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交通事故の死亡慰謝料とは、被害者が亡くなったことによる精神的な苦痛に対して支払われる賠償金です。慰謝料額は算定基準や年齢などで変わるため、一概に相場がいくらとは言い切れません。
本記事では、交通事故の死亡慰謝料の相場を3つの基準で比べたうえで、年齢別に慰謝料と逸失利益の計算シミュレーション10例を紹介します。示談を急かされている方もぜひ参考にしてください。

交通事故の死亡慰謝料は、亡くなった被害者本人の慰謝料と、遺族が受けた苦痛に対して請求する遺族固有の慰謝料の2種類あります。まずは、死亡慰謝料の種類について解説します。
被害者本人の慰謝料は、事故によって被害者が受けた精神的苦痛に対する賠償です。
死亡した被害者にも、精神的苦痛は存在したと考えられるため、被害者本人の慰謝料請求権が認められています。慰謝料請求権は、被害者の相続人に相続されるため、遺族は加害者に被害者本人の慰謝料を請求できます。
遺族固有の慰謝料とは、遺族が被害者が死亡したことによる精神的苦痛に対する賠償です。
慰謝料を請求できる人は、被害者の父母・配偶者・子と定められています(民法第711条)。父母には養父母も含まれ、子には養子や認知された子だけでなく、事故当時おなかの中にいた胎児も対象となります。
しかし、被害者と特に近い関係にあったと認められれば、民法第711条の類推適用を受けられる可能性があります。
交通事故の死亡慰謝料には、3種類の算出基準があります。
| 計算基準 | 概要 | 適用されるケース |
| 自賠責基準 | 自賠責保険が慰謝料計算の際に用いる基準で、最も低額になりやすい | 加害者が任意保険未加入の場合 |
| 任意保険基準 | 任意保険会社が慰謝料計算の際に用いる基準で、自賠責基準よりは高額になりやすい | 加害者が任意保険に加入している場合 |
| 弁護士基準(裁判所基準) | 弁護士や裁判所が慰謝料計算の際に用いる基準で、最も高額になりやすい | 弁護士に慰謝料請求を依頼する場合 |
死亡慰謝料の金額は適用される計算基準によって異なり、なかでも弁護士基準が最も高額になりやすい傾向にあります。ここでは、交通事故の死亡慰謝料の相場や計算方法について、計算基準ごとに解説します。
自賠責保険の場合、死亡慰謝料は400万円〜1,350万円で、3つの基準のなかで最も低い水準です。
自賠責保険は、全ての自動車に加入が義務付けられた保険で、被害者への最低限の補償を目的としているためです。慰謝料は、被害者本人の分と遺族固有の分の2つを足して決まるため、請求者の数が多いほど高額になります。
| 請求できる遺族の人数 | 遺族分の慰謝料 | 本人分400万円との合計 |
| 1人 | 550万円 | 950万円 |
| 2人 | 650万円 | 1,050万円 |
| 3人以上 | 750万円 | 1,150万円 |
| 被扶養者がいる場合の加算額 | 200万円 | 最大1,350万円 |
本人分は一律400万円、遺族分は請求した遺族の人数に応じて550万円〜750万円です。さらに、被害者に被扶養者がいれば200万円が上乗せされ、合計の上限が1,350万円になります。
たとえば配偶者と未成年の子ども2人が残された場合は、400万円+750万円+200万円で上限の1,350万円です。なお、2020年3月31日以前の事故には旧基準が適用され、本人分は350万円になります。
任意保険基準の死亡慰謝料は、自賠責基準と同じか、やや上回る程度の金額にとどまります。任意保険基準とは、加害者が加入している保険会社が社内で独自に定めている算定基準のことです。
基準の中身は各社とも公開していないため、提示された金額が妥当かどうかを遺族が自分で判断するのは難しいといえます。参考として、被害者の立場ごとの推定水準は下記のとおりです。
| 生前の被害者の立場 | 任意保険基準の推定額 |
| 一家の支柱 | 1,500万円〜2,000万円程度 |
| 配偶者・専業主婦(主夫) | 1,300万円〜1,600万円程度 |
| 子ども | 1,200万円〜1,500万円程度 |
| 高齢者 | 1,100万円〜1,400万円程度 |
| その他(独身者・子ども・高齢者など) | 1,300万円~1,600万円程度 |
あくまで推定の数値ですが、次に紹介する弁護士基準と比べると6割前後にとどまる例が多くみられます。提示額が上記の範囲に収まっている場合は、増額の余地があると考えてよいでしょう。
弁護士基準の死亡慰謝料は、被害者の家庭内での立場に応じて2,000万円〜2,800万円が目安です。弁護士基準(裁判基準)は、過去の裁判例をもとに作られた基準で、弁護士が交渉や裁判で用いるため、3つの基準のなかで最も高額になります。
| 被害者の立場 | 弁護士基準の死亡慰謝料 |
| 一家の支柱 | 2,800万円 |
| 母親・配偶者 | 2,500万円 |
| その他(独身者・子ども・高齢者など) | 2,000万円〜2,500万円 |
区分は年齢ではなく家庭内の役割で決まるため、高齢者や子どもであっても2,000万円台が目安になります。また、上記はあくまで基準額で、加害者の悪質さや遺族の事情によっては相場を超える金額が認められる場合もあります。
交通事故で死亡した場合、慰謝料のほかにも死亡逸失利益・葬儀関係費用・治療費や付随費用の3つを請求できます。具体的に解説します。
死亡逸失利益(いっしつりえき)とは、被害者が生きていれば将来得られたはずの収入に対する賠償です。被害者が働き盛りの場合、慰謝料より逸失利益のほうが高額になるのが通常です。
また、事故当時に収入がなかった子どもや専業主婦、年金で生活していた高齢者でも逸失利益は請求できます。収入がない人には統計上の平均賃金を当てはめて計算するため、ゼロにはなりません。
保険会社との交渉では、逸失利益をどう主張できるかで受取総額が決まるといえるため、計算の前提を細かく確認しましょう。
死亡逸失利益は下記計算式で求められます。
| 基礎収入 ×(1 − 生活費控除率)× 就労可能年数に対応するライプニッツ係数 = 死亡逸失利益 |
基礎収入は、原則として事故前年の実収入です。収入がない子どもや専業主婦は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査をベースにした賃金センサスの平均賃金で代替します。
生活費控除率とは、生きていれば本人が使ったはずの生活費を差し引く割合のことで、被害者の立場によって下記のように割合が異なります。
| 被害者の立場 | 生活費控除率 |
| 一家の支柱(被扶養者1人) | 40% |
| 一家の支柱(被扶養者2人以上) | 30% |
| 女性(主婦・独身・幼児を含む) | 30% |
| 男性(独身・幼児を含む) | 50% |
| 女子年少者(男女計の平均賃金を使う場合) | 40%〜45% |
就労可能年数は、死亡した年から原則67歳までの年数です。ただし、学生・児童・幼児は始期を18歳とするケースが一般的です。また67歳を超える場合は、平均余命の2分の1が就労可能年数としています。
ライプニッツ係数とは、将来の収入を一括で受け取る際に利息分を差し引くための係数で、下記のように定められています。
具体的な年齢や性別などを当てはめて計算するシミュレーションは後述するので、参考にしてください。
交通事故で被害者が死亡した場合は、逸失利益以外にも葬儀関係費用を請求できます。弁護士基準では原則150万円を上限に、実際にかかった金額が認められます。自賠責基準では上限が100万円と低く、実費が上限を超えた分は請求できません。
対象になる・ならない費目は、下記のように分けられます。
| 区分 | 主な費目 |
| 対象になる費用 | 通夜・葬儀・火葬の費用 墓石の建立費 仏壇・仏具の購入費 遺体の搬送・処理費 |
| 対象外になりやすい費用 | 香典返しの費用 弔問客の接待費 |
香典返しが対象外になるのは、被害者の葬儀ではなく、受け取った香典に対応する支出とみなされるためです。葬儀社や石材店の領収書は請求の根拠になるので、支払いを済ませたら必ず保管しておきましょう。
事故から亡くなるまでに病院で治療を受けた場合、治療費や入院中の費用も賠償の対象です。即死ではなく入院を経て亡くなった被害者では、死亡慰謝料とは別に入院期間に応じた入通院慰謝料も発生します。
また、遠方に住む遺族が病院や葬儀に駆けつけた交通費や宿泊費も、必要な範囲で認められます。家族を亡くした衝撃で遺族が精神疾患を発症した場合は、遺族自身の治療費や仕事を休んだ分の休業損害を請求できるケースもあります。
請求漏れになりやすい費目なので、示談前に弁護士へ確認してもらうと安心です。
交通事故の死亡慰謝料と逸失利益の合計額は、被害者の年齢・性別・収入・家族構成によって変わります。本章では、3歳から90歳までの10例について、弁護士基準で計算した総額を紹介します。
| 年齢・属性 | 逸失利益 | 死亡慰謝料 | 総額(葬儀費用150万円を含む) |
| 3歳・男児 | 4,998万円 | 2,300万円 | 7,448万円 |
| 10歳・女児 | 6,590万円 | 2,400万円 | 9,139万円 |
| 20歳・男子大学生(独身) | 7,057万円 | 2,500万円 | 9,707万円 |
| 30歳・女性会社員(独身) | 6,982万円 | 2,500万円 | 9,632万円 |
| 40歳・男性自営業(妻子を扶養) | 1億263万円 | 2,800万円 | 1億3,213万円 |
| 50歳・女性専業主婦 | 4,028万円 | 2,500万円 | 6,678万円 |
| 60歳・男性会社員(妻を扶養) | 3,583万円 | 2,800万円 | 6,533万円 |
| 70歳・女性専業主婦 | 2,382万円 | 2,500万円 | 5,032万円 |
| 80歳・男性無職 | 0円 | 2,100万円 | 2,250万円 |
| 90歳・男性無職 | 0円 | 2,000万円 | 2,150万円 |
いずれも過失相殺と遺族固有の慰謝料は含めず、葬儀費用は150万円、平均賃金は令和7年の賃金センサスをもとにした試算です。
3歳の男の子が亡くなった例では、賠償金の総額は7,448万1,520円です。逸失利益は、基礎収入が男性の全年齢平均賃金、生活費控除率が50%、就労開始が18歳という前提で計算しています。
収入がまったくない幼児でも、平均賃金を基礎に計算するため5,000万円規模の逸失利益が認められます。保険会社から「子どもは収入がないので逸失利益は少ない」と説明されても、うのみにする必要はありません。
| 項目 | 金額・計算 |
| 葬儀費用 | 150万円 |
| 死亡慰謝料 | 2,300万円 (基準額2,000万円〜2,500万円の範囲で仮定) |
| 逸失利益 | 610万7,000円(令和7年男性学歴計全年齢平均賃金)×(1−0.5)×16.3686(ライプニッツ係数) =4,998万1,520円 ※男子(幼児)の生活費控除率は50% |
| 賠償金の総額 | 7,448万1,520円 |
10歳の女の子の例では、賠償金の総額は9,139万6,665円です。年少の女性は、女性のみの平均賃金では男児との差が大きくなりすぎるため、男女計の全年齢平均賃金を基礎収入にし、生活費控除率は40%で計算します。
| 項目 | 金額・計算 |
| 葬儀費用 | 150万円 |
| 死亡慰謝料 | 2,400万円 (基準額2,000万円〜2,500万円の範囲で仮定) |
| 逸失利益 | 545万5,600円(令和7年男女計学歴計全年齢平均賃金)×(1−0.4)×20.1312(ライプニッツ係数) =6,589万6,665円 ※女子年少者(男女計の賃金を使う場合)の生活費控除率は40% |
| 賠償金の総額 | 9,139万6,665円 |
20歳の男子大学生の例では、賠償金の総額は9,707万49円になります。大学卒業後の22歳から働く前提のため、就労可能年数は22歳から67歳までの45年です。
大学生であれば大卒の平均賃金を基礎収入に主張できる余地があり、在学証明などの資料がそろえば増額につながる可能性があります。
| 項目 | 金額・計算 |
| 葬儀費用 | 150万円 |
| 死亡慰謝料 | 2,500万円 (基準額2,000万円〜2,500万円の範囲で仮定) |
| 逸失利益 | 610万7,000円(令和7年男性学歴計全年齢平均賃金)×(1−0.5)×23.1112(ライプニッツ係数) =7,057万49円 ※独身男性の生活費控除率は50% |
| 賠償金の総額 | 9,707万49円 |
年収450万円の30歳独身女性の例では、賠償金の総額は9,632万6,680円です。会社員なので、平均賃金ではなく事故前年の実収入を基礎収入にします。
| 項目 | 金額・計算 |
| 葬儀費用 | 150万円 |
| 死亡慰謝料 | 2,500万円 (基準額2,000万円〜2,500万円の範囲で仮定) |
| 逸失利益 | 450万円(事故前年の年収)×(1−0.3)×22.1672(ライプニッツ係数) =6,982万6,680円 ※女性の生活費控除率は30% |
| 賠償金の総額 | 9,632万6,680円 |
年収800万円で妻子を扶養する40歳の自営業者の例では、賠償金の総額は1億3,213万1,200円になります。一家の支柱にあたるため慰謝料は2,800万円、被扶養者が2人以上なので生活費控除率は30%で計算します。
| 項目 | 金額・計算 |
| 葬儀費用 | 150万円 |
| 死亡慰謝料 | 2,800万円 (一家の支柱の基準額) |
| 逸失利益 | 800万円(確定申告書の所得金額)×(1−0.3)×18.3270(ライプニッツ係数) =1億263万1,200円 ※被扶養者2人以上の生活費控除率は30% |
| 賠償金の総額 | 1億3,213万1,200円 |
50歳の専業主婦の例では、賠償金の総額は6,678万1,551円です。実収入がゼロでも家事労働には経済的な価値があるため、女性の全年齢平均賃金を基礎収入にします。
| 項目 | 金額・計算 |
| 葬儀費用 | 150万円 |
| 死亡慰謝料 | 2,500万円 (母親・配偶者の基準額) |
| 逸失利益 | 437万700円(令和7年女性学歴計全年齢平均賃金)×(1−0.3)×13.1661(ライプニッツ係数) =4,028万1,551円 ※女性の生活費控除率は30% |
| 賠償金の総額 | 6,678万1,551円 |
年収600万円で妻を扶養する60歳の会社員の例では、賠償金の総額は6,533万4,400円になります。争点になりやすいのは就労可能年数で、67歳までの7年ではなく、平均余命の2分の1にあたる12年を採用する前提です。
| 項目 | 金額・計算 |
| 葬儀費用 | 150万円 |
| 死亡慰謝料 | 2,800万円 (一家の支柱の基準額) |
| 逸失利益 | 600万円(事故前年の年収)×(1−0.4)×9.9540(ライプニッツ係数) =3,583万4,400円 ※被扶養者1人の生活費控除率は40% |
| 賠償金の総額 | 6,533万4,400円 |
70歳で家事を担っていた女性の例では、賠償金の総額は5,032万1,495円です。就労可能年数は平均余命の2分の1を目安に9年とし、基礎収入には女性の全年齢平均賃金を使います。
| 項目 | 金額・計算 |
| 葬儀費用 | 150万円 |
| 死亡慰謝料 | 2,500万円 (母親・配偶者の基準額) |
| 逸失利益 | 437万700円(令和7年女性学歴計全年齢平均賃金)×(1−0.3)×7.7861(ライプニッツ係数) =2,382万1,495円 ※女性の生活費控除率は30% |
| 賠償金の総額 | 5,032万1,495円 |
家事も就労もしていなかった80歳の男性の場合、逸失利益をゼロとし、賠償金の総額は2,250万円です。ただし、老齢年金や退職年金を受け取っていた場合は、年金を逸失利益として請求できます。
| 項目 | 金額・計算 |
| 葬儀費用 | 150万円 |
| 死亡慰謝料 | 2,100万円 (基準額2,000万円〜2,500万円の範囲で仮定) |
| 逸失利益 | 0円 ※就労も家事もしていない前提 |
| 賠償金の総額 | 2,250万円 |
| 年金収入が年180万円あった場合の逸失利益 ※参考 |
180万円×(1−0.5)×7.7861(平均余命約9年のライプニッツ係数) =約700万円 ※総額は約2,951万円に増える |
90歳の男性の例では、逸失利益がゼロでも慰謝料だけで2,000万円が認められ、賠償金の総額は2,150万円になります。
交通事故の死亡慰謝料は高齢者であっても大幅に減るわけではなく、80歳の例との差は慰謝料100万円分にとどまります。老人だからという理由で機械的に半減させる仕組みはなく、家庭内での立場をもとに判断されるためです。
親の死を高齢だからと軽く扱われたと感じている方は、弁護士基準での再計算を弁護士に依頼してみましょう。
| 項目 | 金額・計算 |
| 葬儀費用 | 150万円 |
| 死亡慰謝料 | 2,000万円 (基準額2,000万円〜2,500万円の下限で仮定) |
| 逸失利益 | 0円 ※就労も家事もしていない前提 |
| 賠償金の総額 | 2,150万円 |
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入力は数分で済むため、保険会社の提示書面を手元に置いて結果と比較してみるのがおすすめです。提示額が計算結果を大きく下回っていれば、増額の余地があると考えられます。
ただし、計算機の結果はあくまで目安で、過失割合や年金の有無などは反映されません。実際の増額幅は事故の状況を確認した弁護士でなければ判断できないため、結果を持って相談へ進みましょう。
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交通事故の死亡慰謝料は、基準額が必ず適用されるとは限らず、事情によっては基準額を上回る金額が認められます。本章では、死亡慰謝料が増額される2つのケースを解説します。
事故後に治療を経て亡くなった場合は、入院中に被害者が味わった苦痛が評価されるため、即死のケースよりも賠償額が増える可能性があります。
「苦しい治療期間を経ても結果的に助からなかった」という状況は、ある意味即死の場合よりも精神的苦痛が大きいといえるかもしれません。ただし、入院が長引くと保険会社から「死亡の原因は事故ではなく持病だ」と因果関係を争われるケースがあります。
診療記録や死亡診断書で事故と死亡のつながりを示す必要があるため、争われた時点で弁護士に相談しましょう。
加害者の運転が悪質な場合は、遺族の苦痛が大きいと判断されるため、相場よりも高い慰謝料を期待できます。増額の根拠になりやすい事情は下記のとおりです。
事故時の運転の悪質さだけでなく、事故後に嘘の説明をしたり謝罪もしなかったりする不誠実な対応も増額の理由になります。悪質性を立証するには、警察が作成した実況見分調書や供述調書などの刑事記録の取り寄せが必要です。
刑事裁判が進んでいる場合は、記録の入手を弁護士に任せると確実です。
交通事故の死亡慰謝料は、被害者側の事情を理由に減額されるケースもあります。代表例は、被害者にも過失割合がある場合と、被害者に持病や既往症があった場合の2つです。
被害者側にも事故の原因となる落ち度があった場合に、被害者の過失割合に応じて賠償額を差し引く過失相殺がおこなわれる可能性があります(民法第722条第2項)。
たとえば総額6,000万円の損害で過失割合が加害者8対被害者2なら、受け取れるのは2割を引いた4,800万円です。被害者側の過失が認定されやすいのは、横断歩道以外での横断や信号無視などです。
亡くなった本人は事故の状況を説明できないため、加害者側の言い分だけで過失割合が決められる恐れがあります。しかし、ドライブレコーダーの映像や刑事記録で当時の状況を示せれば、過失割合を覆せるかもしれません。
割合に納得できないときは、受け入れる前に弁護士へ検証を依頼しましょう。
被害者がもともと抱えていた持病や体質が損害の発生や拡大に影響した場合、賠償額が減額する恐れがあります(素因減額)。
ただし、持病があったというだけで減額が認められるわけではありません。事故のけがが死亡の直接の原因であれば、持病の影響は限定的だと反論できます。また、年齢相応の身体の衰えは、素因減額の対象にならないとするのが裁判例の傾向です。
反論の材料になるのは、事故前の診療記録やカルテ、死亡診断書です。保険会社から素因減額を持ち出されたら、記録の取り寄せと反論の組み立てを弁護士に相談しましょう。
交通事故による死亡慰謝料の請求は、死亡届の提出と葬儀を済ませたあと、加害者側との示談交渉に入るのが基本的な流れです。交渉がまとまらなければ調停や裁判に移り、合意または判決が出てから賠償金を受け取ります。
本章では、各ステップを順に解説します。
事故で家族が亡くなったら、死亡慰謝料の請求より先に、死亡届の提出と葬儀手続を済ませます。
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に市区町村役場へ提出しなければなりません(戸籍法第86条)。死亡診断書または死体検案書を添えて提出すると、火葬に必要な許可証が交付されます。
葬儀を執りおこなう際は、葬儀社や石材店の領収書を全て保管しておきましょう。葬儀関係費用を請求するときの証拠になります。
加害者側の保険会社との示談交渉は、四十九日の法要を過ぎたころに始まるのが通例です。示談とは、裁判をせずに話し合いで賠償額を決める手続きです。
交渉では、死亡慰謝料・逸失利益・葬儀費用といった費目ごとに損害額を積み上げ、根拠となる資料を添えて主張します。保険会社の提示額に対しては、弁護士基準で計算し直した金額を示して増額を求める形です。
保険会社から早期の示談を促されても、遺族の気持ちが落ち着かないうちに応じる必要はありません。
示談で折り合いがつかない場合は、民事調停・民事裁判・ADRのいずれかに移行して解決を図ります。3つの手続きの概要は下記のとおりです。
| 手続き | 概要 |
| 民事調停 | 簡易裁判所に申し立て、裁判官1人と調停委員2人が間に入って話し合いで合意を目指す手続き 合意内容を記した調停調書には確定判決と同じ効力がある |
| 民事裁判 | 裁判所に訴えを起こし、裁判官が証拠にもとづいて賠償額を判決で決める手続き 判決には強制力があり、途中で和解が成立して終わる場合もある |
| ADR | 裁判所以外の中立な機関が和解をあっせんする手続き 交通事故では公益財団法人交通事故紛争処理センターが代表的で、法律相談も和解あっせんも無料 |
どの手続きを選ぶかは、争点が過失割合なのか金額なのかで変わります。示談が決裂した時点で、弁護士に相談しましょう。
示談や裁判などが成立したら、1週間〜2週間ほどで指定した口座に賠償金が振り込まれます。
示談書には、本人分の慰謝料を相続する相続人全員の署名と押印が必要になるのが原則です。相続人が遠方に住んでいる場合や連絡が取りづらい場合は、書類のやり取りに時間がかかるため早めに準備しておきましょう。
なお、示談書に署名すると原則としてあとからやり直せない点に注意してください。示談書には「今後は互いに一切の請求をしない」という清算条項が入るのが通例で、署名後に慰謝料が低かったと気づいても追加請求はできません。
署名の前に、費目ごとの金額と過失割合が妥当かどうかを弁護士に確認してもらうと安心です。
交通事故の死亡慰謝料のうち、被害者本人の慰謝料は法定相続分に従って相続人で分け、遺族固有の慰謝料は請求した遺族本人が直接受け取ります。
示談金はまとめて代表者の口座に振り込まれるため、内訳を把握したうえで分配する必要があります。たとえば本人分の慰謝料2,800万円を配偶者と子ども2人で分ける場合、配偶者が1,400万円、子どもが700万円ずつです(民法第900条)。
| 家族構成 | 法定相続分 |
| 配偶者と子ども2人 | 配偶者2分の1 子ども4分の1ずつ |
| 配偶者と父母 | 配偶者3分の2 父母6分の1ずつ |
| 子ども2人のみ(配偶者なし) | 子ども2分の1ずつ |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者4分の3 兄弟姉妹4分の1を人数で均等に分ける |
分配をめぐる兄弟姉妹間の争いを避けるには、示談前に遺族同士で分け方を書面にしておくのがおすすめです。取り分に不安がある方は、示談交渉と分配の両方を弁護士に相談してみましょう。
交通事故の死亡慰謝料を請求する権利は、被害者が亡くなった日の翌日から5年で時効にかかります(民法第724条・同条の2)。時効が完成した場合、加害者側が時効を主張すると、慰謝料を一切受け取れません。
また、ひき逃げで加害者が判明していない場合は、事故の日から20年経過すると事項が成立します(民法第724条第2号)。
時効は、中断したり成立猶予したりする方法があります。期限が迫っている方は、弁護士へ相談しながら時効が完成しないように適切な対処をおこないましょう。
時効の完成を阻止する方法については、以下の記事を参考にしてください。
加害者が任意保険に入っていなかったり、賠償金を支払う資力がなかったりする場合でも、死亡慰謝料を回収する手段は残されています。本章では、加害者が交通事故の死亡慰謝料を払えないときに取れる4つの対処法を解説します。
加害者が任意保険に未加入でも、自賠責保険には加入しているのが通常なので、遺族から自賠責保険会社へ直接請求しましょう。加害者を通さずに請求する手続きを被害者請求といい、加害者が非協力的な場合でも進められます。
死亡事故の支払限度額は被害者1人につき3,000万円です。限度額を超える分は、加害者本人に請求する形になります。
請求先は加害者の車の自賠責保険を扱う損害保険会社で、死亡事故で必要になる主な書類は下記のとおりです。
なお、自賠責保険への被害者請求の期限が死亡日の翌日から3年と、加害者本人への請求より短い点に注意してください。
加害者本人に一括で支払う資力がない場合は、分割払いの合意を結んで回収する方法があります。自賠責の限度額を超える分を無保険の加害者から回収する際の、現実的な選択肢です。
分割にする際は、示談書を公正証書にしておきましょう。公正証書とは、公証役場で公証人が作成する公文書のことです。「支払いが滞ったら強制執行をおこなう」という強制執行認諾文言を入れておけば、裁判をせずに給与や預金の差押えへ移れます。
あわせて、1回でも支払いが遅れたら残額を一括で請求できるという期限の利益喪失条項を入れておく必要があります。分割払いは途中で支払いが止まるリスクがあるため、滞った時点ですぐ動ける形にしましょう。
ひき逃げで加害者を特定できない場合や、加害者の車が自賠責保険にも未加入だった場合は、政府保障事業を利用できます。政府保障事業とは、自賠責保険で救済されない被害者に対して、国が加害者に代わって損害を補填する制度のことです。
補填される金額は自賠責保険と同じ水準で、死亡事故の限度額は3,000万円です。請求窓口は各損害保険会社や共済組合の支店となります。請求後は調査と国の審査を経て支払われるため、自賠責保険への請求より時間がかかる点は理解しておきましょう。
加害者が払えないときにどの手段を選ぶかは、資力や保険の加入状況を調べたうえで判断する必要があるため、弁護士に相談するのが確実です。
弁護士に依頼すれば、加害者の勤務先や財産の調査から差押えの手続きまで任せられます。遺族が加害者と直接やり取りせずに済むうえ、回収の見込みがある財産を見極めて動いてくれる点も安心材料です。
また、遺族自身が加入している自動車保険に人身傷害保険や無保険車傷害保険が付いていれば、加害者の資力に関係なく自分の保険会社から支払いを受けられます。使える保険の有無も、保険証券をもとに弁護士が確認してくれます。
費用が心配な方は、自動車保険に弁護士費用特約が付いていないか確認してみてください。特約があれば300万円まで保険会社が負担するため、自己負担なく依頼できるケースが大半です。
交通事故で死亡慰謝料を請求する際に弁護士に依頼すると、加害者側とのやり取りを任せられるうえ、自力で交渉するより慰謝料の増額が望めます。詳しく解説します。
弁護士に依頼すると、加害者や相手保険会社との連絡や書類のやり取りを全て任せられます。示談の連絡が入るたびに加害者側と向き合う苦痛から解放され、遺族は葬儀や法要、生活の立て直しに専念できるでしょう。
相続人が複数いる場合は、示談書への署名や分配の話し合いなど、遺族同士の連絡調整にも手間がかかります。弁護士が窓口になれば、遠方の兄弟姉妹とのやり取りもまとめて進めてくれます。
また、加害者の刑事裁判に関わりたい遺族は、被害者参加制度を使えば法廷での意見陳述や加害者への質問も可能です。弁護士は参加の申出から意見陳述の準備まで支援してくれるため、刑事と民事の両方を一貫して進められる点も心強いところです。
弁護士が交渉に入ると、裁判例に基づいて弁護士基準で計算した金額を請求できるため、自力で交渉するより増額が望めます。
遺族本人が弁護士基準を主張しても、保険会社は「裁判にならなければ適用しない」という姿勢を崩さないのが実情です。弁護士が付けば裁判に移る可能性が現実味を帯び、保険会社も弁護士基準に近い金額で応じやすくなります。
提示額に疑問がある方は、示談を成立させる前に一度弁護士へ見てもらいましょう。
交通事故の死亡慰謝料を請求する弁護士を探すなら「ベンナビ交通事故」を活用してみてください。「ベンナビ交通事故」は、交通事故の解決に注力する全国の弁護士を掲載しているポータルサイトです。
地域や相談内容で絞り込み検索が可能なので、すぐに弁護士を探し出せます。初回面談相談無料・休日相談可能・オンライン相談可・といった詳細条件を組み合わせれば、遠方に住む遺族でも相談しやすい法律事務所を見つけられるでしょう。
相談しただけで依頼を強制される心配はありません。まずは保険会社の提示書面を持って、金額が妥当かどうかを聞いてみるところから始めてみましょう。
ベンナビ交通事故に掲載している弁護士が、死亡事故の遺族から依頼を受けて解決した事例を3つ紹介します。
原付バイクに同乗していた10代の男性が、右折する車と衝突して亡くなった事例です。母親は事故直後の加害者や保険会社の対応に不信感を抱き、刑事裁判への参加も希望して弁護士に相談しました。
保険会社側は、被害者がヘルメットを着用していなかった可能性を理由に、賠償金の減額を求める姿勢でした。しかし依頼された弁護士は、刑事記録を入手してヘルメット未着用を裏付ける証拠がない点を立証しました。
そのうえで死亡慰謝料と逸失利益の交渉を進め、死亡慰謝料2,800万円と逸失利益7,600万円を合わせた約1億円で示談が成立しています。高額な賠償金が認められた点、息子のために可能な限りのことは尽くせたという点から、ご遺族は裁判をせず示談で解決しました。
大学卒業後に働いていた20代の女性が、横断歩道を渡っていたところを車にはねられて亡くなった事例です。加害者は逮捕されたもののすでに釈放されており、両親は加害者の不誠実な対応に納得できず弁護士に相談しました。
保険会社の当初の提示額は7,000万円で、逸失利益には理解を示す一方、死亡慰謝料は独身女性だから2,000万円が妥当だという主張でした。弁護士は、刑事裁判の終了後に示談交渉をおこないます。
逸失利益では将来のキャリアを考慮した計算を、慰謝料では本人と両親の無念を反映した金額を求めました。刑事裁判の証拠を示して大幅な増額を要求した結果、8,500万円以上の示談金獲得に成功しました。
年金を受給していた70代の男性が、自転車で走行中に後ろから車に追突されて亡くなった事例です。遺族は保険会社の提示額が妥当か判断できず、何から手を付ければよいかわからないとのことで弁護士に相談しました。
弁護士はまず、被害者の出生から死亡までの戸籍を取り寄せて法定相続人を確定し、相続手続きを整えるところから着手しています。過失割合については、保険会社が「被害者は道路の真ん中を走っていた」と主張していました。
弁護士は実況見分調書などの刑事記録を取り寄せ、道路脇を走行していた事実を証明して主張を退けています。慰謝料は弁護士基準で本人分と遺族固有分を合わせて2,250万円が認められ、逸失利益と葬儀費用を加えた総額約3,320万円で解決しました。
最後に、交通事故の死亡慰謝料に関するよくある質問とその回答を紹介します。自分のケースに当てはまる疑問があれば、本章で確認しておきましょう。
子どもの死亡慰謝料の額自体は大人と変わらず、逸失利益が大きくなるため総額が高額になりやすいのが事実です。
弁護士基準の死亡慰謝料は「一家の支柱」「母親・配偶者」「その他」の3区分で決まり、子どもの年齢による細かい区分はありません。子どもは「その他」に含まれ、2,000万円〜2,500万円が目安です。
一方、逸失利益は就労開始までの期間を差し引いても5,000万円規模が認められます。本記事の計算例では、3歳の男の子で約4,998万円、10歳の女の子で約6,590万円です。
慰謝料と逸失利益を合わせた総額は7,400万円〜9,100万円が目安になるため、保険会社から3,000万円などの提示を受けた場合は、相場よりも低い可能性があります。年齢別シミュレーションの3歳・10歳の例と見比べてみてください。
事故後に病院で治療を受けた末に亡くなった場合の医療費は、死亡慰謝料とは別に請求できます。事故が原因の治療である以上、入院費・手術費・投薬費は全て加害者側が負担すべき損害だからです。
ただし、健康保険を使って治療した場合は、自己負担した分を請求し、健康保険が負担した分は保険者から加害者側へ請求されます。
交通事故の死亡慰謝料に税金はかかりません。遺族が加害者側から受け取る慰謝料は、相続税の対象にも所得税の対象にもならないのが原則です。
ただし、加害者側からの賠償金ではなく、被害者が加入していた生命保険の死亡保険金は相続税の課税対象になる場合があります。賠償金と保険金を混同しないよう、税務上の扱いが気になる方は弁護士や税理士に確認しましょう。
交通事故の死亡慰謝料には、被害者本人の慰謝料と遺族固有の慰謝料の2種類があり、弁護士基準なら2,000万円〜2,800万円が目安です。慰謝料に逸失利益と葬儀費用を加えた総額は、年齢や収入によって2,000万円台から1億円を超えるケースまで幅があります。
保険会社の提示額は自賠責や任意保険の基準で計算されているため、弁護士基準との差が数百万円から数千万円に及ぶのが実情です。提示額に疑問がある方は「ベンナビ交通事故」で死亡事故の解決に注力する弁護士を探し、初回相談無料の事務所から話を聞いてみましょう。
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特約を利用して弁護士に相談する交通事故問題を依頼する弁護士の選び方にはポイントがあります。
等です。
詳しくは以下の記事を読んで、正しい弁護士の選び方を理解した上で弁護士に相談しましょう。
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