妊婦の交通事故慰謝料|胎児に悪影響が出た場合の補償
妊娠中の事故被害は、被害者本人だけでなくお腹の中の赤ちゃんにまで影響が及ぶ恐れがあります。万が一、交通事故で出産や胎児に悪影響が生じた場合、被害者の精神的負担は計り知れないでしょう。
では、そのような精神的苦痛に対する慰謝料は、一体どのように補償されるのでしょうか。ご自身だけでなくお腹の中の赤ちゃんの慰謝料も支払われるのか、気になる方も多いかと思われます。
この記事では、妊婦が交通事故被害で請求できる慰謝料についてご紹介します。治療を受ける際の注意点や慰謝料が支払われるタイミングなども解説していますので、慰謝料請求の手続きの確認に参考にしてみてください。
この記事の監修者
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
妊婦自身が請求できる慰謝料
交通事故の慰謝料は、被害者の通院期間と通院日数を参考に算出するケースが一般的です。例えば、自賠責保険の基準だと、以下の計算式を参考に慰謝料が算出されます。
|
通院慰謝料の計算式 |
①と②で慰謝料の額が少ない方の式を適用 |
基本的には、妊婦だからという理由で慰謝料が通常よりも高額になることはありません。一般的に定められている慰謝料相場を参考にして、慰謝料の額が決定されることになるでしょう。
胎児に影響が出た場合の慰謝料
事故被害が原因で、お腹の中の赤ちゃんに悪影響が生じた場合、慰謝料の増額が認められる可能性があります。
事故が原因で障害を負ったケース
産まれてきた赤ちゃんが障害を負っており、これが交通事故との間で因果関係があると認められる場合、赤ちゃん本人に対する後遺障害慰謝料や逸失利益などの後遺症に関する損害賠償を請求することは可能です。
しかし、交通事故と障害の因果関係を証明するのは極めて困難です。
したがって、一般的には、たとえ赤ちゃんが障害を持って産まれても、慰謝料の請求が認められるケースは極めて稀と言えそうです。
胎児が亡くなってしまったケース
法律上では、胎児は母親の一部として考えられ、まだ人として扱われていません。そのため、胎児に対する死亡慰謝料の請求は、残念ながら認められないのが現状です。
しかし、被害者が子供を失った精神的苦痛を考慮して、胎児の死亡と事故との因果関係が認められれば、妊婦に支払われる慰謝料が増額される可能性は十分にあります。
一般的には、妊娠期間が長いほど慰謝料は高額になるようです。
<胎児死亡の判例(過去の裁判結果)>
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慰謝料 |
裁判の詳細 |
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150万円 |
事故の衝撃により妊娠2ヶ月の胎児が死亡したとして、150万円を認めた(高松高判平5.5.31) |
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250万円 |
事故の衝撃により妊娠27週の胎児が死亡したとして、250万円を認めた(横浜地判平10.9.3) |
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800万円 |
出産予定日の4日前の事故により死産したとして、800万円を認めた(高松高判平4.9.17) |
妊娠中に治療を受ける際の注意点
妊婦には、レントゲンや麻酔が受けられないなど、治療(検査や投薬)に一定の制限を受ける可能性があります。
そのため、場合によっては、交通事故で負った怪我に対する十分な治療を受けることは難しいということもあり得ます。
しかし、治療行為と妊娠との関係は必ずしも明確ではないため、まずは産婦人科・整形外科の医師両方に相談してみることをおすすめします。その上で、どのような治療を行うべきかどうかをご判断ください。
慰謝料を請求するタイミングはケース・バイ・ケース
妊婦が交通事故に遭った場合にどのタイミングで慰謝料請求を行うべきかは、ケース・バイ・ケースです。
軽微な事故であれば、妊娠・出産への影響は限定的であるため、必ずしも出産まで示談を遅らせる必要はありません。
他方、妊娠・出産に影響し得るような事故の場合は、その影響を確認するまで示談交渉をしないという選択肢もあるでしょう。
いずれにせよ、示談交渉のタイミングについては、専門家に相談しながら処理を進めるのが妥当です。
妊婦の交通事故被害を弁護士相談した方がいい理由
妊婦の交通事故被害を弁護士に相談するメリットを2つご紹介します。
慰謝料の請求が複雑化しやすい
妊娠の影響で交通事故被害の通院実績が少なくなってしまったり、赤ちゃんに対する慰謝料が発生したりと、妊婦の交通事故慰謝料の計算は複雑化しやすいです。
また、保険会社は法律のプロではなく、また営利目的であるため、適正な慰謝料の額が提示されず、示談交渉でトラブルが生じる可能性が非常に高くなるかと思われます。
しかし、交通事故分野を得意とする弁護士であれば、適切な慰謝料を算出することができます。保険会社から提示された慰謝料の額に納得いかない場合は、弁護士に相談をして正しい見積もりを出してもらうと良いでしょう。
出産後に示談交渉に対応するのは困難
出産後は子育てで多忙になるかと思われます。そのような状況で、加害者側と連絡を取りながら不慣れな事故手続きに取り組めば、精神的にも肉体的にもかなりの負担がかかるでしょう。
しかし、弁護士を雇っていれば、加害者側との対応や事故手続きを一任することができます。慰謝料が支払われるまでは弁護士からの報告を受けるだけで済むので、事故対応の負担を大きく軽減できるでしょう。
ただ、弁護士を探して依頼するのにもそれなりの労力は必要です。出産前後だと難しいと思われますので、依頼は事故発生からできるだけ早めにご検討ください。
まとめ
妊婦が交通事故に遭った場合の慰謝料は、通常の事故と同じ方法で算出されます。ただし、事故が原因で胎児に悪影響が生じたことが立証できる場合には、その分の慰謝料増額が認められる可能性があります。
なお、交通事故の慰謝料請求はやり直しができません。少しでもわからないことがある場合には、決して示談書にサインをしないようにしてください。
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