追突事故の過失割合は「被害者0:加害者100と判断されるケースが一般的です。
しかし、追突された側の立場だとしても、必ず過失がゼロになるわけではありません。
事故発生時の運転に明確な道交法違反などがあれば、その分の過失を問われる可能性があります。
交通事故の過失割合は、少し増減するだけでも受け取れる損害賠償金(保険金)の額が大きく変わります。
そのため、事故被害に遭った場合は、適切な過失割合を判断するための知識が必要不可欠です。
本記事では、追突事故の過失割合の事例や、過失割合に納得いかない場合の対処法などを紹介します。
追突事故の被害に遭った方は、参考にしてみてください。
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追突事故の過失割合が0対100になりやすい理由
道路交通法では、「同じ方向の道路を進行する車両の後ろを走行するとき、前の車が急停止しても追突を避けられる距離を保って運転しなければいけない」というルールが定められています。
車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。
引用元:道路交通法第26条
そのため、走行中または停止中に後ろから接触される追突事故では、後ろから追突した側が道路交通法のルールを破っているといえます。
追突事故の過失割合が「被害者0:加害者100」になるケースが多いのはそのためです。
なお、「動いている車同士の事故で、過失割合が0対100になるのはありえない」といわれることもあります。
これは基本的には正しいのですが、事故の状況にもよりますので絶対とはいえません。
追突事故の過失割合が0対100にならない状況
事故発生時の運転で明確な道路交通法違反がある場合、追突された側にも過失が問われることがあります。
代表的な例としては以下があります。
- 不要な急ブレーキによる追突事故
- 駐停車禁止場所に駐停車中の追突事故
- 夜間に灯火義務を怠った状態で駐停車中の追突事故
- 追い越し妨害による追突事故
不要な急ブレーキによる追突事故
運転時に急ブレーキが許されるのは、危険を回避するためにやむを得ない状況のみです。
そのような状況での急ブレーキによる事故なら過失は問われませんが、危険回避が不要な状況で急ブレーキを踏んで事故を起こした場合には、追突された側であっても30%前後の過失を問われる可能性があります。
車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。
引用元:道路交通法第24条
不要な急ブレーキに該当するもの
- 危険回避の必要がない状況でのブレーキ
- 「落とし物をした」などの車内トラブルによるブレーキ
- 後続車に煽られた腹いせでおこなったブレーキ
- 飛び出しと勘違いしておこなった急ブレーキ
駐停車禁止場所に駐停車中の追突事故
道路交通法上では、車両の駐停車について以下のようなルールが定められています。
道路交通法による駐停車のルール
- 坂の頂上付近、勾配の急な坂、トンネル、道路の曲がり角で駐停車してはならない(第44条)
- 車両は駐停車するときは道路の左端に沿い、かつ、ほかの交通の妨害とならないようにしなければならない(第47条、第47条2項)
上記のような駐停車禁止場所に駐停車をしている場合や、道路の左端に寄せていない場合などは、追突された側であっても10%〜20%の過失が問われる可能性があります。
夜間に灯火義務を怠った状態で駐停車中の追突事故
車両の駐停車については、以下のようなルールも定められています。
道路交通法による駐停車のルール
- 車両が夜間、道路にあるときは前照灯(ヘッドライト)、車幅灯(スモールライト)、尾灯(テールランプ)、ハザードランプなどを付けなければならない(第52条)
上記のような灯火義務違反の場合は、追突された側であっても10%〜20%の過失が問われる可能性があります。
追い越し妨害による追突事故
「追い越し車両を確認できていて、道を譲らなければ危険な状況なのに速度を落とさない(避譲義務違反)」、「追い越し車両が横に並んだときにあえて速度を上げる(追い越し時の加速)」など、追い越しをしようとしている車両を妨害したと判断される場合には、追突された側であっても20%〜40%の過失を問われる可能性があります。
同一方向に進行する車両同士
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過失割合(%)
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A
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B
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被追突車Aと追い越し車B
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追い越し禁止場所
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Aに避譲義務違反あり
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20
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80
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Aに道交法27条1項違反(追い越し時の加速)あり
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30
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70
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その他の場所
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Aに避譲義務違反あり
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30
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70
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Aに道交法27条1項違反(追い越し時の加速)あり
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40
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60
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玉突き事故(複数車の追突事故)の過失割合
玉突き事故とは、3台以上の車両が起こす追突事故のことです。
先頭の車両は無傷で後方の2台だけ追突事故を起こすケースや、最後方車両の追突により連鎖的に事故が起こるケースなど、玉突き事故の状況はさまざまであるため、一概にはいえません。
ただし、通常は追突した自動車の責任が一番重くなりますので、その点は注意してください。
自分の過失割合が0だと主張する場合の注意点
- 「明らかに過失ゼロの状況での事故なのに、加害者側から『そちらにも責任がある』と言われて納得できない」
注意点として、上記のように被害者が自身の過失をゼロだと主張する場合、被害者側の保険会社は事故対応に関与できないので交渉を依頼できません。
したがって、被害者が自らまたは弁護士を雇って加害者側の保険会社と交渉をする必要があります。
追突事故の過失割合に納得いかない場合は弁護士に相談
弁護士に相談すれば、事故状況をもとに適切な過失割合を判断してくれます。
もし相手方が提示する過失割合に納得いかない場合は、弁護士に交渉を依頼することで自分の過失割合が下がり、受け取れる賠償金が増額する可能性もあります。
弁護士に依頼すると着手金や成功報酬などがかかりますが、自分や同居家族などが加入している自動車保険に弁護士費用特約が付いていれば、自己負担0円で依頼できる場合もあります。
「ベンナビ交通事故」では、交通事故の対応が得意な全国の弁護士を掲載しており、初回相談無料の法律事務所なども多くあります。
まずは一度相談して過失割合のアドバイスや費用の見積もりを出してもらったうえで、そこから正式に依頼するかどうかを決めるのがよいでしょう。
まとめ
交通事故の過失割合とは、自分と相手方の責任の度合いを数値で表したものです。
追突事故の過失割合は「追突された側0:追突した側100」となるケースが一般的です。
ただし、追突された側が不適切な急ブレーキなどをしていた場合、修正要素として違反者側の過失割合が加算され、獲得できる損害賠償金が変動するケースもあります。
なお、本記事で紹介した内容以外でも過失割合が加算・減算される要素は多々あります。
正確な過失割合を算出するためには、交通事故と法律に関する専門知識が必要になるので、過失割合で悩んでいる方は弁護士に相談してみましょう。