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無保険車との事故で加害者が自己破産したらどうなる?慰謝料を確実に得る方法

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
無保険車との事故で加害者が自己破産したらどうなる?慰謝料を確実に得る方法

無保険事故とは加害者が任意保険に未加入で生じた交通事故のことで、自賠責保険に加入していない事故も無保険事故と呼ばれます

一般的には任意保険未加入の事故を意味するものと認識して頂ければ問題ありません。

損害保険料率算出機構の数値によると、任意保険の加入率は約75%で大体4台に1台の車が無保険車両のようです。

保険の種類 保険の加入率(2016年)
対人賠償保険 74.1%
対物賠償保険 74.2%

一般的には、交通事故の損害・慰謝料は加害者の保険会社が負担してくれるものですが、加害者が保険未加入だとどうなるのでしょう?

この記事では、無保険事故の被害者になった時によく発生する問題点や対処法について紹介します。

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無保険車との事故でよく発生する問題

加害者が無保険車の場合、よく発生する問題についてご紹介します。

無保険事故で発生しがちなトラブル

音信不通になる

加害者は無保険の場合、自賠責で補填されない損害については自ら賠償する責任を負います。

そのため、このような責任をおそれて被害者からの連絡を拒否する可能性があります。

例えば、無保険の物損事故の場合、被害者は自賠責から補償を受けることができませんので、加害者に直接請求せざるを得ません。

物損の場合、金額が多額とならず、訴訟手続を履践するのも微妙ということもあります。

このような場合、加害者側が「どうせ訴訟など起こさないだろう」と考えて、何ら対応しないということは珍しくありません。

事故処理が進まない

加害者が任意保険に加入していれば、物損事故であれば、人身事故であれ任意保険会社がそれなりにきちんと事故処理を行います。

しかし、加害者側が無保険の場合は加害者側では何も対応しないのが通常であり、被害者が自身の損害内容を的確に整理して請求する必要があります。

この損害内容の把握と整理が素人には難しい部分があります。

回収不能

加害者が任意保険に未加入の場合、加害者は被害者の損害を自己負担で賠償しなければなりません。

そのため、被害者について強制加入の自賠責保険でも補填されない損害については加害者本人が支払う必要があります。

しかし、加害者本人に支払能力がない場合、この損害金を回収することは現実的に難しいのが実情です。

交通事故の加害者が無保険の場合の対処法

無保険の加害者が事故当事者となった場合、被害者側には上記のようなリスクがあります。

このリスクは、加害者側が無保険であることに起因するリスクであるため、被害者側でコントロールすることができません。

理不尽に感じるかもしれませんが、被害者側としては、加害者が無保険であった場合、以下のような対応を検討して少しでも被害補償を受けられるよう努力する必要があります。

そして、このような努力をしてもなお補填されない損害がある場合は、当該損害について加害者側に訴訟提起する等を検討することとなります。

加害者が無保険の場合の対処法

自賠責保険の活用

加害者が任意保険に加入していない場合でも、強制加入の自賠責保険に加入していないということはほとんどあり得ません。

人身事故の場合、被害者は一定限度額の範囲内で自賠責保険を通じて最低限の補償を受けることができます。

そのため、加害者からの回収が困難であるような場合には、まずは加害者加入の自賠責保険に対して補償の請求をしていくのがセオリーです。

自賠責保険で足りない分は加害者本人に請求

任意保険への加入は言葉通り任意で強制ではいないため未加入者も一定数いますが、自賠責保険への加入は法律で義務付けられています。

自動車は、これについてこの法律で定める自動車損害賠償責任保険(以下「責任保険」という。)又は自動車損害賠償責任共済(以下「責任共済」という。)の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない。

引用元:自動車損害賠償保障法(第三章)

任意保険は、自賠責保険だけでは払いきれない保障をカバーするための保険サービスなので、無保険事故の加害者は、被害請求額を自賠責保険で賄い切れなければ、残りの請求は自分で負担しなければいけません。

ただ、加害者が任意保険に加入していないからといって、被害請求額が少なくなるというわけではないのでご安心下さい。

政府保障制度の活用

自賠責保険の未加入は法律違反となる行為ですが、それでも自賠責保険の未加入者は少なからずいるといわれています。

もし、事故加害者が自賠責保険にも加入していない場合、被害者は、基本的に加害者に全額を請求しなければいけません。

しかし、そのような状況の被害者救済措置として政府保障制度という保障が用意されています。

政府保障制度とは、無保険事故やひき逃げ事故に遭った被害者に対して、自賠責保険と同じ保障を与える制度です。

政府保障制度を利用すれば加害者が自賠責保険未加入でも、国から自賠責保険と同等の保障額を受け取れます。

人身傷害保険や搭乗者傷害の活用

人身傷害保険に加入していると、自分や同乗者が交通事故による被害について人身傷害保険の基準に従って補償を受けることが可能です。

加害者との協議状況とは無関係に、契約保険会社との契約に従って補償金が支払われます。

自身の契約保険により無保険事故に対する保険サービスを利用できるのであれば、事故状況によっては契約保険会社から補償を受け取れます。

無保険事故に対応した保険サービスは以下の2つです。

  • 人身傷害保険:対人賠償保険(任意保険)と同じ保障が受けられる
  • 無保険車傷害保険:被害者が死亡・後遺症を負った際に人身傷害保険の不足分の保障も受けられる

これらのサービスに加入していれば、加害者に直接請求する手間が省け、確実に被害請求額を回収できるので、上記の保険サービスを契約している場合は事故後すぐに保険会社に連絡をするとよいでしょう。

このように人身傷害保険は加害者からの補償が見込めない場合でも、ある程度の補償を受けられることは大きなメリットです。

自力で示談交渉を行う必要があるケースと対処法

ただでさえトラブルに発展しやすい無保険車との事故において、自力で示談交渉を行う必要があるケースはあるのでしょうか。

ここでは自力で示談交渉を行う必要があるケースとその対処法についてご紹介します。

被害者側が無過失を主張する場合、契約保険会社に示談代行を依頼できない

交通事故の被害者が任意保険に加入しており、かつ交通事故の発生について当事者双方に責任があるような場合には、示談処理を契約保険会社に代行してもらうことができる場合が多いです。

しかし、被害者側が自身の過失を否定する場合、被害者は契約保険会社に示談代行を依頼することができません

この場合、被害者が自ら相手方と示談交渉をしたり、訴訟で請求したりする必要があります。

弁護士のメリット

被害者が加害者に対して独力で補償を求めていくには、それなりに交通事故処理についての知識・経験が必要です。

また、相手が無保険であればその負担は更に重くなります。

弁護士に処理を依頼すれば、豊富な知識・経験に基づいて適切に処理を行ってくれます。

また、仮に訴訟手続に至ってもそのまま処理を一任することもできます。

自力での示談交渉が困難であると感じた場合は、弁護士への相談を検討することをおすすめします。

自賠責保険で賄える保障額の限度

傷害に対する損害賠償(入院・通院・休業損害など)

傷害事故の被害者になったら、入院・治療にかかった費用・休業損害(仕事を休んで得られなくなった給与に対する保障)・傷害事故に対する慰謝料などを請求できますが、自賠責保険ではその限度額が最大120万円までに定められています。

ちなみに、自賠責保険では入通院1日あたり4,300円の慰謝料が適応されますが、自賠責保険の慰謝料は保険会社(任意保険基準)や弁護士(弁護士基準)を通じて請求するよりも低い額です。

<1か月の治療期間で通院日数が10日間の事例>

算出基準 1か月の治療期間で通院10日間の場合(※1)
自賠責基準(2020年3月31日までに発生した事故) 8万6,000円
(8万4,000円)
任意保険基準 12万1,000円
弁護士基準 28万円

後遺障害の慰謝料

後遺障害の慰謝料とは、傷害事故で後遺症を負った時に請求できる慰謝料です。

障害の度合いによって請求額は変わりますが、自賠責保険では32万~1,150万円が限度額として定められています。

ただ、この後遺障害の慰謝料も他の請求基準と比較をすると、請求できる慰謝料は最も少ないです。

等級別の慰謝料の目安
等級 自賠責基準
(2020年3月31日までに発生した事故)
任意保険基準(推定) 弁護士基準
第1級 1,150万円
(1,100万円)
1,600万円程度 2,800万円
第2級 998万円
(958万円)
1,300万円程度 2,370万円
第3級 861万円
(829万円)
1,100万円程度 1,990万円
第4級 737万円
(712万円)
900万円程度 1,670万円
第5級 618万円
(599万円)
750万円程度 1,400万円
第6級 512万円
(498万円)
600万円程度 1,180万円
第7級 419万円
(409万円)
500万円程度 1,000万円
第8級 331万円
(324万円)
400万円程度 830万円
第9級 249万円
(245万円)
300万円程度 690万円
第10級 190万円
(187万円)
200万円程度 550万円
第11級 136万円
(135万円)
150万円程度 420万円
第12級 94万円
(93万円)
100万円程度 290万円
第13級 57万円 60万円程度 180万円
第14級 32万円 40万円程度 110万円

死亡慰謝料

交通事故で被害者が死亡すれば、加害者は被害者本人と残された遺族の分の慰謝料を支払わなければいけません。

自賠責保険で支払われる死亡慰謝料の額は以下のとおりです。

※『400万円(本人に対する慰謝料)』+『遺族に対する慰謝料』

死亡事故における慰謝料の目安
請求する要項 慰謝料額
死者本人に対する慰謝料 400万円
(2020年4月1日以前に発生した事故に関しては350万円)
死亡者に扶養されていた場合 200万円
慰謝料を請求する遺族が1人の場合 550万円
慰謝料を請求する遺族が2人の場合 650万円
慰謝料を請求する遺族が3人の場合 750万円

ここまでの流れでお察しかもしれませんが、自賠責保険は死亡慰謝料も他の請求基準と比較すると最も低い額に設定されています。(任意保険は最大でも400万円+750万円で1,150万円しか請求できない)

<本人と遺族の分を含む死亡慰謝料の目安>
死亡者の立場 任意保険基準 弁護士基準
一家の支柱 1,500万~2,000万円 2,800万円
配偶者、母親 1,500万~2,000万円 2,500万円
上記以外 1,200万~1,500万円 2,000万~2,500万円

自賠責基準以上の慰謝料・損害賠償額を請求するには

弁護士基準で請求をする

上記でも何度か登場しましたが、慰謝料の請求方法には3つの基準があり、どの基準で請求するかによって慰謝料の額が変わってきます。

  • 自賠責基準 :自賠責保険の保障額を基に慰謝料を算出する方法
  • 任意保険基準:保険会社のデータを基に慰謝料を算出する方法
  • 弁護士基準 :弁護士が法律や判例を基に慰謝料を算出する方法

慰謝料は『弁護士基準>任意保険基準>自賠責基準』で弁護士基準が最も高額になります。

弁護士に依頼した場合は、弁護士基準で交渉を進めるのが通常ですので、少しでも慰謝料を増やしたい場合は弁護士に一度相談をしてみるとよいでしょう。

弁護士費用の相場額

弁護士費用は弁護士によって異なるので一概にいくら必要とはいえませんが、示談交渉費用の大体の相場は以下の額が目安とされています。

大雑把ではありますが、最低でも50万円前後はみておくとよいでしょう。

示談交渉における弁護士費用の目安
  着手金 報酬金
着手金あり 10万~20万円 報酬額の10%~20%
着手金なし 無料 報酬額の20~30%

『弁護士基準の請求額-弁護士費用>自賠責基準の請求額』になるようなら迷わずに依頼するべきなので、自分で加害者に慰謝料請求をする前に一度弁護士に相談をして、示談交渉依頼をするべきかどうか確認しておくことをおすすめします。

弁護士を選ぶコツ

弁護士は全ての法律の知識を兼ね備えていても、全ての法律問題を解決できるわけではありません。

離婚・借金・相続など、弁護士によってそれぞれ力を入れて取り組んでいるジャンルが異なります。

事故被害の示談交渉を依頼する際には、必ず交通事故問題を得意とする弁護士から選ぶようにしましょう。

弁護士のホームページを検索すれば、力を入れている分野や過去に解決された問題が紹介されていますし、自分で探すのが難しい場合は法テラスなどの弁護士紹介サービスを利用して、状況にあった弁護士を探してもらう方法もおすすめです。

加害者が支払いに応じない時の対処法

裁判で損害賠償請求をする

加害者が被害請求をしても支払いに応じず、そもそも示談交渉すらも拒否してきた場合は、裁判等の法的手続きで請求しなければいけません。

既に示談交渉が成立している場合は示談金の支払いに応じさせる和解金支払請求訴訟、加害者が示談に応じてくれない場合は損害内容を立証して加害者に請求する損害賠償請求訴訟の手続きをする必要があります。

上記の裁判手続きをすれば、裁判所が適正な範囲で加害者に対する支払いの命令を出してくれるので、それに従って被害請求の支払いを受けることになります。裁判の費用については下記の記事をご参考下さい。

それにも応じない場合は差し押さえ

裁判で支払いの命令が出たにも関わらず加害者が支払いに応じず拒否する場合は、相手の財産を強制的に差し押さえ(強制執行)することが可能です。

現金・貯金・不動産・生命保険など、加害者の所有する財産から強制回収ができます。

ただし、加害者が支払いに応じないからと個人で「差し押さえをするぞ!」と脅迫するのは犯罪行為となる可能性がありますのでご注意ください。

差し押さえをする場合は裁判所に損害賠償請求の誓約書を持ち込み、正式な依頼を出して手続きを進めるようにしましょう。

加害者に支払い能力がない場合

自己破産をされたら慰謝料は請求できなくなる

差し押さえをして損害賠償請求の額が回収しきれなかった場合は、加害者に対してそれ以上の支払いを求めることはできません。

無い袖は振れないのです。

また、加害者が損害賠償請求を払いきれずに自己破産の手続きを進めてしまうと、損害賠償請求の支払い義務も免責されてしまうこともあるため、残債の支払いも受けられなくなってしまいます。(事故が故意や飲酒原因などの重過失による場合は例外的に免責されない可能性があります。)

加害者の支払い能力がない状況では差し押さえても無意味ということです。加害者が支払いに応じない理由が「お金がないから」である場合は注意が必要です。

分割や減額で支払い可能な条件に応じるしかない

「ないものは払いようがない」被害者の立場からしたら理不尽極まりないですが、法律で定められているので仕方ありません。

そのような状況で無理に取り立てようとしても、自己破産をされ回収できる額が減ってしまう可能性が高くなるので、損害賠償請求の分割払いや減額に応じて加害者が支払いに応じやすい条件にしてあげるのが賢明だといえるでしょう。

ちなみに、自賠責保険の限度額分までは、判決に基づいて自賠責保険会社に請求すれば基本的に回収可能です。

加害者に弁護士基準の額の支払いは難しいと感じるようであれば、弁護士費用の節約を考え、あえて自賠責基準で請求するのも選択肢の1つです。

まとめ

無保険事故の被害者になっても、自賠責保険で足りない分の損害賠償は加害者に請求できますし、弁護士に示談交渉を依頼すれば損害賠償の額を増やすことも可能です。

ただし、加害者に支払い能力がない場合は損害賠償を回収できないことも考えられますのでご注意下さい。

無保険事故の手続きは普通の事故と比べて状況判断がとても難しいです。

素人だけで手続きを進めてしまうと後々に損をする結果になる恐れがあるので、依頼するかは未定でも一度は弁護士に相談をしておくことをおすすめします。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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