出勤中に交通事故に巻き込まれたら?労災保険申請と損害賠償請求の流れを中心に解説

出勤中の交通事故は、そうでない一般的な交通事故と異なり労災保険が使えます。
しかし、労災保険をどのように申請すればよいのかわからないと悩んでいる方も多いでしょう。
また、加害者への損害賠償請求や自賠責保険への被害者請求との兼ね合いが気になる方もいるはずです。
そこで本記事では、出勤中に交通事故の被害に遭った方や備えたい方に向けて、以下の内容について説明します。
- 出勤中に交通事故の被害者になった場合の最初の対応
- 出勤中の交通事故で労災保険を請求する際の大まかな流れ
- 出勤中の交通事故を理由に損害賠償を請求する際の大まかな流れ
- 出勤中の交通事故で十分な補償が受けられていない場合にとれる対処法 など
本記事で必要な手続きなどを確認し、適切な補償を受けられるようになりましょう。
出勤中に交通事故の被害者になった場合に最初にとるべき対応
出勤中に交通事故の被害に遭った場合は、まず以下の対応をとりましょう。
- 警察に連絡する
- 会社に連絡する
- 加害者の連絡先を聞いておく
- すぐに労災指定病院を受診する
ここでは、出勤中に交通事故に巻き込まれた場合の初期対応について解説します。
1.警察に連絡する
まずは警察を呼んで、交通事故が発生したことを報告しましょう。
交通事故の加害者(運転者)には通報義務がありますが、警察に通報しないというケースもあります。
仮に警察への通報がなかった場合、交通事故に遭ったことを証明する交通事故証明書が発行されません。
交通事故証明書がないと労災給付の申請などができないため、被害者であっても必ず警察に連絡しましょう。
2.会社に連絡する
警察だけでなく、会社にも忘れずに連絡しましょう。 会社に連絡することで、以下のようなメリットがあります。
- 無断欠勤にならずに済む
- 最寄りの労災指定病院を教えてもらえる
- 給付申請のためのサポートをしてもらえる など
出勤中の交通事故は、労働災害(通勤災害)として扱われる可能性が高いです。
そのため、会社に連絡をして、労災手続きに関するサポートを受けるようにしましょう。
3.加害者の連絡先を聞いておく
加害者の連絡先をその場で確認しておくことも大切です。
少なくとも以下の情報は、必ず確認しましょう。
- 氏名、住所、連絡先
- 勤務先、雇用主の連絡先
- 加害車両の自動車ナンバー
- 保険会社名、保険証券番号 など
加害者に損害賠償を請求する場合、相手が誰なのかをきちんと特定しておく必要があります。
また、自賠責保険について確認しておけば、万が一の際に被害者請求をスムーズにおこなうことができます。
4.すぐに労災指定病院を受診する
交通事故の被害に遭ったら、可能な限り早めに医療機関を受診しましょう。
受診が遅れてしまうと、けがと交通事故の因果関係が証明しづらくなります。
受診先は、できるだけ労災指定病院から選ぶことをおすすめします。
労災指定病院であれば、原則として無料で治療を受けることができます。
最寄りの労災指定病院は、以下にある厚生労働省の検索ページを使うと簡単に見つけられるでしょう。
出勤中の交通事故で労災保険を請求する際の大まかな流れ
出勤中に交通事故の被害に遭ったら、以下の手順で労災保険の手続きをおこないましょう。
- 労災指定病院で療養の給付申請書を提出する
- 労働基準監督署に第三者行為災害届を提出する
- 労働基準監督署に休業給付支給請求書を提出する
ここでは、出勤中に交通事故の被害に遭った場合の労災保険の請求方法について説明します。
1.労災指定病院で療養の給付申請書を提出する
労災指定病院を受診したら、窓口に労災保険を使いたい旨を伝えます。
その際、療養給付たる療養の給付請求書(様式16号の3)を提出する必要があります。
同請求書は、厚生労働省のWebサイト、労働基準監督署、労災指定病院などで手に入れられます。
2.労働基準監督署に第三者行為災害届を提出する
出勤中の交通事故(通勤災害)の場合は、以下のような書類を労働基準監督署に提出する必要があります。
- 第三者行為災害届
- 交通事故証明書
- 念書兼同意書
- 示談書の謄本(示談が成立した場合)
- 損害賠償支払証明書(損害賠償金を受け取った場合) など
第三者行為災害届とは、加害者の代わりに負担した費用を、政府が加害者に請求するために必要な書類です。
正当な理由なく提出しなかった場合、労災保険の給付を受けられない可能性があるので必ず提出しましょう。
3.労働基準監督署に休業等給付支給請求書を提出する
会社を4日以上休んでいる場合は、労働基準監督署に休業等給付支給請求書(第16号の6)を提出することで休業補償を受けられます。
休業補償は、1日につき給付基礎日額の80%(保険給付60%+特別支援金20%)が支払われます。
同請求書は厚生労働省のWebサイトや、労働基準監督署の窓口などで手に入れられるでしょう。
出勤中の交通事故を理由に損害賠償を請求する際の大まかな流れ
交通事故の被害にあったら、以下の手順で加害者(保険会社)から賠償金を受け取りましょう。
- 病院で治療を続ける
- 保険会社と示談交渉を開始する
- 示談が成立したら示談書を作成する
- 口座に保険会社から賠償金が支払われる
ここでは、交通事故の加害者(保険会社)に対して損害賠償を請求する際の流れについて説明します。
1.病院で治療を続ける
労災指定病院などの医療機関を受診したら、その後も継続的に通院し治療を受ける必要があります。
その際、通院頻度や回数は、加害者に請求できる慰謝料金額に大きく影響します。
完治または症状固定の診断が出るまで、医師の指示に従って通院を続けましょう。
なお、症状固定と診断された場合は、以下のページも参考にしてください。
2.保険会社と示談交渉を開始する
医師から完治と診断されたり、後遺障害等級が確定したりしたら、加害者との示談交渉が始まります。
一般的には、加害者が加入している保険会社の担当員と、示談案に関するやり取りをすることが多いでしょう。
もし示談案に納得がいかなかったり、疑問があったりする場合は、必ず担当員に説明を求めるようにしてください。
なお、保険会社との示談交渉のポイントについては、以下のページで確認することができます。
3.示談が成立したら示談書を作成する
通常、示談が成立したら加害者の保険会社から示談書が送られてきます。
示談書の内容に間違いがないことを確認したら、署名・捺印をして保険会社に返送します。
一度署名・捺印をしてしまうと、あとからやり直すことができないので、念入りに確認してください。
4.口座に保険会社から賠償金が支払われる
保険会社が示談書を受理したら、賠償金が支払われます。
示談成立から賠償金の支払いまでは、1~2週間程度かかるのが一般的です。
出勤中の交通事故で十分な補償が受けられていない場合にとれる対処法
労災保険だけでは十分な補償を受けられない場合には、以下のような対処法を検討しましょう。
- 加害者の自賠責保険に対して被害者請求をおこなう
- 加害者が無保険だった場合は政府保障事業を利用する
- 自身が加入している人身傷害保険や車両保険を使用する
ここでは、通勤災害の被害者が十分な補償が受けられていない場合にとれる対処法を紹介します。
1.加害者の自賠責保険に対して被害者請求をおこなう
被害者請求とは、被害者が自賠責保険会社に対して損害賠償金を直接請求する制度のことです。
自賠責保険では治療費、休業損害、慰謝料などが補償され、慰謝料については労災保険とは重複しません。
また、慰謝料については入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3つについて補償を受けられます。
被害者請求をする際は、請求書、交通事故証明書、診断書などが必要なので、漏れのないように準備してください。
2.加害者が無保険だった場合は政府保障事業を利用する
加害者が無保険だった場合や当て逃げされた場合は、政府保障事業の利用を検討しましょう。
「自賠責保険に対する被害者請求」のときと同じように、慰謝料などについての補償を受けられます。
政府保証事業を利用する際は、まず以下のような損害保険会社の窓口に対して相談する必要があります。
- あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
- AIG 損害保険株式会社
- 共栄火災海上保険株式会社
- セコム損害保険株式会社
- セゾン自動車火災保険株式会社
- 損害保険ジャパン株式会社
- 大同火災海上保険株式会社
- Chubb 損害保険株式会社
- 東京海上日動火災保険株式会社
- 日新火災海上保険株式会社
- 三井住友海上火災保険株式会社
- 明治安田損害保険株式会社
- 楽天損害保険株式会社
- 全国共済農業協同組合連合会
- 全国自動車共済協同組合連合会
- 全国トラック交通共済協同組合連合会
- 全国労働者共済生活協同組合連合会
引用元:政府の保障事業とは|損害保険料率算出機構
これらの窓口に相談すれば、政府保証事業の必要書類や今後の手続きなどについて案内を受けられるでしょう。
3.自身が加入している人身傷害保険や車両保険を使用する
自分も運転中だった場合は、自分が加入している自動車保険を使用することも可能です。
たとえば、以下のような自動車保険を使える可能性があるでしょう。
- 人身傷害保険:治療費、休業損害、慰謝料などに関する保険金を受け取れる
- 車両保険:自動車の修理代などに関する保険金を受け取れる
人身傷害保険や車両保険を使用したい場合は、自分が契約している保険会社や代理店に問い合わせてみましょう。
出勤中の交通事故に関するよくある質問
最後に、出勤中の交通事故に関するよくある質問に回答します。
Q.自賠責保険より労災保険を先に使うことはできるのか?
出勤中に交通事故の被害に遭った場合は、自賠責保険と労災保険の両方を使えます。
このとき、どちらの保険を先に使うかは、被害者が自由に決められることになっています。
ただし、労働基準監督署では、原則として自賠責保険を先行させる運用になっているため(基発第1305号)、労災保険を先行させる際には「労災保険先行申出書」などを提出するよう求められることがあります。
Q.自賠責保険よりも労災保険を先に使うほうがよいケースとは?
一般的に、以下のようなケースでは労災保険を先行させたほうがよいとされています。
- 治療費を負担したくないケース
- 通院・治療が長引きそうなケース
- 被害者の過失割合が大きいケース など
上記のケースに当てはまりそうな場合は、労災保険を先行させるようにしましょう。
さいごに|出勤中に交通事故に巻き込まれたら弁護士に相談しよう
出勤中に交通事故の被害に遭った場合、労災保険や自賠責保険などから補償を受けられます。
また、加害者や加害者が契約している保険会社に対して、賠償金などを請求することも可能です。
しかし、交通事故のけがの治療を続けながら、こうした手続きをするのは大きな負担になるでしょう。
もし各種請求や交通事故全般について不安や悩みなどがあれば、一度、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談するかお悩みの方へ
下のボタンからあなた当てはまるものを選んで悩みを解消しましょう。
弁護士費用特約があれば 実質0円で依頼できます!

多くの保険会社では、被害者1名につき最大300万円までの弁護士費用を負担してくれます。特約があるか分からない方でも、お気軽にご相談ください。弁護士と一緒にご確認した上で依頼の有無を決めて頂けます。
特約を利用して弁護士に相談する交通事故問題を依頼する弁護士の選び方にはポイントがあります。
- 過去の解決事例を確認する
- 料金体系が明確である弁護士を選ぶ
- 交通事故問題が得意な弁護士から選ぶ
等です。
詳しくは以下の記事を読んで、正しい弁護士の選び方を理解した上で弁護士に相談しましょう。
弁護士の選び方について詳しくみる
【事故直後からご相談ください】むち打ちから死亡事故まで幅広い交通事故に対応◆一都三県は出張相談も可能◆実績豊富な弁護士が、理想的な解決に向けて迅速かつ丁寧に対応いたします【初回相談無料】
事務所詳細を見る
何度でも相談料0円/着手金0円!完全成功報酬※保険会社との交渉に自信!まずはご面談ください●累計相談2000件以上/賠償金約300万円増額実績あり《詳細は写真をクリック》あなたの持つ権利をお守りします
事務所詳細を見る
【相談料/着手金0円&電話相談◎】賠償額が妥当か判断してほしいならご相談を!交渉での解決で早期解決と負担軽減を目指します|来所せずに電話で依頼完了!|弁護士費用特約に対応|土日祝
事務所詳細を見る当サイトでは、有料登録弁護士を優先的に表示しています。また、以下の条件も加味して並び順を決定しています。
・検索時に指定された都道府県に所在するかや事件対応を行っている事務所かどうか
・当サイト経由の問合せ量の多寡


交通事故後の対応に関する新着コラム
-
交通事故トラブルを抱えるなかで、弁護士だけでなく行政書士にも対応してもらえることを知り、主に費用面が気になっている方も多いのではないでしょうか。本記事では、行政...
-
本記事では、レンタカーを運転していて交通事故に遭った場合、相手が100%悪くてもレンタカー会社へお金を支払わなければならない理由やレンタカー会社からお金を請求さ...
-
本記事では、交通事故の被害に遭った方に向けて、被害者が利用できる保険(自賠責保険・任意保険)の種類、加害者の自賠責保険と被害者の任意保険を使用する順番、加害者側...
-
交通事故によるけがで仕事を休む場合、いつ頃復帰するのが適切なのでしょうか?本記事では、交通事故が原因で仕事を休む場合の一般的な休業期間や、休業した場合にもらえる...
-
交通事故に遭った場合、会社から診断書の提出を求められることがあります。しかし、費用の問題などからためらっている方も多いのではないでしょうか。本記事では、交通事故...
-
本記事ではもらい事故でできる限り得したいと考えている方に向けて、もらい事故で得する(損しない)ための3つの基礎知識、もらい事故で得したい人が弁護士に依頼するメリ...
-
本記事では、交通事故の被害者の方に向けて、交通事故の示談が成立した場合、どのくらいに示談金が振り込まれるか説明しています。また、振り込みが遅れる場合のパターン、...
-
本記事では、過失割合10対0の交通事故で自車両が全損したときの買い替え費用の計算方法、買い替えか修理かを判断するポイントなどについてわかりやすく解説します。
-
交通事故当事者本人同士が直接連絡を取り合うべきかは、状況によって異なります。本記事では、交通事故の相手方から直接電話がかかってきたときの対処法や、相手方と直接や...
-
本記事では、治療費の打ち切りを打診されたり、実際に打ち切られたりしても、むちうちの治療を継続する方法や、MRIで異常がなくても後遺障害等級の認定を受けられる可能...
交通事故後の対応に関する人気コラム
-
当て逃げに遭ってしまった方へ、少しでも解決に近づけるための対処法をご紹介します。
-
物損事故とは、怪我人や死亡者がなく車両などに損害が出たにとどまる交通事故のことです。物損事故では相手方と示談交渉で揉めてしまう可能性もありますので、ポイントをお...
-
交通事故発生後は、警察に連絡・治療(人身事故の場合)・保険会社との交渉と進んでいきます。本記事では、各場面の詳しい対応や、いつ連絡が来るのかなどの期間についても...
-
交通事故が起きて被害者となった場合、「自分は被害者だから、待っているだけで何もする必要はない」と考えているなら、それは大きな間違いだと言えます。
-
交通事故が起きたら、物損事故・人身事故問わず警察へ届け出なければいけません。これは法律で義務付けられており、報告を怠ると法律違反として処罰を受ける可能性もありま...
-
交通事故のうち3割は駐車場で起こっているといわれています。駐車場は私有地になるため、事故が起こったあとの対処が一般道路とは異なる部分があります。本記事では、駐車...
-
交通事故に遭ったら「警察」に連絡し、加害者の身元、加入保険会社の情報、できれば目撃者の証言も確保しておきましょう。ただ、事故直後は動転し、忘れてしまう事もあるこ...
-
追突事故を起こした場合はなるべく早く被害者に謝罪すべきですが、謝罪をする際は、最低限のマナーを守り、相手に誠意を見せることが大切です。この記事では、謝罪の手順や...
-
接触事故とは、走行中の自動車が車両・物・人などに接触して、損害や傷害が生じた事故のことです。接触事故では「怪我の有無」で賠償金の内容が異なりますので、事故後の流...
-
ひき逃げは、交通事故で人を死亡又は負傷させたものの、警察に届ける事なくその場を立ち去る道路交通法第72条に違反する行為です。この記事ではひき逃げをされた被害者が...
交通事故後の対応の関連コラム
-
自転車事故で被害者が死亡した場合、残された遺族は加害者に対して「死亡慰謝料」や「死亡逸失利益」などの損害賠償を請求できます。納得のいく金額を受け取るためにも、示...
-
交通事故の過失割合は、事故の客観的な状況に応じて決まります。本記事では、「動いている車同士の事故に過失割合100:0はありえない」が本当なのかどうかについて解説...
-
交通事故が起きた際に警察へ電話をすることは法律で義務付けられており、これを怠ることによって様々なリスクが生じる恐れがあります。今回は、交通事故時に警察へ電話をす...
-
労災保険給付は、労災の認定要件を満たしている限り、交通事故の被害者・加害者のいずれの立場でも受給可能です。 弁護士のアドバイスを受けながら、交通事故による損害...
-
一時停止無視による事故に巻き込まれてしまったため、過失割合や罰則、違反点数の扱いがどうなるのか不安な方も多いのではないでしょうか。本記事では、一時停止無視による...
-
一般的に、自分に非がない交通事故を「もらい事故」と呼びます。このような場合、自分の契約する保険会社が示談交渉を代行することはできず、自分で交渉を進めなければなり...
-
交通事故の被害に遭い、軽傷だと思って病院に行かずに放置していたら、実は脳や内臓に強い衝撃を受けていて後日亡くなってしまった…という最悪のケースもあります。この記...
-
交通事故の加害者は、被害者に対して損害賠償責任を負うほか、自らもケガや車の破損などによって大きな損害を受けることがあります.。 交通事故を起こしてしまい、大き...
-
交通事故の相手方からしつこく電話がかかってくるために、プレッシャーを感じて悩んでいる方もいらっしゃるかと思います。本記事では、交通事故の相手方がしつこく電話をか...
-
交通事故の加害者とされる側でも、治療費の全額が必ず自己負担になるとは限りません。 本記事では、交通事故の加害者が治療費などの補償を受けられるケースや、保険会社...
-
交通事故が発生すると、警察による現場検証が行われ、当事者同士の言い分をもとに供述調書が作成されます。作成されたその供述調書の内容に納得がいかない場合、訂正を求め...
-
交通事故に遭った際は、パニックになって適切な行動を取ることができないという状況が考えられますが、すべきことを行わなかったことが原因で、その後に大きな問題となって...
交通事故後の対応コラム一覧へ戻る