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交通事故示談書の雛形|被害者のための作成マニュアル

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
交通事故示談書の雛形|被害者のための作成マニュアル

交通事故に遭い、加害者側と示談交渉を行う事になった際は、必ず示談書を作成することです。

交通事故で示談交渉を行うとき、保険会社や弁護士が間に入るのであれば問題ないでしょうが、当事者同士が口頭で交わした約束でも法的には示談成立とみなされ、場合によっては被害者に不利になり、相場以下の慰謝料や損害賠償金しか受け取れないといったことも起こりえます。

この記事では、加害者にしっかり賠償金を支払ってもらうための示談書の作成方法を解説します。

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交通事故の示談書の書き方と注意点

示談書は私文書と呼ばれ、特に決まったフォーマットもないため、文書作成のテンプレートを利用しても大丈夫ですし、弁護士などの専門家に相談するのも良いでしょう。

示談書の雛形・テンプレートを用意する

示談には決まった作成形式はありませんので、手書きでもパソコンで作成しても構いません。また多少不備なところがあったとしても、通常問題になることは無いでしょう。以下はサンプルです。

※スマホの場合は右にスライドしてください。

示 談 書のサンプル
 

事故発生日時

 東京都新宿区西新宿●●●交差点

事故発生場所

 令和●●年 ●●月 ●●日



 


 


住所

 東京都新宿区西新宿●●-●● 

氏名

 匿名太郎   TEL:

住所

 保有者に同じ

氏名

 保有者に同じ

証明書番号

 ●●—●●●●●●

登録車両番号

 新宿●●●●●●

車種

自小乗

車台
番号

 ●●●●●●●●

住所

 東京都新宿区西新宿

氏名

 太郎アシロ

 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

1:加害者は被害者に対し、治療費として100,000円、休業補償として380,000円

2:慰謝料として500,000円 合計:980,000円の支払い義務のあうことを認める

令和●年 ●月 ●日までに支払うものとする

本事故による後遺障害が生じたときは別途協議する。

 
上記の条件を持って示談解決いたしました。今後いかなる事情が生じても双方とも本件に関し損害賠償、その他の名義のいかんに関わらず一切の異議申立をいたさないことはもちろん。訴訟等の放棄いたすことを確約いたしましたので、後日のため本示談書●通を作成し、双方連署、なつ印いたします。
 


令和 ● 年 ● 月 ● 日 
 
住   所         
加 害 者              
氏   名         


住   所         
被 害 者              
氏   名         


 住   所         
立 会 人              
氏   名         

お互いに署名・捺印する

当事者が複数人いる場合は、全員の署名と捺印をします。なお未成年の場合は、両親が署名・捺印する必要があります。

示談書として効力を持たせるための注意点

示談書は個人で作ると漏れや抜けが発生し、示談書としての効力を発揮しない場合もあります。以下で、注意すべきポイントを確認しておきましょう。 

署名・捺印は必ずする

示談書には署名と捺印の両方を必ずしてください。この二つを行う目的は以下の2点です。

  1. 示談書の作成者が加害者と被害者本人であることの確認
  2. 加害者と被害者の双方ともに、示談書の内容に合意したことの確認

 
実際には加害者と被害者の署名か捺印のどちらかがあれば、真意の確認があったとも考えられますが、万が一を考えて、両方あった方がより安全と言えます。

シャチハタは避ける

シャチハタはおすすめできません。シャチハタはゴムの素材ですので、劣化等によってハンコの印影が変わる可能性があるほか、本人確認の信用性が乏しいため、重要書類では避けた方が賢明でしょう。

示談書が複数あっても割印の必要はない

割印や契印がなくても示談書の効力には直接的に影響しません。もっとも、万一の偽造などに備えて、割印、契印をしておいた方が安心できるでしょう。

書き方を間違えても無効にはならない

示談書が無効になるかどうかは何を間違えたかにもよりますが、基本的に書き方を間違えた程度では法的効力に影響はありません。しかし、示談する相手方を間違えた場合や、示談内容に勘違いなどがあった場合は、無効となることがあります。
 
また合意内容と示談書の文面が異なる場合でも、示談書の文面通りの効力を発揮する可能性もあるため、なるべくミスのないよう慎重に作成しましょう。

交通事故の示談書に記載すべき内容

次に、示談書に記載すべき内容について解説していきます。

1:交通事故の事実関係

交通事故の発生日時や事故を起こした場所(住所)、加害者の車両登録番号など、事故の発生状況などを具体的に記載します。この事実内容は、交通事故の状況を加害者や被害者の意見に偏らないように、双方が納得できる内容にする必要があります。
 
そのため、事故の発生年月日や場所、加害者と被害者の名前と住所、被害者の負った怪我の状況などは、警察の交通事故証明書に基づいて明記するのがよいでしょう。

2:示談金額

後遺障害や慰謝料などの金額を算出して、いくらで示談するのかを決めます。金額はお互いが納得すればいくらでもよいため、あまり相場という概念はありません。
以下はモデルケースですが、金額等はあくまで参考値です。実際の示談金額をどのように算定すべきかはケース・バイ・ケースです。

15歳・女子中学生の場合

入院35日・通院日数4ヶ月・後遺症なし
損害賠償額(示談金)= 150万円

34歳会社員男性の場合

入院300日・通院300日・月収40万円・後遺障害9級が認定
損害賠償額(示談金)= 3000万円

3:過失割合

加害者と被害者の過失割合がどのようになっているのかも明文化しましょう。

4:後遺障害等級の内容

交通事故が原因で後遺障害が残った場合は、「第何級に該当するのか」「後遺障害慰謝料はいくら発生するのか」を記載します。

5:示談金の支払い期日・方法の決定

示談金の支払い期日のほか、一括払いなのか分割払いなのか、どういった方法で支払うのか(振り込み・手渡しなど)などを決めます。

6:示談金が支払われなかった場合の対応

支払い期日になっても支払われなかった場合や、示談内容と違う金額が振り込まれた場合などに備えて、あらかじめ違約金や遅延損害金の利率なども決めておくと良いでしょう。
 
また、加害者側の資力が十分では無い場合や、後払いや分割払いとなる場合には、確実に支払ってもらえるような項目を入れると良いでしょう。


示 談 条 件


1.甲は、乙に対し金100万円を支払うこととし、これを、令和〇年4月末日から同年12月末日まで合計10回にわたり、毎月末日限り金10万円ずつ、乙方に持参または送金して支払う。

2.甲が、支払いを一度たりとも怠ったときは、乙からの催告を要せずして当然に期限の利益を失い、甲は乙に対し、直ちに、残金全額およびこれに対する期限の利益喪失の日の翌日から支払い済みまで年15パーセントの割合による金員を支払わなければならない。

 


「年15パーセントの割合による金員」というのは違約金のことです。このような一文を加えておけば、残金全額を請求されるだけでなく、違約金まで取られることになりますので、加害者も気をつけざるをえないでしょう。

7:清算条項

作成した示談書に記載された内容以外の金額については、被害者と加害者間の債務・債権がなく、これ以降に発生した金銭に関しては一切の請求をしない旨などを明記しましょう。

交通事故で示談する際の注意点

ここでは、交通事故で示談する際の注意点と、示談書の有効性を解説します。

1:口約束でも示談成立になる

よくあるパターンとしては、事故が発生した直後に相手の加害者から「治療費と修理代込みで◯◯万円払うから、それで示談にしてくれないか」と、持ちかけられる場合です。
 
もし加害者側の申し出に同意し、後日相手からお金を受け取ってしまった場合には、法的に示談成立と評価される可能性があります。安易には同意せず、示談書を作成しておく事で、口約束による望まぬ示談を回避できます。

2:被害額や治療費・後遺障害が確定するまでは示談しない!

交通事故の直後に口約束などで示談成立となってしまった場合、あとになってから予想以上に治療費などがかかったとしても、示談が成立している以上は追加請求できません。
 
示談書ではなく念書や覚書というタイトルであっても、解決文言の含まれる書面に署名捺印をすれば、その内容が示談成立として有効なものになります。安易な交渉は行わず、損害賠償金や後遺障害の症状が確定するまで待つことが必要です。

3:示談書は取り決めた内容を確実に残せる証拠になる

加害者側と取り決めた内容を示談書にしておくことで、「言った言わない」の水掛け論を防ぐ効果があります。当事者間の認識の相違をなくすという意味でも、示談書を残す以上の方法は無いと言っても良いでしょう。

4:示談書によって示談金の未払いを防止できる

人身事故の場合は治療費もかかりますし、後遺症ともなれば長期間の通院や入院なども考えられます。示談金の不払いは当然被害者にとって大きな負担となりますので、示談書を作成しておくことで防止できます。

5:交通事故の大半は示談交渉で解決する

場合によっては訴訟などに発展するケースもありますが、大半の交通事故は示談交渉で解決します。もし示談の条件に不満や不明瞭な点がある場合には、交通事故問題に注力する弁護士に相談して、加害者側の保険会社と交渉してもらうのがよいでしょう。
 
保険会社と交渉する場合、相手は交通事故の示談交渉においてはプロですので、対等な関係を保つためにも、弁護士の存在は大きいと言えます。

交通事故の示談書作成のタイミング

示談書の作成方法だけでなく、作成するタイミングについても知っておきましょう。

1:示談書を作成するタイミング

示談書を作成する際は、医師から「症状固定」の診断が下されたタイミングが適しているでしょう。症状固定とは「これ以上治療しても改善が望めない」という状態のことです。

一通り必要な治療を終えた段階であれば、自身の損害額なども把握しやすいため、このタイミングが望ましいと言えます。

2:損害賠償請求権には時効がある

交通事故で重傷を負って入院生活が長引いた場合には、病状固定まで時間がかかることがあります。そのような場合、示談までに時間がかかって時効になってしまう可能性もあります。

以下の通り、損害賠償請求権の時効は民法で定められており、2020年4月1日以降の事故については改正後民法が適用されます。

損害発生の原因

改正前民法

改正後民法

債務不履行

  • 権利を行使できるときから10年間
  • 権利を行使できることを知ったときから5年間
  • 権利を行使できるときから10年間

不法行為

  • 被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知ったときから3年間
  • 不法行為時から20年間
  • 被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知ったときから3年間(ただし、生命身体の侵害に基づく不法行為の場合には、損害及び加害者を知ったときから5年)
  • 不法行為時から20年間

3:時効は中断できる

損害賠償請求権の時効については、今まで経過していた期間を一旦0に戻す時効の中断という処置をとることもできます。主な方法としては以下があります。

裁判所を介しての請求(訴訟)

裁判所を介して相手へ損害賠償請求するという方法です。判決によって確定した権利の時効は、10年間延長されます。

損害賠償の存在を認めさせる

加害者や相手の保険会社に損害賠償の存在を認めさせるという方法です。例えば「事故によって破れたTシャツを相手が弁償した」という場合、その時点で損害賠償の存在を認めたことになり、弁償してもらった日から時効がリセットします。 

交通事故の示談書は公正証書にするのが有効

たとえ示談書を交わしたとしても、加害者の経済状況などによっては、取り決めた示談金が支払われない可能性もあります。また、示談書はあくまで「当事者間で交わされた私文書」であり、法的な拘束力はありません。このような不安要素を無くすためにも、示談書は公正証書にしておくことをおすすめします。

公正証書とは?

公正証書とは、公証人が公証人法・民法などの法律にしたがって作成する公文書のことです。通常、債務者が金銭債務の支払いを怠ると、支払いの催促・裁判などによって回収を図ることになりますが、公正証書を作成しておけば判決を待たずに強制執行(給料や預金などの差し押さえ)に移ることができます。

公正証書にするメリット

公正証書には以下のようなメリットがあります。

証拠価値が高い

公正証書は、公証役場に勤める公証人が当事者の合意内容を確認した上で作成する文書です。そのため他の書面よりも証拠価値が高く、合意内容について後々争われるリスクが少ないといえます。

判決を待たずに給料差押えなどが可能

公正証書にて強制執行を受諾する旨の文言があることで、裁判所の判決などを待たずに強制執行が可能となるため、スピーディな回収が望めます。

内容に誤りが残る可能性がない

公正証書の内容は、法律の専門家である公証人がチェックします。そのため当事者間で作る書面と比べると、内容に誤りが残ることもなく確実性も高いといえます。

公正証書にするデメリット

一方で、公正証書にした場合、以下のようなデメリットもあります。

手数料が発生する

公正証書を作成する場合、示談金額に応じて以下の手数料が発生します。

目的の価額

手数料

100万円以下

5,000円

100万円を超え200万円以下

7,000円

200万円を超え500万円以下

11,000円

500万円を超え1,000万円以下

17,000円

1,000万円を超え3,000万円以下

23,000円

3,000万円を超え5,000万円以下

29,000円

5,000万円を超え1億円以下

43,000円

1億円を超え3億円以下

4万3,000円に5,000万円までごとに、1万3,000円を加算

3億円を超え10億円以下

9万5,000円に5,000万円までごとに、1万1,000円を加算

10億円を超える場合

24万9,000円に5,000万円までごとに、8,000円を加算

受け取るまでに時間がかかる

公正証書は、公証人が内容に誤りがないかチェックしながら作成するため、作成されるまでに時間がかかります。さらに受け取る際は、公証役場へ直接出向く必要があるため手間もかかります。

交通事故の示談書作成は弁護士に相談

最後に、示談書作成などを弁護士に相談するメリットや費用などを解説します。

示談書作成を弁護士に相談するメリット

示談書作成を相談した場合、以下のようなメリットが挙げられます。

専門的な立場からアドバイスをもらえる

交通事故問題に注力する弁護士であれば、これまでの対応経験を活かして、どのような内容を盛り込むべきかケースに応じて判断してくれます。相談者にとって納得のいく解決が望めるでしょう。

記載ミスを防げる

自身で示談書を作る場合には記載ミスが残る可能性がありますが、弁護士であればそのようなリスクは大きく軽減できます。「条項漏れがないか」「示談金額は適切か」などをチェックしてもらえるため、十分な満足感が得られるでしょう。

示談交渉を弁護士に相談するメリット

弁護士には、示談書作成だけでなく示談交渉も対応してもらえます。交渉対応を依頼した場合、以下のようなメリットが挙げられます。

示談交渉で不利になる可能性が少ない

交渉対応に慣れている相手保険会社と示談交渉する場合、被害者自身が対応してしまうと不利な形で交渉を進められてしまうリスクがあります。

弁護士であれば、できるだけ被害者にとって有利な形で問題解決できるよう対応してもらえるため、極端に低い金額で示談成立させられるなどの事態も防げます。

示談交渉の手間を短縮できる

相手方は早急に示談を進める姿勢をとってくることもありますが、慌てて対応すると不満の残る結果になってしまうこともあります。特に後遺症が残るケースでは、後遺障害認定のために半年以上かかることあり、治療や各手続きに対応しながら示談交渉を進めるのも大きな負担になるでしょう。

弁護士には示談交渉を一任できるため、依頼後は治療や日常生活などに専念できます。事故対応のストレスから解放されるというのは大きなメリットといえるでしょう。

賠償金が増額する可能性が高い

賠償金のいくつかの項目には計算基準が設けられており、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3種類があります。なかでも弁護士基準が最も高額になりやすいものの、弁護士無しの場合は自賠責基準や任意保険基準が用いられるケースが通常です。

弁護士に依頼すれば、弁護士基準を用いて請求対応してくれるため、結果的に多くの賠償金が受け取れる可能性があります。

弁護士に依頼した場合の費用

弁護士に依頼した場合、相談料・着手金・報酬金などの弁護士費用が発生します。費用は各事務所によって異なりますが、相場としては以下の通りです。

  • 相談料:1時間1万円(初回相談無料の事務所も多い)
  • 着手金:請求額の5~10%程度(最低着手金10万円〜20万円)
  • 報酬金:経済的利益の10~20%程度

なお後遺症が残った際の手続きや、裁判対応を依頼した場合などは、上記に費用が加算されることになります。

弁護士費用が支払えない場合

弁護士費用を支払う余裕がない場合は、法テラスの弁護士費用立て替え制度や、自動車保険の弁護士費用特約などの利用を検討しましょう。

法テラスについては月収や資産などの利用条件が定められていますが、弁護士費用特約は加入さえしていれば最大300万円まで費用負担してくれます(各保険会社によって上限は異なる)。

また自身が加入していなくても、身内が加入していれば利用可能なケースもあるため、周囲の契約状況も含めて確認しましょう。


まとめ

適切な形式で示談書を作成することで、相手方との万が一のトラブルにも迅速に対応できます。弁護士のアドバイスを得て対応することで、不安も解消されるでしょう。

また交渉対応などに自信がない方は、事故対応の一切を依頼することでスムーズな問題解決が望めます。まずは一度気軽に相談してみましょう。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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