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自動車損害賠償保障法(じどうしゃそんがいばいしょうほしょうほう)とは、交通事故の被害者救済を主な目的として昭和30年に制定された法律で、交通事故で死傷した被害者から加害者に対する責任追及を確立し、被害者の保護を図るため、故意・過失の証明責任を加害者側に負わせる民事損害賠償責任の規定を記したものです。
小難しい名前が並びましたが、簡単に言えば自賠責保険(強制保険)のことです。この自賠責保険に加入しなければ運転手は車を行動で走らせることができず、もし未加入の場合は罰則があたえられることになります。(参考:自賠責保険の基本的な特徴)
自動車損害賠償保障法は、自賠責保険に関する規定を主に記した法律で、複雑に絡みあう法律を紐解く際に、特に自賠責保険に関わる知識を得ようとする際には必ず目を通しておくべきものだと言えます。
しかし、自動車損害賠償保障法の全てに目を通すのは難しいと思いますので、今回は自動車損害賠償保障法を知る上で押さえておくべきポイントをご紹介していこうと思います。
自動車損害賠償保障法は以下のような条文で構成されており、簡単に言えば交通事故の加害者の責任について言及している法律です。
・第一章 総則(第一条・第二条)
・第二章 自動車損害賠償責任(第三条・第四条)
・第三章 自動車損害賠償責任保険及び自動車損害賠償責任共済
・第一節 自動車損害賠償責任保険契約又は自動車損害賠償責任共済契約の締結強制(第五条―第十条の二)
・第二節 自動車損害賠償責任保険契約及び自動車損害賠償責任共済契約(第十一条―第二十三条の四)
・第二節の二 指定紛争処理機関(第二十三条の五―第二十三条の二十一)
・第三節 自動車損害賠償責任保険事業及び自動車損害賠償責任共済事業(第二十四条―第三十条)
・第四節 自動車損害賠償責任保険審議会(第三十一条―第七十条)
・第四章 政府の自動車損害賠償保障事業(第七十一条―第八十二条の二)
・第五章 雑則(第八十二条の三―第八十六条)
・第六章 罰則(第八十六条の二―第九十二条)
詳しくは「自動車損害賠償保障法」に全文が載っています。
自動車損害賠償責任保険はいわゆる「自賠責保険」のことで、自動車を運行する際、必ず加入を義務づけられているものです。この自賠責保険に入っていない自動車を運行することは、自動車損害賠償保障法5条で禁止されており、これに違反した場合1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられることになっています。同法86条の3第1号。
第八十六条の三:次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一:第五条の規定に違反した者
二:第二十三条の九第一項の規定に違反して、その職務に関して知り得た秘密を漏らし、又は自己の利益のために使用した者
三:第八十四条の二第二項又は第三項の規定に違反した者
交通手段が発展したことに比例して、交通事故も避けられない大きな問題となっており、自動車事故の件数やその被害の大きさも年々上昇傾向にあります。例えば、日弁連交通事故相談センターへの相談件数は昭和56年以降右肩上がりで増加を続けており、平成25年には過去最高の47,665件となっています。
引用:「日弁連交通事故相談センター」
こうした事故の増加は加害者に対する損害賠償請求の原因になりますが、もし加害者側に資力がない場合、被害者が十分な補償を受けられない事態も考えられます。そこで、被害者保護の観点から生み出された制度が自動車保険であり、加害者が被害者に対して最低限の補償を受けられるようにと定められたのが「自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)」です。
自動車損害賠償保障法第三章第一節第五条:責任保険又は責任共済の契約の締結強制
自動車は、これについてこの法律で定める自動車損害賠償責任保険(以下「責任保険」という。)又は自動車損害賠償責任共済(以下「責任共済」という。)の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない。
必ず加入させることで強制的にでも補償をさせようという公的な自動車保険のため、強制保険とも言われています。
自賠責保険が「強制保険」である理由についてはすでにお伝えした通りですが、具体的にどのよう内容を定めた法律なのかを噛み砕いていきましょう。
自賠責保険に加入しないという理由だけで、刑事処分(懲役)まで科すことからも、自賠責保険の強制加入を法が要求しているといことが伺えます。
自賠責保険の保険金(慰謝料)は対人にしか支払われませんので、「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」が加害者側の自賠責保険から被害者に対して支払われます。自賠責保険では対人補償しかされないからこそ、対物補償をつけるために任意の自動車保険に加入する必要が出てきます。
自賠責保険では1日あたり一律で4,300円(※2020年3月31日以前に発生した事故では、4,200円が適用されます)と支給額が決まっており、これに治療の期間を足した総額を算出することになります。
1:入院期間+通院期間
2:実通院日数(入院期間+通院期間の中で実際に病院に通った日数)×2
この2つの計算式を比べて、日数が少ない方を採用します。
交通事故で後遺症になるほどの怪我を負った場合で、さらにその後遺症が等級に認定された場合に支払われるものです。
第1級 |
第2級 |
第3級 |
第4級 |
第5級 |
第6級 |
第7級 |
1,150万円 (1,100万円) |
998万円 (958万円) |
861万円 (829万円) |
737万円 (712万円) |
618万円 (599万円) |
512万円 (498万円) |
419万円 (409万円) |
第8級 |
第9級 |
第10級 |
第11級 |
第12級 |
第13級 |
第14級 |
331万円 (324万円) |
331万円 (245万円) |
190万円 (187万円) |
136万円 (135万円) |
94万円 (93万円) |
57万円 |
32万円 |
被害者が死亡した場合、そのご遺族には保険金(慰謝料)が支払われることになります。この死亡慰謝料は、亡くなった方ご本人に対する慰謝料と、ご遺族に対する慰謝料とに分かれています。
自賠責 |
||
本人の慰謝料 |
400万 |
|
遺族の慰謝料 |
被害者に |
被害者に |
請求権者1人 |
750万 |
550万 |
請求権者2人 |
850万 |
650万 |
請求権者3人以上 |
950万 |
750万 |
傷害によって休業したために得られなかった収入を「休業損害」として賠償請求でき、自賠責保険における休業損害は以下の計算式で算定できます。
【休業損害 = 5700円 × 休業日数】
1日の基礎収入額が5700円を超えると認められる場合には、その実額を1日当たりの基礎収入額とする場合があります。※1日19,000円が限度
保険会社は、保険金等の請求があつたときは、遅滞なく、国土交通省令・内閣府令で定めるところにより、支払基準の概要その他の国土交通省令・内閣府令で定める事項を記載した書面を当該請求を行つた被保険者又は被害者に交付しなければならない。(第十六条の四)
このように定められています。つまり、被害者が損害賠償を請求した場合は、保険会社はそれに応じる義務があるということですね。よく保険金の支払いがされないという話を聞きますが、これは犯罪ですので、おそらく「“希望の”保険金が支払われない」ということだと思います。ただ、こういったケースはよく起こりますので、示談交渉の際にはポイントを押さえる必要があります。
交通事故が起きた場合、加害者はが運行供用者責任又は不法行為責任に基づき損害賠償の義務を負います。そして、加害者は当該支払をした限度で自賠責保険に対して負担を求めることができます(自賠法15条)。
これを「加害者請求」と呼んでいます。他方、被害者が自賠責保険会社に対して直接損害の賠償を求めることを「被害者請求(16条請求)」と呼んでいます。
第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。(第十六条 )
交通事故被害にあった場合、加害者が任意保険に加入していれば、補償の対応は基本的に任意保険会社が行います。したがって、被害者は任意保険会社から補償を受ければ足り、自賠責保険に対する請求は加害者(任意保険会社)が行うことになります。
もっとも、交通事故で後遺症がのこってしまったので等級認定を受けたいという場合はこれを任意保険会社に任せてしまうと、十分な等級を受けられない可能性もあります。 そのため、このような場合は被害者請求を行うことを推奨しています。
責任保険の保険金額は、政令で定める。前項の規定に基づき政令を制定し、又は改正する場合においては、政令で、当該政令の施行の際現に責任保険の契約が締結されている自動車についての責任保険の保険金額を当該制定又は改正による変更後の保険金額とするために必要な措置その他当該制定又は改正に伴う所要の経過措置を定めることができる。(第十三条)
つまり、被害者が何人いても良い。自賠責保険の契約期間であれば複数回の交通事故が発生しても自賠責保険で対応できるという事を言っています。
自動車損害賠償保障法につて、普段は意識することはほぼ無いとは思いますが、いざという際には参考にして頂ければと思います。
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