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任意保険とは?自賠責保険(強制保険)との違いを解説

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
任意保険とは?自賠責保険(強制保険)との違いを解説

任意保険(にんいほけん)とは、強制加入を義務付けられている自賠責保険とは別に、任意で加入する自動車保険の事で、自賠責保険では補償されない対物補償を備えており、自賠責保険では賄いきれない加害者の経済的負担を補填する目的があります。
 
任意保険は基本的には任意で加入する保険のため、加入の必要は絶対ではありませんが、万が一の事故に対応するためには加入するのが通常です。実際、全国で8,000万台以上ある保有車両のうち任意保険の加入率は73.8%になります。JAや全労済などの自動車共済の補償を含めると、対人賠償保険の加入率はおよそ85%になるとされています。

任意保険の種別加入率

種類別任意
保険

対人賠償
保険

対物賠償
保険

搭乗者傷害
保険

車両
保険

人身傷害
保険

加入率

73.8%

73.8%

34.0%

43.2%

67.0%


仮に交通事故を起こし、自賠責保険の加入のみだった場合、保険料は120万円まで、相手に後遺障害を負わせてしまった場合は上限4,000万円までしか補償されません。交通事故では多額の損害賠償金が動きますので、限度額を超えた分に関して、任意保険に加入していない場合は全て持出しになります。
 
こうした問題を解決するためにも任意保険への加入は役に立ちますが、今回はそんな任意保険について、ご説明していきます。

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任意保険とは|自賠責保険との主な違い

自動車任意保険は、自賠責保険の不足分をカバーするものと思っていただいて良いでしょう。冒頭でも簡単にお伝えしましたが、自賠責保険は受け取れる保険料の上限が120万円、相手に後遺障害を負わせてしまった場合は最大でも4,000万円までしか補償されません。
 
万が一相手が死亡してしまった場合は1億円以上の請求が発生するケースもあるため、自賠責保険では補いきれない損害を補填する意味でも非常に便利な保険といえます。

下記にて自賠責保険と任意保険の違いをまずは取り上げますので、確認しておきましょう。

自賠責保険は強制保険

自賠責保険は正確には『自動車損害賠償責任保険』という名称であり、自動車損害賠償保障法で自動車を持つ全ての人に加入が義務付けられている保険です。そのため『強制保険』とも呼ばれています。

自賠責保険の加入を怠ると処分の対象になる

もし未加入の場合、『1年以下の懲役または50万円以下の罰金』『免許停止処分(違反点数6点)』という厳しい罰則に加えて、自賠責保険証明書を車に備え付けていない場合は『30万円以下の罰金』が下されます。

具体的には同法の第5条と第86条の3を確認すると、未加入における罰則が定められていることが分かります。

(責任保険又は責任共済の契約の締結強制)

第五条 自動車は、これについてこの法律で定める自動車損害賠償責任保険(以下「責任保険」という。)又は自動車損害賠償責任共済(以下「責任共済」という。)の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない。

引用元:「自動車損害賠償保障法 第5条

第八六条の三 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

一 第五条の規定に違反した者

引用元:「自動車損害賠償保障法 第86条の3
 

補償範囲と補償額の違い

自賠責保険は被害者に対する最低限の救済をする保険のため、補償範囲はかなり限定的になっており、事故の相手方に対する『対人補償』のみになっています。つまり、相手の財物に損害を与えてしまったとしても、保険金は支払われません。

以下で詳しく説明しますが、自賠責保険と任意保険における補償範囲の違いについて表でまとめました。

 

相手側への補償

自分(運転者)への補償

その他

死傷

車・モノ

死傷

任意保険

対人賠償保険で
補償可

対物賠償保険で
補償可

人身傷害補償保険などで補償可

車両保険で
補償可

示談交渉の代行
ロードサービス
の対応可

自賠責
保険

限度額内で
補償可

補償不可

自賠責保険の補償範囲

自賠責保険における補償範囲の詳細は以下表の通りです。上限を超えた場合は自己負担になり、任意保険で補償する必要があるでしょう

自賠責保険の保障内容

詳細と限度額

傷害補償

ケガの治療費な看護料など

限度額:120万円

後遺障害補償

労働能力の低下や精神的苦痛への補償(慰謝料)

限度額:75万円~4,000万円

※後遺障害の認定等級によって限度額が変わります。

死亡保障

逸失利益・葬儀費・慰謝料など

限度額:3,000万円

任意保険の補償範囲 

任意保険の主な補償内容は以下表の通り3種類に分かれます。詳しくは次項の『任意保険の3つの種類』で解説していきますが、補償する対象を基準に分類されています。一般的には、下記表の詳細項目にある7つの保険の全て(または一部)が組み合わさった自動車保険が販売されています。

任意保険の補償内容

詳細

賠償責任保険
※相手側の人や物を対象に補償

・対人賠償保険
・対物賠償保険

傷害保険
※運転者や同乗者を対象に補償

・人身傷害保険
・搭乗者傷害保険
・無保険車傷害保険
・自損事故保険

車両保険
※運転者の車に対する補償

・車両保険 のみ

自賠責保険と任意保険の慰謝料相場

また、自賠責保険と任意保険の両方で補償額の上限とは別に相場基準が定められています。一概には言えませんが、後遺障害等級による慰謝料相場の違いは下記のようになると思って良いでしょう。最低限の補償である自賠責基準と比べて、任意保険基準の方が多少高い慰謝料相場になります。
 
表:後遺障害等級別の慰謝料相場

等級

自賠責基準

(2020年3月31日までに発生した事故)

任意保険基準(推定)

弁護士基準

第1

1,150万円

(1,100万円)

1,600万円程度

2,800万円

第2

998万円

(958万円)

1,300万円程度

2,370万円

第3

861万円

(829万円)

1,100万円程度

1,990万円

第4

737万円

(712万円)

900万円程度

1,670万円

第5

618万円

(599万円)

750万円程度

1,400万円

第6

512万円

(498万円)

600万円程度

1,180万円

第7

419万円

(409万円)

500万円程度

1,000万円

第8

331万円

(324万円)

400万円程度

830万円

第9

249万円

(245万円)

300万円程度

690万円

第10

190万円

(187万円)

200万円程度

550万円

第11

136万円

(135万円)

150万円程度

420万円

第12

94万円

(93万円)

100万円程度

290万円

第13

57万円

60万円程度

180万円

第14

32万円

40万円程度

110万円

任意保険は保険会社に損害額を一括請求できる

任意保険の一括払いとは、損害の全額を任意保険会社に請求できる制度のことで、自賠責保険の補償分も合わせて任意保険会社へまとめて請求できるという利便性があります。
 

被害者(被保険者)は、自賠責保険会社と任意保険会社にそれぞれ請求しなくても済み、手間がかからないメリットがあります。

任意保険の3つの種類

上記で説明したように、任意保険は自賠責保険では補填できない損害を補償できます。では、任意保険にはどのようなものがあるのでしょうか。主に3種類に分かれる任意保険について具体的にまとめましたので見ていきましょう。

任意保険の種類1|賠償責任保険

『賠償責任保険』は相手側のケガや車の破損などに対する補償で、以下2つの保険があります。

対人賠償保険

相手方の車の搭乗者や歩行者にケガ、あるいは死亡させてしまった場合など、法律上の損害賠償責任を負担する場合に、自賠責保険の損害賠償額を超えた分をカバーします。任意保険において、最も主力になる保険といってよいでしょう。
 

対物賠償保険

交通事故を起こした際、他人の車や物・財物などに損害を与えた場合に保険金が支払われます。

任意保険の種類2|傷害保険

『傷害保険』は運転者本人や同乗者に対する補償がされます。以下のように4つの保険がありますが、ケガのほかに死亡時でも別途保険金が支払われるようになります。

人身傷害補償保険

保険の自由化によって登場した保険で,自動車事故によって被保険者が傷害を被った場合に,それによって発生した損害を補償するという任意保険です。事故の過失割合に関わらず、保険会社の基準で『実損害額』の保険金が支払われ、車に乗っていた人の損害が基本的に無条件に補償されます。
 
被害者が交通事故で傷害を被った場合、人身傷害補償保険に加入している場合には、自分の加入している保険会社に対しても保険金の支払いを請求できます。
 
ただ、加入している保険会社から保険金の支払いを受けた場合、填補できなかった不足分を相手方に請求できるだけで、保険金の二重取りはもちろんできません。
 

搭乗者傷害保険

保険対象の自動車に搭乗していた人(助手席の人など)が死亡またはケガをした場合に、保険金が支払われる保険内容になります。『自賠責保険』や『対人賠償保険』などとは別に保険金が支払われることになります。
 
搭乗者の条件は、『正常な状態で自動車に搭乗している者』のことを言い、荷台やトランクにいる人などには適用されないとされています。
 

無保険車傷害保険

加害者等が保険に加入しておらず十分な賠償を受けられない場合に、その不足部分を補償するという任意保険です。

無保険車については自賠責保険の未加入という意味ではなく、対人賠償責任保険に加入していなかったり加入しているが免責によって保険金支払いがなされない場合や金額が低いという場合を想定しています。
 

自損事故保険

「ハンドル操作を誤りガードレールに衝突した」
「曲がりきれずガケから転落した」
 など
 
こういった単独事故の場合、自賠責保険から同乗者へ保険金が支払われますが、運転者本人の死亡や傷害に関しては、自賠責保険からの保険金は支払われません。なので、このような自分で起こした事故でも運転者への補償が受けられるようになる『自損事故保険』にも加入する必要があるといえます。
 
一般的には自動付帯ですが、人身傷害保険と補償内容に重複する部分も多いことから、人身傷害保険が付帯されている場合は不担保となるケースが多いので注意しましょう。

任意保険の種類3|車両保険

『車両保険』に該当する任意保険は1つだけです。保険の対象になっている自動車が交通事故によって破損した場合に、その車両の損害(修理)を補償するための保険です。単独事故、当て逃げ、盗難などを補償するタイプや他車との接触損害のみを補償するものなど、いくつか種類があります。

任意保険に付帯できる6つの特約とロードサービス

任意保険には『特約』と呼ばれる特殊なサービスが付帯できるのも、大きな特徴の一つです。6つの特約に加えて『ロードサービス』と呼ばれるトラブル補償についてまとめましたので、確認していきます。

1:他車運転特約(他社運転特約)

他人の自動車を運転中に事故を起こしてしまった場合に、その事故を補償する特約です。借りた車が加入している任意保険ではなく、自身が契約している自動車保険から保険金が支払われるのが特徴になります。
 

《支払の対象にならないケース》 

 

相手への補償

借りた車の損害

友人を運転中に事故を起こした場合

親が別居している未婚の子供のところへ行き、別居している未婚の子供が所有する自動車を運転中に事故を起こした場合

別居している未婚の子供が所有する車を、別居の未婚の子供自身が運転中に事故を起こした場合

×

×

友人で運転中に、高速道路のサービスエリアで他車にぶつけられた場合

×

別居している未婚の子供が、友人の車で運転中に事故を起こした場合

同居している息子が所有する車を借りて事故を起こした場合

×

×

上記はおとなの自動車保険の場合ですが、加入している任意保険によって内容が異なる場合がありますので、詳細は自身の加入している保険会社に問い合わせてみるのが良いでしょう。

2:対物超過修理費用補償特約

相手方の車に時価額を超える損害を与えた場合に保険金が支払われる特約です。例えば300万円の車に損害を与え、350万円の修理費用が発生した場合、『対物補償責任保険』で300万円を補償し、『対物超過修理費用補償特約』で差額の50万円を支払うことができます。
 
ただし、台風や洪水といった自然災害や加重された賠償責任を負担することによって生じた損害や、自分の車の損害などには適用できませんので注意しましょう。こちらも保険会社によって内容に違いがありますので、各保険会社のプランを確認するようにしましょう。

3:弁護士費用特約

弁護士への法律相談や、訴訟を起こす際の弁護士費用を補償する特約のことです。主に自分の過失割合が0%で、保険会社が示談交渉の代行ができない場合に利用するもので、大変便利な特約といえます。

4:運転者限定特約

保険会社によっては『本人型』『夫婦型』『家族型』を用意しており、保険の適応者を限定することで保険の割引率に差を設けているのが一般的です。

5:運転者年齢条件特約

運転者の年齢に制限をかけることで保険料の割引を行える特約です。例えばアクサダイレクトの場合、『21歳以上』『26歳以上』『30歳以上』に限定することで、保険料を割引くサービスを行っています。

 
運転する可能性の高い方の年齢に応じて特約をかけることができるため、家族の年齢を考えながら、興味があれば検討していただくのが良いのではと思います。

6:個人賠償責任特約

自動車保険でありながら、自動車以外の損害賠償も補償できる特約です。例えば、自転車とぶつかって怪我をさせた場合や、飼い犬が他人を噛んで怪我をさせた場合などでも補償してくれます。
 
保険金が無制限であったり、家族全員の事故が対象になったりと、補償範囲も広い特約になります。似たような保険商品で自転車保険特約というものもあります。

特に自転車保険に関しては、小学生に9,500万円もの損害賠償請求が出たケースもありますので、小さなお子さんがいらっしゃる場合は検討の余地があるかと思います。

《自動車事故の損害賠償請求に関する参考事例》
平成25年に神戸地裁で争われた裁判で、小学5年生の男子が坂を高速で下っていた際、歩行者の女性に正面衝突事故を起こしました。被害者の女性は意識が戻らないまま寝たきり状態となり、これを受けて裁判所は約9,500万円の損害賠償金を請求しました。

ロードサービス|運転中のトラブルを補償

参考までに、事故や故障の対応を無料でしてくれるロードサービスについても取り上げます。多くの任意保険(自動車保険)にはロードサービスのオプションがついていますが、例としてSBI損保の『安心ロードサービス』の主な補償内容は以下の通りです。

ロードサービスの補償内容

詳細

レッカーサービス

事故や故障が原因で車が自力走行不能の状態になった場合、距離の制限なく最寄りの修理工場まで無料でレッカー移動できる

緊急対応サービス

キー閉じ込みやバッテリー上がりなど、事故や故障が原因で車に発生したトラブルについて、現場での30分程度の緊急対応を無料で提供

帰宅・宿泊・搬送サービス

故障・事故が原因で車が自力走行不能となり帰宅が困難になった場合、帰宅のための交通費や宿泊費用を限度額まで負担

落輪引き上げ・
引き降ろしサービス

道路脇の側溝に落輪したり縁石等に乗り上げたりして動けなくなった場合や、雪道・砂浜等でタイヤが空転して動けなくなった場合において、引き上げや引き降ろしサービスを無料で提供

ガソリン補給サービス

ガス欠で動けなくなった場合において、保険期間内で1回に限りガソリン(または軽油)10リットルを無料で提供

レッカー移動やガソリン補給など基本的なサービスはだいたい同じになりますが、保険会社によって無料対応の範囲に違いがありますので、特約と同様に内容をしっかり確認するべきでしょう。

まとめ

任意保険に関する内容は以上になります。任意保険の概要についてはご理解頂けたかと思いますので、こういった内容を参考に保険会社を選んでいただければと思います。
 
実際、自動車保険に加入していないとばかりに大きな事故に巻き込まれた際、損をするのはあなた自身です。この保険が良いということは規定お伝えできませんが、事故への危険意識だけでも持っていただければと思います。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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