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【図解付き】右直事故での過失割合は?賠償金を増額させるポイント

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事

右直事故での過失割合は事故状況によって大きく異なります。警察庁が公表している「令和元年中の交通事故の発生状況」によると、右折時の事故は2019年時点で31,488件発生しており、なかでも交差点内で起きた事故が25,484件と全体の約8割を占めています。

交差点内で起きた事故であれば「信号機の色」なども過失割合を判断する上で重要なポイントとなります。また運転者が「スピード違反」や「酒気帯び運転」などの過失を犯していたようなケースでは、さらに加算・減算した上で過失割合を決めることになります。

この記事では、右直事故での過失割合や請求できる賠償金、弁護士に依頼するメリットなどを解説します。

【関連記事】交通事故の過失割合に納得いかない!対処法と相談先まとめ

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右直事故の過失割合|自動車同士の事故

右直事故での過失割合は、事故に遭った車両の種類によって変わります。まずは「右直事故で双方が自動車を運転していた」というケースでの過失割合を解説します。

同一道路での右直事故

同一道路を対向方法から進入

過失割合(%)

自動車A

自動車B

信号機が設置されている

(左図)

直進車A、右折車Bともに青で進入

20

80

直進車A黄で進入、右折車B青で進入黄で右折

70

30

直進車A、右折車Bともに黄で進入

40

60

直進車A赤で進入、右折車B青で進入赤で右折

90

10

直進車A赤で進入、右折車B黄で進入赤で右折

70

30

直進車A赤で進入、右折車B青矢印の右折か信号で右折

100

0

直進車A、右折車Bともに赤で進入

50

50

信号機が設置されていない(右図)

直進車Aと右折車B

20

80

交差道路での右直事故

交差道路から進入

過失割合(%)

自動車A

自動車B

A車は直進、B車は左右から進入

40

60

優先道路・道幅の違う道路での右直事故

優先道路から進入

過失割合(%)

自動車A

自動車B

直進車Aが広路を進行、右折車Bが狭路から広路へ右折:図1

20

80

直進車Aが優先道路を進行、右折車Bが劣後路から優先道路へ右折:図1

10

90

右折車B①が広路・優先路から直進車Aの進行してきた狭路へ右折(対向方向右折):図2

60

(狭路)

40

(広路)

80

(非優先)

20

(優先)

右折車B②が広路・優先路から直進車Aの向かう狭路へ右折(同一方向右折):図2

50

(狭路)

50

(広路)

70

(非優先)

30

(優先)

右折車と左折車の事故

左折車と右折車の衝突

過失割合(%)

自動車A

自動車B

直進から左折のA車、直進から右折のB車

30

70

右折車同士の事故

右折車同士

過失割合(%)

自動車A

自動車B

直進から右折のA車、直進から右折のB車

40

60

右直事故の過失割合|自動車とバイクの事故

次に「右直事故で一方が自動車、もう一方がバイクを運転していた」というケースでの過失割合を解説します。

同一道路で自動車右折・バイク直進

信号機が設置されている

過失割合(%)

バイク

自動車

バイク直進、自動車右折(左図)

直進車、右折車双方とも青で進入

15

85

直進黄で進入、右折車青進入黄右折

60

40

直進車、右折車双方とも黄で進入

30

70

直進車は赤、右折車は青で進入赤で右折

80

20

直進車は赤、右折車は黄で進入赤で右折

60

40

右折車に青矢印による右折可の信号、直進車は赤

100

0

双方とも赤で進入

40

60

信号機が設置されていない

過失割合(%)

バイク

自動車

バイク直進、自動車右折(右図)

バイク直進、自動車右折

15

85

同一道路で自動車直進・バイク右折

信号機が設置されている

過失割合(%)

バイク

自動車

バイク右折、自動車直進(左図)

直進車、右折車双方とも青で進入

70

30

直進黄で進入、右折車青進入黄右折

25

75

直進車、右折車双方とも黄で進入

50

50

直進車は赤、右折車は青で進入赤で右折

10

90

直進車は赤、右折車は黄で進入赤で右折

20

80

右折車に青矢印による右折可の信号、直進車は赤

0

100

双方とも赤で進入

40

60

信号機が設置されていない

過失割合(%)

バイク

自動車

バイク右折、自動車直進(右図)

バイク右折、自動車直進

70

30

交差道路で自動車右折・バイク直進

交差道路から進入

過失割合(%)

バイク

自動車

左方自動車の右折:図1

30

70

右方自動車の右折:図2

20

80

交差道路で自動車直進・バイク右折

交差道路から進入

過失割合(%)

バイク

自動車

左方バイクの右折:図1

50

50

右方バイクの右折:図2

60

40

右直事故の過失割合について知っておくべきポイント

右直事故に遭ってしまった際は、過失割合について以下のポイントを押さえておきましょう。

過失割合は修正要素によって減算・加算される

過失割合は、上記で紹介したものを一つの目安とした上で、「どのような方法で右折したのか」「危険な行為はなかったか」など、さらに個別の事情を考慮して決定されます。

一例として、右直事故で以下のような行為があった場合には、修正要素として過失割合が加算・減算される可能性があります。状況によって修正内容は変動しますが、基本的には5~20%の範囲で修正されることになるでしょう。

修正要素

概要

早回り右折

交差点の中心の直近の内側を通行せずに右折すること。右折車に加算。

大回り右折

右折前に道路中央に寄らずに右折すること。右折車に加算。

直近右折

直進車がすでに交差点に入っており、至近距離にいる状態で右折を始めること。右折車に加算。

既右折

すでに右折し終えた右折車に直進車が衝突すること。右折車が減算。

明らかな先入り

峡路車がすでに交差点に入っている状態で広路車が衝突した際に適用。峡路車が減算。

合図なし

ウインカーをつけないまま右折すること。ウインカーを出さなかった車両に加算。

徐行なし

徐行運転が必要な場所で徐行を怠ること。徐行しなかった車両に加算。

もらえる賠償金は過失割合によって左右される

右直事故においては慰謝料や休業損害など、さまざまな損害について賠償請求を行うことになります。しかしその際、加害者から受け取れる金額は過失割合によって左右されます。

被害者と加害者の双方に過失がある場合、加害者に請求できる金額は「加害者側の過失割合分のみ」となります。つまり「賠償額が1,000万円・過失割合が被害者40:加害者60」のケースでは、賠償額1,000万円のうち、加害者側の過失割合分60%に対応する600万円を請求することになります。

このように、過失割合が何対何になるのかによって賠償額に直接影響することになりますので、慎重に判断する必要があります。

右直事故に遭った際に損害賠償請求できる項目

右直事故に遭った際は、慰謝料・消極損害・積極損害などを請求することができます。ここでは、それぞれの内訳について解説していきます。

慰謝料

右直事故の加害者には、事故が原因で負った精神的苦痛に対して慰謝料を請求することができます。なお請求時は、以下いずれかの計算基準を用いて請求することになり、金額は大きく異なります。

交通事故慰謝料の計算基準

自賠責基準

自賠責保険で用いる基準

任意保険基準

加入先保険会社が独自で用いる基準

弁護士基準

裁判所での判例をもとにした基準

入通院慰謝料

右直事故を原因に入通院が必要となった際に請求できる慰謝料です。「怪我の治療に要した期間」や「実際に入通院した日数」などにより、以下のように算出されます。

自賠責基準の計算式

  1. 4,300円×治療期間(病院で通っていた期間)
  2. 4,300円×実通院日数(実際に病院に通った日数)×2

※①・②のうち少ない額が適用されます。

任意保険基準(各保険会社が定める計算基準のため、あくまで以下は推定額です)

【弁護士基準】

【弁護士基準(むち打ち症など他覚症状がないケース)】

後遺障害慰謝料

右直事故を原因に後遺症を負い、後遺障害等級が認定された際に請求できる慰謝料です。後遺障害等級は第1級から第14級まであり、どれが認定されるかによって以下のように金額が異なります。

なお等級認定を受けるためには、後遺障害診断書などを準備して申請手続きを済ませて、損害保険料率算出機構による審査を受ける必要があります。

(※「自賠責基準」については、2020年3月31日までの交通事故の場合、かっこ内の金額へ増額されております。)

等級

自賠責基準

任意基準(推定)

裁判基準

第1級

1,150万円

(1,100万円)

1,600万円程度

2,800万円

第2級

998万円

(958万円)

1,300万円程度

2,370万円

第3級

861万円

(829万円)

1,100万円程度

1,990万円

第4級

737万円

(712万円)

900万円程度

1,670万円

第5級

618万円

(599万円)

750万円程度

1,400万円

第6級

512万円

(498万円)

600万円程度

1,180万円

第7級

419万円

(409万円)

500万円程度

1,000万円

第8級

331万円

(324万円)

400万円程度

830万円

第9級

249万円

(245万円)

300万円程度

690万円

第10級

190万円

(187万円)

200万円程度

550万円

第11級

136万円

(135万円)

150万円程度

420万円

第12級

94万円

(93万円)

100万円程度

290万円

第13級

57万円

60万円程度

180万円

第14級

32万円

40万円程度

110万円

死亡慰謝料

右直事故が原因で被害者が死亡した際に請求できる慰謝料です。「慰謝料請求する遺族の数」や「家庭内における死亡者の立場」などにより、以下のように算出されます。

【自賠責基準】

請求する要項

慰謝料額

死者本人に対する慰謝料

400万円(2020年4月1日以前に発生した事故に関しては350万円)

死亡者に扶養されていた場合(※)

200万円

慰謝料を請求する遺族が1人の場合

550万円

慰謝料を請求する遺族が2人の場合

650万円

慰謝料を請求する遺族が3人の場合

750万円

※遺族が死亡した被害者本人に扶養されていた場合のみ200万円が加算されます。(遺族が1人で扶養されている場合:400万円+200万円+550万円=1,150万円)

【任意保険基準・弁護士基準】

死亡者の立場

任意保険基準(推定)

弁護士基準

一家の支柱

1,500万~2,000万円

2,800万円

配偶者、母親

1,500万~2,000万円

2,500万円

上記以外

1,200万~1,500万円

2,000万~2,500万円

消極損害

右直事故の加害者には、事故が原因で失ってしまった収入分に対して消極損害を請求することができます。以下でそれぞれ解説していきます。

休業損害

右直事故を原因に休業せざるをえなくなり、本来得られたはずの収入が得られなくなった場合に請求できる損害です。収入や休業日数などにより、以下のように算出されます。なお休業損害については、被害者が「専業主婦」や「就職活動中」というケースでも請求することができます。

休業損害=1日あたりの基礎収入(※)×休業日数

※会社員・アルバイトなどの場合:「直近3ヵ月の収入÷90」

※自営業・個人事業主などの場合:「(前年度の所得+固定費)÷365」

後遺障害逸失利益

右直事故を原因に後遺症を負い、後遺障害等級が認定された際に請求できる損害です。収入や認定された等級などをもとに、以下のように算出されます。

後遺障害逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

※基礎収入:事故前の被害者の年収

※労働能力喪失率:後遺障害による労働能力喪失の割合をパーセンテージで表したもの

※労働能力喪失期間:後遺症により労働能力が失われたと評価できる期間

※ライプニッツ係数:将来付与分の利息を割り引く際の係数

死亡逸失利益

右直事故が原因で被害者が死亡した際に請求できる損害です。収入や家庭内における死亡者の立場などにより、以下のように算出されます。

死亡逸失利益=基礎収入額×(1-生活費控除率)×中間利息控除係数

※生活費控除率:生存していた場合に生活のために支出したものと考えられる一定割合(実際には調整的意味合いが強い)

積極損害

右直事故の加害者には、事故が原因で生じた費用(積極損害)を請求することができます。積極損害としては下記のものがあります。

項目

内容

修理代

壊れた車両を修理するために要した費用

治療費

怪我を治療するために要した費用

入院雑費

日用品雑貨費・通信費・文化費などの諸雑費

通院費用

公共交通機関で通院する際に要した費用

付添看護費

介護や介助を要する場合に請求可能な費用

将来の看護費

介護が必要なほどの後遺症を負った際に請求可能な費用

児童の学費等

事故が原因で生じた学習の遅れを取り戻す際に要した授業料など

葬儀関係費

葬儀等を行うために要した費用

弁護士費用

弁護士に対応を依頼した際に要した費用

右直事故の過失割合に納得できない場合は弁護士に相談!

過失割合について揉めている場合には、弁護士に依頼することで以下のようなメリットが望めます。

過失割合が適切か確認・適切な割合への引き下げを依頼できる

右直事故の過失割合は修正要素によっても細かく変動しますので、慎重に交渉を重ねて判断していくことになります。しかし場合によっては、双方の主張がぶつかってしまって過失割合がなかなか決まらないこともあります。

弁護士であれば、過失割合について「いくらであれば妥当か」確認してもらえますし、相手方との交渉対応を任せることもできます。「提示された過失割合に納得できない」というような場合、弁護士のサポートを得ることで、こちらの過失割合が引き下げられて賠償金が増額することもあります。

過失割合の引き下げに成功し損害賠償が増額した事例

弁護士に依頼して過失割合の引き下げに成功した事例を紹介します。以下は、当サイト「ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)」に掲載している弁護士の取扱事例を簡略化したものになります。

10%引き下げて約234万円増額したケース

依頼者が自転車で青信号の交差点を横断中、右折してきた加害者の乗用車にはねられて後遺症が残り、後遺障害等級14級9号が認定されたケースです。このケースでは、弁護士に依頼する前の賠償金が約171万円、過失割合は「被害者10:加害者90」でした。

弁護士が刑事事件記録を取得したところ、加害者が「アクセルとブレーキを踏み間違えていた」と供述していたことを確認。それを用いて主張したところ被害者の過失が10%引き下げられて0%となり、さらに休業損害・後遺障害逸失利益・後遺障害慰謝料などを算定し直して請求した結果、約405万円を獲得しました。

15%引き下げて約590万円増額したケース

依頼者がタクシー乗車中に事故に遭い、後遺障害等級12級が認定されたケースです。このケースでは、弁護士に依頼する前の賠償金が約460万円、過失割合は「被害者20:加害者80」でした。

弁護士は事故状況に類似する裁判例を探し、それを用いて相手保険会社と過失割合の交渉を行ったところ、被害者の過失が15%引き下げられて「被害者5:加害者95」となり、さらに後遺障害逸失利益・後遺障害慰謝料などを算定し直して請求した結果、約1,050万円を獲得しました。

25%引き下げて約690万円増額したケース

依頼者が交差点の横断歩道を徒歩で通行中、右折してきた加害者の軽自動車にはねられて後遺症が残り、後遺障害等級8級が認定されたケースです。このケースでは、弁護士に依頼する前の賠償金が約1,110万円、過失割合は「被害者25:加害者75」でした。

弁護士は事故状況に類似する裁判例を探し、それを用いて相手保険会社と過失割合の交渉を行ったところ、被害者の過失が25%引き下げられて0%となり、さらに後遺障害逸失利益・後遺障害慰謝料などを算定し直して請求した結果、約1,800万円を獲得しました。

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まとめ

右直事故に遭った際は、道路状況や車両の種類などのほか、修正要素についても考慮した上で過失割合を判断することになります。過失割合が何%になるのかによって賠償額は直接影響を受けますので、慎重に取り決める必要があります。

弁護士であれば、依頼者にとって不利な結果とならないよう、過失割合に関するアドバイスや交渉対応などが望めます。場合によっては、過失割合を引き下げて賠償金が増額できることもありますので、まずは一度「ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)」から弁護士を探して相談してみましょう。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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