子どもが飛び出し事故に遭ったらどうする?ケース別に過失割合を解説
子ども(中学生以下)の交通人身事故は2022年で約1,582件発生しており、その中でも歩行中の事故原因の約15.5%が飛び出しによるものです。
飛び出し事故による子どもの死傷事故は、被害者である子どもや見守っていた親へのトラウマだけではなく、加害者になってしまった運転手の一生のトラウマになってしまいます。
子どもが飛び出し交通事故に遭ってしまった場合、子どもは被害者ですが「飛び出し」したことにより過失が生じる可能性があります。
しかし、飛び出し事故による過失(責任)を判断する基準は、明確には定められていないため、事故の状況によって判断されます。
この記事では、子どもの飛び出し事故における過失割合について紹介します。
子どもが飛び出し事故に遭ったときの過失割合はどうなるの?
もし、小さい子どもが車にひかれてしまった場合、ほとんどのケースで車のほうが高い過失割合となります。
しかし、飛び出しが原因の事故の場合、子どもの『不注意』の程度によって過失割合が変わってきます。
『不注意な行動を取らないための判断能力があったかどうか』という点がポイントで、判断能力の有無に関しては年齢によって考え方が変わります。
5歳か6歳以上なら判断能力があるとされる
裁判所では5、6歳以上の子どもであれば、危険な行為をおこなわない判断ができるとみなされます。
そのため、この年代の子どもの飛び出しに関しては、「車が来るかもしれない」「だからいったん止まろう」という判断ができるとされ、一定の割合(10%〜20%)の過失が認められています。
5歳未満なら過失がないのか?
もし飛び出し事故にあったのが5歳未満の子どもだった場合、「事理を弁識する能力(事理弁識能力)」があったかどうかが問われることになります。
事理弁識能力とは、物事の実態や起こりうる結果を理解して、これに基づく判断ができる能力とされています。
ただ、5歳未満の子どもに対して事理弁識能力の有無を確かめることはあまりしません。
そのかわり、判断能力がまだ乏しい子どもの飛び出し事故が起こる可能性のある場所で一人にした保護者の監督責任が問われ、一定の過失割合が求められることがあります。
ケース別の飛び出し事故による過失割合
実際に飛び出し事故が起きた場合の過失割合はどの程度になるのでしょうか。
本項では、実際に飛び出し事故が起きた場合の過失割合を、以下2つの場面ごとに紹介します。
- 信号機のある横断歩道の場合
- 信号機のない交差点の場合
信号機のある横断歩道の場合
歩行者も車の直進した場合
横断歩道上 |
過失割合(%) |
|||
四輪車 |
歩行者 |
|||
歩行者が赤で横断開始 |
車が青で横断歩道を直進 |
30 |
70 |
|
車が黄で横断歩道を直進 |
50 |
50 |
||
車が赤で交差点に進入 |
80 |
20 |
||
歩行者が赤で横断開始 |
その後青に変わる |
車が赤で直進 |
90 |
10 |
車が赤で右左折 |
90 |
10 |
歩行者直進|車が右左折
横断歩道の直近 |
過失割合(%) |
|||
四輪車 |
歩行者 |
|||
直進車が横断歩道を通過した後の衝突 |
車が赤 |
歩行者が赤で横断開始 |
70 |
30 |
車が青 |
歩行者が赤で横断開始 |
30 |
70 |
|
車が黄 |
歩行者が赤で横断開始 |
50 |
50 |
|
直進車が横断歩道通過する直前の衝突 |
車が赤 |
歩行者が赤で横断開始 |
70 |
30 |
車が青 |
歩行者が赤で横断開始 |
30 |
70 |
|
車が黄 |
歩行者が赤で横断開始 |
50 |
50 |
信号機のない交差点の場合
信号機が設置されていない横断歩道
信号機が設置されていない横断歩道 |
過失割合(%) |
|
四輪車 |
歩行者 |
|
通常の横断歩道上 |
100 |
0 |
歩行者からは容易に衝突を回避できるが、車からは歩行者の発見が困難 |
90 |
10 |
横断歩道の付近 |
70 |
30 |
信号機・横断歩道のない交差点またはその付近
信号機・横断歩道のない交差点またはその付近 |
過失割合(%) |
||
四輪車 |
歩行者 |
||
幹線道路または広狭差のある道路における広路 |
直進車 |
80 |
20 |
右左折 |
90 |
10 |
|
幹線道路でない道路または広狭差のある道路における狭路 |
90 |
10 |
対向ないし同方向進行歩行者
子どもの飛び出し事故の過失割合の決め方
ケース別で過失割合を紹介しましたが、「実際どのように決めるのか」について紹介します。
過失割合は誰がどのように決めるのか
過失割合は、事故の状況が似ている過去の判例を基に、保険会社が決め提示します。
しかし、保険会社が参考にする判例が適切とは限りません。
類似する複数の判例から、より保険会社側に有利な内容を参考にしている可能性があります。
保険会社から提示された過失割合に必ずしも合意する必要はありません。
過失割合に納得できない場合の対処法
保険会社から提示された過失割合に納得できない場合は、以下のような対処法があります。
- 保険会社が参考にした判例が適切か確認する
- 修正要素がないか確認する
保険会社が参考にした判例が適切か確認する
「保険会社に有利なものを参考にしている可能性があります」と説明したとおり、同じような事故で被害者の過失割合が低い判例が見つかることも珍しくありません。
過失割合が納得できない場合は、より適切な判例を根拠に交渉する必要があります。
もっとも、自分で適切な判例を探すのはとても大変ですので、交通事故が得意な弁護士に相談をおすすめします。
修正要素がないか確認する
修正要素とは、過失割合を加算もしくは減算する要素です。
人対車の場合、加害者側に以下のような要素が該当していないか確認し、該当するようであれば主張しましょう。
- 「複数の児童がいた」など車からの発見が容易な状況であった
- 歩道と車道が整備されておらず、事故が起きやすい道路であると認識できた
- 時速15~30㎞の速度違反があった
- 時速30㎞を超える速度違反があった
- 著しい前方不注意があった など
より適切な過失割合を獲得するポイント
より適切な過失割合を獲得するには、紹介してきたことをおこなう必要があります。
しかし、知識のない方がおこなうのは難しいため、できるだけ早い段階で弁護士へ相談するのがおすすめです。
弁護士に依頼すれば、必要な証拠をあつめたり現場検証をおこなったりしてくれて、正確な過失割合を算出してくれます。
弁護士に依頼し、適切な過失割合を獲得した事例を紹介します。
事故状況 |
過失割合 |
損害賠償 |
特殊なT字路を左折しようとしたところ、進入車両と衝突。被害者にも過失があるとして過失相殺とされた。 |
5割→0割 |
0円→約135万円 |
横断歩道を横断中に軽自動車が衝突。被害者の過失が2.5割あると主張された。 |
2.5割→0割 |
約1,100万円→約1,800万円 |
過失割合が変わることで、損害賠償金も上の表のように大きく変わります。
飛び出し事故の被害で気をつけるべきこと
子どもが事故に遭ってしまったときはパニックになってしまうのも当然ですが、だからこそ冷静になって気をつけるべきことがあります。
本項では、以下3つの気をつけるべきことを紹介します。
- 必ず警察を呼ぶ
- 災害共済給付制度が活用できる場合がある
- お子さんが入院/通院が必要なけがを負った場合は弁護士に相談する
必ず警察を呼ぶ
子どもを連れた親も、車を運転していたドライバーもどちらも被害者は自分だという感覚があるでしょうし、やってしまったと思う気持ちもあるでしょう。
しかし、交通事故の大きさや責任の所在にかかわらず、事故が起きたら必ず警察に連絡をする義務があります。
これを怠ってそのまま走り去れば救護義務・報告義務違反(いわゆるひき逃げ)になってしまいます。
事故が起きた場合は必ず警察に連絡しましょう。
災害共済給付制度が活用できる場合がある
災害共済給付制度とは、保護者と学校設置者が負担する共済掛金を支払うことによっておこなわれる給付制度です。
学校の管理下でけがをした場合に一定金額の補償を受けられます。
しかし、交通事故の場合は損害賠償との二重受け取りはできないため、調整をおこなう必要があります。
ひき逃げで犯人の特定ができない場合等、損害賠償の受け取りが困難である際には活用できる可能性がある制度でしょう。
給付対象
基本的に学校の管理下にあるか否かが給付対象の有無の判断基準となります。
具体的には以下のとおりです。
- 学校が編成した教育課程の授業を受けている場合
- 学校の教育課程に基づく課外授業を受けている場合
- 休憩時間に学校にいる場合
- 通常の経路及び方法で通学する場合
- 校外学習中及びその地点までの往復経路、移動中である場合
- 学校の寄宿舎にある場合
給付金額
給付金額については以下のように定められています。
申請方法
災害共済給付金申請は以下の流れでおこないます。
まずは以下より、「医療等の状況」という書類をダウンロードしましょう。
必要事項を記入して、治療をおこなっている医療機関へ提出をします。
医療機関が必要事項を記入した上記書類を学校等に提出することで、申請手続きは完了となります。
お子さんが入院/通院が必要なけがを負った場合は弁護士に相談
交通事故の被害者になってしまった場合、加害者側に慰謝料を請求することになります。
このとき、相手側の保険会社が示談しようと接触して来るかと思いますが、提示された示談金の額が本当に適切なのか必ず確認しましょう。
もちろん、お金で全てが解決するわけではありませんし、お子さんが受けたショックが癒やされたり、ご両親の苦労がなくなったりするわけでもありません。
しかし、入通院にかかった費用や精神的苦痛に対する正当な補填は受けるべきです。
また、慰謝料には3つの相場(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)があります。
最も高額な弁護士基準は、過去の判例を参考に導き出されたものであり、弁護士でなければ請求が難しくなっています。
とはいえ弁護士費用がかかりますので、けがの程度によって相談すべきかどうか判断しましょう。
もし自身の任意保険に弁護士費用特約が付いていれば、保険会社が弁護士費用の大部分を補償してくれますので、けがの程度にかかわらず弁護士に相談することをおすすめします。
治療費の負担
事故の原因が子どもの飛び出しであっても、基本的に治療費は相手自動車の加入している保険会社が支払います。
保険会社から連絡が来る前に自腹で治療費を払っていた場合にも、あとから保険会社から全額返金されますので、通院している病院名などの情報を伝えましょう。
ただし、相手が保険に加入していない場合や治療費が大きい場合などにはこの限りではありませんので、詳細は弁護士や保険会社へ確認しましょう。
さいごに
子どもの飛び出し事故の過失割合は状況によって大きく変わります。
適切な過失割合を獲得するために、一度弁護士に相談してみましょう。
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