【けが別】交通事故で仕事を休む期間は?休業損害の計算方法と会社への伝え方
交通事故でけがをして仕事を休むとき、「どのくらい休めるのか」「休んだら収入はどうなるのか」と不安になる人は多いものです。
結論、交通事故によるけがで仕事を休み収入が減った場合は、休業損害として加害者側に請求できる可能性があります。休む期間はけがの程度と医師の診断で決まり、会社員だけでなく、パートや個人事業主、専業主婦(主夫)も補償の対象です。
この記事では、けが別の休む期間の目安から、休業損害の計算方法、会社への連絡の仕方まで、被害者が知っておきたい知識を整理して解説します。安心して治療に専念するために、まず全体像をつかんでください。
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交通事故で仕事を休む期間の目安【けがの程度別】
交通事故で仕事を休む期間は、けがの程度と医師の診断で決まります。自己判断ではなく、医学的な根拠にもとづいて判断する必要があります。
| 症状 | 休業期間(目安) | 注意点など |
| 打撲・捻挫 | 1週間〜1ヵ月 | 軽傷の時期に復帰すると、痛みが慢性化するおそれがある |
| むちうち | 1〜3ヵ月 | 身体的負担の大きい仕事は、復帰がおそくなりやすい |
| 骨折 | 3〜6ヵ月 | 骨折した部位によって復帰までの期間が変わる(手の骨折でパソコン作業ができないなど) |
| 高次脳機能障害 | 1年以上 | 外見から症状を把握しにくいため、医師とよく相談する |
目安としては、打撲のような軽傷で1週間ほど、骨折や後遺障害が残るけがでは数ヵ月から1年以上に及ぶケースもあります。ただし同じ病名でも、症状の重さや仕事内容によって必要な期間は変わります。
上の早見表で全体像をつかんだうえで、自分の状況に近い項目を確認してください。最終的な判断は主治医に委ねましょう。
打撲・捻挫などの軽傷|1週間〜1ヵ月程度
打撲や捻挫などの軽傷で仕事を休む期間は、1週間から1ヵ月程度が目安です。多くは数週間で日常生活に支障のないレベルまで回復します。
休む期間に幅が出るのは、復帰の判断が業務に耐えられる状態かで決まるからです。デスクワークなら患部を動かさずに済むため、痛みが残っていても早めに戻れる場合があります。
一方、立ち仕事や荷物を扱う仕事は患部に負担がかかり続けるため、炎症が引くまで時間を要します。
注意したいのは、痛みが軽くなった段階で自己判断のまま復帰すると、患部に負担が蓄積して慢性化するおそれがある点です。復帰の可否は医師の許可を得てから判断してください。
むちうち(頸椎捻挫)|1ヵ月〜3ヵ月程度
むちうち(頸椎捻挫)で仕事を休む期間は、1ヵ月から3ヵ月程度が目安です。症状が長引けば半年以上に及ぶ場合もあります。
むちうちはレントゲンに異常が映りにくく、痛みやしびれ、めまいといった自覚症状があとから強まる特徴があります。事故直後は軽く感じても、翌日以降に症状が出るケースが少なくありません。
注意したいのは、就労を制限する必要性が争点になりやすい点です。休業を認めてもらうには、診断書に具体的な制限内容(長時間のデスクワークが困難・運転を控える必要があるなど)を明記してもらうと有効です。
保険会社が休業を認める期間は急性期が中心になりやすいため、主治医と相談しながら段階的に復帰してください。
骨折|3ヵ月〜半年程度
骨折で仕事を休む期間は、3ヵ月から半年程度が目安です。骨がつき、リハビリで元の動きを取り戻すまでに相応の時間がかかります。
期間は骨折した部位・手術の有無・骨のつき具合・仕事内容によって変わります。デスクワークで手の指を骨折した場合は3ヵ月以内に復帰できる一方、立ち仕事の人が足を骨折して手術したケースでは半年以上休む場合もあります。
留意したいのは、軽微な骨折で痛みが生活に影響しない程度まで回復すると、それ以上の休業の必要性が認められないことがある点です。休業を続ける場合は、就労が困難な理由を診断書で示してもらってください。
後遺障害が残る重症|1年以上
脊髄損傷や高次脳機能障害などの重いけがでは、1年以上の長期休業が必要になる場合があります。神経の損傷が大きいと、リハビリを続けても改善が見込めない症状固定まで長くかかるためです。
たとえば脊髄損傷で下半身に麻痺が残ると、症状固定の判断が事故から1年以上先になるケースもあります。
注意したいのは、身体機能が保たれていても、判断力や集中力の低下で就労の継続が難しくなる場合がある点です。判断力や集中力の低下は後遺障害等級や逸失利益に直結するため、早期に弁護士へ相談し、医学的な資料を整えておくと有利になります。
なお休業損害の対象は事故から症状固定までで、固定後の収入減は逸失利益として別に請求します。
交通事故で仕事を休む期間を決める2つの基準
交通事故で仕事を休む期間は、本人の感覚や職場の都合で決めるものではありません。客観的な根拠にもとづいて判断します。
確認すべき基準は2つです。ひとつは医師の診断、もうひとつは勤務先の制度です。この2つを押さえておくと、休業の正当性を保険会社にも示しやすくなります。以下でそれぞれの中身を見ていきます。
基準①休む期間は医師の診断書で決まる
仕事を休む期間は、まず医師の診断書で決まります。診断書に「就労不能」「〇週間の安静加療を要する」といった記載があると、休業の相当性を裏づける根拠になり、保険会社もこれをもとに判断します。
そのため、事故に遭ったらできるだけ早く整形外科を受診してください。初診が遅れると、保険会社から事故とけがの関係を疑われ、休業損害が認められにくくなる場合があります。
軽傷の場合、休んでいいのかとためらう人もいますが、軽傷でも医師が必要と認めれば正当に休めます。一方、医師が認めない自己判断の欠勤は、休業損害の対象外になりやすいのも事実です。
後ろめたさを抱えたまま無理に出勤するより、休む必要があるかどうかを主治医に確認し、診断書を取得しておくほうが収入面でも備えられます。
基準②会社の就業規則・休職制度を確認する
仕事を休む期間を決めるもうひとつの基準が、勤務先の就業規則です。会社ごとに、年次有給休暇の扱い、傷病による休職制度、診断書の提出要否が異なります。
長期の休業になりそうなときは、有給を使い切ったあとにどの休職制度が適用されるかを確認しておきましょう。休職中の社会保険料の扱いも、人事や総務の担当者に聞いておくことをおすすめします。
休業が長引く場合は、健康保険の傷病手当金を利用できる可能性もあります(「②健康保険の「傷病手当金」」で詳しく解説します)。早めに制度を把握しておくと、復帰までの見通しが立てやすくなるでしょう。
交通事故で仕事を休んでも収入は休業損害で補える
交通事故によるけがで仕事を休み、収入が減った場合、その減収分は休業損害として加害者側に請求できます。事故がなければ得られたはずの収入を補うお金です。
請求できるのは、会社員やパート・アルバイト、個人事業主、専業主婦(主夫)など、事故の時点で働いていた人や家事に従事していた人です。いずれの場合も、事故によるけがで就労できなかったという因果関係が前提になります。
ここからは、いつまで支払われるのか、いつ振り込まれるのか、有給を使った場合はどうなるのか、そして基本的な計算方法を順に解説します。
休業損害が支払われる期間は?|事故日〜症状固定まで
休業損害が認められるのは、原則として事故日から症状固定または完治までのうち、けがによって就労できなかった期間です。起算日は事故発生日で、終了の目安は、けがが完治した日か、医師が「これ以上治療しても大幅な改善は見込めない」と判断する症状固定日です。
症状固定後も収入の減少が続くときは、休業損害ではなく将来の減収を補う逸失利益として別に請求します。
注意したいのが、保険会社による治療費の打ち切りは症状固定とは別だという点です。打ち切りは保険会社の支払い判断にすぎません。主治医が治療の必要性を認めている限り、打診にそのまま応じる必要はありません。
休業損害はいつ振り込まれる?|内払いで先払いも可能
休業損害は、治療が終わって示談が成立したあとに、慰謝料などとまとめて振り込まれるのが一般的です。示談成立から振り込みまでは1〜2週間程度が目安です。
ただ、それでは休んでいる間の生活費が不安だという人もいます。その場合、示談成立を待たずに一部を先に受け取る内払い(先払い)という方法があります。
応じるかどうかは保険会社によって異なりますが、認められれば一括払いより早く受け取れます。生活費の確保が難しいときは、保険会社や弁護士に相談してみてください。
有給休暇を使って休んだ場合も請求できる
有給休暇を取得して休んだ日も、休業損害として請求できます。有給は本来、労働者が自由に使える権利で、その権利を治療のために失った損害とみなされるためです。代休を使った場合も同じ扱いです。
終日休まなくても、通院のために早退・遅刻・半休をした分は対象になります。給与が減っていないから請求できないと誤解されがちですが、そうではありません。
会社に休業損害証明書を作成してもらう際、有給や代休を取得した日、半休や早退の日を正確に記載してもらえば請求できます。半日だけ休んだ場合は、半日分として計算します。
休業損害の計算方法【基本式と3つの基準】

休業損害は「1日あたりの基礎収入 × 休業日数」で計算します。ポイントは、1日あたりの基礎収入をどの基準で算出するかです。基準には自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つがあり、一般に弁護士基準がもっとも高くなります。
| 算定基準 | 特徴 | 金額水準 |
| 自賠責基準 | 自賠責保険による法定最低限の補償 | 最も低い |
| 任意保険基準 | 各保険会社が独自に定めた基準(非公開) | 中間 |
| 弁護士基準(裁判所基準) | 過去の裁判例に基づいた基準 | 最も高い |
自賠責基準では原則として日額6,100円ですが、収入を立証できる場合は1万9,000円を上限に実額が認められます。(2020年4月1日以降に発生した事故に適用。それ以前は5,700円)
任意保険基準は各社が独自に定めるもので、自賠責基準よりやや高い程度にとどまります。
弁護士基準は事故前の実収入をもとに計算するため、収入によっては大きく増えます。職業ごとの詳しい計算は、「【職業別】仕事を休んだときの休業損害の計算方法と必要書類」で確認してください。
【職業別】仕事を休んだときの休業損害の計算方法と必要書類
休業損害の基礎収入の出し方や必要書類は、働き方によって異なります。自分の立場に合った計算方法を把握しておくと、請求がスムーズに進みます。書類に不備があると、支払いが遅れる原因にもなりかねません。
| 立場 | 休業損害 証明書 | 源泉 徴収票 | 確定申告書 の控え | 主な算定根拠 |
| 会社員・契約社員・パート・アルバイト | ○ | ○ | - | 事故前3ヵ月の給与 |
| 個人事業主・フリーランス | - | - | ○ | 前年の所得+固定経費 |
| 専業主婦・主夫 | - | - | - | 賃金センサス(女性平均) |
| 会社役員 | ○ | ○ | - | 報酬の労務対価部分 |
| 失業中・就職予定 | - | - | - | 内定通知書・前職の収入資料など(就労の蓋然性が認められる場合のみ) |
○=原則必要、-=原則不要。会社役員は、労務対価部分が争われる場合に決算書や申告書の控えを求められることがあります。失業中・就職予定の方は、前職の源泉徴収票が収入額の参考資料になる場合があります。
ここでは会社員・個人事業主・専業主婦(主夫)・会社役員・失業中の5つの立場について、計算方法と用意すべき書類を解説します。
会社員・契約社員・パート・アルバイト
会社員や契約社員、パート・アルバイトの基礎収入は、事故前3ヵ月間の給与合計を90日で割って算出します。給与には基本給のほか、残業代や各種手当も含めます。
| 計算例|事故前3ヵ月の給与120万円・休業20日の場合 | |
| 計算式 | 事故前3ヵ月の給与 ÷ 90日 × 休業日数 |
| ① 1日あたりの基礎収入 | 120万円 ÷ 90日 ≒ 13,333円 |
| ② 休業損害の総額 | 13,333円 × 20日 ≒ 266,660円 |
パートやアルバイト、派遣社員も、事故でシフトに入れなくなり収入が減った場合は請求できます。ただし勤務日数が少ないと、90日で割ると実態より低い金額になりがちです。
そのため実際の稼働日数で割り、本来の収入に近い日額を求める場合があります。証明書は人事や総務の担当者に依頼して作成してもらってください。
個人事業主・フリーランス
個人事業主やフリーランスの基礎収入は、前年の確定申告書の所得額に固定経費を加え、365日で割って算出します。固定経費とは、休業中も支払いが必要な店舗の家賃やリース料などで、相当な範囲で損害に加算できます。
| 計算例|前年所得500万円・固定経費150万円・休業30日の場合 | |
| 計算式 | (前年の所得 + 固定経費) ÷ 365日 × 休業日数 |
| ① 1日あたりの基礎収入 | (500万円 + 150万円) ÷ 365日 ≒ 17,808円 |
| ② 休業損害の総額 | 17,808円 × 30日 ≒ 534,240円 |
赤字申告や無申告の場合でも、賃金構造基本統計調査(賃金センサス)の平均賃金を用いて請求できる可能性があります。休業中の業務を外部に委託した外注費が、損害と認められるケースもあります。
ただし会社員と違い、勤務先が休業を証明してくれないため、減収の立証が難しくなりやすい点には注意してください。
専業主婦・主夫など家事従事者
収入のない専業主婦(主夫)でも、事故で家事労働に支障が出た場合は休業損害を請求できます。家事は人に頼めば対価が発生する、経済的価値のある労働とみなされるためです。
家事従事者の基礎収入には、性別を問わず、賃金センサス(賃金構造基本統計調査)の女性・全年齢・学歴計の平均賃金を用いるのが実務上の扱いです。
| 計算例|令和6年の女性平均賃金・休業60日の場合 | |
| 計算式 | 女性・全年齢・学歴計の平均賃金 ÷ 365日 × 休業日数 |
| ① 1日あたりの基礎収入 | 4,194,400円 ÷ 365日 ≒ 11,491円 |
| ② 休業損害の総額 | 11,491円 × 60日 ≒ 689,460円 |
※基礎収入は、賃金センサスの女性・全年齢・学歴計の平均賃金(令和6年)をもとにしています。
パートをしながら家事も担う兼業主婦の場合は、実収入と平均賃金のうち高いほうを基礎収入とします。賃金センサスは毎年更新されるため、請求時は最新の数値を確認してください。
引用元:賃金構造基本統計調査 令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業大分類 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
会社役員
会社役員の場合、報酬のうち労務の対価にあたる部分について休業損害を請求できます。役員報酬には、実際に働いたことへの対価だけでなく、利益配当の性質を持つ部分が含まれることがあり、その配当的な部分は対象外になりやすいためです。
労務対価部分がどれだけかは、会社の規模・利益の状況・ほかの役員や従業員の報酬との比較などをふまえて判断されます。
| 計算例|月額報酬のうち労務対価70万円・休業30日の場合 | |
| 計算式 | (労務対価部分の月額 × 12ヵ月) ÷ 365日 × 休業日数 |
| ① 1日あたりの基礎収入 | (70万円 × 12ヵ月) ÷ 365日 ≒ 23,013円 |
| ② 休業損害の総額 | 23,013円 × 30日 ≒ 690,390円 |
※会社役員の場合、役員報酬のうち労務の対価にあたる部分が基礎収入となります。利益配当にあたる部分は休業損害の対象に含まれません。
労務対価部分の算定は判断が複雑になりやすいため、迷ったときは弁護士に相談してください。
失業中・就職予定の方
事故の時点で仕事に就いていなかった場合、原則として休業損害は請求できません。失われた収入がないためです。
ただし、近い将来に働く可能性が高いと認められるケースでは、就職予定日から症状固定までの分を請求できることがあります。たとえば次のような場合です。
- 求職活動中で、再就職の見込みが高かった
- すでに就職の内定が出ていた
判断は就労の蓋然性があったかどうかでわかれ、個別の事情によって結論が変わります。自分のケースで請求できるかわからないときは、弁護士に確認してみてください。
交通事故で仕事を休むときの会社への伝え方
トラブルなく休んで適正な補償を受けるには、正しい手順で会社に報告し、必要な手続きを進めることが欠かせません。事故に遭ったことを隠さず報告するのは、自分の身を守ることにもつながります。
無断欠勤やあいまいな報告は、職場の信用を損ねる原因になりかねません。ここでは事故直後から復職までの連絡の流れを4つの手順に分けて解説し、最後に会社が休ませてくれないと感じたときの対処法も紹介します。
①事故後すぐに直属の上司へ連絡する
まずは事故に遭った当日か翌日に、直属の上司へ事故の事実とけがの状況を電話などで報告します。あわせて、通院の必要性や当面の出社可否、当日の業務の引き継ぎを伝えておきます。
通勤中や業務中の事故であれば労災保険の対象になるため、その旨も必ず報告してください。数日の欠勤が見込まれるときは、暫定的な休業の見通しも伝えておくと、職場も対応しやすくなります。
| 上司への連絡の例 |
| 「事故でけがをして、通院が必要になりました。本日は出社できません。〇〇の件は△△さんに引き継ぎをお願いできますでしょうか」 |
②医師の診断書を取得して提出する
病院を受診したら、休業が必要な期間を記した診断書を取得し、会社に提出します。口頭の申告だけでなく診断書があると、会社も休職の処理を進めやすくなります。
提出の方法(郵送や代理人による持参など)は、会社と相談して決めてください。診断書は、休業の正当性を客観的に示すうえでも役立ちます。なお、診断書の発行費用は最終的に加害者側へ請求できるため、領収書は保管しておきましょう。
③休業損害証明書を会社に作成してもらう
保険会社へ休業損害を請求するために、勤務先へ休業損害証明書の作成を依頼します。休業損害証明書は、事故による欠勤日数や有給を取得した日、事故前の給与額を会社が公式に証明する書類です。
依頼するタイミングは、月ごとの給与計算が締まったあとなどが目安です。証明書には前年の源泉徴収票の添付を求められることが多いため、あわせて準備を依頼しておくと手続きがスムーズです。担当者が作成に慣れていない場合は、書式の記入例を渡すと進めやすくなります。
【休業損害証明書のひな形】
引用元:休業損害証明書|ソニー損保
④治療経過と復職の目処を定期的に報告する
休職中は、会社と定期的に連絡を取り、治療の経過と復職の見通しを報告します。いつ頃復帰できそうかの目安を伝えておくと、職場も人員配置などの対応がしやすくなります。
復職にあたっては、すぐに元の業務へ戻れるのか、しばらく時短勤務などが必要かを医師に確認してください。復帰の時期は、医師から就労可能の判断が出てから会社と決めると、再発のリスクを抑えられます。
なお通院日数や症状の推移は、あとの休業損害や慰謝料の算定にも影響します。診療記録や通院日数は、客観的な資料として手元に整理しておきましょう。
会社が休ませてくれない場合の対処法
人手不足などを理由に、会社が休みを認めてくれないと感じることもあります。その場合も、医師の診断書という客観的な根拠を示すと、休業の必要性を説明しやすくなります。あわせて就業規則を確認し、私傷病休職や有給休暇の扱いを把握しておきましょう。
年次有給休暇は労働者の権利で、会社は取得そのものを拒めないのが原則です。それでも折り合いがつかないときは、ひとりで抱え込まず、弁護士などの専門家に相談してください。けがの治療を後回しにすると、回復が遅れたり補償が減ったりするおそれがあります。
交通事故で仕事を休む間の収入を補う3つの制度
| 制度 | 請求先 | 主な対象者 | 補償額の目安 |
| 休業損害 | 加害者側の保険会社 | 事故で減収した人 | 減収分の全額 |
| 傷病手当金 | 健康保険 | 健康保険の被保険者(業務外) | 標準報酬日額の約2/3 |
| 労災保険 | 労働基準監督署 | 通勤中・業務中の労働者 | 給付基礎日額の約8割 |
※標準報酬日額・給付基礎日額とは、いずれもおおむね事故前の1日あたりの賃金を指します
仕事を休んで収入が減ったとき、一定の要件を満たせば複数の補償制度を利用できます。使える制度は、加害者側に請求する休業損害、健康保険の傷病手当金、労災保険の休業補償給付の3つです。
それぞれ趣旨や金額、相互の調整関係が違うため、自分の事故ではどれが使えるかを整理しておくと安心です。比較表で全体像をつかんだうえで、各制度の中身を順に確認してください。
①相手の保険会社に請求する「休業損害」
休業損害は、事故で減った収入を加害者側(通常は相手の任意保険会社)に請求する制度で、3つのなかで中心になるものです。
計算方法や請求の流れは「交通事故で仕事を休んでも収入は休業損害で補える」で解説しました。ここでは、ほかの2つの制度と並べて位置づけだけ確認しておきます。
②健康保険の「傷病手当金」
傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外の事故やけがで働けなくなったときに、健康保険から受け取れる給付です。通勤中や業務中ではない、私的な事故の場合に利用を検討します。
支給額は原則として標準報酬日額の3分の2相当で、連続して3日休んだあとの4日目以降、通算1年6ヵ月にわたって支給されます(2022年1月1日施行の改正健康保険法による)。
ただし、傷病手当金と休業損害は同じ減収を補うものであるため、重複して受け取れないよう調整されます。
③通勤中・仕事中の事故で使える「労災保険(休業補償給付)」
通勤中や仕事中に起きた事故であれば、労災保険の休業補償給付を利用できます。休業して4日目から、給付基礎日額の60%にあたる休業補償給付に加え、20%の特別支給金が支給されるため、実質的におおむね8割が補償されます。
労災保険は、被害者側の過失の有無や割合に関わらず給付される点が大きな特徴です。相手の保険会社と過失割合で揉めている場合でも、生活費を確保しやすくなります。なお、労災給付を受けた部分は、最終的な損害賠償額との間で調整されます。
どれを使う?制度の優先順位と二重取りの可否
どの制度を優先するかは、事故の性質によって変わります。通勤中や業務中の事故(通勤災害・業務災害)に該当する場合は、まず労災保険を利用するのが原則です。私的な事故であれば、加害者への休業損害請求が中心になり、状況に応じて傷病手当金を併用します。
いずれの場合も、制度の間では求償や控除といった調整がおこなわれるため、同じ減収分を重複して受け取ることはできません。自分の事故に合った制度を選び、必要な資料を整えておくと、最終的な手取りを確保しやすくなります。判断に迷うときは弁護士に相談してください。
交通事故でどうしても仕事を休めない場合の対処法
職場の事情などで、どうしても長く休めない人もいるでしょう。完全に休むのが難しくても、治療を続けられる環境を整えることはできます。
治療を中断すると回復が遅れたり、補償が減ったりするおそれがあるため、無理のない範囲で通院を続ける工夫が大切です。ここでは3つの対処法を紹介します。
①休日・夜間に診療している整形外科に通う
平日の日中に通院しにくい場合は、休日や夜間に診療している整形外科を探して通院を続けましょう。仕事帰りや休日に通える病院なら、欠勤や早退をせずに治療を継続できます。
最近は、土日祝や平日の夜間まで診療している整形外科や接骨院も増えています。整骨院・接骨院を利用する場合も、月に1〜2回は整形外科の医師の診察を受けてください。
通院にかかった交通費も補償の対象になるため、少し遠くても通いやすい病院を選ぶと続けやすくなります。「地域名+夜間診療+整形外科」などで検索すると、条件に合う病院を見つけやすくなります。
②負担の軽い業務・テレワークへの変更を相談する
会社に事情を説明し、身体的な負担の少ない業務やテレワークへ一時的に変更してもらえないか相談してみてください。通勤や重い作業による負担を避けられると、症状の悪化を防ぎやすくなります。
配置転換や時短勤務によって残業代などが減り、給与が下がった場合は、その差額も休業損害として請求できる場合があります。会社と交渉するときは、医師に「デスクワークなら可能」といった具体的な意見を書いてもらうと、話を進めやすくなります。
③労災保険・傷病手当金など別の補償制度を使う
相手の保険が使えないときや過失割合で争いがあるときは、労災保険や健康保険の制度を活用してください。
通勤中・業務中の事故なら、労災保険の休業補償給付で手厚い補償を受けられます。私的な事故でも、健康保険の傷病手当金で生活費を確保できる場合があります。
制度の詳しい内容は、前章「交通事故で仕事を休む間の収入を補う3つの制度」をご覧ください。収入面の不安を軽くしておくと、治療に専念しやすくなります。
交通事故で仕事を優先して治療を後回しにするリスク
仕事が忙しいからと治療を後回しにすると、身体面でも金銭面でも不利益が生じやすくなります。一時的には仕事を続けられても、あとから体の不調が悪化したり、受け取れる補償が減ったりするケースが少なくありません。
ここでは、治療を後回しにした場合に起こりうる3つのリスクを解説します。
①通院日数が減ると慰謝料が減額される
仕事を優先して通院を控えると、入通院慰謝料が減額されるおそれがあります。入通院慰謝料は、実際の通院期間や通院日数をもとに計算されるためです。
通院の頻度が低いと、保険会社から症状が軽い・治療の必要性が低いと判断されやすくなります。通院の間隔が空きすぎると、すでに治ったとみなされて治療費を打ち切られる原因にもなりかねません。
適正な補償につなげるためにも、医師が指示する適切な頻度で通院を続けましょう。
②治療の遅れ・症状の悪化を招く
痛みを我慢して無理に働き続けると、けがの回復が遅れ、慢性的な症状に発展するおそれがあります。とくにむちうちは、初期の安静と適切な治療が回復を左右します。放置すると慢性化しやすく、完治が難しくなるケースもあります。
事故直後から治療を始めれば数ヵ月で回復するけがでも、放置すると1年以上痛みが続くケースがあります。仕事中の無理な動作でけがが悪化した場合は、事故との関係を疑われ、治療費の支払いが難航する可能性もあります。まずは体の回復を優先してください。
③後遺障害等級の認定を受けにくくなる
通院の実績が乏しいと、後遺症が残ったときに後遺障害等級の認定を受けにくくなります。認定には、一貫した治療記録と症状の継続を示す資料が欠かせないためです。
通院を中断すると、症状が本当に続いていたのか、事故が原因なのかを証明しにくくなります。仕事が忙しいという事情は考慮されず、医学的な治療実績で判断されます。
認定が非該当になると、後遺障害慰謝料や逸失利益といった金額の大きい賠償を受け取れなくなりかねません。後遺症の不安があるときほど、定期的な通院を続けましょう。
保険会社から治療費・休業損害を打ち切られたときの対応
治療がまだ必要な段階で、保険会社から治療費や休業損害の打ち切りを打診される場合があります。それでも、適切に対応すれば治療を続けられる可能性は残ります。
まず、保険会社からの連絡を放置しないでください。放置すると、保険会社の判断で支払いが止まることがあります。次に、主治医に治療の継続が必要とする意見書を書いてもらいます。医師の意見書は、治療の正当性を示す有力な資料になります。
それでも打ち切りを迫られる場合は、弁護士を通じて治療期間の延長を交渉する方法もあります。打ち切り後も、健康保険を使った治療の継続・自賠責保険への被害者請求・自分の保険の人身傷害補償特約の利用といった選択肢が残されています。
親や家族の事故の看護で休んだら休業損害はもらえる?
家族の看護や付き添いのために仕事を休んだ場合も、休業損害や付添看護費として補償されることがあります。
補償の対象になるのは、医師が付き添いの必要性を認めたケースで、重傷の家族の入院や、幼い子どもの付き添いなどが該当します。被害者本人の休業損害とは別に、付き添った家族(近親者)の収入をもとに計算する仕組みです。
請求には医師の指示や証明が必要になるため、自己判断で休む前に、補償の対象になるかを把握しておくと対応がスムーズになります。会社への伝え方や有給を使うべきかの判断は、「交通事故で仕事を休むときの会社への伝え方」も参考にしてください。
| チェック項目 | 確認のポイント |
| 医師が必要性を認めている | 付き添いが必要だと医師が判断し、診断書やカルテに記載がある |
| 被害者の状態 | 重傷である、または幼児・高齢者で介助が欠かせない |
| 付き添いで実際に減収した | 近親者が仕事を休むなどして収入が減っている |
交通事故で仕事を休むか悩んだら弁護士に相談しよう
交通事故で仕事を休む期間や補償に不安があるときは、交通事故に強い弁護士に相談すると解決しやすくなります。
弁護士に依頼すると、有給を使うべきか労災を使うべきかといった最適な選択肢を、けがの状況や職業に合わせて示してもらえます。休業損害証明書の作成サポートも受けられ、家族の看護で休んだ場合の請求など難しいケースにも対応できます。
保険会社から治療費や休業損害の打ち切りを迫られたときも、医師の意見書をもとに延長を交渉してもらえるため、治療に専念しやすくなります。
さらに、弁護士が代理人として交渉すると、もっとも高い弁護士基準が適用され、休業損害や慰謝料が増額する可能性があります。数十万円以上の差が生じることも少なくありません。
弁護士費用特約に加入していれば自己負担なく依頼できる場合が多いため、まずは無料相談を利用してみてください。
交通事故で仕事を休む悩みは「ベンナビ交通事故」で弁護士に相談
仕事を休んだときの休業損害や、治療費の打ち切りへの対応は、自分だけで妥当性を判断するのが難しいものです。保険会社の提示額は自賠責基準や任意保険基準で計算されている場合が多く、弁護士基準を下回っているケースもあります。
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交通事故で仕事を休むときのよくある質問
最後に、交通事故で仕事を休むときに寄せられる疑問を、Q&A形式でまとめます。気になる質問があればぜひチェックしてください。
Q1. 軽傷ですが、仕事を休んでも嘘だと思われませんか?
軽傷でも、医師が治療や安静のために休む必要があると認めれば、正当な休業として扱われます。休業の根拠になるのは、本人の感覚ではなく医師の診断です。
診断書に休業の必要性が記載されていれば、ずる休みと判断される心配はありません。逆に、けがが軽いのに自己判断で長く休むと、休業損害の対象外になることがあります。休む必要があるかどうかは、主治医に確認しておくと安心です。
Q2. 自己判断で休んだ期間も休業損害を請求できますか?
医師が就労不能と認めていない、自己判断だけの欠勤は、休業損害の対象になりにくいです。休業損害が認められるのは、けがの治療のために働けなかった期間だからです。
事故に遭ったから念のため数日休もうという欠勤は、有給を無駄に使ったり無給になったりするリスクがあります。休む必要性は主治医に確認し、診断書に記載してもらってください。
Q3. 整骨院・接骨院・鍼治療に通って休んだ場合も請求できますか?
整骨院や接骨院での施術でも、医師の指示や同意があり、治療として必要と認められれば、休業損害の対象になり得ます。ただし、医師の関与がないまま整骨院だけに通っていると、治療の必要性を争われやすくなる点に注意してください。
鍼治療などは、さらに認められにくい傾向があるとされています。整骨院・接骨院に通う場合も、月に1〜2回は整形外科の医師の診察を受け、医師の判断を記録に残しておくと安心です。判断が難しいケースでは、弁護士への確認をおすすめします。
Q4. 受け取った休業損害に税金はかかりますか?
交通事故の被害者が受け取る休業損害には、原則として税金はかかりません。これらの賠償金は、新たな収入を得るためのものではなく、事故による損害を補うものと考えられているためです。心配なときは、税理士や税務署に確認してみてください。
Q5. 休業損害と休業補償はどう違いますか?
休業損害と休業補償は、どちらも仕事を休んだことによる減収を補うものですが、対象となる事故と請求先が異なります。休業損害は交通事故全般を対象とし、加害者側の保険会社に請求します。
一方で休業補償は、業務中や通勤中の事故を対象とし、国の労災保険から給付されるものです。同じ減収分について、両方をそのまま二重に受け取れず、調整がおこなわれます。
まとめ|交通事故で仕事を休んでも補償で治療に専念できる
交通事故でけがをして仕事を休む場合、減った収入は休業損害として加害者側に請求できます。休む期間はけがの程度と医師の診断で決まり、会社員だけでなくパートや個人事業主、専業主婦(主夫)も、それぞれの方法で補償を受けられます。
ポイントは、事故直後から正しく対応することです。すぐに受診し、医師の指示に従って通院を続け、会社には正しい手順で報告してください。治療を後回しにすると、補償が減ったり後遺障害の認定を受けにくくなったりするおそれがあります。
保険会社から治療費の打ち切りを告げられたときや、補償の額に不安があるときは、交通事故に強い弁護士への相談が助けになります。適正な補償を受け、安心して治療に専念できる環境を整えましょう。
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