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飛び出し事故で家族が亡くなった場合|過失割合や賠償金を解説

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
飛び出し事故で家族が亡くなった場合|過失割合や賠償金を解説

死亡事故の加害者に対しては、賠償金として死亡慰謝料・死亡逸失利益・葬儀関係費用などを請求することになります。ただし、歩行者である被害者に飛び出しなどがあった場合、被害者側にも一定の過失が認められる可能性があります。

過失割合は賠償額に大きく影響する項目であり、損害の程度によっては過失割合が10%変わるだけで請求額が数百万円動くこともあり得ます。ただし過失割合は事故態様ごとに細かく変わるため、知識のない素人が交渉対応するのは困難でしょう。そこで記事内では、ケース別での過失割合の目安もあわせて紹介します。

この記事では死亡事故の被害者遺族に向けて、飛び出し事故で死亡した際の過失割合や賠償金の中身、実際の損害賠償請求例や弁護士の解決事例など、事故対応のポイントについて解説していきます。

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飛び出し事故で死亡した際に被害者遺族が知っておきたいポイント

まずは、死亡事故の対応にあたって知っておいた方が良いポイントを3つ紹介します。

飛び出し事故では過失割合が加算される可能性がある

冒頭でも触れた通り、飛び出し事故では飛び出した側に対して一定の過失が加算される可能性があります。

例えば、歩行者側が道路に飛び出して交通事故にあったような場合、歩行者側にも20%前後の過失は認められる場合が多いと思われます。飛び出したのが判断能力の乏しい児童や高齢者である場合、一定の調整はあり得ますが過失が全部否定されるということは基本的にありません。

また過去には「無免許運転のバイクと歩行者」という事故において、歩行者による飛び出しなどが考慮されて過失割合が50:50となった判例などもあります。

青信号の交差点を走行していたバイクが、赤信号を無視して横断歩道を渡ろうと飛び出した歩行者と事故を起こしたというケースです。この事故により歩行者は急性硬膜下血腫や脳挫傷などを負い、事故の翌日に死亡しています。なお事故当時、バイクの運転手は免許を持っていませんでした。

まず裁判所は、バイクの運転手に対して「無免許でバイクを運転していた過失は極めて重い」との考えを示しました。しかし一方で、歩行者に対しても「赤信号にもかかわらず、それを無視して横断歩道に飛び出した過失も重い」として、双方の過失を考慮すると50:50が妥当との判断が下されています(参考判例:東京地裁平成27年3月11日判決、Westlaw Japan 文献番号2015WLJPCA03118011)。

賠償金は過失割合によって大きく変わる

損害賠償請求にあたっては、必ずしも被害を負った分を全額請求できるとは限りません。上記のように過失割合が50:50となるようなケースでは、たとえ被害が甚大であったとしても、加害者側に請求できるのは発生した損害の50%までです。

例えば「損害額が500万円」と仮定すると、こちら側の過失が0%ならば500万円をそのまま請求することになります。しかし当事者双方に過失が50%ずつあるのであれば「500万円×50%=250万円」となり、半分の250万円しか請求することができません。

このように過失割合は賠償額に大きく作用しますので、慎重に交渉して決めていくべきでしょう。交渉する際は事故態様などをもとに判断していくことになります。

示談のやり直しは原則できない

示談成立とは「双方の間で問題が解決した」ことを意味するため、その後にやり直しを要求しても原則認められません。相手から言われるがまま同意してしまった場合などは、あとになって大きく後悔することになる恐れもありますので、十分に話し合いを重ねた上で示談成立に応じるようにしましょう。

特に過失割合は賠償額に直接影響するものですので、なかには妥協点を見出せずに交渉が長引いてしまうこともあります。もし交渉での解決が難しいと感じた際は、早い段階で訴訟を検討するのが良いでしょう。なお訴訟にあたっては法律知識が求められますので、弁護士にサポートを依頼することをおすすめします。

【ケース別】交通事故の過失割合

過失割合は「どのような状況で起きた事故なのか」によって細かく変わります。以下ではそれぞれの目安を紹介します。

単車(バイク)対四輪車の事故

以下は、単車と四輪車が起こした事故での過失割合になります。

同一道路を対抗方向から進入

信号機が設置されている

過失割合(%)

単車

四輪車

単車直進、四輪車右折(左図)

直進車、右折車双方とも青で進入

15

85

直進黄で進入、右折車青進入黄右折

60

40

直進車、右折車双方とも黄で進入

30

70

直進車は赤、右折車は青で進入赤で右折

80

20

直進車は赤、右折車は黄で進入赤で右折

60

40

右折車に青矢印による右折可の信号、直進車は赤

100

0

双方とも赤で進入

40

60

信号機が設置されていない

過失割合(%)

単車

四輪車

単車直進、四輪車右折(右図)

単車直進、四輪車右折

15

85

信号機が設置されている

過失割合(%)

単車

四輪車

単車右折、四輪車直進(左図)

直進車、右折車双方とも青で進入

70

30

直進黄で進入、右折車青進入黄右折

25

75

直進車、右折車双方とも黄で進入

50

50

直進車は赤、右折車は青で進入赤で右折

10

90

直進車は赤、右折車は黄で進入赤で右折

20

80

右折車に青矢印による右折可の信号、直進車は赤

0

100

双方とも赤で進入

40

60

信号機が設置されていない

過失割合(%)

単車

四輪車

単車右折、四輪車直進(右図)

単車右折、四輪車直進

70

30

交差道路から進入

左方四輪車の右折:図1

過失割合(%)|【単車:30】【四輪車:70】

右方四輪車の右折:図2

過失割合(%)|【単車:20】【四輪車:80】

左方単車の右折:図1

過失割合(%)|【単車:50】【四輪車:50】

右方単車の右折:図2

過失割合(%)|【単車:60】【四輪車:40】

一方が明らかに広い道路又は優先道路・一方に一時停止標識あり

一方が明らかに広い道路又は優先道路・一方に一時停止標識あり

過失割合(%)

単車

四輪車

単車直進、四輪車右折

一時停止規制車直進、右折車同一方向右折

45

55

一時停止規制車直進、右折車対向方向右折

55

45

一時停止規制車右折

15

85

狭路車右折、広路車直進

15

85

劣後車右折、優先車直進

10

90

狭路(劣後)車直進
広路(優先)車対向方向右折

60

40

狭路(劣後)車直進
広路(優先)車同一方向右折

40

60

一方が明らかに広い道路又は優先道路・一方に一時停止標識あり

過失割合(%)

単車

四輪車

単車右折、四輪車直進

一時停止規制車直進、右折車同一方向右折

35

65

一時停止規制車直進、右折車対向方向右折

25

75

一時停止規制車右折

65

35

単車右折、四輪車直進

狭路車右折、広路車直進

65

35

劣後車右折、優先車直進

70

30

狭路(劣後)車直進
広路(優先)車対向方向右折

20

80

狭路(劣後)車直進
広路(優先)車同一方向右折

30

70

直進単車と左折四輪車

直進単車と左折四輪車

過失割合(%)

単車

四輪車

直進単車と先行左折四輪車

四輪車が先行していた場合

40

60

四輪車が後行していた場合

20

80

直進単車と追越し左折四輪車

10

90

左折単車と直進四輪車

・先行左折単車と直進四輪車

過失割合(%)|【単車:60】【四輪車:40】

・追越し左折単車と直進四輪車

過失割合(%)|【単車:80】【四輪車:20】

自転車対四輪車の事故

以下は、自転車と四輪車が起こした事故での過失割合になります。

直進車同士の出会い頭

車両同士の出会い頭

過失割合(%)

四輪車

自転車

信号機の設置あり

自転車が青進入、四輪車が赤進入

100

0

自転車が赤進入、四輪車が青進入

20

80

自転車が黄進入、四輪車が赤進入

90

10

自転車が黄進入衝突時赤、四輪車が青進入

60

40

自転車が赤進入、四輪車が黄進入

40

60

双方とも赤進入

70

30

信号機の設置なし

一方が明らかに広い道路

自転車広路、四輪車狭路

90

10

自転車狭路、四輪車広路

70

30

一方が優先道路

自転車優先道路、四輪車非優先道路

90

10

自転車非優先側、四輪車広路

60

40

一方に一時停止の標識あり

自転車規制なし、四輪車一時停止規制

50

50

自転車一時停止規制、四輪車規制なし

60

40

一方通行違反

四輪車一方通行違反

90

10

自転車一方通行違反

50

50

同一道路を対向方向から進入

同一道路を対向方向から進入

過失割合(%)

四輪車

自転車

信号機

設置あり

自転車右折、四輪車直進(自転車は道路交通法違反)

直進車、右折車双方とも青で進入

50

50

直進車黄で進入右折車青で進入黄で右折

80

20

直進車、右折車双方とも黄で進入

60

40

直進車、右折車双方とも赤で進入

70

30

自転車直進、四輪車右折

直進車、右折車双方とも青で進入

90

10

直進車黄で進入右折車青で進入黄で右折

60

40

直進車、双方車とも黄で進入

80

20

直進車赤で進入右折車青で進入赤で右折

30

70

直進車赤で進入右折車黄で進入赤で右折

50

50

直進車赤で進入右折車青矢印で右折可の信号で右折

20

80

直進車、右折車双方とも赤で進入

70

30

信号機

設置なし

自転車直進、四輪車右折

90

10

自転車右折、四輪車直進(自転車は道交法違反)

50

50

交差道路から侵入

交差道路から侵入

過失割合(%)

四輪車

自転車

自転車直進、四輪車右折

80

20

自転車右折、四輪車直進

70

30

一方が明らかに広い道路又は優先道路

自転車直進、四輪車右折

過失割合(%)

四輪車

自転車

一方が明らかに広い道路

広路車直進、狭路車右折(図1)

90

10

狭路車直進、広路車右折(図2)

対向方向

70

30

同一方向

一方が優先道路

優先道路進行車直進、非優先側右折(図1)

90

10

優先道路通行車右折、非優先側直進(図2)

対向方向

50

50

同一方向

60

40

一方に一時停止標識あり

一時停止規制側、直進非規制側右折(図3)

対向方向

60

40

同一方向

65

35

一時停止規制側右折、非規制側直進(図4)

90

10

自転車右折、四輪車直進

過失割合(%)

四輪車

自転車

一方が明らかに広い道路

広路車直進、狭路車右折(図5)

60

40

狭路車直進、広路車右折(図6)

対向方向

80

20

同一方向

70

30

一方が優先道路

優先道路進行車直進、非優先側右折(図5)

50

50

優先道路通行車、
右左折非優先側直進(図6)

対向方向

80

20

同一方向

70

30

一方に一時停止標識あり

一時停止規制側直進、非規制側右折(図7)

対向方向

80

20

同一方向

70

30

一時停止規制側右折、非規制側直進(図8)

55

45

同一方向に進行する左折車と直進車

直進自転車と左折四輪車

過失割合(%)

四輪車

自転車

四輪車が先行の場合

四輪車が先行していた場合

90

10

四輪車が後行していた場合

100

0

四輪車が自転車を追い越し左折する場合

100

0

歩行者対四輪車の事故

以下は、歩行者と四輪車が起こした事故での過失割合になります。

信号機が設置されている横断歩道の場合

横断歩道上

過失割合(%)

四輪車

歩行者

歩行者が青で横断開始

 車が赤で横断歩道を直進

100

0

 車が青で交差点に進入右左折

100

0

歩行者が黄で横断開始

 車が赤で横断歩道を直進

90

10

 車が青で交差点に進入黄で右左折

70

30

 車が黄で交差点に進入右左折

80

20

歩行者が黄で横断開始、その後赤に変わる

安全地帯のない中央寄り

車が青で直進

70

30

安全地帯の通過直後

車が青で直進

60

40

歩行者が赤で横断開始

 車が青で横断歩道を直進

30

70

 車が黄で横断歩道を直進

50

50

 車が赤で交差点に進入

80

20

歩行者が赤で横断開始、(見込み進入)

その後青に変わる

車が赤で直進

90

10

車が赤で右左折

90

10

歩行者が青で横断開始したが、

途中で赤に変わる(信号残り)

安全地帯の通過直後

60

40

安全地帯のない道路の中央寄り

80

20

横断終了直前、または安全地帯直前

100

0

車が赤で横断歩道を通過

100

0

横断歩道の直近

過失割合(%)

四輪車

歩行者

直進車が横断歩道を通過した後の衝突

車が赤

歩行者が青で横断開始

50

50

歩行者が黄で横断開始

50

15

歩行者が赤で横断開始

75

25

車が青

歩行者が赤で横断開始

30

70

車が黄

歩行者が赤で横断開始

50

50

直進車が横断歩道通過する直前の衝突

車が赤

歩行者が青で横断開始

90

10

歩行者が黄で横断開始

80

20

歩行者が赤で横断開始

70

30

車が青

歩行者が赤で横断開始

30

70

車が黄

歩行者が赤で横断開始

50

50

右左折車が横断歩道を通過した後の衝突

車が青で交差点に進入

歩行者が青で横断開始

90

10

車が黄で交差点に進入

歩行者が黄で横断開始

70

30

信号機・横断歩道のない交差点またはその付近の場合

信号機が設置されていない横断歩道

過失割合(%)

四輪車

歩行者

通常の横断歩道上

100

0

歩行者からは容易に衝突を回避できるが、車からは歩行者の発見が困難

85

15

横断歩道の付近

70

30

飛び出し事故で死亡した際に受け取れる賠償金

交通事故により命を奪われてしまった際は、賠償金として死亡慰謝料・死亡逸失利益・葬儀関係費用などが請求可能です。これらがすべてというわけではありませんが、以下ではこの3つをピックアップして解説していきます。

死亡慰謝料

慰謝料には入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料などがありますが、被害者が死亡した場合に請求可能なのが死亡慰謝料です。また慰謝料には以下のように計算基準があり、特に弁護士基準が高額になりやすい傾向にあります。以下で各計算基準の相場額を見ていきましょう。

交通事故慰謝料の計算基準

自賠責基準

自賠責保険で用いる計算基準

任意保険基準

各保険会社それぞれが定める計算基準

弁護士基準

裁判所での過去の判例などをもとにした計算基準

自賠責基準

自賠責保険はどの運転手も加入している保険ですので、事故に遭った際は誰でも自賠責基準で請求できますが、上記のように任意保険基準・弁護士基準と比べると低額になります。自賠責基準の場合慰謝料の請求人数扶養の有無に応じて算出します。

請求する要項

慰謝料額

死者本人に対する慰謝料

400万円(2020年4月1日以前に発生した事故に関しては350万円)

死亡者に扶養されていた場合(※)

200万円

慰謝料を請求する遺族が1人の場合

550万円

慰謝料を請求する遺族が2人の場合

650万円

慰謝料を請求する遺族が3人の場合

750万円

※死亡者が遺族を扶養していた場合200万円が加算されます。(遺族が1人かつ扶養されていた場合:400万円+200万円+550万円=1,150万円)

任意保険基準・弁護士基準

自賠責保険と異なり任意保険は加入が強制ではありませんので、もし相手が任意保険に入っていなければ任意保険からの補償は当然ありません。この場合は自賠責に請求しつつ、不足分を加害者本人に請求することになります。

また弁護士基準の場合、必ずしも弁護士がいなければ請求できないというわけではありません。しかし、なるべくスムーズに済ませたいのであれば依頼した方が良いでしょう。なお算出方法については、任意保険基準と同じく被害者が亡くなる前の家庭内での立場に応じて異なります。

死亡者の立場

任意保険基準(推定)

弁護士基準

一家の支柱

1,500万~2,000万円

2,800万円

配偶者、母親

1,500万~2,000万円

2,500万円

上記以外

1,200万~1,500万円

2,000万~2,500万円

死亡逸失利益

死亡逸失利益とは、事故がなければ本来獲得できていたはずの将来分の収入のことを指します。こちらは相場というものはなく、以下のように収入・家庭内での立場・年齢などに応じて算出します。

死亡逸失利益=基礎収入額×(1-生活費控除率)×中間利息控除係数

葬儀関係費用

死亡事故では、葬儀などのために支払った費用も請求することができます。ただし注意点として、各計算基準に応じて請求できる金額には限度がありますので、必ずしも全額請求できるとは限りません。以下の限度額を超えた部分については、こちらで負担することになります。

請求できる葬儀代の限度額

自賠責基準

60万円(原則)

任意保険基準

保険会社ごとで異なるが、自賠責基準と弁護士基準の間というケースが多い

弁護士基準

150万円

飛び出し事故で死亡した際の損害賠償請求例

ここでは、飛び出しによる死亡事故について実際の裁判例を紹介します。

約1,500万円の賠償金が認められたケース

普通乗用車にて車道を走行していたところ、同道を横断しようと右方から飛び出してきた自転車と衝突したというケースです。この事故により自転車の運転手は脳挫傷を起こして昏睡状態となり、事故の約1ヶ月後に死亡しています。

裁判所は、車の運転手に対して「前方不注意によって、事故直前まで自転車に気づいていなかった過失が主な事故原因である」としながらも、自転車の運転手に対しても「左方から車両が迫っていることを確認せずに横断開始しており、ブレーキやハンドル操作も適切でなかった」として、双方の過失割合については70(車側):30(自転車側)が妥当との判断を下しました。

その結果、裁判所は車の運転手に対して、死亡慰謝料・死亡逸失利益・葬儀関係費用などを含めた、約1,500万円の支払いを命じました(参考判例:名古屋地裁平成25年2月27日判決、Westlaw Japan 文献番号2013WLJPCA02276002)。

約3,600万円の賠償金が認められたケース

トラックで車道を走行していたところ、横断禁止の標識を無視して飛び出してきた歩行者と衝突したというケースです。この事故により歩行者は頭部を強く打ち、事故の約1週間後に死亡しています。

裁判所は、トラックの運転手に対して「走行時に前方を注視していなかった過失は重い」としたうえで、歩行者に対しても「事故現場には横断禁止の標識や横断幕・ガードバイプが設置されていたにもかかわらず、それを無視して横断しようと飛び出してきた過失が認められる」としています。

ただし事故当時、歩行者は78歳と高齢であったことなども考慮し、双方の過失割合については75(トラック側):25(歩行者側)が妥当との判断を下しました。

その結果、裁判所はトラックの運転手に対して、死亡慰謝料・死亡逸失利益・葬儀関係費用などを含めた、約3,600万円の支払いを命じました(参考判例:東京地裁平成30年9月26日判決、Westlaw Japan 文献番号2018WLJPCA09268022)。

約4,400万円の賠償金が認められたケース

普通乗用車で信号機のない交差点を走行していたところ、車両が迫っていることに気付かず右方から飛び出してきた歩行者と衝突したというケースです。この事故により歩行者は脳挫傷・頭蓋骨骨折・頭部打撲などを負い、事故後間もなく死亡しています。

裁判所は、車の運転手に対して「対向車両の交通量が激しく、右方を十分に確認できない状態にもかかわらず徐行や注意義務を怠っていた過失は重い」としたうえで、歩行者に対しても「横断にあたって車両の有無を十分に確認せずに飛び出し、さらに車両の直後に横断したなどの過失が認められる」としています。

ただし事故当時、歩行者は6歳と幼かったことなども考慮し、双方の過失割合については75(車側):25(歩行者側)が妥当との判断を下しました。

その結果、裁判所は車の運転手に対して、死亡慰謝料・死亡逸失利益・葬儀関係費用などを含めた、約4,400万円の支払いを命じました(参考判例:大阪地裁平成29年6月16日判決、Westlaw Japan 文献番号2017WLJPCA06168002)。

飛び出し事故に遭った際は弁護士に相談

事故対応にかかる精神的負担・時間的負担を少しでも軽くするためにも、まずは一度弁護士に相談することをおすすめします。ここでは、弁護士に依頼するメリット・解決事例・費用目安・弁護士の探し方などを解説します。

事故対応を一任でき賠償金の増額が望める

葬儀や相続だけでなく損害賠償請求手続きもしなければならないというのは、遺族としては大きな負担となるでしょう。また交通事故について知識がない場合、相手が主張する過失割合や賠償額が適切かどうか判断できないということもあり得ます。

弁護士であれば、過失割合の交渉や賠償額の算定などの事故対応を一任できます。死亡慰謝料については最も高額になりやすい弁護士基準で請求してもらえるほか、場合によっては過失割合の引き下げに成功することもありますので、以下のように依頼後の賠償金が増額する可能性があります。

以下は、当サイトに掲載している弁護士の解決事例を簡略化したものです。

約2,000万円⇒約4,000万円に増額したケース

交差点を横断していた70代の男性が、タクシーにはねられて死亡した事例です。この事例では、相手保険会社から賠償金として約2,000万円を提示されていました。

依頼を受けた弁護士が相手方の提示内容を確認したところ、相手保険会社は「被害者を無職者として賠償金を計算していた」ということが分かりました。そこで弁護士は、被害者が生前就いていた仕事に関する各種資料を取り寄せ、それらをもとに死亡慰謝料・死亡逸失利益などの各損害を改めて算出し直して請求しました。

その結果、請求が認められ、約2,000万円から約4,000万円への増額に成功しています。

約5,000万円⇒約9,500万円に増額したケース

歩道を歩いていた40代の外国人女性が、縁石を越えて歩道に乗り上げてきた自動車にはねられて死亡した事例です。この事例では、加害者は任意保険未加入であり、賠償金として約5,000万円を提示されていました。

依頼を受けた弁護士が被害状況を確認したところ、被害者が加入していた任意保険には「無保険車傷害特約」が付いており、保険会社から保険金を受け取れるということが分かりました。次に弁護士は、加害者と保険会社に対して訴訟を起こし、死亡慰謝料・死亡逸失利益などの各損害を改めて算出し直して請求しました。

その結果、請求が認められ、約5,000万円から約9,500万円への増額に成功しています。

依頼時の費用目安

弁護士に依頼する際は、相談料・着手金・報酬金などの弁護士費用を支払います。相談料については30分5000円と時間制で料金を決めていたり、なかには初回無料相談を実施していたりする事務所などもあります。

また着手金や報酬金については、以下のように相手の支払い金額によって料金設定しているところもあります。ただし事務所ごとに料金形態はまちまちですので、具体的な金額については直接事務所に確認しましょう。

相手の支払い金額

着手金

報酬金

300万円以下

請求額の8%

回収額の16%

300万~3,000万円

請求額の5%

18万円+回収額の10%

3,000万~3億円

請求額の3%

138万円+回収額の6%

3億円を超える場合

請求額2% 

738万円+回収額の4%

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まとめ

遺族としては、身内を亡くしたことで精神的な負担も非常に大きいことと思います。また葬儀や相続などの対応に追われるなか、とても事故対応に割ける余裕がないということもあるでしょう。

できる限り事故対応の負担を減らしたいのであれば、弁護士に依頼することです。交通事故問題に注力する弁護士であれば安心して手続きを一任できますし、自力で対応するよりも賠償金が増額することもあり得ます。相談だけであれば無料の事務所もありますので、まずは一度『ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)』よりご相談ください。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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