交通事故や自転車事故など、事故はいつ起きてしまうか分からないものです。弁護士費用を用意できず泣き寝入りとなってしまうケースも少なくありません。
ベンナビ弁護士保険は、弁護士依頼で発生する着手金を補償する保険です。
交通事故だけでなく、自転車事故、労働問題、離婚、相続トラブルなど幅広い法的トラブルで利用することができます。
弁護士保険で法律トラブルに備える
交通事故の被害について自動車保険から支払われる保険金は、被害者の過失割合に応じて減額されることがあります。
保険金が減額されると、その分の損害は自己負担となってしまうので注意が必要です。
交通事故の過失割合は、事故の客観的な状況に応じて決まります。
加害者側の保険会社が不適切な過失割合を主張してきたら、弁護士のサポートを受けながら法的根拠に基づいて反論しましょう。
本記事では、自動車事故の過失割合が、保険金額や被害者の自己負担額に対してどのように影響するのかを解説します。
自動車事故の被害に遭い、保険会社との示談交渉などを控えている方は、本記事を参考にしてください。
自動車事故は、いずれか一方の当事者だけに責任があるとは限りません。
主な責任はいずれか一方にあるものの、もう一方にも安全運転義務違反などの過失が認められるというケースは比較的多く見られます。
交通事故の当事者間において、どちらにどれだけの責任があるのかを表した割合を「過失割合」といいます。
被害者側にも過失が認められる場合には、その過失割合に応じて、受け取れる保険金が減額されることがあるので注意が必要です。
自動車事故の被害者が受け取ることのできる保険金は、主に以下の保険から支払われます。
交通事故の被害者に対して、最低限の補償を提供する保険です。
自動車を運行の用に供する者は、自賠責保険を付保することが義務付けられています(自動車損害賠償保障法5条)。
被害者は、一定の上限額に達するまで、受けた損害について自賠責保険の保険金を受給可能です。
交通事故の相手方(加害者)が任意の自動車保険(=任意保険)に加入している場合は、自賠責保険の限度額を超える損害についても、任意保険の保険金によって補償を受けることができます。
被害者が加入している保険に以下のような補償が含まれている場合には、発生した損害の内容に応じた保険金を受け取ることができます。
ただし、被害者自身が加入している保険を利用すると、その後の保険料が上がることがあるので注意が必要です。
→破損した車両の修理費や買い替え費用などが補償されます。
→治療費や休業損害などの人身損害が補償されます。
→入院または通院をする際の費用などが補償されます。
→仕事を休まざるを得なくなった場合に、減少した収入が補償されます。
自動車事故の被害者が受け取ることのできる保険金のうち、自賠責保険または任意保険から支払われるものについては、過失割合による減額がなされることがあります。
被害者の立場では、自賠責保険の保険金が減額されることは稀ですが、任意保険の保険金額には過失割合が直接影響する点に注意が必要です。
自賠責保険の保険金は、被害者に7割以上の過失が認められる場合には減額されます。
過失割合に応じた減額率は以下のとおりです。
後遺障害・死亡に関する損害と傷害に関する損害で、減額率が異なっています。
過失割合 | 減額割合(後遺障害・死亡) | 減額割合(傷害) |
---|---|---|
7割未満 | 減額なし | 減額なし |
7割以上8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割以上9割未満 | 3割減額 | 2割減額 |
9割以上10割未満 | 5割減額 | 2割減額 |
ただし、交通事故の被害者と言うべき立場の方に7割以上の過失が認められるケースは稀なので、実際に自賠責保険の保険金が減額されるケースは少ないと考えられます。
一方、任意保険の保険金については、過失割合がその金額へ直接影響します。
被害者が実際に被った損害の額から、被害者の過失割合に応じた額を控除した金額の保険金が支払われます。
これは「過失相殺」と呼ばれるものです。
たとえば、被害者が交通事故によって500万円の損害を被った一方で、被害者に2割の過失が認められるとします。
この場合、被害者が加害者に対して請求できるのは、500万円から2割を控除した400万円のみです。
加害者側の任意保険会社に対しても、請求できる保険金額は400万円に限られます(自賠責保険から保険金が支払われる場合は、さらにその金額が控除されます)。
自動車事故によって被害者が受けた損害のうち、保険金でカバーされないものについては、加害者本人に対して請求できるものを除いて被害者の自己負担となります。
交通事故の被害者に生じ得る損害としては、主に以下の例が挙げられます。
損害の項目 | 損害の内容 |
---|---|
治療費 | 交通事故によるケガの治療やリハビリにかかった費用 (例)診察料・手術料・投薬料・処置料・入院料など |
通院交通費 | 交通事故によるケガの治療やリハビリのため、医療機関へ通院する際にかかった交通費 |
装具・器具購入費 | 義歯・義眼・義手・義足・車いす・補聴器・かつら・眼鏡・コンタクトレンズ・介護ベッドなどの購入費用 |
付添費用 | 入院・通院する被害者に付き添いが必要な場合の費用 |
入院雑費 | 入院中に要した雑費 |
休業損害 | 事故の傷害によって発生した収入の減少(有給休暇の使用、家事従事者を含む) |
介護費用 | 要介護状態となった場合における、将来にわたる介護費用 |
入通院慰謝料 | 交通事故による精神的・肉体的な苦痛に対する補償 |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害による精神的・肉体的な苦痛に対する補償 |
死亡慰謝料 | 死亡による精神的・肉体的な苦痛に対する補償 |
逸失利益 | 後遺障害によって労働能力が失われたことまたは死亡に伴い、将来発生するであろう収入の減少 |
物的損害 | 自動車の破損等によって生じた損害 (例)修理費・代車費用・評価損・休車損害など |
以下の設例について、被害者の自己負担額がいくらになるのかを計算してみましょう。
<設例>
交通事故によって、被害者は以下の損害を被った。
計445万5,000円
被害者には2割、加害者には8割の過失が認められた。
なお、加害者は無資力であり、被害者自身が加入している保険から保険金は支払われないものとする。
加害者が任意保険に加入していなかった場合、被害者が受け取ることができる保険金は、自賠責保険から支払われるものだけです。
上記設例において、自賠責保険基準を適用した被害者の損害額は、おおむね以下のとおりとなります。
計85万4,000円
計132万円
※物的損害は保障なし
上記のとおり、傷害による損害については85万4,000円、後遺障害による損害については132万円が自賠責保険の保険金の対象です。
ただし、後遺障害14級の場合、後遺障害による損害の限度額は75万円とされています。
したがって、トータルで支払われる自賠責保険の保険金の額は160万4,000円です。
被害者が受けた損害の総額は445万5,000円ですが、自賠責保険からは160万4,000円の保険金しか受け取れませんでした。
加害者は無資力なので、自賠責保険の保険金額を超える285万1,000円については、実質的に被害者の自己負担となってしまいます。
加害者が任意保険に加入していた場合、任意保険会社に対しては、被害者が実際に被った損害の額をベースに保険金を請求できます。
上記設例においては、損害の総額である445万5,000円が保険金計算の基礎となります。
ただし被害者には2割の過失が認められていますので、任意保険会社に請求できる保険金額は、実際の損害額の8割である356万4,000円にとどまります。
したがって、保険金額と実際の損害額の差額に当たる89万1,000円は、被害者の自己負担となってしまいます。
加害者が任意保険に加入していなかった場合、被害者自身が加入している保険から支払われるものを除き、被害者が受け取れる保険金は自賠責保険のみから支払われます。
自賠責保険の限度額を超える損害については、加害者本人に対して賠償を請求可能です。
ただし、加害者本人に対して損害賠償を請求する際にも、被害者の過失割合に応じた過失相殺がおこなわれます。
これに対して、加害者が任意保険に加入していた場合には、損害賠償請求は保険会社に対するもので完結します。
したがって、過失相殺がおこなわれた結果として補償されなかった損害につき、加害者本人に対して賠償を請求することはできません。
交通事故の過失割合を計算する際の考え方と、過失割合を決定する手続きについて解説します。
交通事故の過失割合は、以下の2つの手順によって求めます。
過失割合を計算する際には、まず交通事故の類型に応じた基本過失割合を求めます。
たとえば、追突事故の基本過失割合は「10対0」で、追突した側に10割の過失が認められるのが原則となります。
これに対して、信号機のない交差点における事故など、両当事者に一定の過失が認められる類型の事故については「8対2」「7対3」「6対4」などの基本過失割合が設定されています。
基本過失割合を確認する際には、「交通事故損害額算定基準」(青本)や「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(赤い本)などを参照するのが一般的です。
基本過失割合をベースとして、実際の事故の状況に応じた修正要素を考慮し、最終的な過失割合を求めます。
たとえば、著しい過失がある当事者の過失割合は1割程度、重過失がある当事者の過失割合は2割程度加算されます。
そのほか、スピード違反・右折禁止違反・夜間など、事故の状況に応じた修正要素が考慮されます。
修正要素についても、「交通事故損害額算定基準」(青本)や「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(赤い本)などを参照して確認するのが一般的です。
交通事故の過失割合を決定する手続きとしては、主に以下の3つが挙げられます。
示談交渉は、被害者が加害者側の保険会社と保険金の額や内訳について直接話し合い、合意に基づいて紛争を解決する手続きです。
過失割合についても示談交渉の中で話し合って決定し、保険金の額に反映させます。
示談交渉がまとまれば、早期に紛争を解決できます。
被害者としては、損害賠償請求の労力や費用を抑えられるほか、早期に保険金の支払いを受けられるメリットがあります。
その一方で、示談交渉をスムーズにまとめるためには、加害者側の保険会社の主張にもある程度歩み寄ることが求められます。
また、当初から被害者側と保険会社側の主張が大きく食い違っている場合には、示談交渉がまとまる可能性は低いでしょう。
交通事故ADRは、弁護士などの専門家が、示談あっ旋などを通じて紛争解決をサポートする手続きです。
公益財団法人交通事故紛争処理センターや、公益財団法人日弁連交通事故相談センターが交通事故ADRを取り扱っています。
過失割合について加害者側の保険会社との示談交渉がまとまらないときは、交通事故ADRを申し立てれば、弁護士などに専門的・客観的な見地から話し合いを仲介してもらえます。
交通事故の損害賠償請求を合意によって解決することが難しい場合は、最終的に裁判所へ訴訟を提起して解決を図ります。
交通事故の損害賠償請求訴訟では、被害者側が損害の内容や金額、事故と損害の間の因果関係、加害者側の過失などを立証しなければなりません。
過失割合も損害賠償の金額に直接影響するため、訴訟における重要な争点の一つとなります。
訴訟において過失割合を正しく認定してもらうためには、交通事故の客観的な状況に関する証拠を提出し、その内容に基づいて適正な過失割合を主張することが大切です。
弁護士のサポートを受けながら、十分な準備を整えた上で訴訟を提起しましょう。
交通事故の過失割合について、加害者側の保険会社と示談交渉をおこなう際には、以下の各点を念頭に置いて対応しましょう。
加害者側の保険会社は、被害者に対して支払う保険金の額を抑えるため、事故の客観的な状況と比べて被害者に不利益な過失割合を主張してくることがあります。
また、保険金の額を算出する際の基礎となる損害についても、実際に生じた損害の一部が漏れていることがあります。
被害者としては、保険会社が提示する和解案をそのまま受け入れるべきではありません。
必ず持ち帰って、和解案の内容が法的に妥当であるかどうかをきちんと精査しましょう。
交通事故の示談交渉において、過失割合を正しく取り決めるためには、事故当時の状況に関する客観的な証拠を提示することが大切です。
客観的な証拠によって示される事故状況は動かしがたいため、保険会社側もその内容を前提とした示談に応じやすくなります。
たとえば、ドライブレコーダーの映像に事故発生時の状況が記録されていれば、信頼性の高い客観的な証拠として利用できます。
また、警察官が作成する実況見分調書も、交通事故の状況に関する証拠として高い信頼性が認められています。
人身事故として届出をおこなえば実況見分調書を作成してもらえるので、警察官へ交通事故の報告をおこなう際にその旨を申し出ましょう。
交通事故の示談交渉には、弁護士を代理人として対応するのが安心です。
弁護士に依頼すれば、被害者に生じた損害を漏れなく積算した上で、法的根拠に基づく適正額の損害賠償を請求できます。
過失割合についても、事故の客観的状況を踏まえた上で、適正な割合に基づいて示談金額を取り決めるよう主張してもらえます。
また、示談交渉に対応する労力や精神的負担が軽減され、生活の立て直しなどに注力できるようになる点も、弁護士に依頼することの大きなメリットです。
さらに、もし示談交渉が決裂して、訴訟などの法的手続きを利用する必要性が生じたとしても、弁護士に依頼していればスムーズに対応してもらえます。
交通事故について、加害者側の保険会社と示談交渉をおこなう際には、あらかじめ弁護士へご相談ください。
被害者に過失が認められる場合や、加害者が任意保険に加入してなかった場合に発生する被害者の自己負担額は、被害者自身が加入している保険を利用すればカバーされることがあります。
ただし、被害者自身が加入している保険から保険金の支払いを受けると、保険の等級が変動して保険料が値上がりするケースが多いです。
自己負担額を減らすことはできるものの、その反面保険料が上昇し、トータルでは損をしてしまうこともあります。
被害者自身が加入している保険の保険金を請求するかどうかは、トータルでの得失を総合的に考慮して判断しましょう。
なお、被害者自身が加入している保険の適用を受けたにもかかわらず、保険料が値上がりしないケースもあります。
一例として、人身傷害保険については等級制度が設けられておらず、適用を受けても保険料は値上がりしないのが一般的です。
被害者自身が加入している保険を利用するかどうか検討する際には、等級および保険料の変動が生じるかどうかを、あらかじめ保険会社に確認しましょう。
交通事故の被害者が受け取れる保険金の額は、被害者の過失割合に応じて減額されることがあります。
加害者側の保険会社は、被害者に対する保険金の支払額を抑えるため、適正とはいえない過失割合を主張してくることがあります。
その場合は、交通事故の客観的な状況に鑑みて、適正な過失割合へ修正することを求めましょう。
過失割合に関する示談交渉を含めて、交通事故の損害賠償請求に関する対応は、弁護士に代行してもらうのが安心です。
弁護士に依頼することで、損害賠償請求の対応に要する労力やストレスが軽減され、さらに適正額の損害賠償を受けられる可能性が高まります。
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