法テラスとは、経済的に余裕がない人を対象に、法的トラブルに関する無料法律相談や弁護士費用の一時立替えなどをおこなっている公的機関です。
法テラスを利用すれば、事故発生後の流れや各手続きの必要書類、慰謝料の相場や過失割合の算定方法など、問題解決のために役立つ情報を無料でアドバイスしてくれます。
弁護士費用の工面が難しい人にとっては心強い味方になってくれるでしょう。
この記事では、交通事故の被害者が法テラスを利用するメリットや注意点などを解説します。
自分だけでは対応が難しく、弁護士への相談を検討している人などは参考にしてください。
法テラスを利用するか悩んでいる交通事故被害者の方へ
交通事故被害者にとって法テラスは、弁護士紹介や弁護士費用のサポートが受けられるなどのメリットがあります。
ただし、法テラスを利用するには一定の条件を満たす必要があり、必ずしも交通事故トラブルに注力する弁護士を紹介してくれる保証はない、といったデメリットもあります。
納得のいく形で問題解決するため、以下のポイントを押さえた弁護士を選びましょう。
- 交通事故問題の解決実績が豊富である
- 後遺障害等級獲得の実績が多い
- 親身になって対応してくれる
当サイトでは、交通事故について無料相談できる弁護士を多数掲載しています。
電話での相談も可能なので、依頼するか決めていなくても、本当に弁護士に依頼すべきかも含めてまずは無料相談を利用してみましょう。
法テラスが提供しているサービス
法テラスが提供している主なサービスは、以下2つです。
それぞれの内容について解説します。
弁護士による無料法律相談
全国に設置されている法テラス事務所や、法テラスと契約している弁護士事務所であれば、無料で法律相談が受けられます。
なお、相談時間は30分で、1つの問題につき3回まで法律相談が受けられます。
ただし、無料法律相談には利用条件が定められており、資力要件などを満たしていなければ利用できません。
弁護士費用の一時立替え
法テラスを利用して弁護士に依頼すると、法テラスが一時的に弁護士費用を立て替えてくれます。
すぐにまとまったお金を準備できなくても弁護士に依頼できるというのは大きなメリットです。
なお、法テラスに立て替えてもらった弁護士費用は分割返済が必要で、無料で弁護士に依頼できるわけではありません。
しかし、交通事故トラブルの場合、問題解決後に加害者側の保険会社から支払われる保険金を返済に充てられるため、ほかの法律問題に比べると費用負担は軽く済むでしょう。
法テラスを利用するための条件
法テラスのサービスは、あくまでも経済的な事情などを抱えている人を対象にしており、以下のような利用条件があります。
- 収入・資産が一定額以下であること
- 勝訴の見込みがないとはいえないこと
- 民事法律扶助の趣旨に適すること
無料法律相談を利用するには①と③、弁護士費用の一時立替えを利用するには①②③の全てを満たしていなければいけません。
ここでは、法テラスの利用条件について解説します。
1.収入・資産が一定額以下であること
法テラスでは、以下のような資力要件が定められています。
<収入の基準>
人数(※1) |
手取り月収の基準(※2) |
家賃または住宅ローンを負担している場合に加算できる限度額(※3) |
1人 |
182,000円以下
(20200円以下) |
41,000円以下
(53,000円以下) |
2人 |
251,000円以下
(276,100円以下) |
53,000円以下
(68,000円以下) |
3人 |
272,000円以下
(299,200円以下) |
66,000円以下
(85,000円以下) |
4人 |
299,000円以下
(328,900円以下) |
71,000円以下
(92,000円以下) |
※1:申請者と、家計に貢献している同居人の合計人数
※2:東京や大阪などの生活保護一級地に居住している場合は()内の金額が適用
※3:東京都23区内に居住している場合は()内の金額が適用
<資産の基準>
人数(※1) |
資産合計額の基準(※2) |
1人 |
180万円以下 |
2人 |
250万円以下 |
3人 |
270万円以下 |
4人 |
300万円以下 |
※1:申請者と、家計に貢献している同居人の合計人数
※2:医療費や教育費などの出費が確定している場合は相当分が控除される(無料法律相談の場合は3ヵ月以内の出費のみ対象)
2.勝訴の見込みがないとはいえないこと
たとえば、「車にはかすり傷しか付いていないが新車を購入する代金を請求したい」など、極めて理不尽な請求依頼の場合は、勝訴の見込みがないと判断されます。
そのような理不尽な請求依頼ではなく、示談や裁判などの手続きを踏めば問題解決できそうな案件であれば、基本的には問題ないでしょう。
3.民事法律扶助の趣旨に適すること
「民事法律扶助の趣旨に適すること」とは、不当な目的での利用ではないということを意味しています。
たとえば、宣伝目的・報復感情を満たす目的・権利濫用的な裁判などの場合は、民事法律扶助の趣旨に適さない不当なものと判断され、利用できません。
法テラスを利用するメリット
交通事故の被害者が法テラスを利用するメリットは以下の3つでです。
- 交通事故の手続きを確認できる
- 弁護士費用の負担が軽くなる
- 慰謝料を増額できる可能性が高い
ここでは各メリットについて解説します。
交通事故の手続きを確認できる
交通事故後の手続きがわからない場合は、法テラスを利用して弁護士に相談することで、これからやるべきことを確認できます。
交通事故の場合、手続きの進め方次第で賠償金の額が変わることもあるため、手続きが不安な場合はすぐに相談したほうがよいでしょう。
弁護士費用の負担が軽くなる
法テラスに弁護士費用を立て替えてもらう場合、原則として毎月5千円~1万円を返済していくことになります。
自己負担で弁護士に依頼するのが厳しい人でも、法テラスに立て替えてもらうことですぐに依頼できます。
弁護士費用は事務所によってもバラつきがありますが、示談交渉を依頼した場合の費用相場は以下のとおりです。
<示談交渉の弁護士費用>
費用体系 |
着手金 |
報酬金 |
着手金あり |
10万〜20万円 |
獲得金額の10%〜20% |
着手金なし |
無料 |
獲得金額の20%〜30% |
なお、生活保護を受けている場合は、返済が免除されて無料で依頼できることもあります。
詳しくは法テラスの公式サイトを確認してください。
慰謝料を増額できる可能性が高い
通常、交通事故の慰謝料は各保険会社の独自基準(任意保険基準)で算出されます。
しかし、法テラスを利用して弁護士に依頼すれば、任意保険基準よりも高額な弁護士基準という算定方法を用いて請求してくれるため、慰謝料の増額が望めます。
交通事故で通院・入院した場合は入通院慰謝料を請求できますが、任意保険基準と弁護士基準では以下のように金額が異なります。
<入通院慰謝料の相場>
通院期間 |
任意保険基準(推定) |
弁護士基準(※2) |
1ヵ月間 |
12万6,000円 |
28万円(19万円) |
2ヵ月間 |
25万2,000円 |
52万円(36万円) |
3ヵ月間 |
37万8,000円 |
73万円(53万円) |
4ヵ月間 |
47万8,000円 |
90万円(67万円) |
5ヵ月間 |
56万8,000円 |
105万円(79万円) |
6ヵ月間 |
64万2,000円 |
116万円(89万円) |
※2:むちうちのように症状の有無を客観的に判断できない負傷の場合は()内の金額が適用
入院が必要なケース・完治まで時間がかかるケース・後遺症が残るケースなどでは、弁護士に依頼した場合の増額幅も大きくなる可能性があります。
とくに交通事故で重傷を負った場合は、速やかに弁護士に相談して慰謝料請求などの依頼を検討しましょう。
法テラスを利用する際の注意点
法テラスを利用する際の注意点として、必ずしも交通事故トラブルが得意な弁護士を紹介してもらえるわけではありません。
弁護士だからといってあらゆる分野で的確に対応できるわけではなく、弁護士にはそれぞれ得意分野・不得意分野があります。
もし交通事故トラブルが得意ではない弁護士を紹介されてしまった場合は、慰謝料請求などを依頼しても思うような結果が得られない恐れがあります。
弁護士は自分で探して依頼するのがベスト
法テラス事務所は全国に設置されていますが、法テラスと契約している個別の弁護士事務所でも、無料法律相談や弁護士費用の一時立替えなどのサポートは受けられます。
弁護士に依頼して失敗したくない人は「法テラスと契約しており、かつ交通事故トラブルが得意な弁護士を自分で探す」というのが、よい方法だといえるでしょう。
当サイト「ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)」では、交通事故トラブルが得意な弁護士のみ掲載しており、地域や相談内容などで一括検索できますのでおすすめです。
まとめ
経済的な事情などを抱えていて弁護士に依頼できない人は、法テラスの利用を検討しましょう。
法テラスの利用条件を満たしていれば、弁護士によるサポートを低負担で受けられます。
ただし、弁護士に慰謝料請求などを依頼して納得のいく結果を得たいのであれば、「ベンナビ交通事故」で交通事故トラブルが得意な弁護士を探しましょう。