飛び出し事故の過失割合はどう決める?ケース別の過失割合・注意点を解説

交通事故の加害者に対しては、賠償金として慰謝料や逸失利益などが請求できます。
ただし、被害者側に飛び出しなどがあった場合、被害者にも一定の過失が認められる可能性があります。
過失割合は賠償額に大きく影響するものであり、損害の程度によっては過失割合が10%変わるだけで金額が数百万円ほど動くこともあり得ます。
過失割合は事故態様ごとに細かく異なるため、知識のない素人が交渉対応するのは困難でしょう。
本記事では、ケース別の飛び出し事故の過失割合や、相手方から提示された過失割合に納得いかない場合の対処法などを解説します。
飛び出し事故の基本的な過失割合
歩行者が飛び出して発生した交通事故の場合、過失割合は「20(歩行者):80(自動車)」となるのが一般的です。
交通事故において、歩行者は自動車やバイクなどに比べて被害が大きくなりやすいため、基本的には「交通弱者」として扱われて過失が低く設定されます。
ただし、これはあくまでも目安のひとつであり、実際は「どのような状況で起きた事故なのか」「被害者はどのような人だったのか」などの要素を考慮したうえで判断されます。
過失割合によって獲得できる賠償金は変わる
損害賠償請求にあたっては、必ずしも被害を負った分を全額請求できるとは限りません。
過失割合は事故当事者の責任の度合いを示すものであり、自身の過失が大きいほど獲得できる示談金は減額されます。
過失割合が50:50となるようなケースでは、たとえ被害が甚大であったとしても、加害者側に請求できるのは発生した損害の50%までです。
たとえば「自身の損害額が500万円」というケースであれば、こちら側の過失が0%ならば500万円をそのまま請求することになります。
しかし、当事者双方に過失が50%ずつあるのであれば「500万円×50%=250万円」となり、半分の250万円しか請求することができません。
このように過失割合は賠償額に大きく作用するため、慎重に交渉して決めていくべきでしょう。
飛び出し事故の過失割合に影響する修正要素
飛び出し事故で過失割合を決める際、以下のような要素なども考慮したうえで決定します。
児童等・高齢者・身体障害者の飛び出し事故
飛び出した歩行者が児童等・高齢者・身体障害者などの場合、通常よりも自動車側に課される注意義務が重くなり、歩行者側の過失割合が5%~20%程度減算される可能性があります。
なお、ここでいう児童等とは「6歳未満の幼児」や「6歳以上13歳未満の児童」などを指し、高齢者は「おおむね65歳以上の者」のことを指します。
横断歩道上での飛び出し事故
横断歩道上での飛び出し事故の場合、過失割合は「0(歩行者):100(自動車)」となるのが通常です。
ただし、信号機の色や当事者双方の位置関係などによっては異なる場合もあり、詳しくは「【ケース別】歩行者による飛び出し事故の過失割合」で後述します。
信号機の有無
過失割合の算定にあたっては、信号機の有無や色なども重要です。
たとえば「歩行者側の信号が赤の状態で横断開始した」というようなケースでは、歩行者側の過失が大きくなりやすい傾向にあります。
自動車の進行方向
「当事者双方がどのような位置関係にあったのか」「自動車がどの方向に進もうとしていたのか」なども過失割合の判断材料となります。
こちらも詳しくは「【ケース別】バイクによる飛び出し事故の過失割合」以降で後述します。
自転車の飛び出し事故の過失割合
自転車についても、歩行者と同様に「交通弱者」として扱われて過失が低く設定されるのが通常です。
ただし、自転車側に「ながらスマホ」や「無灯火走行」のような違反行為などがあった場合には、自転車側の過失が加算される可能性があります。
また過去には「無免許運転のバイクと歩行者」という事故において、歩行者による飛び出しなどが考慮されて過失割合が50:50となった判例などもあります。
【ケース別】バイクによる飛び出し事故の過失割合
ここからは、交通事故の過失割合についてケースごとに解説します。
飛び出しなどがあった場合は、状況に応じて過失割合の修正がおこなわれることになります。
以下は、単車と四輪車が起こした事故での過失割合になります。
同一道路を対向方向から進入
信号機が設置されている |
過失割合(%) |
|||
単車 |
四輪車 |
|||
単車直進、四輪車右折(左図) |
直進車、右折車双方とも青で進入 |
15 |
85 |
|
直進黄で進入、右折車青進入黄右折 |
60 |
40 |
||
直進車、右折車双方とも黄で進入 |
30 |
70 |
||
直進車は赤、右折車は青で進入赤で右折 |
80 |
20 |
||
直進車は赤、右折車は黄で進入赤で右折 |
60 |
40 |
||
右折車に青矢印による右折可の信号、直進車は赤 |
100 |
0 |
||
双方とも赤で進入 |
40 |
60 |
||
信号機が設置されていない |
過失割合(%) |
|||
単車 |
四輪車 |
|||
単車直進、四輪車右折(右図) |
単車直進、四輪車右折 |
15 |
85 |
信号機が設置されている |
過失割合(%) |
|||
単車 |
四輪車 |
|||
単車右折、四輪車直進(左図) |
直進車、右折車双方とも青で進入 |
70 |
30 |
|
直進黄で進入、右折車青進入黄右折 |
25 |
75 |
||
直進車、右折車双方とも黄で進入 |
50 |
50 |
||
直進車は赤、右折車は青で進入赤で右折 |
10 |
90 |
||
直進車は赤、右折車は黄で進入赤で右折 |
20 |
80 |
||
右折車に青矢印による右折可の信号、直進車は赤 |
0 |
100 |
||
双方とも赤で進入 |
40 |
60 |
||
信号機が設置されていない |
過失割合(%) |
|||
単車 |
四輪車 |
|||
単車右折、四輪車直進(右図) |
単車右折、四輪車直進 |
70 |
30 |
交差道路から進入(四輪車右折・単車直進)
左方四輪車の右折:図1
過失割合(%)|【単車:30】【四輪車:70】
右方四輪車の右折:図2
過失割合(%)|【単車:20】【四輪車:80】
交差道路から進入(四輪車直進・単車右折)
左方単車の右折:図1
過失割合(%)|【単車:50】【四輪車:50】
右方単車の右折:図2
過失割合(%)|【単車:60】【四輪車:40】
一方が明らかに広い道路又は優先道路・一方に一時停止標識あり
一方が明らかに広い道路又は優先道路・一方に一時停止標識あり |
過失割合(%) |
||
単車 |
四輪車 |
||
単車直進、四輪車右折 |
一時停止規制車直進、右折車同一方向右折 |
45 |
55 |
一時停止規制車直進、右折車対向方向右折 |
55 |
45 |
|
一時停止規制車右折 |
15 |
85 |
|
狭路車右折、広路車直進 |
15 |
85 |
|
劣後車右折、優先車直進 |
10 |
90 |
|
狭路(劣後)車直進 |
60 |
40 |
|
狭路(劣後)車直進 |
40 |
60 |
一方が明らかに広い道路又は優先道路・一方に一時停止標識あり |
過失割合(%) |
||
単車 |
四輪車 |
||
単車右折、四輪車直進 |
一時停止規制車直進、右折車同一方向右折 |
35 |
65 |
一時停止規制車直進、右折車対向方向右折 |
25 |
75 |
|
一時停止規制車右折 |
65 |
35 |
|
単車右折、四輪車直進 |
狭路車右折、広路車直進 |
65 |
35 |
劣後車右折、優先車直進 |
70 |
30 |
|
狭路(劣後)車直進 |
20 |
80 |
|
狭路(劣後)車直進 |
30 |
70 |
直進単車と左折四輪車
直進単車と左折四輪車 |
過失割合(%) |
||
単車 |
四輪車 |
||
直進単車と先行左折四輪車 |
四輪車が先行していた場合 |
40 |
60 |
四輪車が後行していた場合 |
20 |
80 |
|
直進単車と追越し左折四輪車 |
10 |
90 |
左折単車と直進四輪車
先行左折単車と直進四輪車
過失割合(%)|【単車:60】【四輪車:40】
追越し左折単車と直進四輪車
過失割合(%)|【単車:80】【四輪車:20】
【ケース別】自転車による飛び出し事故の過失割合
以下は、自転車と四輪車が起こした事故での過失割合になります。
直進車同士の出会い頭
車両同士の出会い頭 |
過失割合(%) |
|||
四輪車 |
自転車 |
|||
信号機の設置あり |
自転車が青進入、四輪車が赤進入 |
100 |
0 |
|
自転車が赤進入、四輪車が青進入 |
20 |
80 |
||
自転車が黄進入、四輪車が赤進入 |
90 |
10 |
||
自転車が黄進入衝突時赤、四輪車が青進入 |
60 |
40 |
||
自転車が赤進入、四輪車が黄進入 |
40 |
60 |
||
双方とも赤進入 |
70 |
30 |
||
信号機の設置なし |
一方が明らかに広い道路 |
自転車広路、四輪車狭路 |
90 |
10 |
自転車狭路、四輪車広路 |
70 |
30 |
||
一方が優先道路 |
自転車優先道路、四輪車非優先道路 |
90 |
10 |
|
自転車非優先側、四輪車広路 |
60 |
40 |
||
一方に一時停止の標識あり |
自転車規制なし、四輪車一時停止規制 |
50 |
50 |
|
自転車一時停止規制、四輪車規制なし |
60 |
40 |
||
一方通行違反 |
四輪車一方通行違反 |
90 |
10 |
|
自転車一方通行違反 |
50 |
50 |
同一道路を対向方向から進入
同一道路を対向方向から進入 |
過失割合(%) |
|||
四輪車 |
自転車 |
|||
信号機 設置あり |
自転車右折、四輪車直進(自転車は道路交通法違反) |
直進車、右折車双方とも青で進入 |
50 |
50 |
直進車黄で進入右折車青で進入黄で右折 |
80 |
20 |
||
直進車、右折車双方とも黄で進入 |
60 |
40 |
||
直進車、右折車双方とも赤で進入 |
70 |
30 |
||
自転車直進、四輪車右折 |
直進車、右折車双方とも青で進入 |
90 |
10 |
|
直進車黄で進入右折車青で進入黄で右折 |
60 |
40 |
||
直進車、双方車とも黄で進入 |
80 |
20 |
||
直進車赤で進入右折車青で進入赤で右折 |
30 |
70 |
||
直進車赤で進入右折車黄で進入赤で右折 |
50 |
50 |
||
直進車赤で進入右折車青矢印で右折可の信号で右折 |
20 |
80 |
||
直進車、右折車双方とも赤で進入 |
70 |
30 |
||
信号機 設置なし |
自転車直進、四輪車右折 |
90 |
10 |
|
自転車右折、四輪車直進(自転車は道交法違反) |
50 |
50 |
交差道路から侵入
交差道路から侵入 |
過失割合(%) |
|
四輪車 |
自転車 |
|
自転車直進、四輪車右折 |
80 |
20 |
自転車右折、四輪車直進 |
70 |
30 |
一方が明らかに広い道路又は優先道路
自転車直進、四輪車右折 |
過失割合(%) |
|||
四輪車 |
自転車 |
|||
一方が明らかに広い道路 |
広路車直進、狭路車右折(図1) |
90 |
10 |
|
狭路車直進、広路車右折(図2) |
対向方向 |
70 |
30 |
|
同一方向 |
||||
一方が優先道路 |
優先道路進行車直進、非優先側右折(図1) |
90 |
10 |
|
優先道路通行車右折、非優先側直進(図2) |
対向方向 |
50 |
50 |
|
同一方向 |
60 |
40 |
||
一方に一時停止標識あり |
一時停止規制側、直進非規制側右折(図3) |
対向方向 |
60 |
40 |
同一方向 |
65 |
35 |
||
一時停止規制側右折、非規制側直進(図4) |
90 |
10 |
自転車右折、四輪車直進 |
過失割合(%) |
|||
四輪車 |
自転車 |
|||
一方が明らかに広い道路 |
広路車直進、狭路車右折(図5) |
60 |
40 |
|
狭路車直進、広路車右折(図6) |
対向方向 |
80 |
20 |
|
同一方向 |
70 |
30 |
||
一方が優先道路 |
優先道路進行車直進、非優先側右折(図5) |
50 |
50 |
|
優先道路通行車、 |
対向方向 |
80 |
20 |
|
同一方向 |
70 |
30 |
||
一方に一時停止標識あり |
一時停止規制側直進、非規制側右折(図7) |
対向方向 |
80 |
20 |
同一方向 |
70 |
30 |
||
一時停止規制側右折、非規制側直進(図8) |
55 |
45 |
同一方向に進行する左折車と直進車
直進自転車と左折四輪車 |
過失割合(%) |
||
四輪車 |
自転車 |
||
四輪車が先行の場合 |
四輪車が先行していた場合 |
90 |
10 |
四輪車が後行していた場合 |
100 |
0 |
|
四輪車が自転車を追い越し左折する場合 |
100 |
0 |
【ケース別】歩行者による飛び出し事故の過失割合
以下は、歩行者と四輪車が起こした事故での過失割合になります。
信号機が設置されている横断歩道
横断歩道上 |
過失割合(%) |
|||
四輪車 |
歩行者 |
|||
歩行者が青で横断開始 |
車が赤で横断歩道を直進 |
100 |
0 |
|
車が青で交差点に進入右左折 |
100 |
0 |
||
歩行者が黄で横断開始 |
車が赤で横断歩道を直進 |
90 |
10 |
|
車が青で交差点に進入黄で右左折 |
70 |
30 |
||
車が黄で交差点に進入右左折 |
80 |
20 |
||
歩行者が黄で横断開始、その後赤に変わる |
安全地帯のない中央寄り |
車が青で直進 |
70 |
30 |
安全地帯の通過直後 |
車が青で直進 |
60 |
40 |
|
歩行者が赤で横断開始 |
車が青で横断歩道を直進 |
30 |
70 |
|
車が黄で横断歩道を直進 |
50 |
50 |
||
車が赤で交差点に進入 |
80 |
20 |
||
歩行者が赤で横断開始、(見込み進入) |
その後青に変わる |
車が赤で直進 |
90 |
10 |
車が赤で右左折 |
90 |
10 |
||
歩行者が青で横断開始したが、 途中で赤に変わる(信号残り) |
安全地帯の通過直後 |
60 |
40 |
|
安全地帯のない道路の中央寄り |
80 |
20 |
||
横断終了直前、または安全地帯直前 |
100 |
0 |
||
車が赤で横断歩道を通過 |
100 |
0 |

横断歩道の直近 |
過失割合(%) |
|||
四輪車 |
歩行者 |
|||
直進車が横断歩道を通過した後の衝突 |
車が赤 |
歩行者が青で横断開始 |
50 |
50 |
歩行者が黄で横断開始 |
50 |
15 |
||
歩行者が赤で横断開始 |
75 |
25 |
||
車が青 |
歩行者が赤で横断開始 |
30 |
70 |
|
車が黄 |
歩行者が赤で横断開始 |
50 |
50 |
|
直進車が横断歩道通過する直前の衝突 |
車が赤 |
歩行者が青で横断開始 |
90 |
10 |
歩行者が黄で横断開始 |
80 |
20 |
||
歩行者が赤で横断開始 |
70 |
30 |
||
車が青 |
歩行者が赤で横断開始 |
30 |
70 |
|
車が黄 |
歩行者が赤で横断開始 |
50 |
50 |
|
右左折車が横断歩道を通過した後の衝突 |
車が青で交差点に進入 |
歩行者が青で横断開始 |
90 |
10 |
車が黄で交差点に進入 |
歩行者が黄で横断開始 |
70 |
30 |
信号機・横断歩道のない交差点またはその付近の場合
信号機が設置されていない横断歩道 |
過失割合(%) |
|
四輪車 |
歩行者 |
|
通常の横断歩道上 |
100 |
0 |
歩行者からは容易に衝突を回避できるが、車からは歩行者の発見が困難 |
85 |
15 |
横断歩道の付近 |
70 |
30 |
飛び出し事故の過失割合に納得いかない場合の対処法
交通事故の過失割合は、相手方と交渉をおこなって決めるのが通常です。
相手側が主張する過失割合に納得いかない場合は反論することになりますが、その際は事故状況を示す十分な証拠などがないと主張を認めてもらえないおそれがあります。
交通事故トラブルが得意な弁護士であれば、適切な過失割合を算定してくれるうえ、証拠の準備などを済ませたうえで法的観点から的確に反論してくれます。
自力で対応するよりもスムーズかつ納得のいく形での交渉成立が望めるため、自力での対応が不安な場合は弁護士に依頼することをおすすめします。
飛び出し事故に関する判例・解決事例
ここでは、飛び出し事故に関する実際の裁判例を紹介します。
飛び出し事故で被害者が死亡したケース
普通乗用車にて車道を走行していたところ、同道を横断しようと右方から飛び出してきた自転車と衝突したというケースです。
この事故により自転車の運転手は脳挫傷を起こして昏睡状態となり、事故の約1ヵ月後に死亡しています。
裁判所は、車の運転手に対して「前方不注意によって、事故直前まで自転車に気づいていなかった過失が主な事故原因である」としながらも、自転車の運転手に対しても「左方から車両が迫っていることを確認せずに横断開始しており、ブレーキやハンドル操作も適切でなかった」として、双方の過失割合については70(車側):30(自転車側)が妥当との判断を下しました。
その結果、裁判所は車の運転手に対して、死亡慰謝料・死亡逸失利益・葬儀関係費用などを含めた、約1,500万円の支払いを命じました。
【参考元】名古屋地裁平成25年2月27日判決、Westlaw Japan 文献番号2013WLJPCA02276002
高齢者による飛び出し事故のケース
トラックで車道を走行していたところ、横断禁止の標識を無視して飛び出してきた歩行者と衝突したというケースです。
この事故により歩行者は頭部を強く打ち、事故の約1週間後に死亡しています。
裁判所は、トラックの運転手に対して「走行時に前方を注視していなかった過失は重い」としたうえで、歩行者に対しても「事故現場には横断禁止の標識や横断幕・ガードバイプが設置されていたにもかかわらず、それを無視して横断しようと飛び出してきた過失が認められる」としています。
ただし事故当時、歩行者は78歳と高齢であったことなども考慮し、双方の過失割合については75(トラック側):25(歩行者側)が妥当との判断を下しました。
その結果、裁判所はトラックの運転手に対して、死亡慰謝料・死亡逸失利益・葬儀関係費用などを含めた、約3,600万円の支払いを命じました。
【参考元】東京地裁平成30年9月26日判決、Westlaw Japan 文献番号2018WLJPCA09268022
子供による飛び出し事故のケース
普通乗用車で信号機のない交差点を走行していたところ、車両が迫っていることに気付かず右方から飛び出してきた歩行者と衝突したというケースです。
この事故により、歩行者は脳挫傷・頭蓋骨骨折・頭部打撲などを負い、事故後間もなく死亡しています。
裁判所は、車の運転手に対して「対向車両の交通量が激しく、右方を十分に確認できない状態にもかかわらず徐行や注意義務を怠っていた過失は重い」としたうえで、歩行者に対しても「横断にあたって車両の有無を十分に確認せずに飛び出し、さらに車両の直後に横断したなどの過失が認められる」としています。
ただし事故当時、歩行者は6歳と幼かったことなども考慮し、双方の過失割合については75(車側):25(歩行者側)が妥当との判断を下しました。
その結果、裁判所は車の運転手に対して、死亡慰謝料・死亡逸失利益・葬儀関係費用などを含めた、約4,400万円の支払いを命じました。
【参考元】大阪地裁平成29年6月16日判決、Westlaw Japan 文献番号2017WLJPCA06168002
飛び出し事故に遭った際は弁護士に相談
事故対応にかかる精神的負担・時間的負担を少しでも軽くするためにも、まずは一度弁護士に相談することをおすすめします。
ここでは、弁護士に依頼するメリット・解決事例・費用目安・弁護士の探し方などを解説します。
弁護士に依頼するメリット
事故後は、葬儀や相続に加えて損害賠償請求手続きもしなければならないというのは、被害者遺族としては大きな負担となるでしょう。
交通事故について知識がない場合、相手が主張する過失割合や賠償額が適切かどうか判断できないということもあり得ます。
弁護士であれば、過失割合の交渉や賠償額の算定などの事故対応を一任できます。
賠償金のうち慰謝料については最も高額になりやすい「弁護士基準」という計算方法を用いて請求してもらえるほか、過失割合の引き下げに成功して、以下のように依頼後の賠償金が増額する可能性もあります。
以下は、当サイトに掲載している弁護士の解決事例を簡略化したものです。
約2,000万円から約4,000万円に増額したケース
交差点を横断していた70代の男性が、タクシーにはねられて死亡したという事例です。
この事例では、相手保険会社から賠償金として約2,000万円を提示されていました。
依頼を受けた弁護士が相手方の提示内容を確認したところ、相手保険会社は「被害者を無職者として賠償金を計算していた」ということがわかりました。
そこで弁護士は、被害者が生前就いていた仕事に関する各種資料を取り寄せ、それらをもとに死亡慰謝料・死亡逸失利益などの各損害を改めて算出し直して請求しました。
その結果、請求が認められ、約2,000万円から約4,000万円への増額に成功しています。
約5,000万円から約9,500万円に増額したケース
歩道を歩いていた40代の外国人女性が、縁石を越えて歩道に乗り上げてきた自動車にはねられて死亡したという事例です。
この事例では、加害者は任意保険未加入であり、賠償金として約5,000万円を提示されていました。
依頼を受けた弁護士が被害状況を確認したところ、被害者が加入していた任意保険には「無保険車傷害特約」が付いており、保険会社から保険金を受け取れるということがわかりました。
次に弁護士は、加害者と保険会社に対して訴訟を起こし、死亡慰謝料・死亡逸失利益などの各損害を改めて算出し直して請求しました。
その結果、請求が認められ、約5,000万円から約9,500万円への増額に成功しています。
弁護士費用の相場
弁護士に依頼する際は、相談料・着手金・報酬金などの弁護士費用を支払います。
相談料については「30分あたり5,000円」というように時間制で料金を決めていたり、なかには初回無料相談を実施していたりする事務所などもあります。
着手金や報酬金については、以下のように相手の支払い金額によって料金設定しているところもあります。
ただし、事務所ごとに料金形態はまちまちですので、具体的な金額については直接事務所に確認しましょう。
相手の支払い金額 |
着手金 |
報酬金 |
300万円以下 |
請求額の8% |
回収額の16% |
300万~3,000万円 |
請求額の5% |
18万円+回収額の10% |
3,000万~3億円 |
請求額の3% |
138万円+回収額の6% |
3億円を超える場合 |
請求額2% |
738万円+回収額の4% |
弁護士の探し方
弁護士に依頼するかどうか迷っている方のなかには「料金が高そうで不安」「相談後に依頼しなかったら怒られるかも」などとネガティブな印象を持っていたり、ハードルが高いと感じていたりする方もいるでしょう。
しかし、現在では「初期費用0円」「分割払い可能」などの支払い方法が柔軟な事務所も増えていますし、相談時に見積もりを提示してくれる事務所もあるので安心してください。
もちろん「相談だけ」というのも全く問題ありませんので、無料相談なども積極的に活用しましょう。
ただし、全国にある事務所を一から絞り込むには大変手間がかかるため、弁護士を探す際は「ベンナビ交通事故」から探すのがスムーズです。
当サイトでは「交通事故問題に注力する弁護士」を都道府県ごとに絞って検索できるため、初めての方でも依頼状況にマッチした弁護士を見つけられるでしょう。
飛び出し事故に関するよくある質問
ここでは、飛び出し事故に関するよくある質問について解説します。
飛び出し事故で過失割合はどうなる?
飛び出し事故の過失割合については、「双方の位置関係」「被害者の年齢」「信号機の色」「違反の有無」などのさまざまな事情を考慮したうえで決定します。
状況によって過失割合は大きく異なるため、詳しく知りたい方は交通事故トラブルが得意な弁護士に一度相談することをおすすめします。
子供の飛び出し事故での親の責任は?
子どもの飛び出し事故では、親に対して過失が認められる場合もあります。
たとえば、子どもが6歳未満の場合には「飛び出すことの危険性などを十分に認識できるほどの事理弁識能力が備わっていない」と判断されることもあります。
そのようなケースでは、子どもを十分に監視できていなかった親に対して一定の過失が認められる可能性があります。
歩行者側が悪い飛び出し事故でも自動車側の責任になる?
自動車の運転者としては「急に歩行者が飛び出してきたのでぶつかってしまった」というような事故であっても、自動車側にも一定の過失が認められるケースがほとんどです。
特に歩行者については交通弱者として扱われるため、自動車側の過失のほうが大きくなることもあります。
飛び出し事故で理不尽な過失割合を提示されたらどうするべき?
相手方が理不尽な過失割合を提示してきた場合は、証拠などを用いて妥当な過失割合を提示して反論しましょう。
ただし、的確に主張するには法律知識や交渉経験なども必要になるため、自力で対応するよりも弁護士に依頼したほうが安心でしょう。
まとめ
被害者遺族としては、身内を亡くしたことで精神的な負担も非常に大きいでしょう。
葬儀や相続などの対応に追われるなか、事故対応に割ける余裕がないということもあるでしょう。
できるかぎり事故対応の負担を減らしたいのであれば、弁護士に依頼することです。
交通事故問題に注力する弁護士であれば安心して手続きを一任できますし、自力で対応するよりも賠償金が増額することもあり得ます。
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