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物損事故の示談交渉ガイド|示談成立の流れや示談金の内訳を解説
物損事故に遭った際は、警察に通報して、自身が契約している保険会社に連絡するなどの対応が必要です。事故で負った損害については、相手方と示談交渉を行って金額を決めることになります。
なお、事故対応を誤ると、法律違反(警察への報告義務違反)が問われたり、保険金を支払ってもらえなかったり、示談金が減額したりすることもあるため、正しい事故対応の知識をつけておきましょう。
この記事では、物損事故の発生から示談成立までの流れや示談金の内訳、示談交渉でよくあるトラブルと対処法、物損事故から人身事故へ切り替える方法などを解説します。
物損事故に遭って示談成立するまでの流れ
物損事故が起きた後は、以下のような流れで手続きを進めます。
警察へ電話をする
事故が起きたら必ずやらなければいけないこととして、警察への通報があります。これは法律で義務付けられていますので、事故当事者である運転者は欠かしてはなりません(道路交通法第72条1項)。
場合によっては、相手から「警察へは報告しないでほしい」と言われたり、自分で「軽い事故だから報告するほどでもない」と判断してしまったりすることもあるかもしれません。しかし、警察への通報を怠った場合、報告義務違反として、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金などの罰則が科される可能性があります(道路交通法第119条1項10号)。
さらに、事故手続きで必要な交通事故証明書が作成されず、保険金が支払われないというリスクも生じます。どれだけ小さな物損事故であっても、必ず警察への連絡は忘れないでください。
加害者の連絡先を聞く
物損事故の被害に遭ったら、相手(加害者)の氏名や住所などを聞きましょう。警察が到着すれば確認作業は行われますが、警察が事故現場に到着する前に相手がその場を立ち去ってしまう可能性もゼロではありません。
相手が立ち去ってしまい、連絡先も分からない状態では、その後の示談交渉も困難でしょう。万が一のことを考えて、事故に遭った際は相手の連絡先を確認しておくことです。
保険会社へ電話をする
一通りの事故対応が終わったら、保険会社へも連絡しましょう。しっかりと保険の適用を受けるためにも、必ず連絡してください。一般的には、事故後60日以内を連絡期限としている保険会社が多いようです。
事故後、数日経ってから連絡しても特に問題はありません。ただし、事故発生から時間が経つと連絡を忘れてしまうこともあり得ますので、事故当日または翌日などの早いうちに連絡した方が良いでしょう。
損害額を確定する
示談交渉を始めるタイミングは、各種の損害額が確定してからです。
人身事故と比べると、物損事故では損害の程度や金額の算出が容易なので、基本的には自動車ディーラーや整備工場が作成した見積書を取り寄せるだけで確定できるでしょう。
示談交渉を行う
交通事故加害者が保険に加入していた場合は、相手保険会社から連絡が入ります。ここからは、相手保険会社の担当者と、損害賠償額や過失割合などについて交渉開始することになります。
交渉が進んで賠償金額が決定すれば示談成立となり、示談書に署名捺印したのち保険金が支払われて、手続きは終了です。相手が保険を利用する場合は相手保険会社から、利用しない場合は直接相手から損害賠償金が支払われます。
なお、被害者側にも一定の過失があり、加害者側にも物損被害がある場合は、被害者も一定の損害賠償義務が生じます。その際、保険会社に連絡すれば担当者が示談交渉を代行してくれますので連絡しましょう。このようなケースでは、保険会社同士で損害額や過失割合などを交渉し、交渉成立すれば賠償金が確定して支払いが行われます。
物損事故の損害の種類
ここでは、物損事故の主な損害の種類について解説します。
修理代
修理代とは、事故車両の破損箇所を修理した際にかかった費用のことです。修理に必要な部品代や工賃などもこれに含まれます。ただし注意点として、修理箇所が事故と関係あるのか・適正な工賃であるか・過剰な修理を依頼していないか、などの点は厳格に審査されると考えておきましょう。
基本的に、修理は「事故前の状態に戻すこと」を目的に行います。補償を期待して必要以上の修理をするのではなく、まずは見積もりを取って相手保険会社と交渉したうえで修理を始めた方が良いでしょう。
評価損
事故による損壊で、車両を修理できても市場価格の減少が認められる場合は、「評価損」として価値減少分を請求できます。
評価損には、技術上の限界から機能・外観に欠陥が残ってしまう「技術上の評価損」と、事故歴が生じたことで取引価格が下落する「取引上の評価損」の2つがありますが、取引上の評価損の方が問題となることが多いです。
目安としては、修理代の2~3割程度とされることが多いですが、人気車種や走行距離が少ない車両であれば、さらに高額になることもあります。このあたりは事案ごとの判断になるでしょう。
代車費用
代車費用とは、車両の修理や買い替えなどの間に代車を手配した場合、請求できる費用です。
車両を修理に出す場合であれば2週間程度、買い替えの場合であれば1ヶ月程度が補償の目安ですが、保険会社の都合で代車を使用する期間が長引いた場合は、その限りではありません。
たとえば、保険会社の調査員による事故車両の確認が遅れてしまい、修理や買い替えに着手できない場合は、相場の期間を超えて請求できる可能性があります。
買替代金
車両の損壊が著しく修理できない場合は、買替代金も請求できる可能性があります。ただし、買替代金として請求できる金額としては、事故車両の時価相当額に限られます。
一般的には、同一の車種・年式・型式・同程度の使用状態・走行距離の自動車を、中古車市場にて取得した場合にかかる価額が基準です。同じ車両の新車への買替費用を補償するわけではありません。
おおよその金額については、ほぼ同等の条件で中古車販売の相場を調べれば分かるでしょう。なお、買い替えに必要な登録費用や自動車取得税なども損害として認められます。
休車損害
タクシーやバスといった営業車両の修理・買い替えが生じたことで営業ができなくなった場合は、その車両を使って営業を継続できていれば得られたはずの利益の喪失分が休車損害となります。
計算方法としては、休車日数からガソリン代・人件費などのコストを控除して算出します。なお、複数の営業車両を保有しており、事故後も休業せずに対応できた場合には請求できません。また、当該車両の代わりに代車を使用していた場合に、代車費用を請求しつつ加えて休車損害を請求することもできません。
積荷損
トラックなどに積載していた荷物が事故によって損壊してしまった場合は、積荷損の請求が可能です。
たとえば、「事故による荷崩れが原因で精密機械が破損して、全て廃棄になった」、「家電製品などを積載しており故障の程度が不明であるため、販売ルートに乗せるのが困難になった」といったケースがこれに該当します。
ただし、相手保険会社は交通事故と積荷の損壊の因果関係について疑うことも多いため、容易には認められません。出発前の積荷の状態を撮影した写真・画像や、実際に損壊した積荷などの証拠を提示して説明する必要があります。
物損事故の示談交渉でよくあるトラブルと対処法
物損事故の被害に遭ったら必ず保険金を受け取れるかというと、必ずしもそうとは限りません。ここでは、物損事故の示談交渉でよくあるトラブルと対処法について解説します。
相手が自賠責保険にしか加入していない
もし相手が任意保険に加入していない場合には、加害者本人から回収するしか方法はありません。
自動車保険には強制加入のもの(自賠責保険)と任意加入のもの(任意保険)があり、通常は両方に加入しているはずです。しかし、稀に任意保険に加入していないケースもあり、この場合は物損被害について保険による補償が受けられません(自賠責保険は物損までカバーしていないため)。
相手が対人賠償の任意保険にしか加入していない
相手が「対物」ではなく、「対人」賠償の任意保険にしか加入していない場合も同様です。上記と同じく、物損に関しては保険金が支払われません。
なお、ケガや負傷については任意保険が適用されますので、これについては対人賠償保険での支払いを求めてください。
相手が非を認めず保険会社に報告をしていない
相手が自分の非を一切認めず、契約している保険会社に事故の連絡をしないというケースもあります。また、相手が保険会社に連絡しても、自身の無過失を主張するということもあるでしょう。
保険会社は、契約者に賠償義務が生じている事故の場合のみ示談交渉を代行することができます。そのため、相手が無過失を主張している場合、相手保険会社は示談交渉を代行できません。この場合、相手と直接交渉することになりますが、もし交渉が難しそうであれば弁護士に相談して解決を図りましょう。
怪我をしているのに物損事故として処理された場合の示談交渉
交通事故による傷害がごく軽度の場合、警察の判断で物損事故として処理されることがあります。たとえ物損事故として処理されても、警察による事故処理の方法と民事上の賠償責任は直結しないので、人身損害の賠償を求めることは可能です。
ただし、当事者の間で事故態様に対する認識に争いがある場合には注意が必要です。
人身事故の場合には、警察により実況見分調書が作成され、この書類は民事上の賠償責任を追及するうえでも重要な証拠となります。一方、物損事故の場合は実況見分調書は作成されず、簡易的な物件事故報告書が作成されるのみとなります。
したがって、事故態様に争いがあり加害者が損害賠償請求に応じない場合は、警察に申し出て人身事故への切り替えを求めるのが有効でしょう。
物損事故から人身事故へ切り替えるには、医師が作成した診断書を警察に提出する必要があります。警察が受理すれば、実況見分や当事者の取り調べなどが行われるため、面倒に感じても素直に協力しましょう。
人身事故として事故処理されれば、加害者には民事的な責任だけでなく、懲役や罰金などの刑事処分や、免許取り消し・停止などの行政処分が科せられる可能性があります。人身事故に切り替えられた場合には加害者にはこのようなデメリットもあるため、「重責を回避したい」と加害者が考えれば示談交渉にも素直に応じる可能性が高まるでしょう。
物損事故を人身事故に切り替える方法
物損事故から人身事故に切り替えるには、病院で診断書をもらい、警察署で切り替えの申請をする必要があります。
病院での受診は、どんなに遅くても事故発生日から1週間以内が良いでしょう。それ以上経過してしまうと、事故とケガの因果関係が認められにくくなります。
明確に期限が設定されているわけではありませんが、なるべく身体への異常やケガが発覚した段階ですぐに受診し、切り替えの申請した方が良いでしょう。
相当の期間内に病院を受診して、負傷している旨の診断書を作成してもらえば、警察に書類提出することで人身事故として事故処理をしてくれます。
物損事故の示談交渉が不安な方は弁護士への相談がおすすめ
物損事故の加害者と示談交渉する場合、車両の修理費用・買替費用・代車費用などについて納得のいく賠償が得られないケースも珍しくありません。また、ケガが軽症のため物損事故として処理された場合には、「警察が物損事故として処理しているのだから治療費は払わない」などと主張してくる可能性もあります。
相手との示談交渉が難航している場合や、相手側の任意保険会社との示談交渉に不安を感じている場合は、弁護士に相談して具体的なアドバイスを受けましょう。
加害者や相手保険会社が賠償に応じない場合は、弁護士が交渉を行うことで、有利な形での問題解決が期待できます。警察が人身事故への切り替えに難色を示している状況でも、弁護士が意見書などを作成してはたらきかけることで、適切に処理してもらえるでしょう。
まとめ
物損事故が発生したら、まずは警察に連絡しましょう。その後、保険会社にも連絡して、損害額が確定したら事故の相手側と示談交渉を始めましょう。
ただし物損事故の場合、相手の保険加入状況や対応姿勢によっては、なかなか交渉がまとまらないことも珍しくありません。特に加害者本人が交渉相手になる場合、まともに交渉が進まない可能性もあります。
弁護士に相談すれば、示談成立に向けて取るべき対応をアドバイスしてくれるため、問題の早期解決が望めます。また、交通事故被害者に代わって交渉対応を代行してくれるほか、適切な示談内容の判断や、人身事故への切り替えなどの対応も期待できるでしょう。相談料無料の法律事務所もあるため、まずはお気軽に法律相談をご利用ください。
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