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交通事故だけでなく、自転車事故、労働問題、離婚、相続トラブルなど幅広い法的トラブルで利用することができます。
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交通事故の加害者は、被害者に対して損害賠償責任を負うほか、自らもケガや車の破損などによって大きな損害を受けることがあります。
被害者に生じた損害の賠償については任意保険によってカバーされますが、自らの損害については原則として自己負担となります。
また、任意保険に加入していない場合には、被害者に対する損害賠償についても自己負担が生じることがあるので注意が必要です。
本記事では、交通事故の加害者が自己負担すべき費用について詳しく解説します。
交通事故を起こしてしまい、大きな自己負担が発生するのではないかとお悩みの方は、本記事を参考にしてください。
交通事故の加害者は、事故によって発生した損害について自己負担が発生することがあります。
被害者・加害者にそれぞれ生じた損害について、どのような場合に加害者の自己負担が発生するのでしょうか。
被害者が受けた損害については、加害者が不法行為に基づく損害賠償責任を負います(民法709条)。
賠償の対象となる損害項目は、治療費・休業損害・慰謝料・逸失利益・物損など多岐にわたり、トータルで高額となるケースも少なくありません。
ただし、加害者が自賠責保険および任意保険に加入している場合には、保険金によって損害賠償責任がカバーされます。
任意保険に加入していれば、対人・対物の損害賠償が無制限に補償されるのが一般的です。
この場合、被害者の損害について加害者の自己負担は発生しません。
これに対して、加害者が任意保険に加入していない場合には、自賠責保険の限度額を超える被害者の損害が加害者の自己負担となります。
ただし、被害者にも過失が認められる場合には、過失相殺によって損害賠償責任が減額されます(民法722条2項)。
この場合、加害者の自己負担は減額または免除されることがあります。
加害者自身のケガや車の破損などによる損害については、原則として加害者の自己負担となります。
しかし、被害者側にも過失が認められる場合は、過失割合に応じた金額を被害者に対して請求可能です。
被害者が自賠責保険および任意保険に加入している場合には、被害者側の保険会社に対して保険金を請求できます。
ただし、自賠責保険については、加害者側の過失が7割以上の場合は減額される点に注意が必要です。
また、加害者が自動車保険その他の保険に加入している場合には、その保障内容に応じて保険金の支払いを受けられることがあります。
交通事故の被害者が受けた損害について、加害者の自己負担が発生するかどうかをまとめると、以下のようになります。
→保険会社が全額支払うため、自己負担は発生しない
任意保険に加入していない場合
→自賠責保険の限度額を超える部分は自己負担
自賠責保険にも加入していない場合
→全額自己負担
任意保険(自動車保険)は、対人・対物の賠償が無制限とされているのが一般的です。
対人・対物賠償無制限の任意保険に加入していれば、加害者が被害者に対して負う損害賠償責任については、保険会社が全額保険金を支払います。
したがってこの場合、被害者の損害について加害者の自己負担は発生しません。
自動車の運転者の中には、任意保険に加入しておらず、自賠責保険のみ加入している方もいらっしゃいます。
このような方が交通事故の加害者となった場合、自賠責保険の限度額までは被害者に対して保険金が支払われますが、それを超える被害者の損害については加害者が自己負担で賠償しなければなりません。
自賠責保険の限度額については、後で詳しく紹介します。
また、自賠責保険は対人賠償のみを補償の対象としているため、対物賠償については全額加害者の自己負担となります。
ただし、被害者にも過失が認められる場合には、加害者の損害賠償責任が過失相殺によって減額されます(民法722条2項)。
その結果、加害者の責任額が自賠責保険の限度額以下となった場合には、加害者の自己負担は発生しません。
自動車を運転の用に供する者には、自賠責保険への加入が法律上義務付けられています(自動車損害賠償保障法5条)。
しかしごく稀に、自賠責保険にも加入せずに自動車を運転する方がいらっしゃいます。
このような方が交通事故の加害者となった場合、被害者に生じた損害全額を自己負担で賠償しなければなりません(被害者に過失が認められる場合は、過失相殺によって損害賠償責任が減額されます)。
なお、自賠責保険を付保していない自動車を運行の用に供することは犯罪であり、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されることがあるので注意が必要です(自動車損害賠償保障法86条の3第1項第1号)。
交通事故の加害者が受けた損害について、加害者の自己負担が発生するかどうかをまとめると、以下のようになります。
加害者の過失割合が10割の場合
→加害者自身の損害は全額自己負担
被害者側にも過失がある場合
→過失割合に応じて損害賠償を請求可能、さらに自賠責保険の保険金も請求可能
※加害者自身が加入している保険によって、損害がカバーされることがある
交通事故について加害者にすべて(10割)の過失があり、被害者側には一切過失が認められない場合には、加害者自身が受けた損害は原則として全額自己負担となります。
ただし後述するように、加害者自身が加入している保険から保険金の支払いを受けられることがあります。
交通事故について被害者側にも過失がある場合には、加害者自身が受けた損害についても、過失割合に応じて被害者に損害賠償を請求可能です。
たとえば、以下のような設例を考えます。
上記の設例において、加害者が受けた損害200万円を過失割合(2割対8割)で分担すると、被害者が40万円、加害者が160万円を負担することになります。
したがって加害者は、自らが受けた損害のうち、40万円を被害者に対して請求できます。
ただし、被害者が受けた損害についても過失割合に応じて分担する必要があります。
上記の設例では、被害者が受けた損害500万円を過失割合(2割対8割)で分担すると、被害者が100万円、加害者が400万円を負担することになります。
したがって加害者は、被害者が受けた損害のうち、400万円を被害者に対して支払う義務を負います。
上記を通算すると、結局加害者が被害者に対して360万円を支払うことになります(次に解説する自賠責保険の保険金については、ここでは度外視しています)。
加害者が任意保険に加入していれば全額保険金でカバーされますが、任意保険未加入の場合は、自賠責保険の限度額を超える部分が自己負担となります。
加害者自身が受けた損害の一部を被害者側に請求できるとしても、トータルでは加害者側の自己負担が発生することがある点に注意が必要です。
交通事故について被害者側にも過失が認められる場合には、加害者も被害者が加入している自賠責保険から保険金の支払いを受けられます。
自賠責保険は被害者保護を目的としているため、一般の民事損害賠償とは異なり、過失相殺が厳格に適用されません。
ただし、加害者に重大な過失(7割以上)がある場合に限って、その過失の程度に応じて保険金が減額されます。
過失割合 |
減額割合(後遺障害・死亡) |
減額割合(傷害) |
7割未満 |
減額なし |
減額なし |
7割以上8割未満 |
2割減額 |
2割減額 |
8割以上9割未満 |
3割減額 |
2割減額 |
9割以上10割未満 |
5割減額 |
2割減額 |
たとえば、以下のような設例を考えます。
上記の設例において、自賠責保険基準に基づく加害者の損害額は、いずれも自賠責保険の限度額(傷害120万円・後遺障害14級75万円)の範囲内です。
しかし加害者には8割の過失が認められるため、傷害については2割、後遺障害については3割、自賠責保険の保険金がそれぞれ減額されます。
したがって、加害者に対して支払われる自賠責保険の保険金の額は、傷害80万円・後遺障害49万円の計129万円です。
なお、自賠責保険の保険金と、被害者が支払う損害賠償を両方受け取ることはできません。
自賠責保険の保険金を受給した場合には、その金額が被害者の損害賠償責任額から控除されます。
交通事故によって加害者自身が受けた損害については、加害者が加入している保険によってカバーされることがあります。
(例)
(a)車両保険
→加害者が所有する車両が破損した場合に、修理費や買い替え費用などが補償されます。
(b)人身傷害補償保険
→加害者や同乗者が負傷した場合に、治療費や休業損害などの人身損害が補償されます。
(c)医療保険・傷害保険
→自動車事故に限らず、加入者が入通院する際の費用などが補償されます。
(d)収入保障保険
→交通事故によるけがの治療やリハビリなどの目的で、加害者が仕事を休まざるを得なくなった場合に、減少した収入が補償されます。
自動車保険をはじめとして、ご自身が加入している保険の補償内容を確認しましょう。
交通事故の加害者が任意保険未加入だった場合には、自賠責保険の限度額を超える被害者の損害額を加害者自ら賠償しなければなりません。
自賠責保険の限度額、および被害者側に生じ得る損害の項目や算定方法などを紹介します。
自賠責保険の限度額は、以下の3種類の損害についてそれぞれ設定されています。
以下に挙げる傷害による損害については、1人につき120万円が自賠責保険の限度額とされています。
損害の項目 |
損害の内容 |
支払基準 |
治療費 |
診察料・手術料・投薬料・処置料・入院料など |
治療に要した、必要かつ妥当な実費 |
看護料 |
原則として12歳以下の子供に近親者等が付き添った場合、または医師が看護の必要性を認めた場合における、入院中の看護料・自宅看護料・通院看護料 |
入院1日4,200円 自宅看護・通院1日2,100円 ※上記の額を上回る収入の減少を立証した場合は、近親者につき1日1万9,000円、それ以外は地域の家政婦料金を限度に実額が支払われます。 |
諸雑費 |
入院中に要した雑費 |
原則として1日1,100円 |
通院交通費 |
通院に要した交通費 |
通院に要した、必要かつ妥当な実費 |
義肢等の費用 |
義肢・義眼・眼鏡・補聴器・松葉杖などの費用 |
必要かつ妥当な実費 ※眼鏡の費用は5万円が限度 |
診断書等の費用 |
診断書・診療報酬明細書などの発行手数料 |
発行に要した、必要かつ妥当な実費 |
文書料 |
交通事故証明書・印鑑証明書・住民票などの発行手数料 |
発行に要した、必要かつ妥当な実費 |
休業損害 |
事故の傷害によって発生した収入の減少(有給休暇の使用、家事従事者を含む) |
原則として1日6,100円 ※上記の額を上回る収入の減少を立証した場合は、1日1万9,000円にその実額が支払われます。 |
慰謝料 |
交通事故による精神的・肉体的な苦痛に対する補償 |
1日4,300円 ※対象日数は被害者の傷害の状態、実治療日数などを勘案して治療期間内で決められます。 |
後遺障害による損害としては、逸失利益と慰謝料等が補償の対象となります。
限度額は、逸失利益と慰謝料等を通算した額が、後遺障害等級に応じて定められています。
損害の項目 |
損害の内容 |
支払基準 |
逸失利益 |
後遺障害によって労働能力が失われたことに伴い、将来発生するであろう収入の減少 |
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 喪失期間に対応するライプニッツ係数 |
慰謝料等 |
後遺障害による精神的・肉体的な苦痛に対する補償 |
下表参照 |
<慰謝料等の支払基準>
後遺障害等級 |
慰謝料等の額 |
1級 |
1,150万円 ※要介護1級の場合は1,650万円 |
2級 |
998万円 ※要介護2級の場合は1,203万円 |
3級 |
861万円 |
4級 |
737万円 |
5級 |
618万円 |
6級 |
512万円 |
7級 |
419万円 |
8級 |
331万円 |
9級 |
249万円 |
10級 |
190万円 |
11級 |
136万円 |
12級 |
94万円 |
13級 |
57万円 |
14級 |
32万円 |
※慰謝料等の額は、1級~3級で被扶養者がいれば増額されます。
<後遺障害による損害の支払限度額>
後遺障害等級 |
自賠責保険の限度額 |
1級 |
3,000万円 ※要介護1級の場合は4,000万円 |
2級 |
2,590万円 ※要介護2級の場合は3,000万円 |
3級 |
2,219万円 |
4級 |
1,889万円 |
5級 |
1,574万円 |
6級 |
1,296万円 |
7級 |
1,051万円 |
8級 |
819万円 |
9級 |
616万円 |
10級 |
461万円 |
11級 |
331万円 |
12級 |
224万円 |
13級 |
139万円 |
14級 |
75万円 |
以下に挙げる死亡による損害については、1人につき3,000万円が自賠責保険の限度額とされています。
損害の項目 |
損害の内容 |
支払基準 |
葬儀費 |
通夜・祭壇・火葬・墓石などの費用(墓地・香典返しなどは除く) |
100万円 |
逸失利益 |
被害者が死亡しなければ将来得たであろう収入から、本人の生活費を控除したもの |
収入・就労可能期間・被扶養者の有無などを考慮して算出 |
慰謝料(本人) |
被害者本人の慰謝料 |
400万円 |
慰謝料(遺族) |
被害者の遺族の慰謝料 ※請求権者は被害者の父母・配偶者・子 |
請求者の人数に応じて以下の金額 1人:550万円 2人:650万円 3人以上:750万円 ※被害者に被扶養者がいるときは、さらに200万円を加算 |
交通事故の被害者が受ける損害の項目としては、以下の例が挙げられます。
損害の項目 |
損害の内容 |
損害額の算定方法 |
治療費 |
交通事故によるケガの治療やリハビリにかかった費用 (例)診察料・手術料・投薬料・処置料・入院料など |
治療に要した、必要かつ妥当な実費 |
通院交通費 |
交通事故によるケガの治療やリハビリのため、医療機関へ通院する際にかかった交通費 |
(a)公共交通機関 経路が合理的である限り、実費全額 (b)自家用車 1キロメートル当たり15円程度 (c)タクシー 利用の必要性が認められる場合に限り、乗車料金相当額 |
装具・器具購入費 |
義歯・義眼・義手・義足・車いす・補聴器・かつら・眼鏡・コンタクトレンズ・介護ベッドなどの購入費用 |
必要かつ妥当な実費 |
付添費用 |
入院・通院する被害者に付き添いが必要な場合の費用 |
(a)家族などの近親者が付き添う場合 入院時:1日当たり6,500円程度 通院時:1日当たり3,300円程度 (b)職業付添人(看護師・介護福祉士など)に付き添いを依頼した場合 その必要性が合理的に認められる限り、実費相当額 |
入院雑費 |
入院中に要した雑費 |
1日当たり1,500円程度 |
休業損害 |
事故の傷害によって発生した収入の減少(有給休暇の使用、家事従事者を含む) |
減少した賃金の実額 ※自営業者については、前年度の確定申告に基づく収入額をベースに休業損害の金額を算定する ※専業主婦(専業主婦)については、賃金センサスの数値を基に休業損害の金額を算定する |
介護費用 |
要介護状態となった場合における、将来にわたる介護費用 |
将来介護費の日額×365×平均余命に対応するライプニッツ係数 ※将来介護費の日額は、以下のとおり (a)常時介護の場合 1日当たり8,000円程度 (b)随時介護の場合 1日当たり6,000円程度 |
入通院慰謝料 |
交通事故による精神的・肉体的な苦痛に対する補償 |
「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」別表Ⅰまたは別表Ⅱによる |
後遺障害慰謝料 |
後遺障害による精神的・肉体的な苦痛に対する補償 |
下表参照 |
死亡慰謝料 |
死亡による精神的・肉体的な苦痛に対する補償 |
下表参照 ※被害者本人・遺族の死亡慰謝料の合算額 |
逸失利益 |
後遺障害によって労働能力が失われたことまたは死亡に伴い、将来発生するであろう収入の減少 |
1年当たりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数 ※労働能力喪失率については下表参照 |
物的損害 |
自動車の破損等によって生じた損害 (例)修理費・代車費用・評価損・休車損害など |
必要かつ妥当な実費、その他の合理的な費用等 |
<後遺障害慰謝料の目安額>
後遺障害等級 |
後遺障害慰謝料 |
1級 |
2,800万円 |
2級 |
2,370万円 |
3級 |
1,990万円 |
4級 |
1,670万円 |
5級 |
1,400万円 |
6級 |
1,180万円 |
7級 |
1,000万円 |
8級 |
830万円 |
9級 |
690万円 |
10級 |
550万円 |
11級 |
420万円 |
12級 |
290万円 |
13級 |
180万円 |
14級 |
110万円 |
<死亡慰謝料の目安額>
被害者の家庭内における立場 |
死亡慰謝料 |
一家の支柱 |
2,700万円~3,100万円 |
一家の支柱に準ずる立場(配偶者など) |
2,400万円~2,700万円 |
その他 |
2,000万円~2,500万円 |
<逸失利益に関する労働能力喪失率>
後遺障害等級 |
労働能力喪失率 |
1級 |
100% |
2級 |
100% |
3級 |
100% |
4級 |
92% |
5級 |
79% |
6級 |
67% |
7級 |
56% |
8級 |
45% |
9級 |
33% |
10級 |
27% |
11級 |
20% |
12級 |
14% |
13級 |
9% |
14級 |
5% |
※死亡した場合は100%
加害者は原則として、被害者に生じた損害の実額について賠償責任を負います。
自賠責保険基準に基づく算定額は、実際の損害額に不足するケースが多く、不足額が任意保険未加入の加害者の自己負担となります。
ただし、過失相殺によって損害賠償責任が減額される場合は、自己負担も減額または免除されることになります。
交通事故による損害に関する加害者の自己負担額は、主に以下のいずれかの手続きによって決まります。
加害者側と被害者側が交渉をおこない、損害賠償の金額や精算方法などを取り決めます。
加害者が任意保険に加入していれば保険会社が示談交渉をおこないますが、任意保険未加入の場合は自ら示談交渉をおこなわなければなりません。
示談交渉では、加害者側・被害者側の双方が損害賠償の金額等を提示し合い、互いに歩み寄って合意による解決を目指します。
示談交渉がまとまらない場合、被害者は最終的に、裁判所に対して訴訟を提起する可能性が高いです。
訴訟では、被害者側が損害の内容・額・事故との因果関係、および加害者側の過失などを立証します。
加害者側は、被害者側の立証に対して反論をおこないます。
裁判所は、被害者・加害者双方の主張を審査し、判決によって結論を示します。
損害賠償を命ずる判決が確定した場合には、加害者は被害者に対して、判決内容に従い損害を賠償しなければなりません。
損害賠償を怠ると、強制執行によって財産を失うおそれがあるので十分ご注意ください。
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