交通事故や自転車事故など、事故はいつ起きてしまうか分からないものです。弁護士費用を用意できず泣き寝入りとなってしまうケースも少なくありません。
ベンナビ弁護士保険は、弁護士依頼で発生する着手金を補償する保険です。
交通事故だけでなく、自転車事故、労働問題、離婚、相続トラブルなど幅広い法的トラブルで利用することができます。
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日本では、自動車だけでなく自転車事故も多く発生しています。警察庁によると毎年8,500件以上もの自転車関連の重傷事故・死亡事故が発生しており、なかには1億円近くもの賠償金が発生したケースもあるようです。
自転車事故は自動車事故と異なり「加害者側が任意保険に加入していない」というケースも珍しいことではありません。この場合、加害者・被害者が直接交渉・協議を進めざるをえないため、これが原因でトラブルへ発展することもあるようです。
なお、自転車事故で被害者が死亡した場合、残された遺族は加害者に対して「死亡慰謝料」や「死亡逸失利益」などの損害賠償を請求する権利がありますが、これら金額は数千万単位となります。納得のいく金額を受け取るためにも、遺族としては示談交渉の知識をつけておく必要があるでしょう。
この記事では、自転車による死亡事故の現状や死亡後の流れ、加害者に請求できる損害や示談交渉のポイントなどを解説します。
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まずは、日本で起きている自転車での死亡事故の現状について解説します。
警察庁によると、2019年度では全国で80,473件の自転車事故が発生しています。また死亡事故については433件発生しており、全体的に減少傾向にはあります。
引用元:自転車関連事故件数の推移
以下のデータによると、安全不確認・一時不停止・信号無視などが主な事故原因となっているようです。依然として、事故防止に向けた交通ルールの周知徹底などが必要な状態にあると言えるでしょう。
自転車事故で被害者が死亡した場合、被害者遺族は必ずしも事故後すぐに示談交渉を進める必要はありません。以下で紹介する流れはあくまで一例ですが、死亡事故が起きた際の参考としていただければと思います。
まずは必要書類等を用意して、葬儀の準備を済ませましょう。準備にあたっては最低限以下の対応が必要となりますが、葬儀会社によっては書類対応などを代行してくれるケースもあります。
<葬儀に必要な準備>
①で取り決めた段取りに沿って、通夜・葬儀・告別式を行います。
葬儀等を終えたら、死亡に伴う以下のような各種手続きも必要となります。
<死亡後に必要な各種手続き>
死亡後の手続きがひと段落したら、いよいよ加害者との示談交渉です。ここでは、示談金や過失割合などについて話し合って決めることになります。また、もし交渉がまとまらない場合には、訴訟手続等を履践することを視野に入れざるを得ないと思われます。
交通事故処理とは直接関係ありませんが、被害者が死亡した場合、被害者の財産について相続人間で相続処理を行う必要があります。被害者の遺言書があればこれに従うことになりますが、なければ相続人間で遺産分割協議を行う必要があります。
交通事故の補償金も、基本的には被害者の財産として遺産分割の対象となりますので、実際には「補償協議を進めつつ、当該補償金以外の財産について遺産分割協議を進める」というのが現実的かと思われます。
<死亡後の相続手続き>
被害者が死亡している場合、被害者本人は加害者に対して賠償請求はできませんので、実際には被害者の相続人代表者が加害者に対して賠償を求めていくことになります。相続人代表者を誰にするかは、以下のような共同相続人(家族構成により異なります)が協議して選定するのが通常です。
<被害者の共同相続人となり得る者>
自転車事故で被害者が死亡した場合、加害者に対して請求できる主な損害としては死亡慰謝料・死亡逸失利益・葬儀関係費用などがあります。ここでは、それぞれの概要や相場、計算方法などを解説します。
死亡慰謝料とは、自転車事故によって被害者が亡くなった際に請求できる慰謝料を指します。また、死亡慰謝料については「被害者本人に対して支払われる慰謝料」のほか「遺族に対して支払われる慰謝料」もあり、残された遺族は両方を請求することが可能です。
なお、慰謝料については自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準といった3つの計算基準があり、それぞれ金額は大きく異なります。「どのようなケースで適用できるのか」「いくら請求できるのか」については後で解説しますが、なかでも弁護士基準が高額となります。
ここでは、各計算基準の概要や相場額を紹介します。
自賠責基準とは、自賠責保険で用いる計算基準のことです。自動車の場合は自賠責保険の加入義務があるため、誰でも自賠責基準での請求が可能ですが、ほかの計算基準に比べると低額に設定されています。
ただし自転車の場合、自動車とは異なり自賠責保険の適用がありません。したがって、あくまで以下は参考の一つとしていただければ幸いです。
<自賠責基準の相場>
請求する要項 |
慰謝料額 |
死者本人に対する慰謝料 |
400万円(2020年4月1日以前に発生した事故に関しては350万円) |
<自賠責基準の相場>
請求する要項 |
慰謝料額 |
遺族に対する慰謝料(請求する遺族が1人の場合) |
550万円 |
遺族に対する慰謝料(請求する遺族が2人の場合) |
650万円 |
遺族に対する慰謝料(請求する遺族が3人の場合) |
750万円 |
遺族が死亡者に扶養されていた場合(※) |
200万円 |
任意保険基準とは、各保険会社が独自で決めている基準のことです。任意保険に加入していれば任意保険基準での請求が可能で、自賠責保険より高く設定されているケースが多いようです。ただし各保険会社で計算方法は大きく異なるため、あくまで以下は推定額です。
<任意保険基準の相場>
死亡者の立場 |
任意保険基準(推定) |
一家の支柱 |
1,500万~2,000万円 |
配偶者、母親 |
1,500万~2,000万円 |
上記以外 |
1,200万~1,500万円 |
※上記金額は「被害者に対する慰謝料」と「遺族に対する慰謝料」を合算した金額となります。
弁護士基準とは、過去の裁判例を参考に集計された基準のことです。ほかの計算基準と比べて高額に設定されていますが、弁護士基準で請求するには法律に関する知識が求められます。したがって、請求時は弁護士に依頼しておく必要があるでしょう。
<弁護士基準の相場>
死亡者の立場 |
弁護士基準 |
一家の支柱 |
2,800万円 |
配偶者、母親 |
2,500万円 |
上記以外 |
2,000万~2,500万円 |
※上記金額は「被害者に対する慰謝料」と「遺族に対する慰謝料」を合算した金額となります。
死亡逸失利益とは、自転車事故に遭わなければ将来得られたはずの収入を指します。請求時は、被害者の収入や死亡時の年齢などをもとに、以下のような式で計算します。
<死亡逸失利益の計算式>
基礎収入額×(1―生活費控除率)×就労可能年数に対応する中間利息控除 |
上記のほかにも、葬儀や埋葬といった手続きにかかった費用なども請求できます。なお、各計算基準で請求できる金額には上限があり、それぞれ以下を超えた部分は自費で賄う必要があります。
請求できる葬儀代の限度額 |
|
自賠責基準 |
60万円 |
任意保険基準 |
保険会社により異なるが、多くは自賠責基準と弁護士基準の間ほど |
弁護士基準 |
150万円 |
自転車による死亡事故が発生した場合、損害賠償の算定にあたって主に以下の2点がポイントとなるでしょう。ここでは、それぞれのポイントを解説します。
交通事故においては、被害者側にもある程度の過失が認められることも多いです。過失割合については、実際の事故状況により客観的に定まるものですが、通常は過去の類似事例を参考にしつつ妥当と考えられる過失割合を判断することになります。
被害者側にも過失がある場合、被害者側が補償を受けられるのは生じた損失の全額ではなく、加害者側の責任割合に相当する部分(被害者側の過失割合分を控除した部分)に限られます。
例として「被害総額が100万円、過失割合10(被害者):90(加害者)」というケースでは、加害者側に請求できるのは加害者の責任割合に対応する90万円に限られます。
このように過失割合は被害者側に生じた損失のうち、どの範囲を加害者側に帰責(請求)できるかに直接影響します。被害者側の過失割合が大きければ補償額はその分減額されますので、過失割合の認定は重要です。
最近では、スマホを見ながら自転車を運転している際に起きた死亡事故などもあります。
運転者がスマホを見ながら運転し、前方を注視していなかったということであれば、当然当該事情は過失割合の判断に大きく影響する可能性があります(例えばですが、この場合は自転車側に対して20%程度の過失加算がされる可能性も否定はできないように思われます。)。
過失割合だけでなく被害者が未成年の場合・高齢者の場合・高収入の場合など、年齢や立場によっても金額は大きく異なります。なかには、以下のように1億円近くもの支払いが認められたケースもあります。
夜間散歩中の女性(62歳)が、小学5年生男子(11歳)の運転する自転車と正面衝突し、急性硬膜下血腫・広範囲脳挫傷・水頭症などの重傷を負って昏睡状態となった事件です。 裁判所は「加害者は前方不注意かつ速い速度で走行しており、ヘルメットも着用していなかった」などの点を考慮した上で、損害賠償金として約9.500万円(後遺障害慰謝料:2,800万円、後遺障害逸失利益:約2,200万円、将来の介護費:約4,000万円、その他:約500万円)の支払いを命じました。(参考文献:2013WLJPCA07046007) |
自転車の運転者に対しては、一部自治体で条例により義務付けがされていることがありますが、基本的には任意保険に加入することは義務付けられていません。また、当該義務付けがあっても必ずしも運転者が任意保険に加入しているとは限りません。
そのため、多くの自転車事故では運転者が保険未加入ということがあります。このようなケースでは加害者の賠償義務は加害者自身が弁済する必要がありますので、加害者の資産状況によっては賠償金が支払われず、法的手続を履践しても回収が難しいということがあります。
この場合、以下のような対応が考えられはしますが、根本的解決にはなりません。この点は自転車事故の最大のリスクと言えます。
損害賠償については一括払いで行うのが通常ですが、双方が合意していれば分割払いでの支払いも可能ではあります。もし分割払いとすることで少しでも回収が期待できるのであれば、被害者としては一括ではなく分割で弁済を受けることも積極的に検討するべきでしょう。
例えば、加害者に資力がない場合に加害者の親による弁済可能性がないかを検討する余地はあります。
もっとも、加害者の親に法的な賠償義務が認められる場合はともかく、そうでない場合には加害者の親族であるという理由だけで当然に弁済義務が認められるものではありません。したがって、この方法も基本はお願いベースであり、実際に支払いがされるかは未知数と言わざるを得ません。
自転車事故の場合、加害者との示談交渉において以下のようなトラブルが想定されます。
自転車事故においては加害者が保険未加入である場合が多いことは上記のとおりです。そして、この場合は加害者・被害者が直接補償について協議することになります。
しかし交通事故処理の知識・経験のない素人同士が協議しても、協議がまとまる可能性は基本的に乏しいです。結果、示談がスムーズに進まず、被害者・加害者双方とも事故処理の負担から解放されないという悪循環が生じる可能性があります。
交通事故の過失割合が補償額に与える影響が大きいことは上記のとおりです。しかし、自転車事故の場合、自動車事故のように先例が比較的少なく、比較すべき類似事故がないために過失割合の判断が難しいという場合があります。
この場合、最終的に折り合いが付かなければ裁判により過失割合を決定することになりますが、弁護士のサポートなく当該対応を行うことは一般的に困難でしょう。
加害者への損害賠償請求にあたっては、弁護士に依頼するのが有効です。ここでは、弁護士に依頼するメリットについて解説します。
上記のとおり、自転車事故の場合、素人同士の交渉により交渉がデッドロック(八方塞がり)となってしまうリスクは相当程度あります。この場合、交通事故に注力している弁護士に依頼し、間に入ってもらうことで解決までに道筋が見えてくる場合もあります。
自転車事故の場合、被害者過失の有無・程度や被害者の損害額の内容について紛糾する可能性があります。弁護士であればこの場合も法的な知識・経験に基づいて対応し、適正額での補償を求めることができます。結果、被害者として不適正な内容で示談を余儀なくされるということを回避できるでしょう。
自転車事故の特性、補償の際の留意点について簡単に解説しました。上記のとおり、自転車事故は自動車事故の場合と比べてトラブルとなりやすい側面が否定されません。
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