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飲酒事故にあった際に被害者が知っておくべき対応方法の全て

監修記事
飲酒事故にあった際に被害者が知っておくべき対応方法の全て

飲酒事故とは、酒を飲んだ状態で発生した交通事故を指します。

飲酒事故の加害者には、免許停止などの行政処分や懲役刑などの刑事罰が科されたり、被害者への賠償責任なども生じたりします。

警察庁の発表資料によると、飲酒運転による交通事故は減少傾向にあるものの、毎年2,000件以上は発生しています。

飲酒運転による交通事故件数の推移

引用元:飲酒運転による交通事故件数の推移|警察庁

この記事では、飲酒運転や飲酒事故で科される罰則や、飲酒事故に遭った際の対応方法などを解説します。

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飲酒運転は2種類ある

飲酒運転は、「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の2種類に分類されます。

ここでは、それぞれの定義について解説します。

酒酔い運転

アルコールがどれほど残っているかは関係なく、正常に運転できないほど酒に酔った状態で運転した場合には、酒酔い運転と判断されます。

酒酔い運転の場合、酒気帯び運転よりも重い罰則が設けられており、詳しくは後述します。

酒気帯び運転

呼気中のアルコール濃度が0.15mg/l以上の状態で運転した場合には、酒気帯び運転となります。

酒気帯び運転の場合、「呼気中のアルコール濃度が0.15mg/l以上0.25mg/l未満の場合」と「0.25mg/l以上の場合」で罰則などが異なります。

飲酒運転の罰則

ここでは、飲酒運転に関する罰則について解説します。

民事責任

飲酒事故に遭って自分の車両が壊れたり、けがを負ったりするなどの損害を被った場合は、加害者に対して損害賠償請求できます。

自動車の運転者は自賠責保険への加入が義務付けられており、以下のように被害者は最低限の保険金を受け取ることができます。

  • 被害者がけがを負った場合:最大120万円
  • 被害者に後遺障害が残った場合:最大4,000万円
  • 被害者が死亡した場合:最大3,000万円

行政処分

飲酒運転をした人には、以下のような行政処分が科されます。

  違反点数 処分内容
酒酔い運転 35点 免許取消し(欠格期間3年)
酒気帯び運転
(呼気中のアルコール濃度が0.15mg/l以上0.25mg/l未満)
13点 免許停止(90日間)
酒気帯び運転
(呼気中のアルコール濃度が0.25mg/l以上)
25点 免許取消し(欠格期間2年)

※いずれも前歴やその他の累積点数がない場合

刑事罰

飲酒運転をした人には、以下のような刑事罰が科されます。

  • 酒酔い運転の場合:5年以下の懲役または100万円以下の罰金(道路交通法第117条の2第1号)
  • 酒気帯び運転の場合:3年以下の懲役または50万円以下の罰金(道路交通法第117条の2の2第1号)

なお、道路交通法は2007年に改正されており、飲酒運転者への罰則が強化されたほか、飲酒運転者の周辺者への罰則が新設されました。

飲酒運転者への罰則強化

道路交通法の改正前は、危険運転致死傷罪などの適用から逃れるためにひき逃げに発展したり、飲酒検査を頑なに拒否したりするケースもあったことから、飲酒運転者に対する罰則が強化されることになりました。

飲酒運転者に対する罰則強化は2001年にもおこなわれており、これで2度目となります。

飲酒運転者の周辺者への罰則が新設

道路交通法の改正前は、運転者に車両を貸した人や酒を勧めた人などに対する直接的な罰則がなかったことから、このような飲酒運転者の周辺者に対する罰則も新設されることになりました。

飲酒運転の同乗者に科される罰則

飲酒運転の同乗者については、飲酒運転同乗罪が成立して以下のような罰則が科される可能性があります。

  • 運転者が酒酔い運転をした場合:3年以下の懲役または50万円以下の罰金(道路交通法第117条の2の2第4号)
  • 運転者が酒気帯び運転をした場合:2年以下の懲役または30万円以下の罰金(道路交通法第117条の3の2第2号)

飲酒運転同乗罪には以下のような成立要件があり、ここでは各要件について解説します。

  1. 運転者が酒気を帯びていること
  2. 同乗者が①を認識していること
  3. ①の運転者に対して、自己を運送することを要求または依頼していること
  4. 運転者の車両に同乗していること
  5. 運転者が酒酔い運転または酒気帯び運転していること

①②:運転者が酒気を帯びていること、同乗者が認識していること

同乗者は、運転者が酒気を帯びていることを認識している必要があります。

「酒気を帯びている」とは、通常の状態で身体に保有する程度以上にアルコールを保有している状態を指します。

同乗者が居酒屋などで運転者が飲酒している様子を確認しているのであれば、特段の事情がない限り「酒気帯びの認識がある」と判断されるのが一般的です。

なお、運転者がなにをどれだけ飲んだのかということまでの詳細な認識は必要ありません。

③:①の運転者に対して、自己を運送することを要求または依頼していること

同乗者が運転者に対して、自己を運送することを要求または依頼している必要があります。

要求とは指示すること、依頼とは頼むことを指します。

たとえば、同乗者が眠っており、運転者によって車両に乗せられた場合は飲酒運転同乗罪が成立しない可能性があります。

ただし、同乗者と運転者の関係性や同乗に至るまでの経緯などの状況によっては、飲酒運転同乗罪が成立することもあります。

なお、要求や依頼は同乗前におこなわれる必要はなく、同乗後に行き先を告げた場合でも要求や依頼がおこなわれたと判断されて、飲酒運転同乗罪が成立する可能性があります。

④:運転者の車両に同乗していること

同乗とは、運転者の車両に乗り込むことです。

助手席や後部座席など、乗り込む場所は問いません。

⑤:運転者が酒酔い運転または酒気帯び運転していること

酒酔い状態か酒気帯び状態かは、現場の警察官が、アルコール数値・運転者の歩行状況・受け答えの様子・酒臭の程度・飲酒状況などを踏まえて判断します。

飲酒運転で自動車を提供した人に科される罰則

飲酒運転で車両を提供した人には、車両等提供罪が成立して以下のような罰則が科される可能性があります。

  • 運転者が酒酔い運転をした場合:5年以下の懲役または100万円以下の罰金(道路交通法第117条の2第2号)
  • 運転者が酒気帯び運転をした場合:3年以下の懲役または50万円以下の罰金(道路交通法第117条の2の2第2号)

車両等提供罪には以下のような成立要件があり、ここでは各要件について解説します。

  1. 車両の提供を受ける人が酒気を帯びていること
  2. 車両を提供する人が①を認識していること
  3. 車両の提供を受ける人が、これから車両を運転することになる恐れがあること
  4. 車両を提供する人が③を認識していること
  5. 車両を提供する人が車両を提供していること
  6. 車両の提供を受けた人が車両を運転したこと

①車両の提供を受ける人が酒気を帯びていること、②車両を提供する人が①を認識していること

車両の提供がおこなわれた時点で、提供を受ける人が酒気を帯びていることを認識していれば足り、どれほどの酒気を帯びているかまでの認識は必要ありません。

したがって、提供を受ける人が酒気を帯びる前に車両の提供を受けた場合には、車両等提供罪は成立しません。

③車両の提供を受ける人が、これから車両を運転することになる恐れがあること

「車両を運転することになる恐れがあること」とは、車両を提供すれば酒気を帯びた状態で運転することになる蓋然性があるということを指します。

④車両を提供する人が③を認識していること

④の認識の有無については、車両を提供した人と提供を受けた者の人間関係や、提供を受ける人の飲酒運転に関する言動などから判断されます。

⑤車両を提供する人が車両を提供したこと

提供とは、提供を受ける人が車両を利用可能な状態に置くことを指します。

たとえば、「車両の場所を教えてキーを渡す」などの行為が該当します。

なお、提供する車両の名義が提供者本人でなくても、車両等提供罪が成立することもあります。

⑥車両の提供を受けた人が車両を運転したこと

車。車両提供者については、提供を受けた人が実際に飲酒運転をしたことまでの認識は必要ありません。

飲酒事故の罰則

飲酒事故によって被害者が死傷した場合、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪などが成立する可能性があります。

ここでは、それぞれの成立条件や罰則などを解説します。

過失運転致死傷罪

過失運転致死傷罪は、自動車の運転時に不注意によって人を死傷させた場合に成立する犯罪です。

過失運転致死傷罪の罰則は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です(自動車運転処罰法第5条)。

危険運転致死傷罪

危険運転致死傷罪とは、アルコールや薬物などで正常な運転が困難な状態で運転し、人を死傷させた場合に成立する犯罪です。

危険運転致死傷罪の罰則は、人を負傷させた場合は15年以下の懲役、人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役です(自動車運転処罰法第2条、第3条)。

たとえば、運転者の血中アルコール濃度が基準値を大幅に上回っており、事故直前に蛇行や衝突を繰り返すなどの異常な運転がされていた場合には、危険運転致死傷罪が成立する可能性があります。

飲酒運転・飲酒事故に関する損害賠償請求の判例

ここでは、飲酒運転による交通事故で損害賠償請求がおこなわれた判例を紹介します。

賠償金として約3億円の支払いが命じられたケース

この事例は、加害者が0.3mg/lのアルコールを保有した状態で車両を運転し、車両を誘導するために立っていた被害者に衝突したという交通事故です。

この事故によって、被害者は脳挫傷や遷延性意識障害などの傷害を負って後遺障害が残り、加害者側に対して4億円以上の賠償金を求める裁判を起こしました。

裁判官は、事故状況・双方の過失割合・被害者が負った後遺障害などの損害を総合的に考慮して、加害者側に対して約3億円の支払いを命じました。

賠償金の内訳は以下のとおりです。

  被害者の請求額 判決
加害者に対して 4億2,332万3,964円 2億9,658万2,853円
加害者の父親に対して 550万円 330万円
加害者の母親に対して 550万円 330万円
加害者の子どもに対して 550万円 棄却

【参考記事】千葉地判平成18年9月27日(Westlaw Japan 文献番号 2006WLJPCA09279015)

加害者が飲酒運転をしていた場合の対応方法

ここでは、飲酒事故の被害者になった場合の対応について解説します。

まずは警察や保険会社に連絡する

飲酒事故に遭った際は、まずは警察や保険会社に連絡しましょう。

加害者が任意保険に加入していれば、対人賠償責任保険や対物賠償責任保険などの補償を受けることができます。

過失割合のやり取りは慎重に進める

過失割合とは事故が起きた責任の度合いのことで、過失が小さいほど事故による損害の負担分が減り、獲得金額が増えます。

過失割合は判例を参考に話し合って決定しますが、獲得金額の増減に大きく影響するものであるため、安易に妥協したりするのは避けましょう。

慰謝料請求では弁護士にサポートしてもらう

飲酒事故でけがをした場合は慰謝料を請求できますが、慰謝料には自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準などの算出基準があります。

算出基準のうち最も高額なのは弁護士基準で、なるべく多く慰謝料を受け取りたい人は弁護士に請求対応を依頼することをおすすめします。

加害者が任意保険に加入していない場合

加害者が任意保険に加入していない場合は自賠責保険で対応を進めることになりますが、自賠責保険では最低限の補償しか受けられません。

弁護士に依頼すれば、そのような状況でも依頼者が有利になるように過失割合や慰謝料などの交渉を進めてくれて、自力で対応するよりも納得のいく形での解決が望めます。

飲酒運転について知っておくべき知識

ここでは、飲酒運転について知っておくべき知識を解説します。

飲酒していなくても飲酒運転になる場合もある

酒を飲んでいなくても、アルコールが含まれる食品を摂取すれば体内にアルコールが取り込まれます。

その結果、呼気中のアルコール濃度が0.15mg/l以上になって車両を運転した場合には、飲酒運転になります。

一例として、以下のような市販チョコレートにはアルコールが含まれており、食後に運転すると飲酒運転になる恐れがあります。

チョコの名前 アルコール度数
バッカス(ロッテ) 3.2%
ラミー(ロッテ) 3.7%
メルティーキッス くちどけラム&レーズン(明治) 3.7%
カルヴァドス(ロッテ) 2.6%
ストロベリーブランデー(ロッテ) 3.0%

飲酒事故の加害者は保険金を受け取れない

飲酒事故の加害者は、対物賠償保険や対人賠償保険だけでなく、加害者自身の物損や負傷を補填する保険に加入している場合もあります。

あくまでも対物賠償保険や対人賠償保険は被害者の救済が目的の保険であるため、加害者が飲酒事故を起こした場合でも、被害者は保険会社からの補償を受けることができます。

しかし、加害者自身の物損や負傷を補填するような保険については、加害者が飲酒事故を起こした場合に利用が制限されます。

たとえば、以下のような保険については、飲酒事故の加害者は保険金を受け取ることができません。

  • 人身傷害保険
  • 搭乗者損害保険
  • 無保険車損害保険
  • 自損事故保険
  • 車両保険

睡眠をとってもアルコールが残っている場合もある

国土交通省の「飲酒に関する基礎教育資料」では、アルコールの分解能力は1時間あたり4gで算出することを推奨しています。

たとえ飲酒後に数時間程度の睡眠をとっていても、飲酒量によっては体内にアルコールが残っていて、運転をすると飲酒運転になることがあります。

アルコールが分解されるまでの目安は以下のとおりです。

飲酒に関する基礎教育資料

引用元:飲酒に関する基礎教育資料|国土交通省

まとめ

飲酒運転は犯罪行為であり、運転者には行政処分や刑事罰などが科されるほか、同乗者や車両を提供した人なども刑事罰の対象になります。

飲酒事故に遭った際は、保険会社とのやり取りや慰謝料の交渉などをすることになりますが、弁護士であれば事故後に必要な手続きを代わりに進めてくれます。

ほかにも、適切な判例を探して過失割合の交渉を有利に進めてくれたり、弁護士基準を用いることで慰謝料を増額できたりすることもあり、自力で対応するのが不安な人には弁護士がおすすめです。

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この記事の監修者
佐々木 光嗣 (札幌弁護士会)
2018年2月に札幌パシフィック法律事務所を設立。スタッフも一丸となり「身近なリーガルパートナー」として迅速な問題解決を目指す。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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