのです。

後遺障害認定されたときに、加害者から支払われるものは?

後遺障害は1~14級に分けられており、症状に応じて区分されます。では、後遺障害と認められた場合、どのようなお金を請求できるのでしょうか?

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、『後遺障害慰謝料と付き合っていかなければならない』という精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。

何級かにもよりますが、基本的に高額であることが特徴です。

逸失利益

逸失利益とは『後遺障害を負ってしまったことにより失われた、将来の収入』のことをいいます。

等級ごとに、『労働能力喪失率』というものが設定されており、被害者の年齢や収入などをもとに金額が算出されます。

自転車事故の場合、後遺障害を認定する公的機関が乏しい


ここまでで、以下のことを説明しました。

  • 後遺症とは、単なる状態のことであり、直ちに賠償の対象とならない
  • 後遺障害と認められれば、『後遺障害慰謝料』や『逸失利益』などを請求できるようになる

ここからが本題です。自転車事故には、自動車同士の事故とは違う点があります。それは『後遺障害を認定する公的機関が乏しい』ことです。

後遺障害について公的機関による認定がないのであれば、被害者に示談金(損害賠償金)を支払う『相手の任意保険会社』も、『後遺障害慰謝料』や『逸失利益』を任意で支払うことはまずありません。

では、自転車事故の被害者は、どうやって等級認定を受けて請求すればいいのでしょうか?

自転車事故で、後遺障害慰謝料と逸失利益を獲得するには?

ここでは、自転車事故に遭った人が、どうやって後遺障害慰謝料と逸失利益を請求するのか、具体的な方法をご紹介します。

裁判所による認定を受ける

自転車対自転車で、後遺障害慰謝料と逸失利益を請求するには、『訴訟を起こす』必要があります。

訴訟の内容をわかりやすい言葉にしてみます。

「私は、自転車の運転中、被告(加害者)と衝突し、後遺障害〇級に相当する後遺症を負いました。よって、後遺障害慰謝料として〇万円、逸失利益として〇万円を請求します」

後遺障害認定を受けていないとしても、裁判所が、『被害者は後遺障害〇級に相当する怪我を負った』と認めれば、加害者には賠償義務が認められます。

自転車と自転車(お互いに無保険)の事故の場合、完全に『個人と個人』で示談交渉を行うことになります。

そうなってくると、お互いに相場がわからず、示談交渉も進まない可能性が高いでしょう。

ましてや、後遺障害慰謝料や逸失利益は高額です。加害者側が素直に交渉に応じないのも当然です。

こちらが提示した金額をすんなりと払ってくれるなら、訴訟を起こす必要はありません。

しかし、相手が譲らないようであれば、やはり訴訟を起こす必要があります。

労災による認定を受ける

仕事中(出勤、退勤も含む)の事故の場合、『労働基準監督署』に労災の認定を申請し、その手続の中で後遺障害を認定してくれます。

もし認定を受けることができたら、それを根拠に『後遺障害慰謝料』と『逸失利益』を請求することは可能です。

ただし、『労働基準監督署が後遺障害を認定した』という根拠があったとしても、相手方が支払いに応じない場合は、やはり訴訟を起こすことになるでしょう。

なお、労基署が認定したからといって、必ずしも裁判所が同じ認定をするとは限りませんので注意が必要です。

加害者から被害者へ支払われる損害賠償金の内訳


ここまで、後遺症を負ってしまった人(後遺障害認定を受けた人)が請求できる、『後遺障害慰謝料』と『逸失利益』を中心に説明をしてきました。

これらは『後遺障害を負った人(もしくは後遺障害に相当すると裁判所に認められた人)』が請求できるものです。

一方、後遺障害を負っていない人でも、事故の被害に遭えば、損害賠償請求できます。

損害賠償金とはどんなお金なのか、その内訳をご紹介します。

積極損害

積極損害とは、『事故がきっかけで、被害者が出費を余儀なくされたもの』のことをいいます。

  • 入通院費
  • 病院までの交通費
  • 自転車の修理代(買い替え代)

このあたりは、積極損害の中でも代表的な物でしょう。これ以外のものでも、事故がきっかけで出費が発生した場合には、加害者に請求できます。

休業損害

休業損害とは、『事故がきっかけで仕事を休んでしまったことによる損害』のことをいいます。

つまり、『仕事を休んでしまったせいで減ってしまった収入』です。

こちらも加害者に請求することができます。

入通院慰謝料

入通院慰謝料は、『入通院をしなければならないという精神的苦痛』に対して支払われる慰謝料です。

後遺障害慰謝料は、後遺障害認定を受けた人にしか支払われません。一方『入通院慰謝料』は、怪我をして入院や通院をした人であれば、支払われます。

金額は、入通院の期間や回数などによって決定します。

自転車事故の後遺症に関するQ&A

自転車の事故で保険会社が提示した過失割合が納得いかない場合の対処法

弁護士に相談して、事例に則した適正な過失割合を判断してもらうことをお勧めします。

保険会社から提示された過失割合は、あくまで相手側の事故認識に基づくものであり、必ずしも妥当であるとは限りません。当事者間で自己認識に乖離がある場合には、加害者側の提示する過失割合に納得がいかないことも多いでしょう。

弁護士に対し、あなたの事故認識を伝えつつ、過失割合について相談することで、あなたが主張すべき過失割合はどの程度で、譲歩するべきはどの部分かなどについて的確なアドバイスをしてもらえます。

物損事故から人身事故への切替

事故発生時に目立った外傷がない場合、警察が事故を物損で処理することはよくあります。
この場合に、事故後に通院して負傷していると診断された場合には、警察署に診断書を提出することで人身事故に切り替えてもらうこともできます。

もっとも、病院の受診が事故から時間が経過してしまった場合、事故発生と負傷症状との因果関係が明確でないとして、人身事故への切り替えを断られることもあります。

人身事故への切り替えを検討している場合は注意しましょう。

まとめ

この記事の重要なポイントをまとめました。

  • 後遺症は『後遺障害』として認められてはじめて意味をもつ
  • 自転車事故の場合、『後遺障害を認めてくれる公的機関』が乏しい
  • 自転車同士の事故の場合は後遺障害慰謝料や逸失利益を相手に支払わせるには基本的に『訴訟』を起こすことになる
  • 仕事中の事故であれば、労働基準監督署が後遺障害認定してくれる可能性がある
  • 個人対個人で示談交渉をする場合、話が進まないようであれば弁護士に相談すること
  • 『後遺障害慰謝料』と『逸失利益』は高額になる可能性が高いので、泣き寝入りせず、まずは弁護士に相談してみること

自転車に乗る人の中には、『免許・マイカーを持っていない人』や『保険に加入していない人』が多くいます。

そうした人は、示談に関する知識が少なく、いざ事故が起こったとしても、どう行動していいかわからない、ということが多いでしょう。

しかし、本文内に書いてあるとおり、自転車事故の扱いは自動車と同様です。泣き寝入りすることなく、しかるべき対応をとりましょう。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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